8話 心のままに思う事
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「ひっく…っ…ひっく…っ」
「いい加減泣き止まぬか、りん」
紗夜が連れて行かれてから、りんはずっとこの調子で泣き通しである。
紗夜の奴…無茶をしおって…。
邪見は顔をしかめながら空を見上げた。殺生丸の姿を探すために。すると、丁度、銀色の髪を靡かせながら、殺生丸が空から降りてきた。
「「殺生丸さまっ!」」
邪見とりんは、急いで彼の元に駆け寄る。殺生丸は泣きじゃくるりんを見てから辺りを見回した。
「何があった?紗夜はどこにいる?」
「じ、実は―」
「紗夜ちゃんが…っ…りんと邪見さまの身代わりになって…野党に連れて行かれちゃったの…っ!」
「……………」
りんの言葉に殺生丸は表情を変えぬまま踵を返す。しかし、邪見は見逃さなかった。殺生丸の瞳に一瞬、怒りの色が表れたのを。
「邪見、りんから目を離すな」
「はっ!」
殺生丸は、再びふわりと地を蹴って、空へと舞い上がる。その姿を見送ってから、邪見は言いつけ通りりんの傍に向かった。
―…まだ僅かに匂いがある…。
殺生丸は紗夜の匂いを追いながら、夕日で赤く染まった空を飛んでいた。風に混じって届くその匂いは微弱で、紗夜が連れ去られてかなりの時間が経過している事が窺える。
何故、自分は紗夜を追っているのか…。
ふと、自分の行動に疑問が沸いた。しかし、殺生丸はその理由を考えなかった。考えたとしても、答えが出るとは思えなかったからだ。
代わりに、今にも消えかけそうな紗夜の匂いが、その存在そのものに思えて、殺生丸は速度を上げた。
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