26話 永遠の夜明け
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炎の海の中で、朝霞は紗夜を見上げた。
自分とよく似た娘の瞳の中に、己にはないものを見る。
それは、“あの人”の面影。
視界の端で、真っ赤に揺らめく炎。
けれどもう、“あの日”のように、朝霞は熱さも感じない。
ふと、瞳を閉じると、もう忘れてしまったと思っていた景色が、瞼の内側に浮かんで来た―――――……
――――――――――……
美しい満月の夜、あの太鼓橋。
人継の、優しい微笑み――…
自分の持つ力の使い方も知らず、妖怪に狙われてきた朝霞は、いつも厄介者だった。
物の怪憑きと忌み嫌われて、村からも実の親からも憎まれていた朝霞に、笑みなど向けて来た者はいない。
周りの人間からはいつも、心無い態度や言葉を容赦なく投げつけられ、何の喜びも、楽しみも、生きる意味も見いだせない人生だった。
けれど、死ぬのは怖くて…―――
妖怪に喰われそうになっても、死にたくないという本能に突き動かされて、朝霞は逃げていた。
生きていても、何一つ良い事なんてない。
寧ろ、辛いだけ。
そう思っているはずなのに、瞼を閉じた暗闇が永遠になって、もう明日は訪れないのだと思うだけで、内側から震えるような怖ろしさを感じた。
誰にも認められず、誰にも愛されず、唯独りで生まれて、唯独りで死んでいく。
それは、余りに怖ろしかった。
朝霞はただ死にたくなくて、生きていた。それだけ。
そうして、夜空にぽっかりと独りきりで浮かぶ月に己の姿を重ねながら、時は過ぎていった。
長い時間、朝霞の孤独に寄り添ってくれたのは、独りでも美しく、あまねく大地を照らしてくれる月の優しい光だけだった。
そう、あの晩までは―――……
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