24話 生きて、見えた景色
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―――――――
キン、キンッ―――!!
邪見は、二つの刀が月光を浴びて白く閃き、何度も何度も斬り結ぶ様を、少し離れた所から見ていた。
朝霞は、まるで舞いを舞うようにひらりと殺生丸の刀を交わし、攻勢に転じるときは雷のように激しく、絶え間なく斬り込み続ける。
殺生丸はその刀を受け止め、流すが、朝霞の動きは素早い。
刀の腕や力では殺生丸に敵わないと知っているのか、力で押すような攻撃はせず、ただ早く何度も刀を打ち付けて、殺生丸に刀を振らせる隙を与えない。
だが、一方の殺生丸は何の表情も宿していなかった。まるで、遊戯に付き合ってやっているかのような、そんな余裕さえ感じられる。
殺生丸が本気を出せばこの勝負、一瞬で片がつくだろう。邪見は、傍から見ていてそう思った。
――じゃが…いくら殺生丸様が本気を出しておられぬとは云え、唯の人間の女が殺生丸様に攻撃の暇も与えぬとは……あり得ん。
それに、紗夜にかけた呪いといい、あの呪詛の刀といい、唯の女にそんな芸当が出来るものか…?
あの女、元々霊力を持っていたと言っていたが……どういう事じゃ…。
仮に朝霞に霊力があり、呪術で紗夜に呪いをかけられたとしても、霊力とは本来神聖な力である。それは妖怪を退け、邪気を払うもの。
その力を持つ女が、何故我が子に呪いをかけ、妖怪を操る事が出来たのだろう。
人間の憎しみという感情は、それほどの力を与えるのだろうか。
邪見が考えていると、隣にいたりんが、冷たくなった紗夜の手を握りながら呟いた。
「…邪見さま…紗夜ちゃんの母上、どうしてこんな事をしたのかな…?なんで、実の母上が紗夜ちゃんを殺しちゃったの…?」
「…りん…」
邪見は、まだぽろぽろと涙を零すりんを見下した。その側では、安らかにねむる紗夜がいる。
―――なぜ朝霞は紗夜を恨んでいるのか。
なぜ朝霞は、紗夜に呪いを与えたのか。
――あの女の目的はなんじゃ…?
邪見は顔を上げ、紗夜の面影ある女を見た。
殺生丸も朝霞も、お互い退く事なく斬り合う。刃と刃が擦れ合う、肌が粟立つような鋭い音が何度も響いていた。
――キィィン!!!
ギリギリと刀を振るわせ、初めて殺生丸と朝霞が鍔ぜり合う。殺生丸の刀が朝霞の刀を捉え、押していた。
殺生丸は目を細め、闘鬼神に力を込める。すると朝霞の体は踏ん張ろうとするものの、容易に後方に押し返されていた。
「口程にもないな」
殺生丸は冷たい声でそう言うが、朝霞は意にも留めないように涼やかな顔で、笑っていた。
押されているというのに、余裕綽々といった様子である。その態度に殺生丸は眉を顰めた。
「貴様、死を望んでいるのか?」
問えば朝霞は、闇より深い漆黒の瞳で殺生丸を見上げる。
「ふっ、まさか!私とて、お前との力の差は分かっている。大妖怪のお前は紗夜の血を飲み、紗夜の体に秘められた妖力を少なからず得た。
最早お前に敵う妖怪はそうはおるまい。さりとて……お前に私は殺せない」
「…何…?」
やけに断定的な朝霞の言葉に、邪見は目を細めた。
まるで自分が死ぬことはないと、はっきり分かっているような口ぶりである。
殺生丸との力量の差も理解したうえでの言葉は、何処か信憑性があるようで、邪見の胸はざわついた。
「戯言を」
殺生丸は僅かに逡巡した様子だったが、すぐに闘鬼神を構えると地を蹴った。
朝霞との間合いが一瞬で縮まる。しかし、朝霞は何故か、微動だにしなかった。邪見は、嫌な胸騒ぎを覚える。
そして殺生丸は、躊躇う事なく闘鬼神を朝霞に向けて振り下ろした。
ザシュッ!!!―――
肉を切り裂く音がして、
「――!!」
飛び出してきた黒いものに、邪見は目を疑った。
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