17話 知られざる狂気
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目蓋の奥を白く照らす感覚に、紗夜はゆっくりと目を開けた。
「………ん…」
朝の淡い光が、少し目に痛い。
ごしごしと目を擦っていると、不意に近くで雀の鳴く声がした。
目の前の木を見上げてみると、二羽の雀が寄り添って、チュンチュンと可愛らしい声で鳴いている。
愛らしいその様子に、紗夜が微笑みを漏らすと、聞き慣れた声がした。
「―…起きたか…」
低く響いたその声に、まだ少しぼんやりしていた紗夜の意識が覚醒する。
「…おはようございます、殺生丸様…―」
紗夜は自分のすぐ隣にいた殺生丸を、ゆっくりと振り返った。
殺生丸は背を木に凭れかけさせたまま、薄く瞳を開いている。
一見眠たそうではあるが、声がはっきりしているため、先ほど起きたというわけではなさそうだ。
―…昨晩、殺生丸と想いを通わせた紗夜は、そのまま殺生丸の傍で眠ってしまった。
肩越しに感じた殺生丸の温もりが、まだ紗夜の心と体を温めてくれている。
愛しげに目を細める紗夜を、殺生丸はちらと横目で見やった。
「…何を笑っている?」
殺生丸にそう問いかけられ、紗夜は一瞬ぽかんとするが、やがてさっきよりも深く微笑んだ。
「嬉しいからです」
素直にそう告げれば、殺生丸は訝しげに紗夜を見つめる。
きっと、殺生丸には理解しがたかったのだろう。
いつも通りの彼の反応に、紗夜はさらに殺生丸を愛おしく感じた。
しかし、徐々に森に差す光が、紗夜の顔から笑顔を奪う。
「―…………」
紗夜は黙したまま俯いた。
これから要の所に行き、そこで殺生丸と共に生きると、要に告げる。
きっと、要は紗夜を笑顔で見送ってくれるだろう。
しかしその前に、紗夜は聞かなければならない。
自分がどうして普通の体ではないのか。
誰が、なぜ知っているのか…―
正直、恐くないと言えば嘘になる。
どういう経緯があって、自分がこんな体なのか…
もしも、衝撃を受けるような残酷な事実が待っていたとしたら…―
悪い方に考えれば、きりがない。
でも、もう逃げたくない。
どんな事が待っていたとしても、立ち向かいたい。
紗夜が膝に乗せた手をぎゅっと握りしめると、すっと殺生丸が立ち上がった。
「―――行くぞ」
「…はい…」
紗夜は殺生丸に頷きを返すと、静かに腰を上げる。
朝日が、そのときだと告げていた。
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