15話 道、そして恋
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『…私はお前を死なせるつもりはない。この先、何があっても…。しかし、お前が真に死を望むのなら………あの男と行け』
昨晩、殺生丸に言われた言葉。
それは突き放すように聞こえながらも、本当は、何よりも優しいものだった。
そうでなければ、私を死なせるつもりがないなんて、きっと言わないもの…―
紗夜は仰向けに寝転んだまま、じっと空を見つめながらそう思った。
殺生丸は紗夜を死なせるつもりはないと言った。
それなのに、あえて死を選ぶという道を紗夜の前に開いたのは何故か。
紗夜の気持ちがまだ“死”に執着していることを知っているからだ。
紗夜の生死を決めるのは、自分ではない。紗夜自身にあるのだと、殺生丸は思ってくれたのだ。
そして自分を死なせたくないと、もし彼が思ってくれていたとしたならば、それは彼にとって簡単に出せる決断ではない。
自分の思い上がりかもしれないが、もしかしたら悩んだかもしれないし、葛藤もしたかもしれない。苦しんだかもしれない。
紗夜は夜明けの近づいてきた淡い青と黄色を混ぜたような空を見て、唇を噛んだ。
殺生丸がどうしてそれほどまでに優しいのか…―
自分の気持ちを抑えてまで、紗夜の意志を尊重しようとしてくれるのか…―
どうして、そんなに強い心があるのだろうか…―
それに対して自分は、どうしてその優しさに甘えてばかりで、自分自身で決めなければいけないことにも迷ってしまうのだろう…―
どうして、彼に重い物ばかりを考えさせてしまうんだろう…―
出来ることならば、彼に笑顔を、幸せを、与えられる存在になりたいのに…――
そこまで思って、紗夜ははっとした。
…私、今なんて…?
殺生丸様に幸せを与えたい…―
どうして、そう思ったの…?
以前ならば、決してそんなことは思わなかった。
自分が死ぬことばかりを考えていた。
人に何かを与えてあげたいと思うほど、自分の心に余裕なんてなかった。
なのに…―
バサバサバサッ……―
鳥が飛び立つ音がして、紗夜はゆっくりと起き上がった。
薄明るくなった空には、灰色のぼんやりした影を落とした雲が、漂いながら浮かんでいる。風が柔らかく吹いて、紗夜の髪を弄んだ。
紗夜の膝に置いた手が、僅かに震える。
心臓が、熱を持ったように鼓動した。
「……私は……生きたい、と思ってる…?」
掠れた声でそう口にすれば、また心臓がドクンと跳ねた。
まるで、そうだ、とでも言うように…―
紗夜そっと胸に手を当てる。
規則的に鼓動がなっている。
私が生きている、証―…
「…どうして…―…」
つっと頬を熱いものが静かに流れ、紗夜の膝上にぽたりと落ちた。
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