14話 伏見の出会い
【名前変換】
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
元治元年(1864年)五月――……
朝餉の後片付けを済ませた千鶴は、斎藤に連れられて、幹部隊士の集まる広間に来ていた。
「――父と特徴の一致する人が、伏見にいた…!?」
千鶴は、今しがた土方から聞かされた言葉に、目を輝かせる。
すると土方は、千鶴に頷き返して言った。
「真偽は定かじゃねえが…。伏見にある寺田屋って宿だ。これから斎藤に確かめに行ってもらう」
「斎藤さんに…」
千鶴は、黙して座っている斎藤の方を振り返る。
ようやく降りた父探しの外出許可に、待ちに待っていた父の情報。
となると千鶴は、斎藤について、伏見に行けばいいのだろうか。
千鶴がそう思っていると、斎藤とは反対側に座っていた原田が、横から入って来る。
「だが、綱道さんがまだそこに留まってるとは限らねえだろ」
「ああ。伏見にいたってことは、京の町中をうろついてる可能性もある」
原田の言葉に、その隣に座っていた永倉も同意した。
「その通りだ。だから、原田と新八、それから平助の巡察にこいつを同行させて、綱道さんを捜してもらってもいい」
土方が二人に向かってそう言うと、平助は不思議そうな顔をする。
「オレたち全員で?いつもは手分けして、順番に見回りしてるのに……」
平助の小さな問いに、土方は答えないまま、千鶴の方へちらりと視線を向けた。
その目を見て、千鶴は彼の思っている事を察する。
恐らく土方は、千鶴が逃走しようとした際の事を想定して、三人体制の巡察を提案しているのだ。
そう思うと、やはりまだ完全には信用されていないのだと、実感する。
平助も、土方の言わんとしている事を悟ったのか、それ以上何も言わなかった。
短い沈黙が広間に落ちた後、初めに口を開いたのは沖田だった。
「…言いたいことは分かりましたけど、この子のお守りを僕達に任せっぱなしってのは、気に入らないなあ」
沖田はいつもの調子で言いながら、土方の方を見やる。
「今日は確か、土方さんも外出する予定が入ってましたよね?今後の為にも、可愛い小姓を同行させて、色々勉強させたらどうですか?」
そう言って沖田がにっこり笑うと、土方は怪訝に眉を寄せた。
「何を言ってやがる。こいつが俺の小姓っつうのは、お前が勝手に言ってただけだろうが」
「でも他の隊士達は、完全にそう信じ込んでるみたいですよ。“嘘から出た真”なんて言葉もありますし、相応の仕事をさせた方がいいんじゃないですか?」
どこか面白半分にそう言う沖田を、土方がいつもの如く怒鳴りつけ始める。
始まってしまった二人の言い合いを見守っていると、原田が小声で千鶴に言った。
「……ま、今の京は物騒だし、無理に出掛ける必要はねえと思うぜ。俺達も一応、綱道さんの顔は分かるんだしな」
「えっと…」
千鶴は原田の顔を見て、それから俯き、考える。
父がまだいると期待して、伏見に行くか。
もう発ったと考えて、巡察で市中を捜すか。
あるいは、立場を考えて屯所に残るか、小姓として土方に付き従うか……。
千鶴はしばらく考えた後、ゆっくりと顔を上げた。
「私は――」
・