11話 それぞれの思案
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行かなければ―――
早鐘を打つ心臓に急かされるまま、暗い屋敷の廊下を走る。
自室にいた時から聞こえていた、屋敷を駆け回る人々の足音。
死の間際の、絶叫。
けれど目的の場所に近付く程に、それは聞こえなくなって、屋敷は静かになっていた。
何かに忠告されたように走るのを止めて、足音を立てないように歩き出す。
そのうちぴちゃ、と何か濡れたものを踏んづけた。
足袋越しに、生温かい液体の感触を感じる。
よせばいいのに、襖の開いた傍の部屋に、目を向けた。
小窓から入り込む月明かりで、部屋の様子がぼんやりと分かる。
思わず息を呑む。
その部屋に幾つも転がる、骸。
誰も彼も、知っている顔ばかり。
そして、一番近くに転がっていた骸は、自分の世話を日頃からよくしてくれていた人だった。
その人の血溜まりを踏んで、目を剥いた死に顔を見て、恐怖がべっとりと胸に張り付く。
手ががたがた震え、先程よりも心臓が煩く脈打ち始める。
急げ、急げ、急げ。
早く確かめろ。
早く、行け!
己が心に命じられるまま、足が縺れそうになりながら、早足に歩き出す。
やがて、そこに辿り着いた。
襖は半分だけ開いていた。
僅かに声のような、息のようなものが聞こえる。
そっと側に寄って、中を覗く。
窓から入った朧な月光が、黒い三つの影をそこに映していた。
よく目を凝らして見て、そして、声を上げる事も出来なかった。
驚いて、後退って、どんっと背中が壁にぶつかる。
物音に気付いた一つの影が、ゆらりと動いてこちらを向いた。
――闇に浮かぶ、赤い瞳。
溶けるような漆黒の短髪。
赤い瞳が、自分の姿を捉えて怪しく細められる。
月の僅かな灯りしかないのに、それがニッと笑む顔がはっきりと見えた。
背中が冷たくなって、恐怖で体が動かない。
ただじっとそれを見つめたまま、初めて感じる死の気配に、怯える事しか出来なかった……―――
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