星霜
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「よいしょ…っと…」
任務も、医療班の当番もない休日のある日――…
ミオリは、叔母の家に間借りしている自分の部屋の、大掃除をしていた。
シングルサイズのベッドと、医学書がびっしり並んだ大きな本棚が二つに、勉強机。
それから、衣類を詰め込んだクローゼットがあるような、至って普通の部屋である。
十一歳の時父が亡くなり、元々母もミオリを産んだときに他界していたため、ミオリは父の妹――叔母の家に引き取られた。
それからこの部屋を使わせてもらっているので、もう六年程経つだろうか。
六年も経てば当然細々した物は増えるし、服のサイズも趣味も変わってくる。
いつも何だかんだ忙しいと言って手を付けてこなかったが、今日は思い切って要らない物は捨てて片付けようと決意したのだ。
要らなくなった服を全てどかした後、ミオリはクローゼットの奥の奥に押しやっていた段ボールを引っ張って来た。
十中八九、こんな所に入っているものは、普段から使用しない不用品である。
だが、そういう物に限って、何だか懐かしかったり、愛着があったりして捨てられていない物だったりするのだ。
きっと中を見たら手が止まってしまうだろうな、と思いつつ、ミオリは薄っすら埃を被ったその箱を開けてみた。
案の定、昔大好きだった絵本やおもちゃ、キラキラしたキーホルダーなど、懐かしいけれど今は必要ない物が沢山出て来る。
その中に一つ、ミオリは思い出深い物を見つけた。
「…あ!懐かしい…!まだあったんだ…」
ミオリが手に取ったのは、小さな栞。
まだ三歳くらいのとき、ネジがくれた紫色の菫を、押し花にして作ったものだ。
確か、父に教わりながら、初めて作った押し花だった。
「…これは、取っておこうかな。まだ使えるし」
ミオリは幼くて可愛かったネジの顔を思い出し、くすっと笑いながら、菫の栞を脇に寄せておく。
それから次に、箱の脇にぴったりと詰められていた、分厚い本を手に取った。
少し色褪せた、若草色のアルバム。
「これ…!ここにあったんだ…」
ミオリは思わず声を上げ、表紙に付いた埃を手で払う。
何度か見たいなあと思っていたのだが、探しても見つからず、半ば諦めていた物だった。
この段ボールに入れた記憶は正直ないが、ここに入っているという事は、きっと何かの拍子に入れてしまったのだろう。
見つかって良かった~、と独り言ちながら、ミオリは最初に危惧していた通り、片付けの手を止めて、アルバムを開き始める。
父が撮ってくれた、幼い頃の写真。
父やネジと一緒に映っているもの、生まれたばかりのハナビを抱かせてもらって、ヒナタと一緒に撮ってもらったもの。
やっぱりこんなに小さい時から、ネジやヒナタたちと一緒だったんだなあ…と感慨深い気持ちになる。
どの写真のミオリも、楽しそうに笑っていた。
ページを繰る事に、写真のミオリは少しずつ大きくなっていく。
アカデミーの前で、父と並んで撮った、入学式の写真。
顰めっ面のネジと一緒に撮ってもらった、卒業式の写真。
この頃にはもう、ネジの事が男の子として好きだった。
「………」
懐かしさに目を細めながら、ミオリは次のページを捲る。
これが、最後のページだった。
下忍になってからは、忍としての任務と、医療班としての任務、病院での研修に忙殺されて、写真を撮る機会がめっきり無くなり、殆ど写真が無かったのだ。
「…!」
最後のページに貼られたその写真に、ミオリはハッと目を見開く。
そこには、十四歳の頃のネジが、スーツを着ている写真があった。
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