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〈雲雀恭弥+10〉
「!帰って来た…」
アジトの中で、自分以外の足音が聞こえて、私はぱっと顔を上げた。
鏡の前に立って、不自然がないか確認し、急いで彼の元に向かう。
任務の為に出かけた彼に会うのは、一週間ぶり。たったの一週間と言えど、私にとっては大きな七日間だ。
出来る事なら、片時も離れず一緒に居たい。
逸る気持ちを抑えつつ、私は恭弥の箪笥がある部屋へと急いだ。
彼は外出から帰るといつも、まずその部屋でスーツから着流しに着替える。そろそろ着替え終わった頃かもしれない。
私が部屋の前に到着すると、丁度襖が開けられた。待ち焦がれていた姿がそこにあって、私の顔が自然と綻んだ。
「!恭弥、お帰りなさい…!」
「ただいま。…それ、新しく仕立てたの?」
驚いた目で私を凝視する恭弥の視線は、私の衣服に注がれていた。あんまり彼が見るから恥ずかしくなって、私は頬が熱くなるのを感じながら頷く。
「うん…、恭弥が好きなの仕立てていいって言ってくれたから…」
私が選んだのは、落ち着いた赤色に白や黄色の花模様が施された着物。いつも淡くて可愛い色が多いので、今までない色を選んでみた。
おずおずと彼を窺い見れば、恭弥は艶やかな微笑を浮かべて、私を見おろす。
「よく見せて」
そう言いながら彼は、私の頬に触れ、着物姿の私を上から下まで見回した。ぽっ、とまた熱が顔に集まる。
恭弥はさらに私に近付くと、私の肩に手を滑らせて、背中の帯の所を見た。
「自分で着つけたの?」
「う、うん…変かな…?」
「いや、上手だよ。上手くなったね」
あと少しで抱きしめられそうな距離。ふわりと恭弥の匂いがして、もう十年も一緒に居るのに、未だにドキドキしてしまう。
「可愛いよ。この色も良く似合ってる」
「っ…ありがとう…」
恭弥に褒められるだけで嬉しくて。目を伏せてそう言えば、彼はふっと微笑んだ。
「君はいつまで経っても赤くなって、可愛いね。そういう所好きだよ」
「か、からかわないで…!」
「からかってなんてないさ。褒めてるんだよ…」
恭弥はくすりと笑みを零すと、片手で私の腕を引き、反対の手で私の頬を包み込んだ。待ち望んでいた彼の温もりにようやく包まれて、満たされる。
刹那、柔らかに唇が押し当てられ、私はそっと目を閉じた。
「ん……」
一週間ぶりに彼を感じて、幸せな気持ちでいっぱいになる。恭弥も、そうだったらいいのに。
そう思いながら、彼の背中に腕を回せば、恭弥は満足げに微笑んで、私の頭を撫でた。
やがてそっと唇が離れて、恭弥を見上げる。恭弥の瞳も熱っぽく、私を求めていた。恭弥は微笑を浮かべて私を抱き締めると、耳元に顔を近づける。
「今日はもう、離さないよ。覚悟はいいかい?」
低く、心地よい声で囁かれ、私の頬がまた赤く染まる。拒む理由なんてない。私も、あなたが欲しい。
「……はい…」
潤む瞳で恭弥を見上げて、小さな声で答えれば、また優しく唇を塞がれた。
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