王子かもしれない
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ここ最近、ボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーは、請け負える依頼もなく、珍しくゆっくりとした時間を過ごしていた。
幹部の人たちはみんな、毎日思い思いの行動をしている。
ルッスーリアさんは新作の料理を開発していて、マーモンは毎日お金を数えている。
…任務はしていないはずなのに、毎日額が変わっているのはなぜが、いつも気になるけれど…。
それから、ザンザスさんとスクアーロさんは相変わらず。
こき使って、こき使われて…。
もうザンザスさんの怒鳴り声には慣れてきたけれど、スクアーロさんの気の毒さは変わらない。
レヴィさんは…―
…あまり見ないから、何をしているのか不明。
見かけないというのもあるけど、特に気にならないので探りもしていない。
そしてベルは…―
…―
「―あっ!!」
おやつの時間になって、キッチンの冷蔵庫を開けた私は、思わず声をあげた。
「どうしたの、優花?」
もう晩御飯の準備に取り掛かっていたルッス―リアさんが、私に尋ねた。
「私のプリンが…なくなってるんです…。今朝の分とっておいたのに…」
「あらまあ、おかしいわねえ…。さっき冷蔵庫を見たときはあったと思ったんだけど…」
「あー…楽しみにしてたのに…」
私ががっくりと肩を落としながらそう言ったとき、キッチンに誰か入ってきた。
冷蔵庫から目線を外して入口を見てみると、いつものように前髪で表情の見えないベルが立っている。
「あらベルちゃん、丁度よかったわ。優花のプリン知らない?さっきまで冷蔵庫にあったのに、なくなってるのよ」
「あー?プリン?」
透かさず尋ねたルッス―リアさんの言葉に、ベルはうーんと考える。
私は、なんだか嫌な予感がした。
すると、ベルがぱっと顔を上げる。
「あ、そう言えば」
ベルは白々しい様子でそう言うと、憎たらしいほど清々しくニヤリと笑った。
「それ、さっきオレが食っちゃった」
「!!」
「まあ…」
ベルは悪びれもせずに笑いながら、私の方に歩いてくる。
「あれ、優花のだったの?てっきり、誰かが残してるのかと思っちった」
「嘘言わないでっ!今日の朝、私がプリンを冷蔵庫に入れるの見てたでしょっ!?」
私は今朝、ベルと朝食が一緒の時間だったのを思い出す。
私がプリンを冷蔵庫に入れるのだって、見ているに決まってる。
プリン如きでこんなに声を荒げるなんて、自分でも馬鹿馬鹿しいと思うけど…。
私はもう堪忍袋の緒が切れてるんだから!
―…事の発端は、もはや休暇と呼べるような日が始まる日だった。
ほぼ毎日任務をしていたベルは、任務がなくなったら急に暇になったらしい。
暇つぶしに、毎日私に嫌がらせを始めた。
しかも、私だけに。
私の枕をわざわざリビングに持っていったり、私の部屋に勝手に入ったり、ご飯の度に、自分の好きなおかずを私のお皿から盗んでいったり…―
前から時々意地の悪い事はされることがあったけど、こんなに毎日されたことはない。
それに、この他にもいろんな嫌がらせをされた。
主にご飯のときとかご飯のときとかご飯のときとか…!!
食べ物の恨みは恐ろしいんだからっ!!
「もう、あんまりよ!!自分が悪いことしてるとか、思わないのっ!?」
「思わねー。だってオレ、王子だもん」
「っ―!!そんなの本当の王子じゃないっ!!」
「…………」
「ま、まあまあ…落ち着いて、優花」
珍しく声を張り上げる私を、ルッス―リアさんが止めにかかる。
ベルも、普段は言い返してくるくせに、今日は言い返してこない。
黙ったまま突っ立って、私を見ている。
何で言い返してこないの?
もう、取り合うのも嫌なの?
ベルは、私の事が嫌いだから、私だけにこんな事するの…?
「っ…ベルの馬鹿!」
怒っているからか、悲しいからか。
私は震える声で叫ぶと、キッチンを飛び出した。
―……
「……ベルちゃん、もっと素直になったらどう?」
優花が去った後の、しんとしたキッチンの中でルッス―リアが口を開く。
「…うっせーオカマ」
ベルは、いつもより低い声で言うと、さっさとキッチンを出て行った。
「まったく…困った子ねえ…。仲直り出来るといいけど…」
ルッス―リアは溜息を付きながら、ベルの後姿を見送るのだった。
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