5話 触れた指先は
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「行ってきまーす」
音羽は家を出ると、ぐーっと伸びをした。
春の朝の日差しは穏やかで、暖かい。また眠くなってしまいそうだ。
音羽は欠伸を我慢しながら、並中への道をのんびり歩いていく。
今日は月曜日。休日の間、テストに向けて夜中もずっと勉強していた為、睡眠不足が続いている。
「授業寝ないように気をつけなくちゃ…」
ぽそりと一人で呟いていると、段々と並中生が増えてきたので、音羽は口をつぐんだ。
休日明けのせいか、どの生徒も浮かない顔をしている。きっと、休みが恋しいのだろう。
音羽は並中の校門を入り、いつものごとく、風紀委員がずらりと並んで出来た道を歩いて行った。
朝の服装点検や、何か異常がないか、こうして風紀委員がチェックしているのだ。
ここに雲雀がいる事はほとんどなく、リーゼントヘアの風紀委員がその役目を担っていた。
音羽は今まで、彼等に特に注意されたことは無かったので、ぼんやりと歩いていたのだが、ふと、強い視線を感じて顔を上げた。
「………」
すると列の一番奥で仁王立ちしている風紀委員――副委員長の草壁哲矢と目が合う。
「…?」
音羽は一瞬ドキリとしたが、彼が音羽に何か言ってくるわけでもないので、見られている意味が分からず小首を傾げた。
――…服装、何か変かな?…まあいいか。
何も言ってこないという事は、何もないのだろう。
音羽は特に気にせず、そのまま昇降口に入り、2-Aの教室に向かった。
教室に入って席に着き、鞄を開ける。
――うぅ…眠い…。
席に座った途端、眠気に襲われ、音羽はふるふると首を振った。
これはきっと、授業中寝てしまう。
何かいい方法ないかなあ…、としょぼしょぼする目を瞬かせていると、前方から明るい声が聞こえた。
「おっす、片桐!」
「―あ、山本君!おはよう」
顔を上げると、ツナ、山本、獄寺の三人組が、教室に入ってきた所だった。
「おはよう、片桐」
「よう…」
「おはよう、沢田君、獄寺君」
音羽の席にやってくる三人に、微笑みながら挨拶したが、相変わらず目はしぱしぱする。
その様子を見て、山本が不思議そうな顔をした。
「あれ、なんかすげー眠そうなのな?」
「ほんとだ。なんか意外だな、片桐が眠そうなんて」
ツナも驚いたようにそう言い、音羽は苦笑いして頷く。
「あ、うん。もうすぐテストだから、最近徹夜続きで…」
「ええっ!?偉い…オレなんて、何も分かんないくせに、何もやってないよ…」
「ははっ、なるほどな。偉いな、片桐は!」
「感心する前に、お前もやれ!野球バカ!」
ツナは絶望するし、山本は感心するし、獄寺は怒るしで、この三人組はいつも元気で慌ただしい。
音羽は三人のやりとりを見ているうちに、少し眠気が収まったが、次の瞬間、さらに眠気を吹っ飛ばす声が響き渡った。
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