29話 毒の中信じる人
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「…はぁ………はぁ……っぅ…」
音羽は荒い呼吸を繰り返し、余りの辛さに眉を顰めた。
チェルベッロの言っていた毒がさらに体に回っているのか、全身の熱さや痛みは増すばかりだ。
ドーン、ドーン!と、音羽の頭上の方で爆発音が聞こえる。
辛くて、首を動かす事も出来ず、音羽は何とか目を開けて、リストバンドを見る。
小さなモニターには丁度、ツナとザンザスの姿が映っていた。
音羽のいる所からそう遠くない校舎の屋上で、拳にオレンジの炎を灯したツナと、両手に銃を携えたザンザスが激しく戦っている。
上の方から聞こえて来るこの音は、きっと彼等の戦闘の音なのだろう。
「っ……!」
音羽は再び激しく襲ってきた痛みに耐えるよう、ぎゅっと目を閉じた。
心臓が脈打つ度に、体全身に痛みが走る。
その痛みは、音羽が今までに経験したことがない程痛く、辛い。
それこそ、これが三十分も続けば、気がふれてしまいそうな程だ。
『全身を貫く燃えるような痛みは徐々に増してゆき、三十分で…絶命します』
チェルベッロが言っていた言葉が、頭の中でこだまする。
――……私……死ぬのかな……。
朦朧としながらぼんやりと考え、力の入らない音羽は震える唇を弱く噛んだ。
遠くに聞こえたチェルベッロの声は、確か他の守護者にも毒が投与されたと言っていた。
それなら恐らく、雲雀も動けない状況だ。
普段の雲雀なら戦闘においてそう簡単に死ぬ事もないだろうが、これほどの痛みと熱を伴う毒となると、流石に心配だ。
でも音羽も人の心配をしていられる状態ではない。
誰にも頼る事は出来ず、体を動かす事もままならない音羽は、どこにあるか分からないリングを三十分以内に見つけ出さなければいけないのだ。
でも、体は動きそうにないし、唯一動く事の出来るツナも、ザンザスとの戦いで手が回らない様子である。
――このままじゃ、冗談じゃなく死んでしまう…。
早く、リングを探しに行かなきゃ……。
そう思うのに、体は音羽の意志に逆らって、ちっとも動かない。
熱で頭も上手く働かず、痛みのせいか、死ぬかもしれないと思っても恐怖を感じる余裕も無かった。
それでも、この事態をどうにかしなければ…という意識だけはあって、音羽は何とか力を振り絞る。
だが、首を持ち上げるのが精一杯だった。
音羽は視界に映った光景を見て、ぼんやりと今いる位置を把握する。
音羽はいつの間にか中庭の端の方へと移動させられていた。
そう言えばツナの声が聞こえた気がするから、彼が安全そうな方へ移動させてくれたのかもしれない。
「…!」
視線だけを動かしていた音羽の目にあるものが留まって、音羽は目を見開いた。
音羽の倒れている数メートル先に、あの大きなポールが聳え立っている。中庭、という位置からして、恐らく嵐のポールだ。
――あの上に、天のリングがあるかもしれない……!
可能性は六分の一。
今の状況では期待し過ぎない方が良い確率かもしれない。
それでも、諦められない。
音羽は体を起こそうと、腕に力を込めた。
でものろのろと上体を起こすのが本当に精一杯で、音羽は直ぐに地面に倒れ込んでしまう。
額にかいた嫌な汗がこめかみを伝って、顎から流れ落ちた。
瞳を開ける事も億劫で、音羽は真っ暗な闇の中で、ただ雲雀の姿を思い浮かべる。
「……雲雀…さん……」
音羽の掠れた頼りない声が、息と一緒になって漏れ出たとき、
――ドオオォン!!!
どこか、少し遠くの方で、物凄い爆発音が聞こえた。
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