25話 戦う理由
【名前変換】
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クロームが包まれたはずの霧の中から現れた男に、その場は困惑した。
バジルや了平、ベル、レヴィも、彼を知らない人物たちは皆、唖然として男を見ている。
あのザンザスでさえ、厳しい目で男を凝視していた。
「六道骸……!間違いない」
「骸……無事だったんだ…」
「…骸さん……」
骸を知っている獄寺、ツナ、音羽は、見紛うことない骸の姿に息を呑む。
「お久しぶりです、舞い戻って来ましたよ…………―――輪廻の果てより」
骸は、相変わらず滑らかな低い声で言うと、ちらと顔だけこちらを振り返った。
その時彼の瞳が音羽を捉えて、優しく細められる。
「…傾国、会いたかったですよ」
「…………」
黒曜ランドで会った時と変わらない、骸の音羽を見る恍惚とした眼差し。
あの時起こった出来事を忘れられるはずもなく、音羽は唇を引き結んで身を固くした。
すると、その様子を見た骸は困ったような笑みを浮かべる。
「おやおや、随分と怖がられてしまっているようですね…。僕は、貴女の為にここにいるのに」
「………え…?」
――私の為……?
骸の言葉の意味が分からず、音羽は思わず聞き返す。
だが骸はそれには答えてくれず、ただ微笑を浮かべると、前を向き直って敵を見据えた。
丁度その時、倒れていたマーモンがむくりと体を起こし、宙にふわりと浮きあがる。
「六道骸……どこかで聞いた名だと思ったが、思い出したよ。確か、一月程前だ。
ヴィンディチェの牢獄で脱走を試みた者がいた。そいつの名が六道骸」
「なぁ…!!」
「あの鉄壁と言われるヴィンディチェの牢獄を……」
「ま、また脱走したのーーー!?」
マーモンの言葉にレヴィも声を上げ、ヴァリアー側さえも驚きの表情を浮かべている。
並盛に襲撃して来た時も脱獄していた骸だが、どうやらあれから再び脱獄しようとしたらしい。
そして、それがどれ程難しいことなのかという事は、プロの殺し屋集団であるヴァリアーの反応を見れば一目瞭然だった。
「だが、脱走は失敗に終わったはず。さらに脱走の困難な、光も音も届かない最下層の牢獄にぶち込まれたと聞いたよ」
「!!」
マーモンの言葉に、ツナと音羽は目を見開く。
だが、骸は笑って言明しなかった。
「クフフフ、ボンゴレが誇る特殊暗殺部隊ヴァリアーの情報網も、たかが知れてますね。
現に僕はここに在る」
「面倒くさい奴だなあ。いいよ、はっきりさせよう。君は、女についた幻覚だろ」
マーモンはそう言うと、フードの中の闇から驚くほどの冷気を発し、骸を足元から凍らせていく。
「おやおや」
「うわあ!!」
「吹雪です!」
「寒い、凍えて死んでしまうぞ!!」
「っ……ぅ…」
ツナ、バジル、了平の声とは対照的に、骸の声は落ち着いている。
音羽は身を襲う寒さに耐えながら、何とか顔を上げて骸を見た。
「幻覚で出来た術士に負けてあげる程、僕はお人好じゃないんだ」
マーモンがそう言った時、骸は爪先から頭の上まで凍ってしまっていた。
「完全に凍ってしまったぞ!」
「じゃああの骸は……幻覚!?」
「そんな……」
吹雪が止んで口々に叫ぶと、マーモンは再びフードの中からハンマーを構え始める。
本来顔があるはずのそこから異物が覗くというのは、どことなく気味が悪い。
「さて、化けの皮をはがそうか。もっとも砕け散るのはさっきの女の体だろうけどね」
マーモンはそう言うと、骸めがけて一直線に飛んでいく。
「やべえ!」
「骸さん……!」
誰しも、危機を感じた時だった。
マーモンが今にも骸を叩き壊そうとした瞬間。
床からいくつもの蔦が飛び出して来て、マーモンに絡みつき、動きを封じ込めて締め上げる。
そして蔦はマーモンを絡め取ると、蕾から桃色の美しい蓮の花を咲かせた。
「クフフフ、誰が幻覚ですか?」
骸の余裕綽々な声と共に、骸を凍らせていた氷の塊がジュウッと音を立てて溶けだした。
「ムグ…!何て…力だ……!く、苦しい……」
マーモンは締め付ける蔦の圧迫に、呻き声を上げている。
骸の圧倒的な力に、ツナは畏怖の籠った声で呟いた。
「やっぱり本物なんだ…」
「しかし…だとしたら、さっきまでの女はどうなるんですか…」
獄寺の疑問に、横にいたリボーンが答える。
「クロームと骸を分けて考えちゃダメだぞ。クロームがいるから骸は存在し、骸がいるからクロームは生きていられるんだ」
「……?」
「い、意味わかんないよ」
なぞかけのようなリボーンの言葉に、音羽もツナも首を傾げた。
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