24話 霧隠れの二人
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翌日―――…
ディーノは、雲雀にリング争奪戦の話をするため、並盛中学校に来ていた。
疲れを癒す為にも今日の修行は休みなのだが、昨日雲雀が並中に来た事を聞き、そろそろ雲雀も争奪戦について話を聞いてくれるかもしれないと思って、今朝雲雀に連絡を取った。
すると案の定、気になったのか承諾の返事が返って来たのだ。
――ったく、争奪戦の話が今頃になるなんてな…。手の焼ける生徒だぜ…。
そう思いつつ、ディーノは並中の来客用玄関から校舎に入る。
今は丁度休み時間なのか、学校全体が騒がしい。
廊下を通る生徒が、好奇に満ちた目でディーノを見て行く。
余り人目に触れないように…と思うが、どこからどう見ても外国人のディーノが、目立たないはずがなかった。
「やばっ!超かっこいいんだけど…!!」
「ほんとだぁ…!すっごいイケメン…!」
「…………」
女子生徒が黄色い声を上げ、熱い視線を送って来る。
苦笑するディーノと視線が合うと、女子生徒はキャー!と歓声を上げて走って行ってしまった。
彼女たちの背を見送りながら、ディーノはふう、と息をつく。
その頭の中には、音羽の姿が浮かんでいた。
他の中学生を見ても、まだまだ子供にしか見えないのに、音羽だけは違って見える。
それはやはり、彼女が傾国の少女だからなのかもしれない。
考えるほどに頭を占め、会うほどに心を奪われる。
だがディーノは、音羽の外見だけに惹かれているわけではない、という事だけは、はっきりと自覚していた。
音羽の優しさも、一生懸命さも、一途さも、ディーノは好きなのだ。
例え、彼女の心が、ディーノには向けられないとしても。
もし――…あの女生徒たちのように、音羽が自分を見てくれたなら――…
「……オレも満足すんのか…?」
「――ディーノさん?」
「のわっ!!?音羽……!?」
突然後ろから、今しがた考えていた張本人に声を掛けられ、ディーノは飛び上がった。
「どうしたんですか、ディーノさん。今日は修行、お休みじゃなかったですか?」
音羽は不思議そうな顔をして、ディーノを覗き込む。
栗色の澄んだ目が自分を見ていて、ディーノは年甲斐もなく頬を赤らめた。
「あ、ああ、今日は修行は休みなんだが、恭弥に話があってな…。音羽は、これから授業か?」
「はい。次、移動教室で…」
そう言う音羽の腕には、教科書と筆箱が抱かれている。
「そうか…毎晩守護者戦もあるのに、授業も出て偉いな、音羽は」
「いえ…。学校に行かないと、母に怪しまれるので」
そう言って音羽は困ったように笑い、ディーノも微笑んだ。
だが、音羽の心中を考えると、笑ってばかりいられない。
音羽は健気に笑って振舞っているが、この数日で状況が目まぐるしく変わり、混乱しているはずである。
特に、もしツナたちが負ければ音羽はヴァリアー側につくという話には。
「…音羽は大丈夫か?恭弥が修行に行ってる間、色々あっただろ?」
彼女の顔を窺いながらそう問うと、音羽は微笑を浮かべたまま少し悲しそうに眉を下げる。
「…なんとか…。最初はすごくショックでした。まさか私だけヴァリアーに行くかもしれないなんてって…そうなれば、雲雀さんにも会えなくなるし…。でも…」
音羽は言葉を切って顔を上げると、今度はにっこりと微笑んだ。
「雲雀さんにまた会えたら、きっと大丈夫だって思えたから…。今は、もう元気です」
「…!」
そう言って音羽は幸せそうに笑い、ディーノは目を見開く。
強がっているわけでも、無理をしているわけでもない。
音羽はすっきりとした顔で、もう前を向いている。
それは間違いなく、雲雀のお陰なのだろう。
音羽の心の中は、自分の教え子でいっぱいだ。
ディーノが入る余地などないほど、彼女の心は雲雀で埋め尽くされている。
苦しいが、音羽の笑顔はとても綺麗だった。
ディーノはふ、と笑みを浮かべる。
「そうか、良かったな」
「気にかけてくれてありがとうございます、ディーノさん。…それじゃあ、そろそろ授業が始まるので、私行きますね」
「ああ、頑張れよ」
「はい!」
音羽は笑って頷くと、やがて手を振って廊下の向こうへと駆けて行った。
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