21話 ヴァリアーとの遭逢
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「―――、…音羽、起きなさい!学校遅れるわよ!」
「………ん、ん…?」
母の声に起こされ、音羽は寝ぼけた声を出しながら目蓋を開けた。
シャッとカーテンが開けられ、僅かな眩しさが目を刺す。窓の向こうにどんよりとした暗い空が見えた。今日は天気が悪そうだ。
耳を澄ませば、雨音も聞こえて来る。結構降っているらしい。
「どうしたの、ぼんやりして。頭痛いの?」
「え…ううん…」
心配そうに眉を顰めた母に、音羽は寝転んだまま首を振った。ぼうっと天井を見ていると、それはいつもと同じはずなのに、何となく違和感を覚える。
――…あれ、そう言えば私、昨日家に帰ってきたっけ…?
思い出そうとするが、昨日自分で玄関に入った記憶も、こうしてベッドに入った記憶も、ない。
そう思うと段々怖くなってきて、不明瞭だった意識がはっきりする。覚醒した音羽は、ばっと体を起こして母を見た。
「っ、お母さん、私昨日ちゃんと帰って来た…!?」
「何言ってんのー、帰って来なきゃここで寝てないでしょう?」
「………」
呑気な声でそう言われて拍子抜けする。それもそうか…と思うのだが、どう頑張って思い出そうとしても、何の記憶もない。
昨日は、いつも通り学校に行ってツナに会って、ヴァリアーが来ると聞いて……屋上に行って、雲雀が……―――
音羽が順を追って思い出していると、あ、と母が声を上げた。
「でも、確かに自分では帰って来なかったか。あなた、階段踏み外して気を失ったとかで、家まで送り届けてもらったのよ。打ちどころが悪かったんじゃないかしらって心配したけど、どこも怪我してないし、ただ寝てるだけみたいだったから安心したわ」
「!!?」
母の言葉に、音羽は目を丸くする。昨日、少なくとも階段を転げ落ちた記憶はない。それに、一体誰が音羽を送り届けてくれたというのか…。
音羽はうーん…と頭を捻って、昨日の事を思い出した。
――昨日…そうだ、屋上に行ったら雲雀さんとディーノさんが戦ってて…。雲雀さんが傷だらけだったから、私が―――…
「!!」
音羽は昨日の全てを思い出し、ハッと目を見開いた。
昨日、傷だらけの雲雀の姿を見て、自分は治癒の力を使ったのだ。あの温かい感覚も確かに覚えているし、雲雀の傷が治っているのも見届けた。それに安心して、力を使った疲労で、自分は気を失ったのだ。
じゃあまさか――…私を家に送り届けてくれたのって……―――
「学ラン着たかっこいい男の子だったわよ。わざわざ気を失ったあなたを、家まで連れて来てくれて、優しいわよねえ…。たしか、雲雀君、だったかしら」
「!!!」
―――やっぱり!!!
並盛を牛耳る雲雀にとって、音羽の家がどこかなんて、大した問題ではないのだろう。
雲雀が音羽の家を知っていた事よりも、普段無口な彼が、自分の母親と話す図が想像出来なくて音羽は動揺した。
「そんなに高い所から転んだわけじゃないからって、雲雀君が言ってくれたから、私もほっとしたわ…。それに雲雀君、並中の風紀委員長なんですってね。礼儀正しくてきちんとしてるし、お母さん好印象よ!いいじゃない、雲雀君」
「え…えぇ……」
――雲雀さん、一体どんな風にお母さんと話したの…?
本当にあの雲雀が音羽の状況を説明し、しかも自分が並中風紀委員長であることを話したのだろうか…。
しかも母のあまりの絶賛に、音羽は呆然としてしまう。普段彼が恐怖で学校の大人たちを支配しているなんて、母は微塵も思っていないだろう。
だが、雲雀の事を褒めてもらえると、音羽もどことなく嬉しいというか、安心した気持ちになる。
ほ、と顔を緩めた音羽を見て、母は笑みを浮かべた。
「良かったわね、良い人が近くに居て。また連れて来なさいよ、雲雀君ならいつでも歓迎するから!」
「あ…あはは……」
母は音羽と雲雀の関係を、既に察しているのだろう。母の言葉に、音羽は苦笑する。
母が雲雀を気に入っているのはいいのだが、音羽は二人が話す姿をどうしても想像できないのだった。
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