18話 七人目の守護者
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ヒュウと、風が呻る。
もうとっくにHRは始まっているが、“こっち”をほったらかして教室になんて行けない。
「…雲雀さんっ…」
「音羽はそこにいて」
手に汗握りながら、思わず前のめりに雲雀を呼べば、彼はディーノと睨み合ったままきっぱりと言った。音羽はロマーリオの隣に立って、ハラハラと二人を見守る。
気が付けば、あれよあれよという間に二人は武器を取り出して、風の吹き付ける屋上にまで来てしまったのだ。
雲雀は静かな殺気を剥き出しにして、ディーノに対峙している。咬み殺す気満々、と云った様子だ。
本当はすぐにでも止めに入りたいのだが、音羽にその余地はない。それは、雲雀が殺気を持ちつつも、この闘いを喜々として迎えているのを感じるからだ。
それにディーノもまた、リング絡みの何か目的があって、雲雀と戦闘しようとしているのが分かる。
ならば、音羽は今、二人を見守ることしか出来ない。
そんなことを考えていると、鞭を引き絞ったディーノが、口元に笑みを浮かべて言った。
「学校の屋上とは懐かしいな。好きな場所だぜ」
「だったらずっとここにいさせてあげるよ。――這いつくばらせてね」
雲雀は鋭い声でそう言うと、ディーノに向かって駆け出した。ヒュン、とトンファーが風を切りながら、ディーノを襲う。
しかし、ディーノはそれを軽やかにかわしながら、やがて雲雀の武器を鞭で捕らえた。
「その歳にしちゃ上出来だぜ」
「何言ってんの?手加減してんだよ」
雲雀はすぐに反対の腕をディーノに向けて繰り出す。避けて、振るって、繰り返される雲雀の猛攻を、音羽はハラハラと見つめた。
「心配か?あいつのことが」
唐突に隣から声をかけられ、音羽ははっと、ロマーリオの方に顔を向けた。気のよさそうなディーノの部下は、音羽のことを気にかけてくれているようだ。
「雲雀さんは強いから…私の心配なんて、無意味かもしれないんですけど、でも…」
黒曜ランドで見た、あのボロボロに傷ついた雲雀の姿が脳裏に過る。もう二度と、彼のあんな痛々しい姿を見たくない。
目を伏せた音羽を見て、ロマーリオはぽりぽりと頭をかく。
「なるほど…ボスが知ったらショック受けるな…」
「はい?」
独り言のようにぼそりと呟いた彼の声が聞き取れず、音羽はロマーリオを見上げたが、彼は何でもない、というように手を振った。
「うちのボスな、日本に来るときはいっつも、あんたに会えねえかな~って言ってるんだ。だから今回、雲雀のカテキョーだけじゃなく、あんたのカテキョーも任されて張り切ってんだよ」
「え…ディーノさんが、わ、私の…!?でもあの、私、雲雀さんみたいに戦える人間では……」
そもそも、なぜこのような状況が起きているのかもよく分からないし…。ロマーリオはハッハッハッ!と豪快に笑った。
「そうだな、あんたは余りに優しすぎる。そんな人間をこっちの世界に連れ込むのは、確かに酷な話だが……。でも、あんたにしか出来ない事があるんだろうよ」
「…………」
音羽はロマーリオを見つめて、やがてあの指輪を取り出した。
ロマーリオが言っているのは、やはりマフィアという裏の世界、という意味だろうか。あのような恐ろしい経験が、これからまたあるというのだろうか。
指輪は白く輝いて、音羽を一つの道に導いていた。
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