12話 抑えきれない気持ち
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―――並盛中央病院――…
「どきなさい!また並中生がやられた!」
焦燥した声と共に、移動ベッドがガラガラと音を立てて廊下を通る。
「えっ!?」
ツナは、ベッドで運ばれていく人物を見て、目を見開いた。
廊下にいた他の並中生も、ざわついて声を上げる。
「風紀副委員長の草壁さんだ!」
「病院出てすぐにやられたんだって!」
運ばれていく草壁を見ながら、その言葉を聞いて、ツナはぽかんと口を開けた。
――だって雲雀さんが敵をやっつけに行ったはずじゃ…。も、もしかして、雲雀さん……
一つの予想が浮かんで、ツナは苦笑した。
「…まっさかー、あの雲雀さんが、喧嘩で負けるわけないよね…」
ツナの知り合いの中で最も強く、リボーンも認める強さを誇る、あの雲雀が負けるはずがない。
「レオンを頼むぞ」
ツナがそう思っていると、リボーンが変形の止まらないレオンを投げた。
「あっ、おい!リボーン!」
リボーンは駆け出すと、運ばれていく草壁に飛び乗り、その歯の本数を数える。
「4本か」
リボーンは確認を終えると、ぴょいとベッドを飛び降りて、何か考えているようだった。
「おい、何してんだよ!」
「他に考えにくいな」
「!?」
リボーンは表情を変えずにツナを振り返ると、確信を持った声で言った。
「ケンカ売られてんのは、ツナ、お前だぞ」
――――――……
――黒曜ランド――…
暗い室内に、暴力の音が響く。
「おっと」
男は雲雀の髪を掴むと、雲雀自身の血で汚れた顔を上げさせた。
「なぜ、桜の事も、彼女の事も知っているのか?って顔ですね。さて、何故でしょう」
男はそう言うと、雲雀の髪を放す。反動で雲雀はがくりと肘をついた。
「クフフ。彼女の事は、ずっと昔から知っています。君が彼女を知る、ずっと前からね…。だから、君に渡す訳にはいかないのです」
雲雀は言葉を発しない代わりに、男を睨んだ。
男の言っている意味は分からないが、殺したいほど、憎い気持ちが沸き上がる。
「おや?もしかして、桜さえなければと思ってますか?」
男はそう言うと、ゆったりと立ち上がった。
「それは勘違いですよ。君レベルの男は何人も見て来たし、幾度も葬って来た。――地獄のような、場所でね」
“六”が浮かんだ、男の赤い右目が怪しく光る。
「さあ、続けましょう」
雲雀は悔しさと、そして焦燥に、唇を強く噛んだ。
「っ…!」
一方的な攻撃を受ける中でも、浮かぶのは彼女の顔ばかり。
自分がここで倒れれば、この男はいつ音羽に向かうか分からない。
そう思っているのに。
まだ頭上をひらひらと舞っている桜が、雲雀が立ち上がることを許さない。
この男は、何故音羽を知っているのか。
何故、彼女を欲しているのだろうか。
疑問は尽きないが、はっきりと感じる男への殺意と、そして何もできない己に対するもどかしさに、歯を食いしばる。
今の雲雀には、そうする事しか出来なかった。
雲雀と男の様子を、遠くから見つめる小さい影があるのにも気づかずに――…
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