10話 夜に咲く花
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時間は、音羽が思っていた通り、あっという間に過ぎて行った。
テストも終わり、今日の授業が終われば、もう明日は終業式。
そして、それが終われば、みんな待望の夏休みが待っている。
今学期最後の数学の時間、ついにこの間のテストが返却される事になった。
「獄寺ー」
「きゃー!獄寺君また100点!?すごーい!!」
「うるせえ!」
段々見慣れて来たこの光景。
獄寺が英語やら国語やら理科やら、各科目で良い点を取るたびに、女子が黄色い歓声を上げる。
「沢田ー、もっと頑張れよ!」
「はい…」
ツナはというと、先生にぼんっと肩を叩かれてふらついている。
その表情から、きっとよくない点数だったのが窺える。
「次、山本ー」
「おっ!やったぜ!」
「武、何点だったの?」
山本のガッツポーズに、近くにいた女子が声を掛ける。
山本は爽やかに笑うと、ぴらっとテストを翻した。
「82!ほとんど勘だけどな!」
「すごーい!武ー!」
と、これもまた、女子の黄色い歓声が飛ぶ。
「次、女子呼ぶぞー。板川ー」
今度は女子が出席番号で呼ばれ始めて、ついに音羽の番が来た。
「片桐ー」
音羽は席を立つと、少しドキドキしながら、教卓に歩いて行った。
どうか、雲雀に報告出来る点数であるように…と、祈りながら前に進む。
その間じっ、と皆の視線を感じるが、それも前ほどではない。
雲雀のお陰と言うべきか、獄寺と山本に関する噂はぴたりと止まったし、相変わらず雲雀の彼女認定は勘違いされっぱなしだが、その視線にもすっかり慣れて来た。
「よく頑張ったな」
「ありがとうございます」
先生がにこやかにテストを渡してくれて、音羽は自分の点数をこわごわ見てみた。
「!!」
思わず目を見開く。
音羽は、笑みを隠す事が出来ず、解答用紙で口元を隠しながら、席に向かった。
――――――…
休み時間、京子が音羽の所に駆け寄って行く。
ツナは、自分の席から、二人の様子を遠巻きに眺めていた。
「音羽ちゃん、どうだった?」
京子の顔はこちらから見えるが、音羽は斜め後ろの姿しか見えない為、その表情は分からない。
けれど、こくんと頷きを返して音羽が何かを言うと、京子はぱあっと明るい笑顔を浮かべた。
「良かったね、音羽ちゃん!これで報告出来るね!」
京子の口がそう動くのを見て、ツナも微笑んだ。
――良かったね、片桐…
どうやら彼女の努力は実って、ちゃんと好きな人にいい点を報告出来そうだ。
でも……――
――その相手が、雲雀さんなんだよなあ…!
なぜ音羽は、雲雀の事を好きなのだろう。
雲雀程怖い人を、ツナは知らない。いや、並中生は皆、そうなのではないだろうか。
――片桐は、雲雀さんの事怖くないのかな…
それとも彼女は、雲雀の別の一面も知っているのだろうか。
――ほんと、あの二人って謎だよなあ…。
ツナが悶々と考えているうちに、休み時間は終わってしまった。
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