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《其ノ弐拾漆》プールではいい大人も子供に成り下がる
❀
ある日のお風呂上がり。
機械的な着信音と共に、スマホに表示された名前に一瞬たじろぐ。これに出れば彼とは久しぶりの会話になる、少しだけ身構えて通話ボタンをスライドさせた。しかしその声の主は、私が思っていた人物とは違く…
「…もしもし?」
「モシモシ、名前久しぶりだナ!神楽ヨー。」
「神楽ちゃん…!久しぶり!どうしたの?」
「私今日商店街の福引きでプール券当てたアル!4人まで無料らしいネ!今はシーズンオフだから空いてて丁度良いし、名前も来ないアルか?」
___というわけで、やって来ました大江戸プール。万事屋の皆と私で。神楽ちゃんに指定された今日はちょうど非番の日。ひとつ返事でOKさせてもらった。…それに銀ちゃんにも土方さんとの関係をちゃんと話さなきゃいけないと思っていたから、本当に嬉しくありがたいお誘いだったのだ。現地集合でやって来て、さっきロビーで軽く挨拶を交わした時は、いつも通りにこやかに話してくれて、態度も表情も何も変わらない彼が居た。どうにかタイミングを見つけて、銀ちゃんと話が出来る時間を確保出来ればいいんだけど…
「名前ー遅いヨー。着替え終わったアルか?」
「ごめん!すぐ出る!」
そんな考え事をしていると、遠くから聞こえる神楽ちゃんの叫び声。急いで着物を畳んで纏めてロッカーにしまい、更衣室を出る。さては神楽ちゃんのこの着替えの早さ、いつものチャイナ服の下に水着着てきたな、授業楽しみ過ぎて家から水着着てきちゃって、パンツ忘れて残りの一日ノーパンで過ごす小学生みたい。パンツ忘れてればだけど。更衣室を出、走りづらいビーサンで消毒槽の前に立つ神楽ちゃんに駆け寄ると、浮き輪を抱えながら膨れっ面で待ちくたびれたヨと胸元に顔を埋めてきた。その姿があまりにも可愛すぎて、そっとふたつぐくりの髪を撫でる。
「へへ、可愛い…遅くなってごめんね?神楽ちゃん」
「………ちょっと待つアル名前、まさかこの乳で行くアルか、これはほぼ露出狂言っても過言じゃないネ。マジアルかこの乳、モノホンアルか」
「え?あっ………ちょっ、神楽ちゃん!?揉ん」
「っテメェ何やってんだ神楽ァァ!!!そこ変われェェ!!!名前の乳どさくさに紛れて揉んでんじゃねェよ、言っとくけどお前今アレだよ、おっパブで鼻の下伸ばすオヤジの絵面だよそれ、帰り酢昆布300円分買ってやるからマジでそこいますぐ変われよオイ!!!」
「いやアンタが場所変わったらまさに今言った状況そのものになるんですよ、つか生々しくおっパブとか具体名出すの辞めてくださいよ悪影響な!」
「銀ちゃん、新八くん…!!」
「誰が下心塗れのゲスいオッサンに触らせるネ、キモいナ」
神楽ちゃんにされるがままの私の目の前に、万事屋男子達が立ち止まる。銀ちゃんが手をワキワキさせながら近付いてくるけど、海パンの後ろを新八くんに引っ張られ、半ケツ状態で一発首の後ろにチョップをくらわせられていた。それを冷ややかな目で一蹴した神楽ちゃんは、私の手を引いてさっそくプールサイドまで歩き始めた。やっぱり神楽ちゃんの読み通り、お客さんは小学生の集団とカップル、家族連れ数組だけで。少し静かな気もするけど広く遊べるのはいい事だよね。
「あら?神楽ちゃんに名前さん。奇遇ね」
「アネゴー!九ちゃんもー!」
「…………隣の女性は?」
「あっ、初めまして…!真選組で女中をしております。
苗字名前と申します、仲良くしてください。」
「僕は柳生九兵衛、妙ちゃんの幼馴染だ。宜しく」
何とまさかの、子供用プールで戯れるお妙ちゃん+初見の九兵衛に遭遇!!!銀ちゃんが原作で美乳だなんだって言ってたけど、まるで別人のプロポーション(夏の日の1993)じゃん。こうしてツインテールにしてるとちゃんと綺麗な女の子なんだよなあ…。美女二人に挨拶を済ませて流れるプールに神楽ちゃんと向かっていると、後ろからすっと逞しい腕が伸びてきて、甘い匂いと温かい体温に包まれる。所謂バックハグ。私達の横を通り過ぎる小さな子供達がきゃー、わー、えっちーとか騒いでる。
「オイオイ久々に会えたのに先に行くなんて連れねーな名前。神楽なんかぱっつぁんとあのバカ共と遊ばせときゃいんだから」
「銀ちゃん……」
「…つーか何か羽織るモン持ってねェの?あんま他の野郎には見せたくないんだけど、その格好。…目のやり場マジでねェし」
「それがね…パーカー忘れちゃったの。やっぱ変…?」
「…あーーーー………っわざとやってる?それ。銀さんもう無理」
「え、………?」
場違いレベルに張り切った水着になっちゃったかな…と私の肩を抱く腕に手を添えて、耳元で囁く銀ちゃんの方に少しだけ顔を傾けて不安気に尋ねた。すると抱かれていた腕はそのまま私の頬を引き寄せ、口をほんの少し開いたまま銀ちゃんの怒ったような表情が近付いてくる。__すると、突然銀ちゃんの顔にどこからか黒い布がバサッと飛んできて___する筈だった何か、を遮られた。
「………えっ、…………ひ、土方さん!?」
「っにすんだコラァァァ!!!って……」
「……」
私の驚きの声に、漸く被らされたパーカーをひっぺ返し、怒りに身を任せて濡れた地面に叩き付けた銀ちゃんが、その張本人を睨み付けて瞬きを繰り返す。…どうして土方さんが、水着着てこんな所に居……いや。たしかに行先は告げたし。誰と遊ぶのとかもちゃんと報告したけど、めっちゃ興味無さそうに「そうかよ」と返事が来ただけで、あわよくば一緒に行けないかなとかそんな望みも仕事なの分かってたし言えなくて……な、なんで?私はいつもより露出高めの恋人の格好に高揚する心を落ち着かせるべく、どうしてここに居るのかを彼に尋ねてみた。
「何でここに、お仕事じゃなかったんですか?」
「……仕事に決まってんだろ。野暮用入ったんだよ」
土方さんが顎で指した先には、つり上がった目で我らが局長を執拗に踏み潰すお妙さんの図。プール全体がまるで血の海と化し、怖がった一般客がぞろぞろと逃げ出している様子。……あーなるほど、いつもの近藤さんの尻拭いかぁ。思わずこぼれた苦笑いに、土方さんは溜め息を付いて、未だに私の肩に引っ付いたままの銀ちゃんをジロリと見下ろすように顔を上げた。
「………んで、テメェは相変わらずだな。場所状況考えもせずに執拗に女に迫って」
「あのさァ、こちらからすればいつもいつもテメェにイイトコ邪魔されて迷惑してんだわ。おたくは名前の何?無言の牽制がカッコイイとでも思ってんの?」
「何って、……コイツから聞いてねェのか?」
「あァ?何をだよ?いつも含み持たせた言い方して、テメェは何が言いてーのかさっぱり分かんねェわ!!!」
二人の言い合いに、こめかみにたらりと冷や汗が垂れるのが分かる。銀ちゃんの想いもその返事をしていないことも、土方さんと付き合ったことも、お互いに私は話せていなかった。…それがこんな形で公になるなんて、完全に私のせいだ。兎にも角にもガンつけ合う二人を止めないことには話にならない。じりじりと距離を縮めながら一触即発ムードの二人の間に手を伸ばして、私は待ってください!と勢い良く叫ぶ。プール全体に響く私の声に二人の足がぴたりと止まる。
「ごめんなさい…銀ちゃん、土方さん。……私が悪いんです、大事なこと二人に話せてなかったから……」
私は土方さんの方に恐る恐る向き直し、すう…と息を吸って、彼の変わらない表情をしっかりと見据えた。…何を言われても仕方ないけれど、私はもう大好きな人には嘘も隠し事もしないって、決めてるから。
「……すまいるで手に怪我を負わせてしまった銀ちゃんを看病してる時……銀ちゃんに、告白されました。その返事を今日はしようと思ってここに来たんです」
「……………」
私の言葉にぴくりと片眉を動かした土方さんは、すぐにいつもの仏頂面に戻り、そのまたしても表情ひとつ変えないまま咥え煙草の煙を吸い込んだ。そして彼に事実を伝え終えた私の腕を少し強く引っ張り自身の方に向かせた銀ちゃんは、何か言いたげな…どこか寂しそうな、そんな顔。見ていたら何も言えなくなりそうになる。だけど…
「……銀ちゃん。
私、土方さんと付き合うことになったんだ…」
「………名前、」
「言うのが遅くなってごめんね……だから、銀ちゃんの気持ちには応えられな___」
「分かったらいつまでも人のモンにベタベタ触ってんじゃねーよ」
「っ!」
「用件済んだんだろ。…帰んぞ」
「…え、あ……」
銀ちゃんから奪い返すように私の手首を引っ張り、自身の着ていたパーカーを当たり前のように着せられた。私たちが向かっているのは明らかに出口だったので、慌てて銀ちゃんの方を振り返ると優しい笑みで私に手を振っていて、きゅっと心が痛んだ。オイクソマヨ何勝手に名前連れ出してんじゃボケェェェ!!!と神楽ちゃんのものすんごい怒号もまるで耳に入っていないかのように歩き進める土方さん。…けど私は、付き合ってから初めて明確に向けられた嫉妬心にときめきが止まらなかった。眉間に皺を寄せてむすっとした顔。私の手首も痕が残るくらいの力で引っ張っている。…こんな可愛い拗ねが見れるなんて。
未だにうるさく聞こえてしまいそうな程の心臓の音。更衣室の前で別れて「…さっさと着替えてこい、ロビー集合で」とぶっきらぼうに呟いた背中を見詰めながら、私は嬉しさから顔を手のひらで覆い隠した。
完。
(やきもち、だよね…あれは完全に、銀ちゃんへのやきもち……)
(……………チッ)
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ある日のお風呂上がり。
機械的な着信音と共に、スマホに表示された名前に一瞬たじろぐ。これに出れば彼とは久しぶりの会話になる、少しだけ身構えて通話ボタンをスライドさせた。しかしその声の主は、私が思っていた人物とは違く…
「…もしもし?」
「モシモシ、名前久しぶりだナ!神楽ヨー。」
「神楽ちゃん…!久しぶり!どうしたの?」
「私今日商店街の福引きでプール券当てたアル!4人まで無料らしいネ!今はシーズンオフだから空いてて丁度良いし、名前も来ないアルか?」
___というわけで、やって来ました大江戸プール。万事屋の皆と私で。神楽ちゃんに指定された今日はちょうど非番の日。ひとつ返事でOKさせてもらった。…それに銀ちゃんにも土方さんとの関係をちゃんと話さなきゃいけないと思っていたから、本当に嬉しくありがたいお誘いだったのだ。現地集合でやって来て、さっきロビーで軽く挨拶を交わした時は、いつも通りにこやかに話してくれて、態度も表情も何も変わらない彼が居た。どうにかタイミングを見つけて、銀ちゃんと話が出来る時間を確保出来ればいいんだけど…
「名前ー遅いヨー。着替え終わったアルか?」
「ごめん!すぐ出る!」
そんな考え事をしていると、遠くから聞こえる神楽ちゃんの叫び声。急いで着物を畳んで纏めてロッカーにしまい、更衣室を出る。さては神楽ちゃんのこの着替えの早さ、いつものチャイナ服の下に水着着てきたな、授業楽しみ過ぎて家から水着着てきちゃって、パンツ忘れて残りの一日ノーパンで過ごす小学生みたい。パンツ忘れてればだけど。更衣室を出、走りづらいビーサンで消毒槽の前に立つ神楽ちゃんに駆け寄ると、浮き輪を抱えながら膨れっ面で待ちくたびれたヨと胸元に顔を埋めてきた。その姿があまりにも可愛すぎて、そっとふたつぐくりの髪を撫でる。
「へへ、可愛い…遅くなってごめんね?神楽ちゃん」
「………ちょっと待つアル名前、まさかこの乳で行くアルか、これはほぼ露出狂言っても過言じゃないネ。マジアルかこの乳、モノホンアルか」
「え?あっ………ちょっ、神楽ちゃん!?揉ん」
「っテメェ何やってんだ神楽ァァ!!!そこ変われェェ!!!名前の乳どさくさに紛れて揉んでんじゃねェよ、言っとくけどお前今アレだよ、おっパブで鼻の下伸ばすオヤジの絵面だよそれ、帰り酢昆布300円分買ってやるからマジでそこいますぐ変われよオイ!!!」
「いやアンタが場所変わったらまさに今言った状況そのものになるんですよ、つか生々しくおっパブとか具体名出すの辞めてくださいよ悪影響な!」
「銀ちゃん、新八くん…!!」
「誰が下心塗れのゲスいオッサンに触らせるネ、キモいナ」
神楽ちゃんにされるがままの私の目の前に、万事屋男子達が立ち止まる。銀ちゃんが手をワキワキさせながら近付いてくるけど、海パンの後ろを新八くんに引っ張られ、半ケツ状態で一発首の後ろにチョップをくらわせられていた。それを冷ややかな目で一蹴した神楽ちゃんは、私の手を引いてさっそくプールサイドまで歩き始めた。やっぱり神楽ちゃんの読み通り、お客さんは小学生の集団とカップル、家族連れ数組だけで。少し静かな気もするけど広く遊べるのはいい事だよね。
「あら?神楽ちゃんに名前さん。奇遇ね」
「アネゴー!九ちゃんもー!」
「…………隣の女性は?」
「あっ、初めまして…!真選組で女中をしております。
苗字名前と申します、仲良くしてください。」
「僕は柳生九兵衛、妙ちゃんの幼馴染だ。宜しく」
何とまさかの、子供用プールで戯れるお妙ちゃん+初見の九兵衛に遭遇!!!銀ちゃんが原作で美乳だなんだって言ってたけど、まるで別人のプロポーション(夏の日の1993)じゃん。こうしてツインテールにしてるとちゃんと綺麗な女の子なんだよなあ…。美女二人に挨拶を済ませて流れるプールに神楽ちゃんと向かっていると、後ろからすっと逞しい腕が伸びてきて、甘い匂いと温かい体温に包まれる。所謂バックハグ。私達の横を通り過ぎる小さな子供達がきゃー、わー、えっちーとか騒いでる。
「オイオイ久々に会えたのに先に行くなんて連れねーな名前。神楽なんかぱっつぁんとあのバカ共と遊ばせときゃいんだから」
「銀ちゃん……」
「…つーか何か羽織るモン持ってねェの?あんま他の野郎には見せたくないんだけど、その格好。…目のやり場マジでねェし」
「それがね…パーカー忘れちゃったの。やっぱ変…?」
「…あーーーー………っわざとやってる?それ。銀さんもう無理」
「え、………?」
場違いレベルに張り切った水着になっちゃったかな…と私の肩を抱く腕に手を添えて、耳元で囁く銀ちゃんの方に少しだけ顔を傾けて不安気に尋ねた。すると抱かれていた腕はそのまま私の頬を引き寄せ、口をほんの少し開いたまま銀ちゃんの怒ったような表情が近付いてくる。__すると、突然銀ちゃんの顔にどこからか黒い布がバサッと飛んできて___する筈だった何か、を遮られた。
「………えっ、…………ひ、土方さん!?」
「っにすんだコラァァァ!!!って……」
「……」
私の驚きの声に、漸く被らされたパーカーをひっぺ返し、怒りに身を任せて濡れた地面に叩き付けた銀ちゃんが、その張本人を睨み付けて瞬きを繰り返す。…どうして土方さんが、水着着てこんな所に居……いや。たしかに行先は告げたし。誰と遊ぶのとかもちゃんと報告したけど、めっちゃ興味無さそうに「そうかよ」と返事が来ただけで、あわよくば一緒に行けないかなとかそんな望みも仕事なの分かってたし言えなくて……な、なんで?私はいつもより露出高めの恋人の格好に高揚する心を落ち着かせるべく、どうしてここに居るのかを彼に尋ねてみた。
「何でここに、お仕事じゃなかったんですか?」
「……仕事に決まってんだろ。野暮用入ったんだよ」
土方さんが顎で指した先には、つり上がった目で我らが局長を執拗に踏み潰すお妙さんの図。プール全体がまるで血の海と化し、怖がった一般客がぞろぞろと逃げ出している様子。……あーなるほど、いつもの近藤さんの尻拭いかぁ。思わずこぼれた苦笑いに、土方さんは溜め息を付いて、未だに私の肩に引っ付いたままの銀ちゃんをジロリと見下ろすように顔を上げた。
「………んで、テメェは相変わらずだな。場所状況考えもせずに執拗に女に迫って」
「あのさァ、こちらからすればいつもいつもテメェにイイトコ邪魔されて迷惑してんだわ。おたくは名前の何?無言の牽制がカッコイイとでも思ってんの?」
「何って、……コイツから聞いてねェのか?」
「あァ?何をだよ?いつも含み持たせた言い方して、テメェは何が言いてーのかさっぱり分かんねェわ!!!」
二人の言い合いに、こめかみにたらりと冷や汗が垂れるのが分かる。銀ちゃんの想いもその返事をしていないことも、土方さんと付き合ったことも、お互いに私は話せていなかった。…それがこんな形で公になるなんて、完全に私のせいだ。兎にも角にもガンつけ合う二人を止めないことには話にならない。じりじりと距離を縮めながら一触即発ムードの二人の間に手を伸ばして、私は待ってください!と勢い良く叫ぶ。プール全体に響く私の声に二人の足がぴたりと止まる。
「ごめんなさい…銀ちゃん、土方さん。……私が悪いんです、大事なこと二人に話せてなかったから……」
私は土方さんの方に恐る恐る向き直し、すう…と息を吸って、彼の変わらない表情をしっかりと見据えた。…何を言われても仕方ないけれど、私はもう大好きな人には嘘も隠し事もしないって、決めてるから。
「……すまいるで手に怪我を負わせてしまった銀ちゃんを看病してる時……銀ちゃんに、告白されました。その返事を今日はしようと思ってここに来たんです」
「……………」
私の言葉にぴくりと片眉を動かした土方さんは、すぐにいつもの仏頂面に戻り、そのまたしても表情ひとつ変えないまま咥え煙草の煙を吸い込んだ。そして彼に事実を伝え終えた私の腕を少し強く引っ張り自身の方に向かせた銀ちゃんは、何か言いたげな…どこか寂しそうな、そんな顔。見ていたら何も言えなくなりそうになる。だけど…
「……銀ちゃん。
私、土方さんと付き合うことになったんだ…」
「………名前、」
「言うのが遅くなってごめんね……だから、銀ちゃんの気持ちには応えられな___」
「分かったらいつまでも人のモンにベタベタ触ってんじゃねーよ」
「っ!」
「用件済んだんだろ。…帰んぞ」
「…え、あ……」
銀ちゃんから奪い返すように私の手首を引っ張り、自身の着ていたパーカーを当たり前のように着せられた。私たちが向かっているのは明らかに出口だったので、慌てて銀ちゃんの方を振り返ると優しい笑みで私に手を振っていて、きゅっと心が痛んだ。オイクソマヨ何勝手に名前連れ出してんじゃボケェェェ!!!と神楽ちゃんのものすんごい怒号もまるで耳に入っていないかのように歩き進める土方さん。…けど私は、付き合ってから初めて明確に向けられた嫉妬心にときめきが止まらなかった。眉間に皺を寄せてむすっとした顔。私の手首も痕が残るくらいの力で引っ張っている。…こんな可愛い拗ねが見れるなんて。
未だにうるさく聞こえてしまいそうな程の心臓の音。更衣室の前で別れて「…さっさと着替えてこい、ロビー集合で」とぶっきらぼうに呟いた背中を見詰めながら、私は嬉しさから顔を手のひらで覆い隠した。
完。
(やきもち、だよね…あれは完全に、銀ちゃんへのやきもち……)
(……………チッ)