Main Story
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《其ノ弐拾陸》人は見かけによることもある
❀
現在人生最大の命の危機を感じています。
『あっ、あー、朝食中すまない、局長の近藤です。緊急収集、緊急収集のお知らせ。
副長土方十四郎、一番隊隊長沖田総悟、女中の苗字名前。松平長官がお呼びです。至急局長室に来られたし。』
「……………え?」
ボチャァァァとよそっていた味噌汁がお椀から鍋にこぼれる音がする。そしてざわつく食堂内、一気に隊士さん達の視線が私に集まるのが分かった。突然アナウンスで流れた無線、ゴリラのバカデカ声から飛び出した人名に私は動揺を隠せずにいる。えっと松平長官って松平のとっつぁんだよね、松平片栗粉だよね、土方さんと総悟だけならまだしも、なんで私まで呼び出されんの!?マジで何も心当たりが無さすぎて、恐る恐る隣で茶碗蒸しを作っていた先輩に視線を配ると、ただただ「何したのアンタは」みたいな怯えた顔で何度も首を横に振られた。ちょっと待ってください、誤解です。
とにかく呼び出されたものは仕方ない。私は零した味噌汁をもう一度よそい、震える手で隊士さんが持っていたお盆に乗せて配膳し終えてから、先輩達に頭を下げて食堂を飛び出した。廊下にはゆらゆらと煙くゆる銃痕が3発程度残されていて、何が起こったか安易に想像出来て余計に血の気が引く。TPO弁えずに銃ぶっ放して近藤さん…というか屯所中を恐怖のドン底に叩き落とす破天荒な破壊神。そして幕府の治安組織を束ねる警察庁トップのお偉い様が、なんで、私なんかに用があるんですか!?
髪を振り乱しながら近藤さんの部屋の前に立ち止まり、大丈夫多分大丈夫、マジやばいけど多分大丈夫、と呟きながら、バクついて飛び出しそうな心臓を撫で下ろしていると、ぐっと眉間に皺を寄せた土方さんがサイドからゆっくりと歩いてくるのが分かって一先ずほっとした。
「……ひ、土方さん、なんで私が、私が何したって言うんですか、銃痕みましたか、殺されるんですか、首飛ぶんですか、私」
「……知らねーよ。身に覚えがねェなら堂々としてろ、銃痕はまあ…気にすんな。いつもの事だ」
「いや仕事柄っていうか松平長官絡みでは見慣れた光景かもしれないですけど、私そんなものには一切ご縁のない一般人ですよ、その銃痕残した張本人に呼び出されてるんですよ気にすんな言われても無理がありますって!!」
「っおいバカ落ちつけ、つか静かにしろ…!もし俺達が何かしでかした事にご立腹だってんなら、この時間すらとっつぁんの機嫌を損ねる原因になる…一分一秒争うんだよ!」
とにかく話聞かねェことには始まらねーだろ。土方さんは一言とっつぁん入るぜ、と声を掛けて襖を開けた。瞬間に軽めの銃声音が響いて、すっと顔を逸らして避けた土方さんの髪を掠め、後ろの壁にめり込んだ銃弾。怖過ぎて振り返れなかったが、手汗と冷や汗が止まらなくなる。私たちを蔑みの目で見下ろしながら銃を下ろし、ふかした煙草を踏み潰す呼び出しの張本人は低く這うような声で、独特なイントネーション(若●規夫ボイス)を部屋中に響かせた。
「……オイオイ、物騒な真似は勘弁してくれよ。女中の前だ」
「オジサン我慢ならねェで撃っちまったよォ、どーしてくれんのテメェら雑魚ポリスのヤンチャの所為でこの建物の修理費が嵩んでんだ。トシィ、聞けば事の発端はテメェらしいじゃあねェか。揃いも揃ってよくも今まで隠してたなァ」
「いや状況悪化させてんの紛れもなくその雑魚共のトップであるアンタだから。つーか何の話だかよく分かんねェんだけど」
「うしろのお嬢ちゃん、ちょいと俺にツラ見せてくれないもんかねェ。このバカ3匹が俺に隠す程の上玉と見受ける…あ、大丈夫怖がんなくて大丈夫だから、ドタマぶち抜かれんのはコイツらだけで十分だァ」
「…………っは、はい……」
いやいやもう既に怖いんですけど、私だいぶ怖がってんですけど…!?土方さんの後ろに隠れるように身を潜めていた私は、言われるがままゆっくりととっつぁんの前に姿を見せた。前身を舐め回すように隈なく見られ、きょろきょろと行き場を失った私はとっつぁんの後ろで正座する近藤さん、総悟と目が合うも気まずそうに逸らされた。コイツらマジでふざけんなよ絶対後で一回ずつ殴らせて。そして一言も発さずに鑑賞会をしていたとっつぁんの、深緑のサングラスの奥がゆらりと揺れた。
「ウン、確かにこりゃまた選りすぐりの別嬪じゃあねェのォ。ゴリラ率いる猿共の中でアンタみてェなのが住み込みで働くとはなァ」
「ごっ…ご挨拶が遅れ大変申し訳ございません…松平長官。
4ヶ月程前より、…こちらの真選組にて女中を務めさせていただいています、苗字名前と申します…どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします…っ」
勢い良く、深々と頭を下げると一歩、一歩と私との距離をじわじわ詰めてくるとっつぁん。再度煙草に火をつけて、吐いた煙を私の顔に思っくそ吹きかけてくる。おっさんケムいです。ええと…要約するとつまり、女中である私の存在を長いこと隠していた3人に怒っている…というわけか。原作でも女遊びの類は派手にやらかしていたとっつぁんの思考なら大体読める。…私が若い女だから尚更、早く紹介するべきだという持論だろう。
「ああいい堅苦しいのは抜きにしてくれェ。名前と言ったか、礼儀重んじる良い子だねェ。何かこのボロ屯所で不自由してる事あったらオジサンに言ってみなァ」
「いえ…滅相もございません…、近藤局長、沖田隊長、土方副長にはいつも良くしていただいて」
「とっつぁん。言葉返すようだが、何をそんなに臍曲げてんだよ!新入りの女中紹介しろなんて頼んできたこと、今まで一度も無かったじゃねーか!」
「近藤テメェは何も分かっちゃいねェ、俺がプリプリピチピチのネーチャンに目がねーオジチャンなのはとっくにご存知だったろォ」
「うわ寒っ、何か知らねェが急に温度下がってきやせんか?土方さん、エアコンの設定上げてくだせェ」
「そのテンプレリアクション辞めてやれ総悟。とっつぁん固まってるから、そのピチピチネーチャンの前で恥かかされて珍しく応えちまってるから」
「兎にも角にもだァ、同じ女中の腐れガキンチョに酷い目に遭わされたと聞いてる。折角イイ女中迎えてウハウハしてんだろォ?テメェら3人がお目付け役としてちゃんと名前見張ってろって話よ。その逆も然り、隊士に言い寄られちまって屯所の秩序乱されるなんてこたァ」
ピシッ、とっつぁんの鋭すぎる発言に急に辺りの空気が張り詰めた気がした。あっ……今度は土方さんが硬直してる。煙草掴む指震えてる。私も上手く誰の顔も見れず俯くしか出来ない。やっぱり屯所内恋愛禁止とかそういう法度あった?土方さんもしかしてそういうの作った?すると、ニカッと白い歯を輝かせて近藤さんが口を開いたので、とてつもなく嫌な予感がしてしまう。そしてその予感は見事に。
「秩序乱すとかそういうんじゃあねェから安心してくれ!なっ、トシ!コイツも隅に置けなくてなあ、名前とつい先日から付き合っ」
「まっまままま松平長官!酒がお好きだとお伺いしております実は私もなんです如何でしょうか是非今度お酌させていただきたいです!」
「いいいいーじゃねェか行ってこいよとっつぁんコイツ結構イケる口なんだよなぁ総悟!」
「そうですねィ。土方さんも最近、たまに風呂上がり縁側で隊士らと晩酌してる名前の様子陰でコソコソ見張ってやすし、そんなに自分の女と飲みてェなら素直になりゃ」
「………あぁ?自分の女ァ?」
終わった。フォロ方十四フォロー、残念ながら今回は痛恨のミス。総悟に話を振ったのが運の尽き。そしてさり気に毎日の縁側の晩酌がバレている。土方さんにお前が飲むと歯止めが効かなくなるから成る可く酒は控えろって言われたばかりなのに。近藤さんの話を遮ることに成功したものの、結局判断を誤ってしまい、私と土方さんの関係を恐らく察知してしまったとっつぁん。何も言わずにジロジロと私達を交互に見ている。
「とっつぁん、トシと名前なら安心だろ!とっくに二人の関係は周知の事実だが、トシも名前も今まで通り、勤務態度には問題ない。それにより屯所の風紀が乱れる様な事案が発生したという報告も、今のところ上がってきていないしな!」
「……ま、元々愛想の欠片もねェ副長がやっとのこさ女作ったんだ。そう簡単に手のひら返しでベタベタされてもこっちがドン引きでさァ」
「っ………ハァ、」
遂に全てを諦めた様子の土方さんはため息を漏らしながらガシガシと頭を掻き、とっつぁんの目の前にしかと向き直った。そして少し強引にかつどこか優しさを含んだ力で私の腕を引いて隣に立たせ、はっきりとした声で話し始める。確固たる意志を持った瞳に吸い寄せられそうで、やっぱりこの人のことが好きだと再確認する。
「……俺がコイツとの事で、何か真選組に不利益齎そうものなら、喜んで首でも跳ねられてやるよ。
これからも俺がやるべき事は何ひとつ変わんねェ。
……ただ守りてェモンが一つ増えた、そんだけだよ」
「っ………!」
土方さんの言葉は、じわじわと私の全身に駆け巡るような熱を持っていた。…守りたいもの、その言葉以上に私が今欲しい言葉なんて何もない。不器用で言葉足らず、素直になれない、だけどその言葉の裏に秘めたるものを知ってしまったから、私はこの人について行くと決めた。とっつぁんは顔色ひとつ変えずに、私と土方さんの頭にぽん、と一瞬だけ手を置いて部屋を後にした。去り際に一言発された言葉に思わず鼻の奥がツンと痛む。近藤さんに、総悟までみんな纏めて強引に肩を組まれたところで、一気にダムが崩壊するみたいにぶわりと涙がこぼれた。
『______仲良くやれよォ。』
暑苦しい、離せ、うるせェ、足踏むんじゃねェよ土方コノヤロー、そして近藤さんと私の笑い声が響くこの昼下がりの局長室。またひとつ、この世界での素敵なご縁が増えました。
完。
(守りてェモンが一つ増えた、そんだけだよ)
(………ん?)
(守りてェモンが一つ増えた、そんだけだよ)
(え、総悟それ)
(守りてェモンがひとつ増えた、そん)
(テメェ総悟ォォォォ!なに録ってんだテメェふざけんな消せ、消さねェとマジで殺すかんなァァァ!?)
(新鮮な良い弱みが握れやした)
(いやなに寿司握ってみました、みたいなノリで言っちゃってんの!?へいお待ちじゃねんだよ、俺の台詞をネタにすんじゃねェ!!!)
(総悟……それ、後で私に送っといて)
(送っといてじゃあねェよ!!!テメェも調子乗ってると魚の餌にでもしてやっからなァァ!!)
(ガッハッハッ!!お前らー、早く仕事に戻れよー!!)
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現在人生最大の命の危機を感じています。
『あっ、あー、朝食中すまない、局長の近藤です。緊急収集、緊急収集のお知らせ。
副長土方十四郎、一番隊隊長沖田総悟、女中の苗字名前。松平長官がお呼びです。至急局長室に来られたし。』
「……………え?」
ボチャァァァとよそっていた味噌汁がお椀から鍋にこぼれる音がする。そしてざわつく食堂内、一気に隊士さん達の視線が私に集まるのが分かった。突然アナウンスで流れた無線、ゴリラのバカデカ声から飛び出した人名に私は動揺を隠せずにいる。えっと松平長官って松平のとっつぁんだよね、松平片栗粉だよね、土方さんと総悟だけならまだしも、なんで私まで呼び出されんの!?マジで何も心当たりが無さすぎて、恐る恐る隣で茶碗蒸しを作っていた先輩に視線を配ると、ただただ「何したのアンタは」みたいな怯えた顔で何度も首を横に振られた。ちょっと待ってください、誤解です。
とにかく呼び出されたものは仕方ない。私は零した味噌汁をもう一度よそい、震える手で隊士さんが持っていたお盆に乗せて配膳し終えてから、先輩達に頭を下げて食堂を飛び出した。廊下にはゆらゆらと煙くゆる銃痕が3発程度残されていて、何が起こったか安易に想像出来て余計に血の気が引く。TPO弁えずに銃ぶっ放して近藤さん…というか屯所中を恐怖のドン底に叩き落とす破天荒な破壊神。そして幕府の治安組織を束ねる警察庁トップのお偉い様が、なんで、私なんかに用があるんですか!?
髪を振り乱しながら近藤さんの部屋の前に立ち止まり、大丈夫多分大丈夫、マジやばいけど多分大丈夫、と呟きながら、バクついて飛び出しそうな心臓を撫で下ろしていると、ぐっと眉間に皺を寄せた土方さんがサイドからゆっくりと歩いてくるのが分かって一先ずほっとした。
「……ひ、土方さん、なんで私が、私が何したって言うんですか、銃痕みましたか、殺されるんですか、首飛ぶんですか、私」
「……知らねーよ。身に覚えがねェなら堂々としてろ、銃痕はまあ…気にすんな。いつもの事だ」
「いや仕事柄っていうか松平長官絡みでは見慣れた光景かもしれないですけど、私そんなものには一切ご縁のない一般人ですよ、その銃痕残した張本人に呼び出されてるんですよ気にすんな言われても無理がありますって!!」
「っおいバカ落ちつけ、つか静かにしろ…!もし俺達が何かしでかした事にご立腹だってんなら、この時間すらとっつぁんの機嫌を損ねる原因になる…一分一秒争うんだよ!」
とにかく話聞かねェことには始まらねーだろ。土方さんは一言とっつぁん入るぜ、と声を掛けて襖を開けた。瞬間に軽めの銃声音が響いて、すっと顔を逸らして避けた土方さんの髪を掠め、後ろの壁にめり込んだ銃弾。怖過ぎて振り返れなかったが、手汗と冷や汗が止まらなくなる。私たちを蔑みの目で見下ろしながら銃を下ろし、ふかした煙草を踏み潰す呼び出しの張本人は低く這うような声で、独特なイントネーション(若●規夫ボイス)を部屋中に響かせた。
「……オイオイ、物騒な真似は勘弁してくれよ。女中の前だ」
「オジサン我慢ならねェで撃っちまったよォ、どーしてくれんのテメェら雑魚ポリスのヤンチャの所為でこの建物の修理費が嵩んでんだ。トシィ、聞けば事の発端はテメェらしいじゃあねェか。揃いも揃ってよくも今まで隠してたなァ」
「いや状況悪化させてんの紛れもなくその雑魚共のトップであるアンタだから。つーか何の話だかよく分かんねェんだけど」
「うしろのお嬢ちゃん、ちょいと俺にツラ見せてくれないもんかねェ。このバカ3匹が俺に隠す程の上玉と見受ける…あ、大丈夫怖がんなくて大丈夫だから、ドタマぶち抜かれんのはコイツらだけで十分だァ」
「…………っは、はい……」
いやいやもう既に怖いんですけど、私だいぶ怖がってんですけど…!?土方さんの後ろに隠れるように身を潜めていた私は、言われるがままゆっくりととっつぁんの前に姿を見せた。前身を舐め回すように隈なく見られ、きょろきょろと行き場を失った私はとっつぁんの後ろで正座する近藤さん、総悟と目が合うも気まずそうに逸らされた。コイツらマジでふざけんなよ絶対後で一回ずつ殴らせて。そして一言も発さずに鑑賞会をしていたとっつぁんの、深緑のサングラスの奥がゆらりと揺れた。
「ウン、確かにこりゃまた選りすぐりの別嬪じゃあねェのォ。ゴリラ率いる猿共の中でアンタみてェなのが住み込みで働くとはなァ」
「ごっ…ご挨拶が遅れ大変申し訳ございません…松平長官。
4ヶ月程前より、…こちらの真選組にて女中を務めさせていただいています、苗字名前と申します…どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします…っ」
勢い良く、深々と頭を下げると一歩、一歩と私との距離をじわじわ詰めてくるとっつぁん。再度煙草に火をつけて、吐いた煙を私の顔に思っくそ吹きかけてくる。おっさんケムいです。ええと…要約するとつまり、女中である私の存在を長いこと隠していた3人に怒っている…というわけか。原作でも女遊びの類は派手にやらかしていたとっつぁんの思考なら大体読める。…私が若い女だから尚更、早く紹介するべきだという持論だろう。
「ああいい堅苦しいのは抜きにしてくれェ。名前と言ったか、礼儀重んじる良い子だねェ。何かこのボロ屯所で不自由してる事あったらオジサンに言ってみなァ」
「いえ…滅相もございません…、近藤局長、沖田隊長、土方副長にはいつも良くしていただいて」
「とっつぁん。言葉返すようだが、何をそんなに臍曲げてんだよ!新入りの女中紹介しろなんて頼んできたこと、今まで一度も無かったじゃねーか!」
「近藤テメェは何も分かっちゃいねェ、俺がプリプリピチピチのネーチャンに目がねーオジチャンなのはとっくにご存知だったろォ」
「うわ寒っ、何か知らねェが急に温度下がってきやせんか?土方さん、エアコンの設定上げてくだせェ」
「そのテンプレリアクション辞めてやれ総悟。とっつぁん固まってるから、そのピチピチネーチャンの前で恥かかされて珍しく応えちまってるから」
「兎にも角にもだァ、同じ女中の腐れガキンチョに酷い目に遭わされたと聞いてる。折角イイ女中迎えてウハウハしてんだろォ?テメェら3人がお目付け役としてちゃんと名前見張ってろって話よ。その逆も然り、隊士に言い寄られちまって屯所の秩序乱されるなんてこたァ」
ピシッ、とっつぁんの鋭すぎる発言に急に辺りの空気が張り詰めた気がした。あっ……今度は土方さんが硬直してる。煙草掴む指震えてる。私も上手く誰の顔も見れず俯くしか出来ない。やっぱり屯所内恋愛禁止とかそういう法度あった?土方さんもしかしてそういうの作った?すると、ニカッと白い歯を輝かせて近藤さんが口を開いたので、とてつもなく嫌な予感がしてしまう。そしてその予感は見事に。
「秩序乱すとかそういうんじゃあねェから安心してくれ!なっ、トシ!コイツも隅に置けなくてなあ、名前とつい先日から付き合っ」
「まっまままま松平長官!酒がお好きだとお伺いしております実は私もなんです如何でしょうか是非今度お酌させていただきたいです!」
「いいいいーじゃねェか行ってこいよとっつぁんコイツ結構イケる口なんだよなぁ総悟!」
「そうですねィ。土方さんも最近、たまに風呂上がり縁側で隊士らと晩酌してる名前の様子陰でコソコソ見張ってやすし、そんなに自分の女と飲みてェなら素直になりゃ」
「………あぁ?自分の女ァ?」
終わった。フォロ方十四フォロー、残念ながら今回は痛恨のミス。総悟に話を振ったのが運の尽き。そしてさり気に毎日の縁側の晩酌がバレている。土方さんにお前が飲むと歯止めが効かなくなるから成る可く酒は控えろって言われたばかりなのに。近藤さんの話を遮ることに成功したものの、結局判断を誤ってしまい、私と土方さんの関係を恐らく察知してしまったとっつぁん。何も言わずにジロジロと私達を交互に見ている。
「とっつぁん、トシと名前なら安心だろ!とっくに二人の関係は周知の事実だが、トシも名前も今まで通り、勤務態度には問題ない。それにより屯所の風紀が乱れる様な事案が発生したという報告も、今のところ上がってきていないしな!」
「……ま、元々愛想の欠片もねェ副長がやっとのこさ女作ったんだ。そう簡単に手のひら返しでベタベタされてもこっちがドン引きでさァ」
「っ………ハァ、」
遂に全てを諦めた様子の土方さんはため息を漏らしながらガシガシと頭を掻き、とっつぁんの目の前にしかと向き直った。そして少し強引にかつどこか優しさを含んだ力で私の腕を引いて隣に立たせ、はっきりとした声で話し始める。確固たる意志を持った瞳に吸い寄せられそうで、やっぱりこの人のことが好きだと再確認する。
「……俺がコイツとの事で、何か真選組に不利益齎そうものなら、喜んで首でも跳ねられてやるよ。
これからも俺がやるべき事は何ひとつ変わんねェ。
……ただ守りてェモンが一つ増えた、そんだけだよ」
「っ………!」
土方さんの言葉は、じわじわと私の全身に駆け巡るような熱を持っていた。…守りたいもの、その言葉以上に私が今欲しい言葉なんて何もない。不器用で言葉足らず、素直になれない、だけどその言葉の裏に秘めたるものを知ってしまったから、私はこの人について行くと決めた。とっつぁんは顔色ひとつ変えずに、私と土方さんの頭にぽん、と一瞬だけ手を置いて部屋を後にした。去り際に一言発された言葉に思わず鼻の奥がツンと痛む。近藤さんに、総悟までみんな纏めて強引に肩を組まれたところで、一気にダムが崩壊するみたいにぶわりと涙がこぼれた。
『______仲良くやれよォ。』
暑苦しい、離せ、うるせェ、足踏むんじゃねェよ土方コノヤロー、そして近藤さんと私の笑い声が響くこの昼下がりの局長室。またひとつ、この世界での素敵なご縁が増えました。
完。
(守りてェモンが一つ増えた、そんだけだよ)
(………ん?)
(守りてェモンが一つ増えた、そんだけだよ)
(え、総悟それ)
(守りてェモンがひとつ増えた、そん)
(テメェ総悟ォォォォ!なに録ってんだテメェふざけんな消せ、消さねェとマジで殺すかんなァァァ!?)
(新鮮な良い弱みが握れやした)
(いやなに寿司握ってみました、みたいなノリで言っちゃってんの!?へいお待ちじゃねんだよ、俺の台詞をネタにすんじゃねェ!!!)
(総悟……それ、後で私に送っといて)
(送っといてじゃあねェよ!!!テメェも調子乗ってると魚の餌にでもしてやっからなァァ!!)
(ガッハッハッ!!お前らー、早く仕事に戻れよー!!)