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《其ノ弐拾伍》見つめ合うと素直にお喋りできない
❀
私にはやらなきゃいけない事がある。
それは総悟と銀ちゃんへ、曖昧だった返事をハッキリさせること。土方さんとお付き合い出来て浮かれている場合ではなく、私へ思いを寄せてくれた二人に、ちゃんともう一度けじめを付けなければいけない……だけど、そのタイミングが上手く掴めずにいた。
いつも通り、朝の素振り終わりの隊士さん達がぞろぞろと食堂へ入って来る、そこには総悟も居た。珍しく今日はサボらずにちゃんと木刀を振るって来たのか、汗ばんだ隊服の中に風を送り込むようにパタパタとシャツを動かしている。長い列を作る注文口で総悟と確り目が合い、今しかないと口を開くも、総悟は一瞬だけその赤い瞳の中に私を映した後は他の女中さんに日替わりを頼んでスタスタと席に着いてしまった。___もう、こんな事が何日も続いている。
朝宮ねねの件は、私が事件扱いにすることを拒否した。反省しているしていないはどうでもいい。総悟のお陰でだいぶスッキリしたことは明白だし、屯所の皆の疑いも晴れ全てが無事に解決したから、これ以上のお咎めは要らないと思ったのだ。そこで一役買ってくれた総悟にまだお礼も何も言えていないし、あの日からまともに会話をする事がなくなった。土方さんと想いが通じる前は、毎日のように私の部屋に訪れてはくだらない会話をする時間があったのに。…総悟なりの気遣いだと思うのだけど、ちょっとだけ寂しいなんて思ってしまうのは、私もそれなりに彼への気持ちを大事にしていたからだと思う。
隊士の皆さんに聞けば、土方さんが私を追いかけてきてくれて想いが通じたあの日、総悟が拡張器を持って屯所中に『多分土方さんと名前付き合いやしたぜ、多分っつーか、多分マジでさァ〜』と叫びまくっていたらしい。そのせいで話が広まるのは一瞬で、近藤さんなんて私に用がある時ニヤニヤが止まらないし、隊士の皆さんも私と土方さんの会話を遠目から覗いて何やらヒソヒソワイワイしている…なんて事が続いている。それに気付いた土方さんはブチ切れて追いかけ回したりしているけど、擽ったくて嬉しいのは紛れもない事実だった。
…そんな全てのきっかけを作ってくれた総悟だから、私の口からちゃんと報告するべきだと思っていたけど…彼は彼なりに思う所があるのも、私も理解している。無理矢理に話を聞いてもらうのも違う気がするから、今日もダメだったと自己嫌悪に陥る日々。…前みたいに軽口叩き合ってた頃に戻りたいって思っていたって、それは虫が良すぎる話だよなあ。いつかまた総悟となんの蟠りもなく話せる日まで、大人しく待ってみよう。ふぅ、と小さな溜め息を吐きながら、私は大量の野菜たちの皮剥きに向き合った。
・ ・ ・
朝食の提供と昼食の仕込みがある程度終わり、脱衣所の洗面台を磨いていると、張り込み前のザキに呼び止められた。今回も二週間レベルの長期戦だと聞いていたので、大量の食料調達を頼まれていたのだ。
「名前ちゃん、急に呼び止めてごめんね。俺これから張り込みに行ってまいりますので、お願いしていた食料を頂けないでしょうか!」
「ザキさんお疲れ様です!はい、用意してありますので食堂まで一緒に行きましょう!」
にこやかに食堂の方向を指差して歩き出すと、顔を思いっきり逸らされてごにょごにょ何か言っていた気がしたけど。特に気には留めることなくザキの隣に並ぶ。あんぱんだらけだった冷蔵庫を思い出して、またスパーキングして気が狂わなきゃ良いけど…とアップルパイやチョココロネ、ピザパンなどほかの菓子パンや惣菜パンを数個入れておいた私の優しさにいつも感謝を述べてくれるザキは可愛いと思う。マジで限界来た時に食べると保てるんだよね、精神が。とクマだらけの目で帰ってきた時は吹き出すかと思ったよ。
「あ…そういえば名前ちゃん、副長とはどう?俺まさかあの鉄仮面堅物の副長が、まさか女の子とそんな関係になるなんて未だにびっくりだからさ…」
「ふふ、お付き合いする前と何も変わらないけど、穏やかで楽しい毎日ですよ。皆が温かく見守ってくれるから嬉しくって。近藤さんはちょっといい加減ウザイけど」
「局長は親並みにふたりのこと喜んでるからね…まあ、トップがあれだけ祝福してくれてたら心配要らないね!」
「そうですかね…?あ、いけない忘れてた。ザキさんちょっと持ちやすいようにクーラーボックスに詰めるからそこで待っ……うわあ!!!」
他愛もない会話をしながら誰もいない食堂の電気をパチッと付けると、なんとびっくりアイマスクをつけた総悟が椅子を繋げてグースカ寝腐っているじゃありませんか。私の声にビクッ!と身体を震わせたザキも沖田隊長、今日見廻りじゃなかったんですか!?と半ギレで詰め寄っている。ザキの声に耳を塞ぎながらアイマスクを上げて、眠そうな目でこちらを睨みつける総悟。こんな腑抜けた顔してるのにどうして可愛く見えるのだろーか。
「……あーうるせーや、俺が夢遊病患ってたらどうしてくれんですかィ。手が滑ってテメェらのやかましい喉元たたっ斬ってやる事も出来るんですが」
「いやいや、アンタの普段の蛮行を夢遊病の所為にしないで!?いいから起きてください〜、また副長がどっかから飛んで来ますよ」
「総悟…もしかしてご飯食べてそのまま寝てたの?胃もたれして良くないよ、ほら」
うとうとしっぱなしの総悟を立ち上がらせようと、その逞しい腕に触れようとすると_____パシッ、と少し乱暴な力で振り払われて、行き場を失った手が力なく下がった。思わず目を見開いて固まってしまう。……目の奥がじんわりと熱くなって、総悟とザキの顔がぼやけてくるのが分かる。ダメだ泣いちゃ、でも
「……っ、そーご、……っ」
「………」
「もう、わたしと、話したくないの、……?私バカだから、言われないと分かんなく、て」
「………っ」
「……あの、俺、外します!!」
俯き何も言わないままの総悟と、震えて泣いている私の様子を見てただ事じゃない雰囲気を察したザキが、そそくさと食堂を出ていく。気まずい思いをさせてしまった事を後でちゃんと謝ろう。立ち去っていくザキの背中を見てゆっくりと立ち上がった総悟もその場を後にしようとするけど、もうここを逃したらきっと私と総悟は一生このままだ。何度拒否されてもいいから、話がしたい___その一心で総悟の硬く分厚い手を掴んで引き留めた。
「……っ離せ、今お前の顔なんざ見たくねェんでィ」
「総悟待って……っお願い、私のこと嫌いなのはわかったから、……聞いて欲しいだけ、…」
「………ああ嫌いでさァ、この際だからはっきり言ってやるよ、そうやってベソベソ泣かれんのもうぜェし、人の気も知らないで土方土方って浮かれてんのも腹が立って仕方ねェ。これ以上俺をイラつかせたくねーなら、……もう俺に関わんな」
はっきりとした総悟の拒絶の言葉がナイフを突き立てられたように痛む。…いつの間にかそこまで言わせてしまうほど、総悟を深く傷付けてしまっていたことに、どうしようもなく胸が締め付けられた。…だけど、総悟の今の本当の気持ちが悲しい程鮮明に伝わってくる。ねえ、本当に私のことが嫌いなら、どうしてそんなに苦しそうな顔をするの。どうしてさっきみたいに、力ずくで振り払ってくれないの。
「………我儘も勝手も承知だよ。
…私は総悟のこと、本当に大事に思ってるから、…前みたいにバカやれる、そんな仲に戻りたいよ、 」
「…………」
「嬉しかった、……朝宮さんの時、誰も信じてくれなかったのに、総悟だけは私の味方で居てくれて……本当に嬉しかった。だから私も決めたの、…ずっとずっと総悟の味方でいる、これだけは曲げないよ……」
「ねえ総悟…もう一回聞くね、
…本当に私のこと、もう顔も見たくない、口も効きたくないほど、嫌い……?」
掻き抱かれるように、乱暴に引き寄せられた腕。
呼吸もままならないほど強く強く、想いをぶつけるような総悟の抱擁に、堰き止めていた涙がもう一度溢れた。
「…………、好きだっつってんだろ」
「……っそ、ご………」
「…………俺ァこの先もお前以外の女に、ここまで揺さぶられることはねェ」
「………っ!」
「……お前が俺のモンにならないことは分かってた、もうとっくの前に。だけど
………お前がアイツと笑ってるとこ見れんなら、それでも良いって思ったのも事実でィ。
だから背中押してやったんだ………、一生、命懸けて感謝して欲しいぐらいでさァ」
抱き締められていた腕がそっと離れ、総悟の少し潤んだ瞳がすっと細められる。その口元はぎこちないながらも弧を描いて、優しく染み渡るように私の胸を熱くさせた。その温かい手が私の頬を包むだけで、こんなにも切なくやるせない。……ごめんね、総悟。そしてありがとう。いつでも真っ直ぐ、少し刺激的で、だけど揺るがなかったその気持ちに応えられなかった。それでも総悟は、私にとって大切な男の子であることは間違いなかった。言葉で表すには全部チープな気がして、それよりももっと深い絆で結ばれていると、私は信じている。
「ありがとね……総悟。
私、本当に総悟のこと大好きだよ…」
「…………」
「総悟……?」
「………忘れてやした。もうひとつ」
「もうひと___」
感謝と友愛を伝えると、突然ふっと真面目な顔をした総悟の顔が、耳元に寄せられる。さらりと髪の毛を耳に掛けられて、彼の静かな吐息の音がダイレクトに聞こえてきて……そして、
「……土方に泣かされたら俺んとこに来なせェ。
…そん時は俺がお前の浮気相手になってやりまさァ」
「っ……!……」
お前の男にもキツく言っとけよィ、と冗談めかして笑った総悟は、今まで見た中で一番綺麗な顔をしていた。去って行く背中にもう一度心の中でありがとう、と呟く。見えないけど、まるで私の声にならない感謝が聞こえていたみたいに、ふっと総悟が微笑んだ気がして。
完。
一方その頃のザキ
(……いやーあれはいつにない修羅場だったな……沖田隊長もだいぶ拗らせてるしなあ……つーかまだ終わんねーのかな、俺マジで早く行かないとボコられんだけど副長に!)
prrrr…
(うわもうホラ言わんこっちゃない!!はいもしもし山崎ですゥゥ!!いや俺じゃな、……いやだから!!エ!?ちょ震えて待ってろ動くなって、だから俺が遅れたのはバカサドとアンタの女のせいイイイ!!!)
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私にはやらなきゃいけない事がある。
それは総悟と銀ちゃんへ、曖昧だった返事をハッキリさせること。土方さんとお付き合い出来て浮かれている場合ではなく、私へ思いを寄せてくれた二人に、ちゃんともう一度けじめを付けなければいけない……だけど、そのタイミングが上手く掴めずにいた。
いつも通り、朝の素振り終わりの隊士さん達がぞろぞろと食堂へ入って来る、そこには総悟も居た。珍しく今日はサボらずにちゃんと木刀を振るって来たのか、汗ばんだ隊服の中に風を送り込むようにパタパタとシャツを動かしている。長い列を作る注文口で総悟と確り目が合い、今しかないと口を開くも、総悟は一瞬だけその赤い瞳の中に私を映した後は他の女中さんに日替わりを頼んでスタスタと席に着いてしまった。___もう、こんな事が何日も続いている。
朝宮ねねの件は、私が事件扱いにすることを拒否した。反省しているしていないはどうでもいい。総悟のお陰でだいぶスッキリしたことは明白だし、屯所の皆の疑いも晴れ全てが無事に解決したから、これ以上のお咎めは要らないと思ったのだ。そこで一役買ってくれた総悟にまだお礼も何も言えていないし、あの日からまともに会話をする事がなくなった。土方さんと想いが通じる前は、毎日のように私の部屋に訪れてはくだらない会話をする時間があったのに。…総悟なりの気遣いだと思うのだけど、ちょっとだけ寂しいなんて思ってしまうのは、私もそれなりに彼への気持ちを大事にしていたからだと思う。
隊士の皆さんに聞けば、土方さんが私を追いかけてきてくれて想いが通じたあの日、総悟が拡張器を持って屯所中に『多分土方さんと名前付き合いやしたぜ、多分っつーか、多分マジでさァ〜』と叫びまくっていたらしい。そのせいで話が広まるのは一瞬で、近藤さんなんて私に用がある時ニヤニヤが止まらないし、隊士の皆さんも私と土方さんの会話を遠目から覗いて何やらヒソヒソワイワイしている…なんて事が続いている。それに気付いた土方さんはブチ切れて追いかけ回したりしているけど、擽ったくて嬉しいのは紛れもない事実だった。
…そんな全てのきっかけを作ってくれた総悟だから、私の口からちゃんと報告するべきだと思っていたけど…彼は彼なりに思う所があるのも、私も理解している。無理矢理に話を聞いてもらうのも違う気がするから、今日もダメだったと自己嫌悪に陥る日々。…前みたいに軽口叩き合ってた頃に戻りたいって思っていたって、それは虫が良すぎる話だよなあ。いつかまた総悟となんの蟠りもなく話せる日まで、大人しく待ってみよう。ふぅ、と小さな溜め息を吐きながら、私は大量の野菜たちの皮剥きに向き合った。
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朝食の提供と昼食の仕込みがある程度終わり、脱衣所の洗面台を磨いていると、張り込み前のザキに呼び止められた。今回も二週間レベルの長期戦だと聞いていたので、大量の食料調達を頼まれていたのだ。
「名前ちゃん、急に呼び止めてごめんね。俺これから張り込みに行ってまいりますので、お願いしていた食料を頂けないでしょうか!」
「ザキさんお疲れ様です!はい、用意してありますので食堂まで一緒に行きましょう!」
にこやかに食堂の方向を指差して歩き出すと、顔を思いっきり逸らされてごにょごにょ何か言っていた気がしたけど。特に気には留めることなくザキの隣に並ぶ。あんぱんだらけだった冷蔵庫を思い出して、またスパーキングして気が狂わなきゃ良いけど…とアップルパイやチョココロネ、ピザパンなどほかの菓子パンや惣菜パンを数個入れておいた私の優しさにいつも感謝を述べてくれるザキは可愛いと思う。マジで限界来た時に食べると保てるんだよね、精神が。とクマだらけの目で帰ってきた時は吹き出すかと思ったよ。
「あ…そういえば名前ちゃん、副長とはどう?俺まさかあの鉄仮面堅物の副長が、まさか女の子とそんな関係になるなんて未だにびっくりだからさ…」
「ふふ、お付き合いする前と何も変わらないけど、穏やかで楽しい毎日ですよ。皆が温かく見守ってくれるから嬉しくって。近藤さんはちょっといい加減ウザイけど」
「局長は親並みにふたりのこと喜んでるからね…まあ、トップがあれだけ祝福してくれてたら心配要らないね!」
「そうですかね…?あ、いけない忘れてた。ザキさんちょっと持ちやすいようにクーラーボックスに詰めるからそこで待っ……うわあ!!!」
他愛もない会話をしながら誰もいない食堂の電気をパチッと付けると、なんとびっくりアイマスクをつけた総悟が椅子を繋げてグースカ寝腐っているじゃありませんか。私の声にビクッ!と身体を震わせたザキも沖田隊長、今日見廻りじゃなかったんですか!?と半ギレで詰め寄っている。ザキの声に耳を塞ぎながらアイマスクを上げて、眠そうな目でこちらを睨みつける総悟。こんな腑抜けた顔してるのにどうして可愛く見えるのだろーか。
「……あーうるせーや、俺が夢遊病患ってたらどうしてくれんですかィ。手が滑ってテメェらのやかましい喉元たたっ斬ってやる事も出来るんですが」
「いやいや、アンタの普段の蛮行を夢遊病の所為にしないで!?いいから起きてください〜、また副長がどっかから飛んで来ますよ」
「総悟…もしかしてご飯食べてそのまま寝てたの?胃もたれして良くないよ、ほら」
うとうとしっぱなしの総悟を立ち上がらせようと、その逞しい腕に触れようとすると_____パシッ、と少し乱暴な力で振り払われて、行き場を失った手が力なく下がった。思わず目を見開いて固まってしまう。……目の奥がじんわりと熱くなって、総悟とザキの顔がぼやけてくるのが分かる。ダメだ泣いちゃ、でも
「……っ、そーご、……っ」
「………」
「もう、わたしと、話したくないの、……?私バカだから、言われないと分かんなく、て」
「………っ」
「……あの、俺、外します!!」
俯き何も言わないままの総悟と、震えて泣いている私の様子を見てただ事じゃない雰囲気を察したザキが、そそくさと食堂を出ていく。気まずい思いをさせてしまった事を後でちゃんと謝ろう。立ち去っていくザキの背中を見てゆっくりと立ち上がった総悟もその場を後にしようとするけど、もうここを逃したらきっと私と総悟は一生このままだ。何度拒否されてもいいから、話がしたい___その一心で総悟の硬く分厚い手を掴んで引き留めた。
「……っ離せ、今お前の顔なんざ見たくねェんでィ」
「総悟待って……っお願い、私のこと嫌いなのはわかったから、……聞いて欲しいだけ、…」
「………ああ嫌いでさァ、この際だからはっきり言ってやるよ、そうやってベソベソ泣かれんのもうぜェし、人の気も知らないで土方土方って浮かれてんのも腹が立って仕方ねェ。これ以上俺をイラつかせたくねーなら、……もう俺に関わんな」
はっきりとした総悟の拒絶の言葉がナイフを突き立てられたように痛む。…いつの間にかそこまで言わせてしまうほど、総悟を深く傷付けてしまっていたことに、どうしようもなく胸が締め付けられた。…だけど、総悟の今の本当の気持ちが悲しい程鮮明に伝わってくる。ねえ、本当に私のことが嫌いなら、どうしてそんなに苦しそうな顔をするの。どうしてさっきみたいに、力ずくで振り払ってくれないの。
「………我儘も勝手も承知だよ。
…私は総悟のこと、本当に大事に思ってるから、…前みたいにバカやれる、そんな仲に戻りたいよ、 」
「…………」
「嬉しかった、……朝宮さんの時、誰も信じてくれなかったのに、総悟だけは私の味方で居てくれて……本当に嬉しかった。だから私も決めたの、…ずっとずっと総悟の味方でいる、これだけは曲げないよ……」
「ねえ総悟…もう一回聞くね、
…本当に私のこと、もう顔も見たくない、口も効きたくないほど、嫌い……?」
掻き抱かれるように、乱暴に引き寄せられた腕。
呼吸もままならないほど強く強く、想いをぶつけるような総悟の抱擁に、堰き止めていた涙がもう一度溢れた。
「…………、好きだっつってんだろ」
「……っそ、ご………」
「…………俺ァこの先もお前以外の女に、ここまで揺さぶられることはねェ」
「………っ!」
「……お前が俺のモンにならないことは分かってた、もうとっくの前に。だけど
………お前がアイツと笑ってるとこ見れんなら、それでも良いって思ったのも事実でィ。
だから背中押してやったんだ………、一生、命懸けて感謝して欲しいぐらいでさァ」
抱き締められていた腕がそっと離れ、総悟の少し潤んだ瞳がすっと細められる。その口元はぎこちないながらも弧を描いて、優しく染み渡るように私の胸を熱くさせた。その温かい手が私の頬を包むだけで、こんなにも切なくやるせない。……ごめんね、総悟。そしてありがとう。いつでも真っ直ぐ、少し刺激的で、だけど揺るがなかったその気持ちに応えられなかった。それでも総悟は、私にとって大切な男の子であることは間違いなかった。言葉で表すには全部チープな気がして、それよりももっと深い絆で結ばれていると、私は信じている。
「ありがとね……総悟。
私、本当に総悟のこと大好きだよ…」
「…………」
「総悟……?」
「………忘れてやした。もうひとつ」
「もうひと___」
感謝と友愛を伝えると、突然ふっと真面目な顔をした総悟の顔が、耳元に寄せられる。さらりと髪の毛を耳に掛けられて、彼の静かな吐息の音がダイレクトに聞こえてきて……そして、
「……土方に泣かされたら俺んとこに来なせェ。
…そん時は俺がお前の浮気相手になってやりまさァ」
「っ……!……」
お前の男にもキツく言っとけよィ、と冗談めかして笑った総悟は、今まで見た中で一番綺麗な顔をしていた。去って行く背中にもう一度心の中でありがとう、と呟く。見えないけど、まるで私の声にならない感謝が聞こえていたみたいに、ふっと総悟が微笑んだ気がして。
完。
一方その頃のザキ
(……いやーあれはいつにない修羅場だったな……沖田隊長もだいぶ拗らせてるしなあ……つーかまだ終わんねーのかな、俺マジで早く行かないとボコられんだけど副長に!)
prrrr…
(うわもうホラ言わんこっちゃない!!はいもしもし山崎ですゥゥ!!いや俺じゃな、……いやだから!!エ!?ちょ震えて待ってろ動くなって、だから俺が遅れたのはバカサドとアンタの女のせいイイイ!!!)
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