Main Story
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《其ノ弐拾》可愛い顔には裏がある
❀
「朝宮ねね、20歳です!初めてのお仕事ですが皆さんのお役に立てるように、全力で頑張りますっ。よろしくお願いします!」
隊士と女中全員が収集された朝礼の時間。ねねちゃんの可愛らしい挨拶におお〜!!!と隊士の歓喜の声と大きな拍手が上がる。……凄いキラキラしてる、一点の曇りもなく輝いた眼に吸い込まれそう。小動物みたいな加護欲を掻き立てられる身長に、ふわふわに巻かれた金色のボブ。主張し過ぎないピンクのナチュラルメイク、まさに「守ってあげたくなる女子NO.1」を絵に描いたような子。
今日は総悟から小耳に挟んでいた女中の新人さん、「朝宮ねねちゃん」の初出勤の日。いつもは厳しく冷たい空気が流れるこの朝の時間も、彼女がそこに立っているだけで癒しに変わる。
「みっともねェったらありゃしねーや、いい年こいた中年共が鼻の下伸ばしまくって」
「いやいやあんな天使みたいな子だよ?そうもなるでしょ。総悟もああいう子好きそうだけどね」
「…本気で言ってるんですかィ?俺の興味をあのぶりぶり女に向けようったってそうはいかねェよ。俺にぶち込まれる覚悟は出来やしたか?」
「どこに何を!?!?」
「わざわざ俺の口から聞きてーのか、このド変t」
「あああやっぱりいいっ!!!なんか言わんとしてること分かったから!!」
神様お願いです。どうかこの性根からごっそり歪んでしまった異常者から純粋無垢な彼女をお守りください。あの子にだけはそういう変なコト言わないでよね!?と一応強めに釘を刺しておいたけど。へいへいと乾いた返事しかしない…コイツ、本当にやりかねないからおっかないんだよなぁ…。朝礼が終わり各々業務への準備に向かう途中、総悟は至極眠そーに頭上にあったアイマスクを装着しながら縁側に寝転がり、辛辣な言葉をピシャリと言い放った。
「俺があんな裏表激しそうな女にちょっかい出しそうなタマに見えやすかね」
「………何でそんなふうに決めつけるの?」
「案外事実かもしれやせんぜ」
「オイ総悟ー、テメー今日パトロール運転担当だろいい加減にしろクソバカが。アイマスクのデザインだけでもせめて変えてくんねーかな、すっげー腹立つんだよそれ」
「ったく…育ち盛りの息子の睡眠の邪魔たァ、母ちゃんも意外と暇なんですかィ。昼飯はいらねーよ」
「昼飯どころか奥歯抜いてやろうかコラ!!!!…ほら、今日入った朝宮だ。幹部にだけでも取り敢えず挨拶したいんだとよ」
土方さんの言葉に私は思わず彼女を二度見する。ええ!?すげー出来る子じゃん、まあ隊服見たら分かるかもだけどもう幹部が誰かって判別ついたの…!?末恐ろしいなこの子…。可愛い子は世渡り上手って言うもんね。勿論顔だけじゃなくて実力も兼ね備えた最強のポテンシャルを持っているんだろう。まるで存在を無視して寝腐る総悟にダメだこりゃ…と汗を垂らしていると、ふいにねねちゃんとバチッと目が合う。天使スマイルで微笑まれて一瞬で心臓がハートの矢で撃ち抜かれた気がした。眩しすぎるにも、程がありますって…。
「初めましてっ、朝宮ねねですっ。名前さんですよね…?」
「え?どうして名前…」
「実は以前面接にお伺いした時に、お見かけしてお名前も聞こえたので…!物凄く綺麗な方が居るんだなあって思っていました!」
「いやいやいやいや恐れ多すぎますって!!!ありがとうございます、苗字名前です、これからよろしく…」
「はいっ、ご指導よろしくお願いしますっ」
こんな可愛い子にまさか知っててもらえたなんて光栄なことこの上ない。…しかし本当にこんな穢れなきいたいけな少女が、この男所帯の中にポイッと放り込まれて良いものか…。その点だけは唯一引っ掛かるけど。私の場合は(ねねちゃんほど可愛くはないので当然ですが)常に住み込みで居るけど、今のところ特に何も危ない目に遭ったことは無いし、そんな奴らが居たら守ってあげられるし。こんな良い子に表裏なんて概念ないよ総悟のバカ。しかしいちいち可愛いよなー、仕草とか立ち振る舞いとか、なんか纏ってるオーラに花が見えるもん。クスリ?やってねーよ。例え例え。
「丁度良い。名前、朝宮に屯所案内して簡単な買い出しから教えてやってくれ。酒は飲める口だと聞いたんでな、歓迎会の食材やら酒やら、頼んだぞ」
「お任せ下さい!…あ、そういえば昨日でマヨのストック一気に10本くらい減ったんですけど…土方さんとうとうマヨでシャワー浴びたり身体洗ったりしてないですよね?」
「浴びるかッ!!!!!!!ツナ缶の油と相性が良いって気付いたんだよ…昨日夜中腹減ってたから、色々試作してたせいだろ。なくなった分補充しといてくれ」
「ぶっ……夜な夜なツナ缶の油とマヨを混ぜて土方スペシャルを…?ひ、土方さん意外と質素ですね。くくく」
「別に何も恥ずかしいことしてねェのに何そのバカにしてくる感じすっげー腹立つんだけど!!!口動かしてる暇あんなら働け、新入りも困ってんだろが」
あっ、いけね。土方さんをおちょくるのが楽し過ぎてつい。待たせてごめんねー…とねねちゃんに手を合わせて謝る。いえいえ、と柔らかくかつ子供のような微笑みを浮かべながら、土方さんに会釈をした。本当に礼儀正しくて良い子なんだな。こんな私達の馬鹿なやり取りも、嫌な顔ひとつせず待っててくれるなんて。
「………ねねちゃん待たせてホントーにごめんなさい!では屯所内を案内していきt」
「名前さんと土方さんって、とっても仲が良いんですね!素敵ですっ」
「えっ?……そ、そう見えるなら、そうなのかな……?」
私の言葉を遮るように、屈託のない笑みを向けながら無邪気に言うねねちゃん。…他人から見てもそう感じるのなら、とても嬉しいし喜ばしいことだけど…何だろう、ねねちゃんの言葉に少し棘のようなチクッとしたものを感じてしまっ……いやいや、そんなわけない。圧倒的に気の所為です。そんな考えを打ち消すように首を振り、気を取り直して屯所案内を続けた。ねねちゃんは私の説明を真剣に聞いてくれていて、間違ってでもおかしな疑いを持ってしまった自分を酷く責めた。
・ ・ ・
屯所の案内を終えた私たちは、大江戸スーパーへと今日の宴会の買い出しに来ていた。まだ成人したばかりなのにお酒も飲めるなんて凄いね、とねねちゃんに声を掛けると、「そこまで強くないんですが…お酒は大好きです!」と100点満点の返事が返ってきた。なんかあざとさがないっていうか…これが素の彼女なんだろうなあ、と思わせてくれるナチュラルさ。こりゃー男が放っておくわけない!!
カゴの中におつまみの材料や乾き物、お酒をどんどん入れていく。ついでに土方さんが大量消費したマヨネーズも。なんか10本一気に空けるほどハマってるみたいだからツナ缶も買っていこうかな。美味い美味いと普段と違う質素な贅沢土方スペシャルを食べる彼の姿を想像して、思わず頬が緩んでしまう。妄想だけでこんな幸せな気持ちになれるくらい、私もついに変態の仲間入りか…一人百面相していると、突然ねねちゃんからの質問。
「名前さんは、何故真選組の女中として…?」
「あー…まあちょっと色々あって…住むところと職を失っちゃって。土方さんに拾ってもらったんだぁ」
うん、間違ってない。間違ってないんだけど出会って数時間でちょっと重すぎたかな…?聞いちゃいけないことを聞いた、とでも言いたげな申し訳なさそうな顔に必死に弁解をする。そんな泣きそうな顔で見つめんで欲しい。守りたいその全て。
「いやいやっ、そんな顔しないで!本当に平気だから!今は全っ然吹っ切れてて…っていうか寧ろ最初からダメージはほんとに少ないの!それもアットホームな真選組みんなのおかげなんだよ、」
「…へえ、本当に皆さん良い方達ばかりなんですね!」
「そういうこと!ねねちゃんは?きっかけとかあったの?
私は求人出してたことすら知らなかったよ〜」
「私は………
執拗いナンパに襲われているところを、たまたま通り掛かった土方さんに追い払ってもらったんです」
頬を染めながら口元に手を当てて、ふふ、と笑うねねちゃんの目が、急に鋭くなり私の瞳を捉える。この、全てを見透かしたような悟った目に、思わず息を呑み込んだ。
……てことは、……やっぱり、つまり、そういうこと。
ばくばくと早まる心臓の音、うまく表情管理が出来ないままレジ前に来てしまった。パートのおばちゃんがテンポよく商品を通していく間も、ねねちゃんの話は止まらない。
「……一目惚れだったんです。チャンスがあるのなら絶対に土方さんにお近付きになりたくって……真選組のことを調べているうちに、女中に欠員が出たことを知り、即応募しました」
「土方さんにとってはナンパの仲裁なんて日常茶飯事かもしれませんが…私は生まれて初めて、あんなに素敵な男性に巡り会えたチャンスを無駄にしたくなかったんです。」
「そ、そうだよね……土方さん、かっこいいもんね…」
何だろう。この、首を両手で握られて力が込められる寸前みたいな、息の根を今すぐにでも止められそうなこの感じ。三つも歳下の子にここまで翻弄されて私は気の利いた言葉のひとつも返せないまま、さっさと袋詰めをして店内を後にした。この空気に耐えられる最善の方法があるなら今すぐ私に教えて欲しい。誰でもいいから。
「…… 名前さんも、土方さんの事が好きなんですよね?」
「…………え、?………!!!!」
か細い声で呟きながら、突然俯き立ち止まった彼女。振り返って後ろを見た刹那、私の頭上に、アルコール臭のプンプンする冷たい液体がバケツをひっくり返したように物凄い勢いで降り掛かってきた。
…………私はしばらく放心状態で、自動ドアに映った自分の滑稽な姿を見つめていた。
その液体の正体は一升瓶。さっき買った鬼嫁の一升瓶を、ねねちゃんは表情を変えることなくまるまる一本私にかけた。
総悟、あながちっていうか…だいぶ正解だったわ、あんたの読み。
「……私先に戻ってますね♡
どうにか宴会に間に合うと良いですけどっ」
きゃはっ、と愉しそうに私の姿を見て大笑いしながら、私の持っていた買い物袋を奪い取って屯所への道を戻るねねちゃん。去り際に耳元で囁かれた恐ろしい言葉は、彼女の可愛らしく愛らしい顔からは想像出来ないようなドスの効いた声色で、余計に恐怖心を狩り立たせた。
『______アンタ邪魔なんだよね。
これ以上土方さんにベタベタしたらこれより酷い目に遭わせてやるから』
「………うう、寒………」
2リットル近くのお酒を浴びたせいで肌に張り付く着物が不快感を煽る。……近藤さん、とんでもない女の子入れちゃったよアンタ。雨も何も降ってない晴天の最中、びしょ濡れの女がとぼとぼ寂しそうに歩く姿は、そりゃ道行く人の興味を引く良い材料になっていました。
「………マジでか、朝宮ねね」
続。
(近藤さんっ!ただいま戻りました〜!)
(おう!ってあれ!名前はどうした!?トシから二人で買い出し言ったって聞いてたが…)
(…具合が悪いみたいで…蹲っていて…救急車呼んだ方が良かったですかね…!?)
(…………調子乗ってられんのも今のうちでさァ)
❀
「朝宮ねね、20歳です!初めてのお仕事ですが皆さんのお役に立てるように、全力で頑張りますっ。よろしくお願いします!」
隊士と女中全員が収集された朝礼の時間。ねねちゃんの可愛らしい挨拶におお〜!!!と隊士の歓喜の声と大きな拍手が上がる。……凄いキラキラしてる、一点の曇りもなく輝いた眼に吸い込まれそう。小動物みたいな加護欲を掻き立てられる身長に、ふわふわに巻かれた金色のボブ。主張し過ぎないピンクのナチュラルメイク、まさに「守ってあげたくなる女子NO.1」を絵に描いたような子。
今日は総悟から小耳に挟んでいた女中の新人さん、「朝宮ねねちゃん」の初出勤の日。いつもは厳しく冷たい空気が流れるこの朝の時間も、彼女がそこに立っているだけで癒しに変わる。
「みっともねェったらありゃしねーや、いい年こいた中年共が鼻の下伸ばしまくって」
「いやいやあんな天使みたいな子だよ?そうもなるでしょ。総悟もああいう子好きそうだけどね」
「…本気で言ってるんですかィ?俺の興味をあのぶりぶり女に向けようったってそうはいかねェよ。俺にぶち込まれる覚悟は出来やしたか?」
「どこに何を!?!?」
「わざわざ俺の口から聞きてーのか、このド変t」
「あああやっぱりいいっ!!!なんか言わんとしてること分かったから!!」
神様お願いです。どうかこの性根からごっそり歪んでしまった異常者から純粋無垢な彼女をお守りください。あの子にだけはそういう変なコト言わないでよね!?と一応強めに釘を刺しておいたけど。へいへいと乾いた返事しかしない…コイツ、本当にやりかねないからおっかないんだよなぁ…。朝礼が終わり各々業務への準備に向かう途中、総悟は至極眠そーに頭上にあったアイマスクを装着しながら縁側に寝転がり、辛辣な言葉をピシャリと言い放った。
「俺があんな裏表激しそうな女にちょっかい出しそうなタマに見えやすかね」
「………何でそんなふうに決めつけるの?」
「案外事実かもしれやせんぜ」
「オイ総悟ー、テメー今日パトロール運転担当だろいい加減にしろクソバカが。アイマスクのデザインだけでもせめて変えてくんねーかな、すっげー腹立つんだよそれ」
「ったく…育ち盛りの息子の睡眠の邪魔たァ、母ちゃんも意外と暇なんですかィ。昼飯はいらねーよ」
「昼飯どころか奥歯抜いてやろうかコラ!!!!…ほら、今日入った朝宮だ。幹部にだけでも取り敢えず挨拶したいんだとよ」
土方さんの言葉に私は思わず彼女を二度見する。ええ!?すげー出来る子じゃん、まあ隊服見たら分かるかもだけどもう幹部が誰かって判別ついたの…!?末恐ろしいなこの子…。可愛い子は世渡り上手って言うもんね。勿論顔だけじゃなくて実力も兼ね備えた最強のポテンシャルを持っているんだろう。まるで存在を無視して寝腐る総悟にダメだこりゃ…と汗を垂らしていると、ふいにねねちゃんとバチッと目が合う。天使スマイルで微笑まれて一瞬で心臓がハートの矢で撃ち抜かれた気がした。眩しすぎるにも、程がありますって…。
「初めましてっ、朝宮ねねですっ。名前さんですよね…?」
「え?どうして名前…」
「実は以前面接にお伺いした時に、お見かけしてお名前も聞こえたので…!物凄く綺麗な方が居るんだなあって思っていました!」
「いやいやいやいや恐れ多すぎますって!!!ありがとうございます、苗字名前です、これからよろしく…」
「はいっ、ご指導よろしくお願いしますっ」
こんな可愛い子にまさか知っててもらえたなんて光栄なことこの上ない。…しかし本当にこんな穢れなきいたいけな少女が、この男所帯の中にポイッと放り込まれて良いものか…。その点だけは唯一引っ掛かるけど。私の場合は(ねねちゃんほど可愛くはないので当然ですが)常に住み込みで居るけど、今のところ特に何も危ない目に遭ったことは無いし、そんな奴らが居たら守ってあげられるし。こんな良い子に表裏なんて概念ないよ総悟のバカ。しかしいちいち可愛いよなー、仕草とか立ち振る舞いとか、なんか纏ってるオーラに花が見えるもん。クスリ?やってねーよ。例え例え。
「丁度良い。名前、朝宮に屯所案内して簡単な買い出しから教えてやってくれ。酒は飲める口だと聞いたんでな、歓迎会の食材やら酒やら、頼んだぞ」
「お任せ下さい!…あ、そういえば昨日でマヨのストック一気に10本くらい減ったんですけど…土方さんとうとうマヨでシャワー浴びたり身体洗ったりしてないですよね?」
「浴びるかッ!!!!!!!ツナ缶の油と相性が良いって気付いたんだよ…昨日夜中腹減ってたから、色々試作してたせいだろ。なくなった分補充しといてくれ」
「ぶっ……夜な夜なツナ缶の油とマヨを混ぜて土方スペシャルを…?ひ、土方さん意外と質素ですね。くくく」
「別に何も恥ずかしいことしてねェのに何そのバカにしてくる感じすっげー腹立つんだけど!!!口動かしてる暇あんなら働け、新入りも困ってんだろが」
あっ、いけね。土方さんをおちょくるのが楽し過ぎてつい。待たせてごめんねー…とねねちゃんに手を合わせて謝る。いえいえ、と柔らかくかつ子供のような微笑みを浮かべながら、土方さんに会釈をした。本当に礼儀正しくて良い子なんだな。こんな私達の馬鹿なやり取りも、嫌な顔ひとつせず待っててくれるなんて。
「………ねねちゃん待たせてホントーにごめんなさい!では屯所内を案内していきt」
「名前さんと土方さんって、とっても仲が良いんですね!素敵ですっ」
「えっ?……そ、そう見えるなら、そうなのかな……?」
私の言葉を遮るように、屈託のない笑みを向けながら無邪気に言うねねちゃん。…他人から見てもそう感じるのなら、とても嬉しいし喜ばしいことだけど…何だろう、ねねちゃんの言葉に少し棘のようなチクッとしたものを感じてしまっ……いやいや、そんなわけない。圧倒的に気の所為です。そんな考えを打ち消すように首を振り、気を取り直して屯所案内を続けた。ねねちゃんは私の説明を真剣に聞いてくれていて、間違ってでもおかしな疑いを持ってしまった自分を酷く責めた。
・ ・ ・
屯所の案内を終えた私たちは、大江戸スーパーへと今日の宴会の買い出しに来ていた。まだ成人したばかりなのにお酒も飲めるなんて凄いね、とねねちゃんに声を掛けると、「そこまで強くないんですが…お酒は大好きです!」と100点満点の返事が返ってきた。なんかあざとさがないっていうか…これが素の彼女なんだろうなあ、と思わせてくれるナチュラルさ。こりゃー男が放っておくわけない!!
カゴの中におつまみの材料や乾き物、お酒をどんどん入れていく。ついでに土方さんが大量消費したマヨネーズも。なんか10本一気に空けるほどハマってるみたいだからツナ缶も買っていこうかな。美味い美味いと普段と違う質素な贅沢土方スペシャルを食べる彼の姿を想像して、思わず頬が緩んでしまう。妄想だけでこんな幸せな気持ちになれるくらい、私もついに変態の仲間入りか…一人百面相していると、突然ねねちゃんからの質問。
「名前さんは、何故真選組の女中として…?」
「あー…まあちょっと色々あって…住むところと職を失っちゃって。土方さんに拾ってもらったんだぁ」
うん、間違ってない。間違ってないんだけど出会って数時間でちょっと重すぎたかな…?聞いちゃいけないことを聞いた、とでも言いたげな申し訳なさそうな顔に必死に弁解をする。そんな泣きそうな顔で見つめんで欲しい。守りたいその全て。
「いやいやっ、そんな顔しないで!本当に平気だから!今は全っ然吹っ切れてて…っていうか寧ろ最初からダメージはほんとに少ないの!それもアットホームな真選組みんなのおかげなんだよ、」
「…へえ、本当に皆さん良い方達ばかりなんですね!」
「そういうこと!ねねちゃんは?きっかけとかあったの?
私は求人出してたことすら知らなかったよ〜」
「私は………
執拗いナンパに襲われているところを、たまたま通り掛かった土方さんに追い払ってもらったんです」
頬を染めながら口元に手を当てて、ふふ、と笑うねねちゃんの目が、急に鋭くなり私の瞳を捉える。この、全てを見透かしたような悟った目に、思わず息を呑み込んだ。
……てことは、……やっぱり、つまり、そういうこと。
ばくばくと早まる心臓の音、うまく表情管理が出来ないままレジ前に来てしまった。パートのおばちゃんがテンポよく商品を通していく間も、ねねちゃんの話は止まらない。
「……一目惚れだったんです。チャンスがあるのなら絶対に土方さんにお近付きになりたくって……真選組のことを調べているうちに、女中に欠員が出たことを知り、即応募しました」
「土方さんにとってはナンパの仲裁なんて日常茶飯事かもしれませんが…私は生まれて初めて、あんなに素敵な男性に巡り会えたチャンスを無駄にしたくなかったんです。」
「そ、そうだよね……土方さん、かっこいいもんね…」
何だろう。この、首を両手で握られて力が込められる寸前みたいな、息の根を今すぐにでも止められそうなこの感じ。三つも歳下の子にここまで翻弄されて私は気の利いた言葉のひとつも返せないまま、さっさと袋詰めをして店内を後にした。この空気に耐えられる最善の方法があるなら今すぐ私に教えて欲しい。誰でもいいから。
「…… 名前さんも、土方さんの事が好きなんですよね?」
「…………え、?………!!!!」
か細い声で呟きながら、突然俯き立ち止まった彼女。振り返って後ろを見た刹那、私の頭上に、アルコール臭のプンプンする冷たい液体がバケツをひっくり返したように物凄い勢いで降り掛かってきた。
…………私はしばらく放心状態で、自動ドアに映った自分の滑稽な姿を見つめていた。
その液体の正体は一升瓶。さっき買った鬼嫁の一升瓶を、ねねちゃんは表情を変えることなくまるまる一本私にかけた。
総悟、あながちっていうか…だいぶ正解だったわ、あんたの読み。
「……私先に戻ってますね♡
どうにか宴会に間に合うと良いですけどっ」
きゃはっ、と愉しそうに私の姿を見て大笑いしながら、私の持っていた買い物袋を奪い取って屯所への道を戻るねねちゃん。去り際に耳元で囁かれた恐ろしい言葉は、彼女の可愛らしく愛らしい顔からは想像出来ないようなドスの効いた声色で、余計に恐怖心を狩り立たせた。
『______アンタ邪魔なんだよね。
これ以上土方さんにベタベタしたらこれより酷い目に遭わせてやるから』
「………うう、寒………」
2リットル近くのお酒を浴びたせいで肌に張り付く着物が不快感を煽る。……近藤さん、とんでもない女の子入れちゃったよアンタ。雨も何も降ってない晴天の最中、びしょ濡れの女がとぼとぼ寂しそうに歩く姿は、そりゃ道行く人の興味を引く良い材料になっていました。
「………マジでか、朝宮ねね」
続。
(近藤さんっ!ただいま戻りました〜!)
(おう!ってあれ!名前はどうした!?トシから二人で買い出し言ったって聞いてたが…)
(…具合が悪いみたいで…蹲っていて…救急車呼んだ方が良かったですかね…!?)
(…………調子乗ってられんのも今のうちでさァ)