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《其ノ拾陸》夜のお店で遊ぶ時はマナーを心得よ
❀
土方さんが見事50本(そのうち5本は総悟、3本は銀ちゃん、もう2本は私)のドンペリをやっつけて、もうみんな段々と会話も少なくなってきた頃。和らぎだけを飲んでゲップが止まらない銀ちゃん、もうアイマスクを頭の上に装着し寝る寸前の総悟、ガンガン痛ェ…と頭を抱える土方さん、相変わらずお妙ちゃんを思い耽る近藤さん。私も残念ながら視界がどうも安定せず、ぐわぐわしてかれこれ20分はこの状態だ。ああもう、この人達に絶対お酒を与えてはいけないな…
「すみません…峰、ピッチャーで下さい」
「なぁに言ってんだよ連れねェなぁ酒だよ酒ェ!!名前チャ〜ン、銀さんまだのむからさァ。こーんな味のしないドリンクいらなぁーい」
「銀ちゃんは一番飲んじゃダメ!調子に乗り過ぎ…!」
「ブフッ!!!」
絡み酒をする銀ちゃんの顔につめしぼを抑え付け、黒服さんがボトルが転がり大惨事になったテーブルの上を黙々と片付けていく。…こんな飲み方するお客さん、多分松平のとっつぁん以来じゃないかな。さっきまで銀ちゃんとあれだけ小競り合いを繰り広げていた土方さんも頭痛には耐えられないのか、無口になってしまっている。すまいるもそろそろあと1時間で閉店の時間になるし、もう3人には帰ってもらおう。
するとその時、就寝の準備万端だった総悟が呼び鈴を鳴らした。
「すいやせ〜ん、ウイスキーボトル1本」
「……総悟、まだ飲むの!?」
「ただのお飾りでさァ。水だけで粘る客なんて格好が付かないからねィ」
「いーねー総一郎クゥン、お前も隅に置けないヤローだねェ、そんなに名前が可愛いか?ン?」
総悟の肩に腕を置きグイッと覗き込むように顔を近づけた銀ちゃん。やんわりとその手を解かれていることは気にも止めず、ゆらゆら揺れるグラスの中の氷を焦点が合わない目で見詰めていた。…意外といちばん平気そうな総悟、やっぱり若い分、アルコール分解の時間も短いんだなあ…と感心する。たぶん年長組3人の肝臓は、たぶん今日でボロボロになると思うけど。
「総悟です旦那。ちなみにコイツは俺の下僕かつ奴隷でさァ。俺にだけは従順なんですぜ。乳揉んでも深いちゅーしても気持ち良さそうな顔して蕩「っちょおおおおぉ!?何言ってんの、マジで何言い出すのよ総悟!?!?」
「………はぁん?沖田クンって妄想とかするタイプなんだね、そういうので夜な夜なシコティッシュフォールドしてるわけ?まあ若いからな、想像力豊かで宜しいこと」
「妄想?何言ってんですかィ。俺は事実を述べてるだけでさァ。名前と毎日人の目盗んであんなことやそんなこと」
「ぎぎぎぎ銀ちゃん、こんな奴の言うこと信じちゃダメだからね、一時のテンションに身を任せて支離滅裂な妄想・発言を繰り返してるだけだからね、」
ニヤニヤ怪しい笑みを浮かべながらとんでもないことを言い出す総悟の頭をありったけの力で引っぱたいた。何すんでィ!と不満そうにキレられたがそれはこっちのセリフ過ぎて言葉を失う。本当にこいつは空気が読めない。土方さんの目の前でなんてことしてくれたの…!肝心な私の想い人に恐る恐る視線を向けると、やっぱり頭痛が治ってないみたい。こっちの会話を聞いてる様子はないし、とりあえず安心した。
「沖田クンはドS変態クズ野郎だもんねェ!!!」
「その言われようは心外でさァ、本物の変態はあそこで頭抱えて項垂れるニコチン過剰摂取ヤローですぜ」
「あ゛ぁ!?総悟テメェ今なんつった」
「いやあ、この間名前と土方さんの声が大浴場から聞こえたんで。お互い裸で一体何やってんのかと」
「「…………なっ、 」」
何でバレてんのォォォォォ!!!!???
ここで衝撃のカミングアウト。まさかあの事件を総悟に聞かれていたとは。ギギギギ、と音がなりそうな程ぎこちなく私と土方さんは目を合わせる。お互い冷や汗ダラダラだ。いや…先に出たのは私だけど、別に人の気配とかなかったし、部屋に戻るまで誰とも合わなかったし、私が異様にソワソワしてたとかそんなわけもないし、総悟ってなんなの、どれだけ地獄耳なの…!?慌ててウイスキーの水割りを煽り、必死に弁解する。まじでそろそろいい加減にして欲しい、総悟の奴。
「あっあれは事故!事件なの、私が札を入浴中に変えてなかったから!土方さんが変態とか覗きとかそんなんじゃないからっ!!」
「ソソソソソウダ!!!名前の不注意による事故だ、ふざっけんじゃねぇよ、俺がそんな欲求不満に見えんのか!?なぁオイ総悟!!!」
「……見えるね、ウンとーっても見えるね。土方クゥン、おたくがむっつりな事はもう周知の事実なんだよ。つか何!?!?許さねェぞテメェ名前の裸俺に無許可で見やがって!!!抜け駆けしてんじゃねェよ!!」
「テメェが喋るとややこしくなんだよ!!!事故だっつってんだろ不可抗力だっつってんだろ!!!!」
「…婚前の男女が風呂に一緒に入るだと…!?ふしだらなっ、名前メッ!!ダメッ!!!絶対に認めん!!!お父さんをどれだけヤキモキさせれば気が済むんだお前は!!」
「………あーあ、本当に罪な女でさァ名前は」
煩い……。あれよあれよという間に取っ組み合いの喧嘩が始まり、一気に疲労度が増した私はお手洗いに避難することにした。どうにか四人のワチャワチャの中をくぐり抜けることに成功。…総悟のバカ!!!!一体何を言い出すのかと思えば、本当に空気が悪くなるような余計な事しか言わないんだから…!鏡の前で自身の疲れた顔を見てガックリ項垂れる。…お妙ちゃんの生活費分、そして売上分も作れたからミッションはクリア。だけど物凄く…疲れた気がする。
・ ・ ・
お手洗いから出て、銀ちゃんたちの席に戻る間。
私はとあるお客さんに絡まれていた。
丁度席から姿の見えない死角。…ちょっとここでは不安だなあ。お話するのなら場所を変えませんか?と提案するも、彼は一向に首を縦に振らない。かなり酔っていて、呂律もあんまり回っていない様子だった。
「あ…あの、ごめんなさい。私お客様を待たせていて…通していただけませんか?」
「だーかーらー、俺んとこにもついてよって言ってんの。どうせ胸もケツも触れないんだからこの店、それくらい良いだろぉ〜」
「…分かりました、是非乾杯させていただきたいので、お願いですからここを通してください」
執拗いな…。俺と一緒に飲もうよと言う割には、私の行く先々を壁に手をついて阻んでくる。…お酒臭いし、なんか距離近い。気持ち悪い…。ここまで酔ってる人を説得するのは至難の業だ。私は痺れを切らして、彼の腕を私の肩に乗せ、席まで案内することにした。きっとこれならちゃんと歩いてくれるだろう。何より防犯カメラも何も無いトイレの前じゃ、ちょっとだけ不安だったから…「歩けますか?お席までご案内します」そう言って高いヒールで一歩踏み出したその時。
「っぃやあっ………!!!」
「……………ッてェ……!」
肩を組んでいた男の手のひらが、私のドレスの胸元にいやらしい手つきで入り込んできた。あまりの不快感に男を引き剥がし、強く押してしまう。その衝撃で倒れ込んだ男はあまりに冷たい目で私を睨み、よろよろと立ち上がった。………やばい。幾ら酷いことされたからってお客さんを押してしまった。それにこの人、……危ない目をしてる。据わった視線で舐め回すように追い詰められ、手をついた感触に後ろを振り返るとそこには壁。もう足がすくんで逃げられなくなった。
「テメェ何様のつもりだ?…たかがキャバ嬢風情がよ」
「っ辞め、てくださっ……」
「うるせェェ!!俺をコケにした報いだ!!!」
そう叫んだ男の手には、キラリと鋭い刃先が光るナイフが握られていた。思わず息を飲み、恐怖から荒くなる呼吸。叫び声をあげようにも、上手く声が出てこない。
……嘘でしょ。こいつ正気なの……?
銀色の刃に舌を這わせ、男は明らかに異常な笑みを浮かべながら私のドレスの胸の真ん中にピッ、とナイフで切り込みを入れた。生まれて初めて刃物を向けられ、あまりの恐怖に声が出ず、一歩も動くことが出来ない。……私殺されるのかな、こんな所で。
お願い………
誰が助けて……っ
頬に冷たい刃を当てられ、ああ私、嫁入り前に顔傷付けられるんだ…。なんでこんな事になっちゃったのかな…。土方さん総悟銀ちゃん近藤さん、ゴメンね。私多分ケガして戻る……冷静にそんな事を悟って、痛みに耐えられるように思いっきり目を閉じた___その時だった。「ぐぁあぁあ!」と苦しむ男の声が聞こえる。ゆっくりゆっくり、あまりの雄叫びに耳を塞ぎながら目を開くと、そこには…
「………オイ。テメェ………
人の女によくもんな危ねぇモン向けてくれたじゃねーの。一思いに殺してやるよ立てオラ」
「ひっ………ひいい………!!!」
「っ…銀ちゃんっ………!!!」
「… 名前、悪い遅くなった。怪我ねェか?」
「ない……っでも、銀ちゃんの手……!!」
「何のこれしき。好きな女カッコよく守れて男冥利に尽きるってもんだ」
刃先を素手で握って止め、その圧倒的な強さに座り込んでしまった男の腕を、物凄い握力で捻る。ポタポタとフロアを染め上げる銀ちゃんの赤い血を見て、私は咄嗟に銀ちゃんの手を持っていたハンカチで包み込んだ。…味方なのにゾクッと悪寒が走るほどの銀ちゃんのキレた表情。…本当に怒ってくれてるんだ、…やっぱり守ってもらえるって言うのは嬉しい。
「………っ舐めやがってェェ!!!」
かなりの興奮状態で、銀ちゃんの血の付いたナイフを私達に振り翳してくる男。その手首をいとも簡単に掴み、蹴り飛ばされたナイフがフロアに鈍い音を立てて落ちる。流れるような美しい蹴りに思わず見蕩れ、息をすることも忘れてしまう。…咥えタバコで瞳孔ガン開きの土方さんが乱暴に男に手錠をかけ、髪を引っ掴みながら告げた。
「えー23時19分。暴行、器物損壊罪の容疑で逮捕。女に刃物向けるたァとんでもねェイカレ野郎だなテメェ。
………俺ら真選組の女中によくも乱暴してくれたなァ?
生きて帰れると思ってんじゃねェぞ」
「ほら、こっちだ!観念しろ!」
「犯人は捕まえやした、落ち着いてくだせェ〜」
近藤さんが激しく抵抗する男をパトカーに乗せ、パニック状態の客席は総悟が窘めている。……安心からへたりとその場に座り込みそうになるところを、銀ちゃんと土方さんに優しく支えられて、じわりと目に涙が浮かんだ。怖かった。みんなが来てくれなかったら私、きっと……。
鼻をすすりながら涙を指で拭っていたら、突然、腰にあった銀ちゃんの手のひらがクイッと私を引き寄せ、腕の中に収めようとする。土方さんもその様子を見て何も言わずに私の腕を肩から解放する。
「……ごめんな名前。お前に怖い思いさせる前に守ってやりたかった」
「っ……銀ちゃ、 ん」
「もう大丈夫だから。……落ち着くまで銀さんの胸で休んでろ。な?」
「………ん、っ………」
優しく背中と頭を摩る温もりが心地よくて、思わず銀ちゃんの黒シャツに顔を埋めてしまう。こんな風に優しく抱き締められたことで漸く心が落ち着いた気がする。暫くして銀ちゃんの腕から身を離し、優しく包み込むような微笑みを浮かべた彼の大きな手のひらが、私の頬を撫でた。………そんな私たちの様子に腕を組みながら、態とらしく大きく咳き込む土方さん。
「……他所でやれよ」
「あーもう男の嫉妬は見苦しいんだよ、テメーのは特にな!!………まあ今日はイレギュラーっつーことで、テメーが俺の後ってのが気に食わねぇけど。ホラ名前に慰めの言葉ーとか、大丈夫だよのハグーとか、なんかないわけ?さっきから仏頂面してるけど」
「………ぎ、銀ちゃん何言って……」
ばち、と土方さんと目が合う。……もう。銀ちゃんが変な事言うから上手く顔が見れないよ。まるで今の会話は無かったかのように、帰りましょ、と二人に声を掛ける。すると入口の自動ドアが開いた瞬間に、手首の引っ張られる感覚。後頭部で手を組んだ銀ちゃんは死んだ魚の目をさらに死なせて、私たちの横を「やっぱり多串クンはムッツリでしたー」と棒読みで通り過ぎた。……待っ、て、これって、もしかしなくても。
______視界が彼の着流しの紺色に染まる。
遠慮がちに後頭部と腰に回された腕。
丁度心臓の音が聞こえそうに、耳の位置に左胸があって。
私は土方さんに、抱き締められている。
そう分かった。
「……っあの、ひ……じ」
「………怪我、ねェなら安心した。これからはもっと目を光らせて、危ない事態には直ぐ駆けつけられるようにする」
「っ………」
「……今日は眠れるか?」
聞いたこともないような暖かい声色にとくん、とくんと胸が煩い。…聞いてないよ、土方さんがこんなに優しいなんて…。今度はパニックと嬉しさでまた声が出なくなって、私は彼の腕の中でこくこくと頷くことしか出来ない。これほどまでに至近距離で土方さんに触れて、体温を感じて、もうどうなっちゃうんだろう。やっぱり眠れるわけないよ。…安心したように「そうか、 」と呟いた土方さんがゆっくり私の体を剥がして、頭の上に大きな手が乗っかる。
「………早く準備して来い。帰るぞ」
ひと足早くパトカーに乗り込む土方さんの姿にぼうっと目が離せなくなり…ふと我に返って急いで控え室まで走るけど、昂る気持ちはもう抑えられない。…ずるい、ずるすぎる。不謹慎かもしれないけど、土方さんがこんなに優しくなるなら、少しの危ない目くらい我慢出来ちゃうなんて思った私。きっと、もう手遅れなくらいあなたに溺れている。
完。
(…見せ付けてくれんじゃねェか、土方コノヤロー)
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土方さんが見事50本(そのうち5本は総悟、3本は銀ちゃん、もう2本は私)のドンペリをやっつけて、もうみんな段々と会話も少なくなってきた頃。和らぎだけを飲んでゲップが止まらない銀ちゃん、もうアイマスクを頭の上に装着し寝る寸前の総悟、ガンガン痛ェ…と頭を抱える土方さん、相変わらずお妙ちゃんを思い耽る近藤さん。私も残念ながら視界がどうも安定せず、ぐわぐわしてかれこれ20分はこの状態だ。ああもう、この人達に絶対お酒を与えてはいけないな…
「すみません…峰、ピッチャーで下さい」
「なぁに言ってんだよ連れねェなぁ酒だよ酒ェ!!名前チャ〜ン、銀さんまだのむからさァ。こーんな味のしないドリンクいらなぁーい」
「銀ちゃんは一番飲んじゃダメ!調子に乗り過ぎ…!」
「ブフッ!!!」
絡み酒をする銀ちゃんの顔につめしぼを抑え付け、黒服さんがボトルが転がり大惨事になったテーブルの上を黙々と片付けていく。…こんな飲み方するお客さん、多分松平のとっつぁん以来じゃないかな。さっきまで銀ちゃんとあれだけ小競り合いを繰り広げていた土方さんも頭痛には耐えられないのか、無口になってしまっている。すまいるもそろそろあと1時間で閉店の時間になるし、もう3人には帰ってもらおう。
するとその時、就寝の準備万端だった総悟が呼び鈴を鳴らした。
「すいやせ〜ん、ウイスキーボトル1本」
「……総悟、まだ飲むの!?」
「ただのお飾りでさァ。水だけで粘る客なんて格好が付かないからねィ」
「いーねー総一郎クゥン、お前も隅に置けないヤローだねェ、そんなに名前が可愛いか?ン?」
総悟の肩に腕を置きグイッと覗き込むように顔を近づけた銀ちゃん。やんわりとその手を解かれていることは気にも止めず、ゆらゆら揺れるグラスの中の氷を焦点が合わない目で見詰めていた。…意外といちばん平気そうな総悟、やっぱり若い分、アルコール分解の時間も短いんだなあ…と感心する。たぶん年長組3人の肝臓は、たぶん今日でボロボロになると思うけど。
「総悟です旦那。ちなみにコイツは俺の下僕かつ奴隷でさァ。俺にだけは従順なんですぜ。乳揉んでも深いちゅーしても気持ち良さそうな顔して蕩「っちょおおおおぉ!?何言ってんの、マジで何言い出すのよ総悟!?!?」
「………はぁん?沖田クンって妄想とかするタイプなんだね、そういうので夜な夜なシコティッシュフォールドしてるわけ?まあ若いからな、想像力豊かで宜しいこと」
「妄想?何言ってんですかィ。俺は事実を述べてるだけでさァ。名前と毎日人の目盗んであんなことやそんなこと」
「ぎぎぎぎ銀ちゃん、こんな奴の言うこと信じちゃダメだからね、一時のテンションに身を任せて支離滅裂な妄想・発言を繰り返してるだけだからね、」
ニヤニヤ怪しい笑みを浮かべながらとんでもないことを言い出す総悟の頭をありったけの力で引っぱたいた。何すんでィ!と不満そうにキレられたがそれはこっちのセリフ過ぎて言葉を失う。本当にこいつは空気が読めない。土方さんの目の前でなんてことしてくれたの…!肝心な私の想い人に恐る恐る視線を向けると、やっぱり頭痛が治ってないみたい。こっちの会話を聞いてる様子はないし、とりあえず安心した。
「沖田クンはドS変態クズ野郎だもんねェ!!!」
「その言われようは心外でさァ、本物の変態はあそこで頭抱えて項垂れるニコチン過剰摂取ヤローですぜ」
「あ゛ぁ!?総悟テメェ今なんつった」
「いやあ、この間名前と土方さんの声が大浴場から聞こえたんで。お互い裸で一体何やってんのかと」
「「…………なっ、 」」
何でバレてんのォォォォォ!!!!???
ここで衝撃のカミングアウト。まさかあの事件を総悟に聞かれていたとは。ギギギギ、と音がなりそうな程ぎこちなく私と土方さんは目を合わせる。お互い冷や汗ダラダラだ。いや…先に出たのは私だけど、別に人の気配とかなかったし、部屋に戻るまで誰とも合わなかったし、私が異様にソワソワしてたとかそんなわけもないし、総悟ってなんなの、どれだけ地獄耳なの…!?慌ててウイスキーの水割りを煽り、必死に弁解する。まじでそろそろいい加減にして欲しい、総悟の奴。
「あっあれは事故!事件なの、私が札を入浴中に変えてなかったから!土方さんが変態とか覗きとかそんなんじゃないからっ!!」
「ソソソソソウダ!!!名前の不注意による事故だ、ふざっけんじゃねぇよ、俺がそんな欲求不満に見えんのか!?なぁオイ総悟!!!」
「……見えるね、ウンとーっても見えるね。土方クゥン、おたくがむっつりな事はもう周知の事実なんだよ。つか何!?!?許さねェぞテメェ名前の裸俺に無許可で見やがって!!!抜け駆けしてんじゃねェよ!!」
「テメェが喋るとややこしくなんだよ!!!事故だっつってんだろ不可抗力だっつってんだろ!!!!」
「…婚前の男女が風呂に一緒に入るだと…!?ふしだらなっ、名前メッ!!ダメッ!!!絶対に認めん!!!お父さんをどれだけヤキモキさせれば気が済むんだお前は!!」
「………あーあ、本当に罪な女でさァ名前は」
煩い……。あれよあれよという間に取っ組み合いの喧嘩が始まり、一気に疲労度が増した私はお手洗いに避難することにした。どうにか四人のワチャワチャの中をくぐり抜けることに成功。…総悟のバカ!!!!一体何を言い出すのかと思えば、本当に空気が悪くなるような余計な事しか言わないんだから…!鏡の前で自身の疲れた顔を見てガックリ項垂れる。…お妙ちゃんの生活費分、そして売上分も作れたからミッションはクリア。だけど物凄く…疲れた気がする。
・ ・ ・
お手洗いから出て、銀ちゃんたちの席に戻る間。
私はとあるお客さんに絡まれていた。
丁度席から姿の見えない死角。…ちょっとここでは不安だなあ。お話するのなら場所を変えませんか?と提案するも、彼は一向に首を縦に振らない。かなり酔っていて、呂律もあんまり回っていない様子だった。
「あ…あの、ごめんなさい。私お客様を待たせていて…通していただけませんか?」
「だーかーらー、俺んとこにもついてよって言ってんの。どうせ胸もケツも触れないんだからこの店、それくらい良いだろぉ〜」
「…分かりました、是非乾杯させていただきたいので、お願いですからここを通してください」
執拗いな…。俺と一緒に飲もうよと言う割には、私の行く先々を壁に手をついて阻んでくる。…お酒臭いし、なんか距離近い。気持ち悪い…。ここまで酔ってる人を説得するのは至難の業だ。私は痺れを切らして、彼の腕を私の肩に乗せ、席まで案内することにした。きっとこれならちゃんと歩いてくれるだろう。何より防犯カメラも何も無いトイレの前じゃ、ちょっとだけ不安だったから…「歩けますか?お席までご案内します」そう言って高いヒールで一歩踏み出したその時。
「っぃやあっ………!!!」
「……………ッてェ……!」
肩を組んでいた男の手のひらが、私のドレスの胸元にいやらしい手つきで入り込んできた。あまりの不快感に男を引き剥がし、強く押してしまう。その衝撃で倒れ込んだ男はあまりに冷たい目で私を睨み、よろよろと立ち上がった。………やばい。幾ら酷いことされたからってお客さんを押してしまった。それにこの人、……危ない目をしてる。据わった視線で舐め回すように追い詰められ、手をついた感触に後ろを振り返るとそこには壁。もう足がすくんで逃げられなくなった。
「テメェ何様のつもりだ?…たかがキャバ嬢風情がよ」
「っ辞め、てくださっ……」
「うるせェェ!!俺をコケにした報いだ!!!」
そう叫んだ男の手には、キラリと鋭い刃先が光るナイフが握られていた。思わず息を飲み、恐怖から荒くなる呼吸。叫び声をあげようにも、上手く声が出てこない。
……嘘でしょ。こいつ正気なの……?
銀色の刃に舌を這わせ、男は明らかに異常な笑みを浮かべながら私のドレスの胸の真ん中にピッ、とナイフで切り込みを入れた。生まれて初めて刃物を向けられ、あまりの恐怖に声が出ず、一歩も動くことが出来ない。……私殺されるのかな、こんな所で。
お願い………
誰が助けて……っ
頬に冷たい刃を当てられ、ああ私、嫁入り前に顔傷付けられるんだ…。なんでこんな事になっちゃったのかな…。土方さん総悟銀ちゃん近藤さん、ゴメンね。私多分ケガして戻る……冷静にそんな事を悟って、痛みに耐えられるように思いっきり目を閉じた___その時だった。「ぐぁあぁあ!」と苦しむ男の声が聞こえる。ゆっくりゆっくり、あまりの雄叫びに耳を塞ぎながら目を開くと、そこには…
「………オイ。テメェ………
人の女によくもんな危ねぇモン向けてくれたじゃねーの。一思いに殺してやるよ立てオラ」
「ひっ………ひいい………!!!」
「っ…銀ちゃんっ………!!!」
「… 名前、悪い遅くなった。怪我ねェか?」
「ない……っでも、銀ちゃんの手……!!」
「何のこれしき。好きな女カッコよく守れて男冥利に尽きるってもんだ」
刃先を素手で握って止め、その圧倒的な強さに座り込んでしまった男の腕を、物凄い握力で捻る。ポタポタとフロアを染め上げる銀ちゃんの赤い血を見て、私は咄嗟に銀ちゃんの手を持っていたハンカチで包み込んだ。…味方なのにゾクッと悪寒が走るほどの銀ちゃんのキレた表情。…本当に怒ってくれてるんだ、…やっぱり守ってもらえるって言うのは嬉しい。
「………っ舐めやがってェェ!!!」
かなりの興奮状態で、銀ちゃんの血の付いたナイフを私達に振り翳してくる男。その手首をいとも簡単に掴み、蹴り飛ばされたナイフがフロアに鈍い音を立てて落ちる。流れるような美しい蹴りに思わず見蕩れ、息をすることも忘れてしまう。…咥えタバコで瞳孔ガン開きの土方さんが乱暴に男に手錠をかけ、髪を引っ掴みながら告げた。
「えー23時19分。暴行、器物損壊罪の容疑で逮捕。女に刃物向けるたァとんでもねェイカレ野郎だなテメェ。
………俺ら真選組の女中によくも乱暴してくれたなァ?
生きて帰れると思ってんじゃねェぞ」
「ほら、こっちだ!観念しろ!」
「犯人は捕まえやした、落ち着いてくだせェ〜」
近藤さんが激しく抵抗する男をパトカーに乗せ、パニック状態の客席は総悟が窘めている。……安心からへたりとその場に座り込みそうになるところを、銀ちゃんと土方さんに優しく支えられて、じわりと目に涙が浮かんだ。怖かった。みんなが来てくれなかったら私、きっと……。
鼻をすすりながら涙を指で拭っていたら、突然、腰にあった銀ちゃんの手のひらがクイッと私を引き寄せ、腕の中に収めようとする。土方さんもその様子を見て何も言わずに私の腕を肩から解放する。
「……ごめんな名前。お前に怖い思いさせる前に守ってやりたかった」
「っ……銀ちゃ、 ん」
「もう大丈夫だから。……落ち着くまで銀さんの胸で休んでろ。な?」
「………ん、っ………」
優しく背中と頭を摩る温もりが心地よくて、思わず銀ちゃんの黒シャツに顔を埋めてしまう。こんな風に優しく抱き締められたことで漸く心が落ち着いた気がする。暫くして銀ちゃんの腕から身を離し、優しく包み込むような微笑みを浮かべた彼の大きな手のひらが、私の頬を撫でた。………そんな私たちの様子に腕を組みながら、態とらしく大きく咳き込む土方さん。
「……他所でやれよ」
「あーもう男の嫉妬は見苦しいんだよ、テメーのは特にな!!………まあ今日はイレギュラーっつーことで、テメーが俺の後ってのが気に食わねぇけど。ホラ名前に慰めの言葉ーとか、大丈夫だよのハグーとか、なんかないわけ?さっきから仏頂面してるけど」
「………ぎ、銀ちゃん何言って……」
ばち、と土方さんと目が合う。……もう。銀ちゃんが変な事言うから上手く顔が見れないよ。まるで今の会話は無かったかのように、帰りましょ、と二人に声を掛ける。すると入口の自動ドアが開いた瞬間に、手首の引っ張られる感覚。後頭部で手を組んだ銀ちゃんは死んだ魚の目をさらに死なせて、私たちの横を「やっぱり多串クンはムッツリでしたー」と棒読みで通り過ぎた。……待っ、て、これって、もしかしなくても。
______視界が彼の着流しの紺色に染まる。
遠慮がちに後頭部と腰に回された腕。
丁度心臓の音が聞こえそうに、耳の位置に左胸があって。
私は土方さんに、抱き締められている。
そう分かった。
「……っあの、ひ……じ」
「………怪我、ねェなら安心した。これからはもっと目を光らせて、危ない事態には直ぐ駆けつけられるようにする」
「っ………」
「……今日は眠れるか?」
聞いたこともないような暖かい声色にとくん、とくんと胸が煩い。…聞いてないよ、土方さんがこんなに優しいなんて…。今度はパニックと嬉しさでまた声が出なくなって、私は彼の腕の中でこくこくと頷くことしか出来ない。これほどまでに至近距離で土方さんに触れて、体温を感じて、もうどうなっちゃうんだろう。やっぱり眠れるわけないよ。…安心したように「そうか、 」と呟いた土方さんがゆっくり私の体を剥がして、頭の上に大きな手が乗っかる。
「………早く準備して来い。帰るぞ」
ひと足早くパトカーに乗り込む土方さんの姿にぼうっと目が離せなくなり…ふと我に返って急いで控え室まで走るけど、昂る気持ちはもう抑えられない。…ずるい、ずるすぎる。不謹慎かもしれないけど、土方さんがこんなに優しくなるなら、少しの危ない目くらい我慢出来ちゃうなんて思った私。きっと、もう手遅れなくらいあなたに溺れている。
完。
(…見せ付けてくれんじゃねェか、土方コノヤロー)