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《其ノ拾伍》夜のお店で遊ぶ時はモラルを大切に
❀
腕を組み、気だるそうに煙草を蒸す土方さん。同じく腕を組み、そんな土方さんをガルガル威嚇する銀ちゃん。チャームのお菓子を貪る総悟。お妙ちゃんの盗撮写真を眺めながら泣き崩れる近藤さん。そして、土方さんと銀ちゃんの間に挟まれる可哀想な私。___カオス!!!!前回の其ノ拾肆で、まさかの何も告げずに出てきたことが仇となって返ってきた、真選組の皆との鉢合わせ。お妙ちゃんが出勤じゃない=近藤さんも飲んでくわけない、という考えが浅はかだった。誰と飲んでたんだこのゴリラ…てか何でそんな泣きべそかいてるんだゴリラ…?
「なるほど、つまりバカやらかした新八君の姉貴の代わりに生活費を稼ぎに来たってことかィ」
「…お妙ちゃんも切羽詰まってる様子だったし、それに未経験じゃなかったし、私に出来ることだったら助けてあげたいじゃん?」
「ちょっと待て、…お前隠れてそんな仕事やってんのか、ウチの給料に文句言う前に副業たァどういう了見だ!?」
「だから早とちりしないでくださいよ!!元の世界!元の世界でちょっとだけ、お水の経験があるんです」
「そんな話を俺に黙っているとは水臭いですよお妙さんんん!!男近藤勲、責任を持って貴方をお嫁に貰う準備はとっくに出来ているのにィィ!!」
「あー……んとにうるせェったらありゃしねー…そーいうことだからお妙の生活費分は最低でも稼がなきゃなんねェんだよ。テメェら有り金全部出して、我が子の様に溺愛してる名前チャンの懐をちょっとでも潤わせてあげたらいいんじゃねーの?」
せっかく名前と二人きりで飲んでたのに気分悪ィわ!とブツブツ文句を垂れる銀ちゃんが、バッとメニュー表を開き近くを通り過ぎようとした黒服さんにわざと呼び鈴を鳴らした。…もしかしてこれ、この流れ、本当にシャンパン入れちゃうんじゃ。
「あっすいませ〜ん、ドンペリ5本、名前ちゃんの為に入れまぁす。お願いしまぁす」
「ごっ……5本!?!?銀ちゃん待ってそんなお金ないでしょ!?」
「オイオイ舐められたもんだな。確かに銀さん、普段はケツの毛までむしり取られるような金欠男ですけど、こういう時もあろうかと1発!!!馬で一攫千金を狙った!!そしたら勝った!!70万だ!!」
「「「「70万!?!?!?」」」」
「なんでも飲んでいいぜ名前。俺は今日、ホステスであるお前にいちばん綺麗な華を咲かせるために来たんだ。決してアフター狙ってそのままホテルインとか邪な気持ちは抱いていない、安心するよーに」
「いやあわよくばの本音ダダ漏れじゃねェか、普段金に物言わせられねェからって何そのドヤ顔ムカつくんだけど!!」
「旦那ァ、そういうことなら俺も参加しやすぜ。ちなみに俺はしっかり名前を酔い潰してSMプレイのアフター希望でさァ。すいやせ〜ん、ドンペリ10本、名前に入れてくだせェ」
「総悟テメェは黙ってろ!!!いいか?こんな所で無駄金使って俺らにはなんの得にもなんねェんだよ!!!分かったらさっさと引き上げるぞ」
「よーし分かった俺も入れる!!大好きな妻の為だ、苦しい生活を送らせるわけにはいくまい!!すみませ〜ん、ドンペリ15本、お妙さんに入れてください!!」
「なぁにが分かっただお妙さんはいねェっつってんだろ!!!!アンタまで辞めてくれ、もう収集つかねェ」
あれよあれよという間に卓に並べられた30本のドンペリ。ちょっと待って、これ本気なの…?一度言ったことは取り消せません、そんな顔をしながら黒服の皆さんはコルクをぽんぽん開けていく。これだけあればグラスなんていらない、直瓶でごくごくドンペリを水みたいに飲み干していく銀ちゃん、総悟、近藤さん。三人の飲みっぷりに圧倒され、私はぐーんと書き出されていく売上グラフを見詰めながら、グラスに注いだドンペリをちびちびと味わって飲んでみる。
…相変わらず勝手にやってくれ、と溜息をつきながら項垂れる着流し姿の土方さん。隊服もさることながら、やっぱりオフモードもかっこいい。土方さんはどうしてここに来たんだろう。…もしかして指名の女の子居たのかな、原作では描かれてないけど、めっちゃミツバさん似でお淑やかで品のあるホステスとか___
「…オイ名前。万事屋んとこのメガネの頼みっつーのは分かった。だがこれに懲りたら……もうこんなとこで働くんじゃねェよ」
「…元々今日だけの約束ですよ。真選組のお給料に困ってるとかそういうわけじゃなくて、本当に。………でも分かりました、…心配してくれてありがとう」
「……別に心配とかそんなんじゃねェよ。お前には向いてねーから苦労すると思っただけだ。ったく…あの怪力女が居ねェってんで泣き崩れた近藤さん迎えに来ただけで、こんなことに巻き込まれようとはな…」
あ、なんだ…そういう事か。妙ちゃんが居ないことにやけ酒をしていた近藤さんを迎えに…なるほどね。私が想像していたような理由じゃなくて安心したと同時に、そのぶっきらぼうな優しさに胸がきゅんとする。…本当に口下手で誤解を招く人だけど、私はもう知ってる。土方さんの照れ臭さを隠す仕草。口元を手で覆い隠して顔を逸らすの、…もうバレバレなのに。
きゅっと土方さんの着流しの裾を掴んで、私は彼の三白眼を見詰めた。…キリッと凛々しい青色の瞳が驚いたように大きく開く。
「…でも私は、土方さんとここでも会えて嬉しいです。きっと何かのご縁ってことじゃないですか?」
「……………俺に営業トークしてどうすんだよ」
ばァか。そんな小言と共に頭上に落ちて来たのは、メニューの分厚い冊子。…引っぱたかれて痛い筈なのに、どうしてだろう、ニヤケが止まらないなんて。土方さんにこんな緩みまくった顔見せられない。俯きながら頬の筋肉を解していると、顔を真っ赤に染めた銀ちゃんがちょっと雑に私と肩を組んで来る。
「なぁ〜名前、ヒック……こんな愛想ないお客様と話してて楽しいのォ〜?コイツ自分でドンペリも入れねェでお零れもらってポーカーフェイス貼り付けてだけじゃん、…ヒック。つっまんねーじゃん、お地蔵さんですかァテメーは」
「…下品に直瓶で飲んでる脳筋バカに言われたくねェな」
「ぎ、銀ちゃんすっごいお酒の匂い…何本飲んだの?」
「ん〜?5本飲んだ、つーかおたくの副長マジでこのまま1円も使う気無いわけ?上司として名前を立てるとかそーいう配慮欠けてんだ、まあ無理もねェか、奥手のオメーはこーいう店での遊び方も知らねーんだろ」
「………てんめェ……黙って聞いてりゃ好き勝手抜かしやがって……。名前!鈴鳴らせ。こんなヤローに喧嘩売られっぱなしじゃ俺も我慢なんねェよ」
「……っすぐそうやって挑発に乗る…!だめ、ほら見てくださいよ!総悟も近藤さんもこれ以上飲んだら死んじゃいますって!近藤さんと折半でいいじゃないですか、 」
「甘い。本当にこんな意気地皆無男にも優しいね名前は。まー名前もこう言ってるし?大人しく俺の飲み干した瓶から一滴でも啜ってろよ、マヨネーズみてェに」
銀ちゃんの言葉に顔中に青筋を浮かべまくった土方さんは、呼び鈴を引っ掴んでヂリンヂリンヂリン!!!と耳を塞ぎたくなるほどのデカい音を店中に響かせた。……あっヤバい、完っ全にプッチンしてるじゃんコレ。土方さん、と声を掛ける余裕もないほど彼の周りには張り詰めた空気が漂っている。状況を察知した黒服が怯えた表情で「はっはひぃ!お呼びでしょうかァ!」と掌擦り合わせて土方さんに腰を曲げる。
「………ドンペリ50本、コイツに入れてくれ」
「………ご、」
50本ンンンンンン!?私と黒服と銀ちゃんの声が見事にハモり、周りのお客さんもざわつき始める。「な、なんだあの卓…さっきからドンペリ80本近く入ってねぇか…?」「なあ、一日体験の子だろ、…あのお妙の代わりの」「スゲェ…この店きっての売れっ子が一日で終わっちゃうのかよ…」明らかに目立ってしまっている私たちの卓にもう一つのテーブルが設置され、そこに綺麗にボウリングピンのように並べられていくボトルは、流石に圧巻だった。
「ひ、土方さん正気じゃない、これはやり過ぎです、てか誰が飲めんですかこんなの」
「俺が飲む。…テメーは無理することねェ」
「そんな無茶ですよ!!」
「オイオイ…数多の修羅場をくぐりぬけて来た銀さんでもこれはドン引きランキングトップ3入りなんですけど…つか何この負けず嫌い、どーなってんの俺への対抗心」
「あり?もう補充されたと思ったら土方の仕業かィ。俺も近藤さんも旦那も、自分の分は開けてやりやしたよ。今度はこれをやっつけるとしまさァ」
「ちょっ…トシ!?!?知らないよォ!?!?俺マジで、15本分しか持ってきてないからね!?」
「……心配するこたねェよ。名前、俺からの日頃の感謝だとでも思って無理なく飲んでくれ。金のことは気にしなくて良い」
「っちょっと…土方さん………!!!」
小気味よい開封音の後に、土方さんはソファに立ち上がってまるでわんこそば…いや、わんこドンペリの様に瓶を手に取って口に含む。体内に吸い取られていく黄金のしゅわしゅわの軌道をぽかんと見つめながら、「あ、土方さんはコレマヨネーズだって暗示かけてるんだ」とか呑気なことを思っていた。…銀ちゃんの煽りを真に受けるのはいつもの事だけど。…土方さんは一体何処に闘争心が燃えたの?銀ちゃんとの勝負ってところ?それとも、私に華を持たせたいってところ……?後者だったら、すっごく嬉しいのに。
さっき人には脳筋バカ、なんて言ったくせに同じことをしてる土方さん。負けず嫌いですぐケンカを買う、そんな所も愛おしくて大好き。そんな彼を愛おしそうに見詰める私を、高みの見物でソファにひとりもたれかかっていたドS男が………これまた私をギラギラした瞳で見詰めていたなんてことは、まだ知らない。
続。
(…いやでもだからってここまで無理する?普通。)
(……あー、こりゃ完全に惚れ直しちまってるねィ。名前のバカは)
(あはははは!!飲め飲め多串クゥン!!!良いぞ多串クン!!炭酸がキツくなって頬に溜める顔が物凄く滑稽だよ多串クゥン!!!)
(テメェ語尾にいちいち多串くん付けてんじゃねェよ、出たら覚えとけよ殺すぞ貧乏神!!!!)
(と、トシ……意外と酒弱いんだよなァ……)
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腕を組み、気だるそうに煙草を蒸す土方さん。同じく腕を組み、そんな土方さんをガルガル威嚇する銀ちゃん。チャームのお菓子を貪る総悟。お妙ちゃんの盗撮写真を眺めながら泣き崩れる近藤さん。そして、土方さんと銀ちゃんの間に挟まれる可哀想な私。___カオス!!!!前回の其ノ拾肆で、まさかの何も告げずに出てきたことが仇となって返ってきた、真選組の皆との鉢合わせ。お妙ちゃんが出勤じゃない=近藤さんも飲んでくわけない、という考えが浅はかだった。誰と飲んでたんだこのゴリラ…てか何でそんな泣きべそかいてるんだゴリラ…?
「なるほど、つまりバカやらかした新八君の姉貴の代わりに生活費を稼ぎに来たってことかィ」
「…お妙ちゃんも切羽詰まってる様子だったし、それに未経験じゃなかったし、私に出来ることだったら助けてあげたいじゃん?」
「ちょっと待て、…お前隠れてそんな仕事やってんのか、ウチの給料に文句言う前に副業たァどういう了見だ!?」
「だから早とちりしないでくださいよ!!元の世界!元の世界でちょっとだけ、お水の経験があるんです」
「そんな話を俺に黙っているとは水臭いですよお妙さんんん!!男近藤勲、責任を持って貴方をお嫁に貰う準備はとっくに出来ているのにィィ!!」
「あー……んとにうるせェったらありゃしねー…そーいうことだからお妙の生活費分は最低でも稼がなきゃなんねェんだよ。テメェら有り金全部出して、我が子の様に溺愛してる名前チャンの懐をちょっとでも潤わせてあげたらいいんじゃねーの?」
せっかく名前と二人きりで飲んでたのに気分悪ィわ!とブツブツ文句を垂れる銀ちゃんが、バッとメニュー表を開き近くを通り過ぎようとした黒服さんにわざと呼び鈴を鳴らした。…もしかしてこれ、この流れ、本当にシャンパン入れちゃうんじゃ。
「あっすいませ〜ん、ドンペリ5本、名前ちゃんの為に入れまぁす。お願いしまぁす」
「ごっ……5本!?!?銀ちゃん待ってそんなお金ないでしょ!?」
「オイオイ舐められたもんだな。確かに銀さん、普段はケツの毛までむしり取られるような金欠男ですけど、こういう時もあろうかと1発!!!馬で一攫千金を狙った!!そしたら勝った!!70万だ!!」
「「「「70万!?!?!?」」」」
「なんでも飲んでいいぜ名前。俺は今日、ホステスであるお前にいちばん綺麗な華を咲かせるために来たんだ。決してアフター狙ってそのままホテルインとか邪な気持ちは抱いていない、安心するよーに」
「いやあわよくばの本音ダダ漏れじゃねェか、普段金に物言わせられねェからって何そのドヤ顔ムカつくんだけど!!」
「旦那ァ、そういうことなら俺も参加しやすぜ。ちなみに俺はしっかり名前を酔い潰してSMプレイのアフター希望でさァ。すいやせ〜ん、ドンペリ10本、名前に入れてくだせェ」
「総悟テメェは黙ってろ!!!いいか?こんな所で無駄金使って俺らにはなんの得にもなんねェんだよ!!!分かったらさっさと引き上げるぞ」
「よーし分かった俺も入れる!!大好きな妻の為だ、苦しい生活を送らせるわけにはいくまい!!すみませ〜ん、ドンペリ15本、お妙さんに入れてください!!」
「なぁにが分かっただお妙さんはいねェっつってんだろ!!!!アンタまで辞めてくれ、もう収集つかねェ」
あれよあれよという間に卓に並べられた30本のドンペリ。ちょっと待って、これ本気なの…?一度言ったことは取り消せません、そんな顔をしながら黒服の皆さんはコルクをぽんぽん開けていく。これだけあればグラスなんていらない、直瓶でごくごくドンペリを水みたいに飲み干していく銀ちゃん、総悟、近藤さん。三人の飲みっぷりに圧倒され、私はぐーんと書き出されていく売上グラフを見詰めながら、グラスに注いだドンペリをちびちびと味わって飲んでみる。
…相変わらず勝手にやってくれ、と溜息をつきながら項垂れる着流し姿の土方さん。隊服もさることながら、やっぱりオフモードもかっこいい。土方さんはどうしてここに来たんだろう。…もしかして指名の女の子居たのかな、原作では描かれてないけど、めっちゃミツバさん似でお淑やかで品のあるホステスとか___
「…オイ名前。万事屋んとこのメガネの頼みっつーのは分かった。だがこれに懲りたら……もうこんなとこで働くんじゃねェよ」
「…元々今日だけの約束ですよ。真選組のお給料に困ってるとかそういうわけじゃなくて、本当に。………でも分かりました、…心配してくれてありがとう」
「……別に心配とかそんなんじゃねェよ。お前には向いてねーから苦労すると思っただけだ。ったく…あの怪力女が居ねェってんで泣き崩れた近藤さん迎えに来ただけで、こんなことに巻き込まれようとはな…」
あ、なんだ…そういう事か。妙ちゃんが居ないことにやけ酒をしていた近藤さんを迎えに…なるほどね。私が想像していたような理由じゃなくて安心したと同時に、そのぶっきらぼうな優しさに胸がきゅんとする。…本当に口下手で誤解を招く人だけど、私はもう知ってる。土方さんの照れ臭さを隠す仕草。口元を手で覆い隠して顔を逸らすの、…もうバレバレなのに。
きゅっと土方さんの着流しの裾を掴んで、私は彼の三白眼を見詰めた。…キリッと凛々しい青色の瞳が驚いたように大きく開く。
「…でも私は、土方さんとここでも会えて嬉しいです。きっと何かのご縁ってことじゃないですか?」
「……………俺に営業トークしてどうすんだよ」
ばァか。そんな小言と共に頭上に落ちて来たのは、メニューの分厚い冊子。…引っぱたかれて痛い筈なのに、どうしてだろう、ニヤケが止まらないなんて。土方さんにこんな緩みまくった顔見せられない。俯きながら頬の筋肉を解していると、顔を真っ赤に染めた銀ちゃんがちょっと雑に私と肩を組んで来る。
「なぁ〜名前、ヒック……こんな愛想ないお客様と話してて楽しいのォ〜?コイツ自分でドンペリも入れねェでお零れもらってポーカーフェイス貼り付けてだけじゃん、…ヒック。つっまんねーじゃん、お地蔵さんですかァテメーは」
「…下品に直瓶で飲んでる脳筋バカに言われたくねェな」
「ぎ、銀ちゃんすっごいお酒の匂い…何本飲んだの?」
「ん〜?5本飲んだ、つーかおたくの副長マジでこのまま1円も使う気無いわけ?上司として名前を立てるとかそーいう配慮欠けてんだ、まあ無理もねェか、奥手のオメーはこーいう店での遊び方も知らねーんだろ」
「………てんめェ……黙って聞いてりゃ好き勝手抜かしやがって……。名前!鈴鳴らせ。こんなヤローに喧嘩売られっぱなしじゃ俺も我慢なんねェよ」
「……っすぐそうやって挑発に乗る…!だめ、ほら見てくださいよ!総悟も近藤さんもこれ以上飲んだら死んじゃいますって!近藤さんと折半でいいじゃないですか、 」
「甘い。本当にこんな意気地皆無男にも優しいね名前は。まー名前もこう言ってるし?大人しく俺の飲み干した瓶から一滴でも啜ってろよ、マヨネーズみてェに」
銀ちゃんの言葉に顔中に青筋を浮かべまくった土方さんは、呼び鈴を引っ掴んでヂリンヂリンヂリン!!!と耳を塞ぎたくなるほどのデカい音を店中に響かせた。……あっヤバい、完っ全にプッチンしてるじゃんコレ。土方さん、と声を掛ける余裕もないほど彼の周りには張り詰めた空気が漂っている。状況を察知した黒服が怯えた表情で「はっはひぃ!お呼びでしょうかァ!」と掌擦り合わせて土方さんに腰を曲げる。
「………ドンペリ50本、コイツに入れてくれ」
「………ご、」
50本ンンンンンン!?私と黒服と銀ちゃんの声が見事にハモり、周りのお客さんもざわつき始める。「な、なんだあの卓…さっきからドンペリ80本近く入ってねぇか…?」「なあ、一日体験の子だろ、…あのお妙の代わりの」「スゲェ…この店きっての売れっ子が一日で終わっちゃうのかよ…」明らかに目立ってしまっている私たちの卓にもう一つのテーブルが設置され、そこに綺麗にボウリングピンのように並べられていくボトルは、流石に圧巻だった。
「ひ、土方さん正気じゃない、これはやり過ぎです、てか誰が飲めんですかこんなの」
「俺が飲む。…テメーは無理することねェ」
「そんな無茶ですよ!!」
「オイオイ…数多の修羅場をくぐりぬけて来た銀さんでもこれはドン引きランキングトップ3入りなんですけど…つか何この負けず嫌い、どーなってんの俺への対抗心」
「あり?もう補充されたと思ったら土方の仕業かィ。俺も近藤さんも旦那も、自分の分は開けてやりやしたよ。今度はこれをやっつけるとしまさァ」
「ちょっ…トシ!?!?知らないよォ!?!?俺マジで、15本分しか持ってきてないからね!?」
「……心配するこたねェよ。名前、俺からの日頃の感謝だとでも思って無理なく飲んでくれ。金のことは気にしなくて良い」
「っちょっと…土方さん………!!!」
小気味よい開封音の後に、土方さんはソファに立ち上がってまるでわんこそば…いや、わんこドンペリの様に瓶を手に取って口に含む。体内に吸い取られていく黄金のしゅわしゅわの軌道をぽかんと見つめながら、「あ、土方さんはコレマヨネーズだって暗示かけてるんだ」とか呑気なことを思っていた。…銀ちゃんの煽りを真に受けるのはいつもの事だけど。…土方さんは一体何処に闘争心が燃えたの?銀ちゃんとの勝負ってところ?それとも、私に華を持たせたいってところ……?後者だったら、すっごく嬉しいのに。
さっき人には脳筋バカ、なんて言ったくせに同じことをしてる土方さん。負けず嫌いですぐケンカを買う、そんな所も愛おしくて大好き。そんな彼を愛おしそうに見詰める私を、高みの見物でソファにひとりもたれかかっていたドS男が………これまた私をギラギラした瞳で見詰めていたなんてことは、まだ知らない。
続。
(…いやでもだからってここまで無理する?普通。)
(……あー、こりゃ完全に惚れ直しちまってるねィ。名前のバカは)
(あはははは!!飲め飲め多串クゥン!!!良いぞ多串クン!!炭酸がキツくなって頬に溜める顔が物凄く滑稽だよ多串クゥン!!!)
(テメェ語尾にいちいち多串くん付けてんじゃねェよ、出たら覚えとけよ殺すぞ貧乏神!!!!)
(と、トシ……意外と酒弱いんだよなァ……)