Main Story
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《其ノ拾参》苦し紛れの言い訳して良いわけない
❀
「……オイ名前、ライターオイルどこ仕舞った」
「あ!食器棚の3段目の引き出しの中のクッキー缶の中のゴデ○バの箱の中の朝刊に包まれたビニール袋の中にありませんか!?」
「マトリョーシカ並に過剰梱包してんじゃねェか!!!かったりィんだよ!!!」
「じゃあ土方さんの部屋に持っていってもいいですよ?」
「総悟の野郎のバズーカに引火すんだよ…ったく、いいから食堂置いとけ。分かったな」
ついに戻ってきた平穏な日常。今朝廊下で顔を合わせた私たちは、お互い一瞬昨日のお風呂遭遇事件を思い出して気まずさと恥ずかしさの空気が流れたけど、土方さんの方から「…はよ」と眠たそうに言ってくれた。低くくぐもり気の抜けたちょっと色っぽい声の挨拶に朝から心臓どっくどくで、土方さんの姿が見えなくなった瞬間に私はジタバタとその場で喜びの地団駄を踏んでいた。今日は久しぶりの非番らしく、着流し姿で屯所をうろつく彼に呼び止められる度また心臓が忙しくなる。ああ、今日もかっこいい。
土方さんが座った席に灰皿とお水、そして日替わり定食(マヨ付き)が乗ったお盆を置き、「サンキュ」と一言呟いた彼は一網打尽に赤いキャップを手に取り、勢い良くボトルを押しマヨネーズを抽出した。日替わりの肉野菜炒めに味変…いやむしろこれがデフォルトか、うん、仕上げの味付けをした。こんなふうに生の土方スペシャルを見るのも1週間ぶりだなあ。…美味しそうにごはんとマヨネーズに塗れた何かをかき込む土方さんに見蕩れてしまう。
「名前ちゃん、アンタほんと分っかりやすいねぇ」
「エ…?なにがですか?」
「ははっ、副長だよ副長。なんか最近姿見えなかったが、副長が食堂に来てからアンタの態度が180°変わったからさ。確かにあれはマヨネーズを取り除けば色男だからね」
「そっそそそそんなんじゃないですよ!!別に土方さんのこと気になってるとか好きとか、そんなんじゃ…」
「わぁお、こりゃ見事にテンプレの反応ですねィ」
女中の先輩にわいのわいのといじられまくっていたところに、日替わり一つと人差し指を立てて、眠たそうに欠伸をした総悟が割り込んで来る。先輩の元気な了解!の返事が聞こえて来て、はっと我に返った私。総悟はたまに、私の考えとか気持ちを全部見透かしてるようなこと言うから困る。ご飯をよそいながら焦りを悟られないように、一体どういう意味?と聞き返した。
「もういろんな奴らにバレてんじゃねェか。お前も思ってること顔にマッキー太字で書いてあるタイプだしな。つーかまさかとは思いやすが、土方と仲直りでもしたんですかィ」
「……だっだから何が?!まあ無事に、昨日仲直りは出来たよ、…ようやく。」
「っへぇ…一体どんな手を使ってあの堅物を丸め込んだんでさァ。色仕掛けでもしたか?」
「っ………!!!」
身に覚えにありすぎる総悟の鋭い発言に顔が赤く沸騰するのが分かった。いやあれは色仕掛けにな…違う違う、不慮の事故で、全然そんな意図はなかったけど!!手を震わせながら総悟にお米とお味噌汁、おかずを配膳し、ジト…と睨まれる不審そうな視線に耐えながら早く座るようにと促した。
「土方さんおはようございやーす。で、如何でしたかィ名前のハニートラップっつーのは」
「ッッゲホごホッッ」
「……あららぁ、こりゃどうやらマジみたいでさァ」
食事を終えての一服を楽しんでいるところ、隣に座った総悟が放った一声に、煙を吸い込みすぎたのか盛大にむせ返ってしまった土方さん。水の入ったグラスを鷲掴みにし一気に飲み干した彼は、ぐっと眉間に皺を寄せながら憎まれ口を叩いた顔を見る。あっ、これは結構かなり怒ってます。怖。
「テメェ呑気におはようございますって言うがなァ、もう昼前なんだよ。また惰眠を貪ってやがったのか。仕事舐めてんじゃねェぞ」
「今日は内勤って事になってるんでねェ。因みに何度も言いやすが、俺が舐めてんのは土方さんだけで(ry。それよりさっきの話、逸らさねーで答えてくだせェよ。名前のハニトラはどんな加減だったんですかィ」
「ッハニトラじゃねェっつってんだろ!!!つか言うなら最後まで言え!!!無駄口叩いてる暇あんならさっさと食って始末書の整理でもしろ、溜まってんぞ」
ダン、と激しく椅子から立ち上がった土方さんは、総悟の頭を軽く小突いて食堂を出ていってしまった。…あれされたい、いいな私もされたい。羨望全開の眼差しを総悟に向けると、明らかに不快度指数MAXですみたいな引き攣った顔をしながら土方さんに触られた頭の上をパッパッと払っていた。ガキ……
土方さんの食器も回収して、粗方洗い物が終わりそうな時、総悟が注文口までやって来て私をちょいちょいと手招きする。
「何?今手が離せないの、後で」
「今来いつってんでさァ。おばちゃーん、別にコイツちょっと借りても良いですよねィ」
「いいよいいよ!名前ちゃんには洗濯頼もうと思ってたから!沖田さん連れてっちゃって!」
「という訳なんで。行きやすよ」
「え!?あ、ちょ…お疲れ様です洗濯してきます!」
・・・
「もー、総悟何…」
言われるがまま食堂を出て、総悟に手を引かれる。こういう時私の迷惑っていうのはひとつも考えないくせに、私の腕を掴む力だけは優しいから困っちゃう。…別に普段優しさの欠けらも無い総悟だから、ハードル下がってるだけだよ。全然ドキドキなんてしないんだから。とん、と背中を叩かれて押し込まれたのは、まだ布団も畳まれていない、起きた抜け殻がありそうな総悟の部屋。…そういえば私なんだかんだ言って、総悟の部屋に入るのって初めてかもしれない。
「何かあったのは明確だが、俺に隠し事されんのがムカつくんでィ」
「っ、別に隠し事してる訳じゃないよ、…そもそも総悟に直接関係ないじゃんっ」
「…まだそんなこと言ってんですかィ、お前俺が言ったこと忘れちまったのか」
くい、と顎を乱暴に持ち上げられて、少し怒った様子の総悟の顔が近づいてくる。…もうダメ、またこんなふうに流されちゃってたら、私…。ぐっと目をつぶって総悟の唇を手のひらで塞いだ。何してんでさァと私の手の中で呟く酷く不機嫌そうな総悟の声色。私は土方さんのことが好きなんだから、やっぱり総悟とのこの曖昧な関係はどうにかしなくちゃいけない。機嫌が悪そうに私の手を退ける総悟の顔は、明らかに怒りに満ち溢れていた。だけど物怖じすることなく、総悟の目を真っ直ぐ見つめながら切り出した。
「…ねえ…総悟、もうやめにしない…?こういうの…」
「……へェ、仲戻ったどころか。野郎の女にでもなったか」
「違うよ……ただ、良くないと思って、…付き合ってもないのに、こういうことするのは私のポリシーに反するんだよ、」
「今更何言い出すかと思えば下らねェな。…散々俺の言いなりになっといて、土方さんと上手く行きそうだから俺は切り捨てるって訳かィ。随分と残酷な女でさァ」
総悟の、呆れたような乾いた笑みに心臓が抉られるほど痛くなった。___そんなふうに思われても仕方がない。事実、私は土方さんとギクシャクしてる間、総悟の温もりに縋り頼っていたから。…拒むフリしながら、それをどこか心地好いと思ってしまっていたから。総悟の手は私の頬に優しく添えられ、深い赤色の瞳の奥にしっかりと私の姿が捕らえられていた。
「……っ総悟、 」
「俺は生憎、もうお前の俺を呼ぶ声のひとつで狂っちまえるところまで来てんだ。お前の気持ちがどうだろうと関係ねェ、こうやって俺に振り回されときゃ良いんでさァ」
「何言っ……」
「どうしても俺に触られんのが嫌だってんなら、筋通すべきだろィ。言ってみろよ、土方が好きだからこんなことはもう辞めろって」
吐息を感じるほど唇を近づけられて、擽ったさと恥ずかしさで可笑しくなりそう。総悟の手が厭らしく首筋や鎖骨を滑り、ピクピクと跳ねる身体を見て面白そうに口角を上げている。…やっぱりこれは私のけじめだから、言わなきゃ…でもどうしてだろう。上手く声が出せない。総悟に触れられると、どうして私はこんなに無力になってしまうんだろう。吸い寄せられるように、あなたから目が離せないんだろう。
「……っ私は、土方さんが好っ………!んん、ッ」
「……… 」
私の言葉を遮るように、総悟の唇が強く重なって来た。息を食べられたかと思うほど長く、角度を変えられる、触れるだけのキス。掴まれた手首がそのまま私の指を絡め取って、恋人のような繋ぎ方に不覚にも胸が高鳴った。
…総悟の愛おしそうな触れ方が、私の鼓動を忙しくさせる。キスの後に見詰めてくる時の余裕の無さそうな顔が、ずっと頭から離れない。私の脳まで犯す罪な男。私より年下のくせに、そんな女の子の誘い方どこで覚えてきたの…?
「…残念、言えなかったなァ」
「ず、ずるくない…!?塞いじゃったら言えるものも言えないじゃんっ…」
「ああ悪ィ。お前の口から野郎が好きだから、とか聞きたくなかったんで」
「…っ反則でしょ、そんなの…」
「とにかく言えなかったのは事実でさァ。まだまだ俺の付け入る隙たっぷりありそうなんでね。これに懲りて俺らのこの関係、もう勝手に終わらせようとしねェよーに」
去り際に私の髪をぐしゃ、と撫でる総悟。いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて部屋を出る。…私よりも10センチ大きな彼の背中。抱き締められた時に感じた、逞しく分厚い感触。総悟の腕は…何故かすごく落ち着くんだ。弟みたいに無邪気な表情、かと思えば私に触れる時はずっと歳上の男の人みたいに凛々しい顔をしてみたり。やっと自分の気持ちを自覚したと思ったのに、こんなに掻き回されてしまったら…。もう幾度と重ねてしまった唇に触れながら、私は布団から微かに香る総悟の香りを思い出して、長ーいため息をついたのだった。
完。
(また総悟にされるがまま…)
(だから俺から逃げようったって、そうは行かねェや)
❀
「……オイ名前、ライターオイルどこ仕舞った」
「あ!食器棚の3段目の引き出しの中のクッキー缶の中のゴデ○バの箱の中の朝刊に包まれたビニール袋の中にありませんか!?」
「マトリョーシカ並に過剰梱包してんじゃねェか!!!かったりィんだよ!!!」
「じゃあ土方さんの部屋に持っていってもいいですよ?」
「総悟の野郎のバズーカに引火すんだよ…ったく、いいから食堂置いとけ。分かったな」
ついに戻ってきた平穏な日常。今朝廊下で顔を合わせた私たちは、お互い一瞬昨日のお風呂遭遇事件を思い出して気まずさと恥ずかしさの空気が流れたけど、土方さんの方から「…はよ」と眠たそうに言ってくれた。低くくぐもり気の抜けたちょっと色っぽい声の挨拶に朝から心臓どっくどくで、土方さんの姿が見えなくなった瞬間に私はジタバタとその場で喜びの地団駄を踏んでいた。今日は久しぶりの非番らしく、着流し姿で屯所をうろつく彼に呼び止められる度また心臓が忙しくなる。ああ、今日もかっこいい。
土方さんが座った席に灰皿とお水、そして日替わり定食(マヨ付き)が乗ったお盆を置き、「サンキュ」と一言呟いた彼は一網打尽に赤いキャップを手に取り、勢い良くボトルを押しマヨネーズを抽出した。日替わりの肉野菜炒めに味変…いやむしろこれがデフォルトか、うん、仕上げの味付けをした。こんなふうに生の土方スペシャルを見るのも1週間ぶりだなあ。…美味しそうにごはんとマヨネーズに塗れた何かをかき込む土方さんに見蕩れてしまう。
「名前ちゃん、アンタほんと分っかりやすいねぇ」
「エ…?なにがですか?」
「ははっ、副長だよ副長。なんか最近姿見えなかったが、副長が食堂に来てからアンタの態度が180°変わったからさ。確かにあれはマヨネーズを取り除けば色男だからね」
「そっそそそそんなんじゃないですよ!!別に土方さんのこと気になってるとか好きとか、そんなんじゃ…」
「わぁお、こりゃ見事にテンプレの反応ですねィ」
女中の先輩にわいのわいのといじられまくっていたところに、日替わり一つと人差し指を立てて、眠たそうに欠伸をした総悟が割り込んで来る。先輩の元気な了解!の返事が聞こえて来て、はっと我に返った私。総悟はたまに、私の考えとか気持ちを全部見透かしてるようなこと言うから困る。ご飯をよそいながら焦りを悟られないように、一体どういう意味?と聞き返した。
「もういろんな奴らにバレてんじゃねェか。お前も思ってること顔にマッキー太字で書いてあるタイプだしな。つーかまさかとは思いやすが、土方と仲直りでもしたんですかィ」
「……だっだから何が?!まあ無事に、昨日仲直りは出来たよ、…ようやく。」
「っへぇ…一体どんな手を使ってあの堅物を丸め込んだんでさァ。色仕掛けでもしたか?」
「っ………!!!」
身に覚えにありすぎる総悟の鋭い発言に顔が赤く沸騰するのが分かった。いやあれは色仕掛けにな…違う違う、不慮の事故で、全然そんな意図はなかったけど!!手を震わせながら総悟にお米とお味噌汁、おかずを配膳し、ジト…と睨まれる不審そうな視線に耐えながら早く座るようにと促した。
「土方さんおはようございやーす。で、如何でしたかィ名前のハニートラップっつーのは」
「ッッゲホごホッッ」
「……あららぁ、こりゃどうやらマジみたいでさァ」
食事を終えての一服を楽しんでいるところ、隣に座った総悟が放った一声に、煙を吸い込みすぎたのか盛大にむせ返ってしまった土方さん。水の入ったグラスを鷲掴みにし一気に飲み干した彼は、ぐっと眉間に皺を寄せながら憎まれ口を叩いた顔を見る。あっ、これは結構かなり怒ってます。怖。
「テメェ呑気におはようございますって言うがなァ、もう昼前なんだよ。また惰眠を貪ってやがったのか。仕事舐めてんじゃねェぞ」
「今日は内勤って事になってるんでねェ。因みに何度も言いやすが、俺が舐めてんのは土方さんだけで(ry。それよりさっきの話、逸らさねーで答えてくだせェよ。名前のハニトラはどんな加減だったんですかィ」
「ッハニトラじゃねェっつってんだろ!!!つか言うなら最後まで言え!!!無駄口叩いてる暇あんならさっさと食って始末書の整理でもしろ、溜まってんぞ」
ダン、と激しく椅子から立ち上がった土方さんは、総悟の頭を軽く小突いて食堂を出ていってしまった。…あれされたい、いいな私もされたい。羨望全開の眼差しを総悟に向けると、明らかに不快度指数MAXですみたいな引き攣った顔をしながら土方さんに触られた頭の上をパッパッと払っていた。ガキ……
土方さんの食器も回収して、粗方洗い物が終わりそうな時、総悟が注文口までやって来て私をちょいちょいと手招きする。
「何?今手が離せないの、後で」
「今来いつってんでさァ。おばちゃーん、別にコイツちょっと借りても良いですよねィ」
「いいよいいよ!名前ちゃんには洗濯頼もうと思ってたから!沖田さん連れてっちゃって!」
「という訳なんで。行きやすよ」
「え!?あ、ちょ…お疲れ様です洗濯してきます!」
・・・
「もー、総悟何…」
言われるがまま食堂を出て、総悟に手を引かれる。こういう時私の迷惑っていうのはひとつも考えないくせに、私の腕を掴む力だけは優しいから困っちゃう。…別に普段優しさの欠けらも無い総悟だから、ハードル下がってるだけだよ。全然ドキドキなんてしないんだから。とん、と背中を叩かれて押し込まれたのは、まだ布団も畳まれていない、起きた抜け殻がありそうな総悟の部屋。…そういえば私なんだかんだ言って、総悟の部屋に入るのって初めてかもしれない。
「何かあったのは明確だが、俺に隠し事されんのがムカつくんでィ」
「っ、別に隠し事してる訳じゃないよ、…そもそも総悟に直接関係ないじゃんっ」
「…まだそんなこと言ってんですかィ、お前俺が言ったこと忘れちまったのか」
くい、と顎を乱暴に持ち上げられて、少し怒った様子の総悟の顔が近づいてくる。…もうダメ、またこんなふうに流されちゃってたら、私…。ぐっと目をつぶって総悟の唇を手のひらで塞いだ。何してんでさァと私の手の中で呟く酷く不機嫌そうな総悟の声色。私は土方さんのことが好きなんだから、やっぱり総悟とのこの曖昧な関係はどうにかしなくちゃいけない。機嫌が悪そうに私の手を退ける総悟の顔は、明らかに怒りに満ち溢れていた。だけど物怖じすることなく、総悟の目を真っ直ぐ見つめながら切り出した。
「…ねえ…総悟、もうやめにしない…?こういうの…」
「……へェ、仲戻ったどころか。野郎の女にでもなったか」
「違うよ……ただ、良くないと思って、…付き合ってもないのに、こういうことするのは私のポリシーに反するんだよ、」
「今更何言い出すかと思えば下らねェな。…散々俺の言いなりになっといて、土方さんと上手く行きそうだから俺は切り捨てるって訳かィ。随分と残酷な女でさァ」
総悟の、呆れたような乾いた笑みに心臓が抉られるほど痛くなった。___そんなふうに思われても仕方がない。事実、私は土方さんとギクシャクしてる間、総悟の温もりに縋り頼っていたから。…拒むフリしながら、それをどこか心地好いと思ってしまっていたから。総悟の手は私の頬に優しく添えられ、深い赤色の瞳の奥にしっかりと私の姿が捕らえられていた。
「……っ総悟、 」
「俺は生憎、もうお前の俺を呼ぶ声のひとつで狂っちまえるところまで来てんだ。お前の気持ちがどうだろうと関係ねェ、こうやって俺に振り回されときゃ良いんでさァ」
「何言っ……」
「どうしても俺に触られんのが嫌だってんなら、筋通すべきだろィ。言ってみろよ、土方が好きだからこんなことはもう辞めろって」
吐息を感じるほど唇を近づけられて、擽ったさと恥ずかしさで可笑しくなりそう。総悟の手が厭らしく首筋や鎖骨を滑り、ピクピクと跳ねる身体を見て面白そうに口角を上げている。…やっぱりこれは私のけじめだから、言わなきゃ…でもどうしてだろう。上手く声が出せない。総悟に触れられると、どうして私はこんなに無力になってしまうんだろう。吸い寄せられるように、あなたから目が離せないんだろう。
「……っ私は、土方さんが好っ………!んん、ッ」
「……… 」
私の言葉を遮るように、総悟の唇が強く重なって来た。息を食べられたかと思うほど長く、角度を変えられる、触れるだけのキス。掴まれた手首がそのまま私の指を絡め取って、恋人のような繋ぎ方に不覚にも胸が高鳴った。
…総悟の愛おしそうな触れ方が、私の鼓動を忙しくさせる。キスの後に見詰めてくる時の余裕の無さそうな顔が、ずっと頭から離れない。私の脳まで犯す罪な男。私より年下のくせに、そんな女の子の誘い方どこで覚えてきたの…?
「…残念、言えなかったなァ」
「ず、ずるくない…!?塞いじゃったら言えるものも言えないじゃんっ…」
「ああ悪ィ。お前の口から野郎が好きだから、とか聞きたくなかったんで」
「…っ反則でしょ、そんなの…」
「とにかく言えなかったのは事実でさァ。まだまだ俺の付け入る隙たっぷりありそうなんでね。これに懲りて俺らのこの関係、もう勝手に終わらせようとしねェよーに」
去り際に私の髪をぐしゃ、と撫でる総悟。いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて部屋を出る。…私よりも10センチ大きな彼の背中。抱き締められた時に感じた、逞しく分厚い感触。総悟の腕は…何故かすごく落ち着くんだ。弟みたいに無邪気な表情、かと思えば私に触れる時はずっと歳上の男の人みたいに凛々しい顔をしてみたり。やっと自分の気持ちを自覚したと思ったのに、こんなに掻き回されてしまったら…。もう幾度と重ねてしまった唇に触れながら、私は布団から微かに香る総悟の香りを思い出して、長ーいため息をついたのだった。
完。
(また総悟にされるがまま…)
(だから俺から逃げようったって、そうは行かねェや)