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《其ノ拾壱》悪口と恋バナは結局盛り上がる
❀
総悟からの衝撃の告白を受けたあの日から早5日、
私は______
「オルァァァァ総悟テメゴルァこのクソガキィィィ!!!折角畳んだ洗濯物全っ部バズーカの飛び火で穴だらけなんだけど!!!ねえお願いだからお姉さんにさ、何でそんなに言うこと聞けないのか教えてくれない?絶対怒らないから」
「流石バ閣下様、二言三言前の暴言をもうお忘れですかィ?俺の射程範囲内に置いておくテメーが悪ィんだろうが、他責思考もいい加減にしろよ」
「なんでそんなバ閣下様気に入ってんの、つーか自分の住まいでところ構わずぶっ放すんじゃねーよそんな殺人兵器!!」
______お分かりいただけただろうか。このように、総悟とはなーんにも変わらない稚拙なやり取りを日々繰り返しています。まあちょっと…やばかったと言えばやばかったけど。
翌日付けられたキスマークを隠すのにありとあらゆる化粧品を使い奮闘したものの、あまりに濃すぎて全く隠れず。アピールしているみたいで物凄く嫌だったが、程よく隠れる湿布を貼って「寝違えた」ことを理由に誤魔化すことに成功した。
…そして何より拍子抜けしたのが総悟の態度。あんな風に恋の言葉を囁くイメージの欠けらも無かった男のことだから、よそよそしくなることは予想していたし、私も上手く顔が見れる自信がなかった。___しかし。
『おい名前。今朝の日替わりは』
『風呂入ってくるんでタオルと道着の洗濯頼むぜィ』
『そんじゃあ行ってきや〜す。帰ったら俺の酒用意しといてくだせェ』
気まずいどころか、寧ろ今までより私への接触が多くなってきましたけど。ええ。その点だけは本当に感謝してる。だけどもう隠す気もなんともないのか、ところ構わず必要以上にくっついてくるようになったのは、他の隊士の皆もぎょっとするし……何より割とガチで照れるから控えて欲しかったりする。(肩に顎乗せてくる___頬を片手でぎゅむっと掴んでくる___そういう類のスキンシップ)
一方の私といったら、ふとした瞬間にあの日の総悟の言葉を思い出して目が見れなくなったり、上手く言葉が出てこなかったりするから困ってる。
「朝から金切り声でギャーギャー喚かれて騒がしいったらありゃしねェや。お前二日目か?ほうれん草でも食ってポパイを習えィ」
「誰のせいだよ!!生理でもねーから!!!デリカシーってものはないわけ!?あっ貴方にあるわけないか、逆にごめん。もういいから早く行きなよ見廻りでしょ」
「……へいへい」
ドデカい欠伸を一発かまして、ヒラヒラと怠そうに手を振りながら私の横を通り過ぎて行く総悟。はあ…っと小さくため息を吐いた。なんだよその返事は。大体もう事務処理担当以外、他の隊士は出払ってるのにいつまでもダラダラしてるのは幹部として如何なものかと思う。…総悟のサボり癖って、漫画アニメでエンタメとして見ていたのなら面白かったけど。実際目の当たりにすると本当にやる気のないコンビニ店員みたいな勤務態度だったんだなあ。皆が手を焼くのも頷ける。
すると突然ぴたりと立ち止まった総悟。頭にあったアイマスクを首に下げながら振り返って、そう呟いた。
「あ、忘れ物しやした」
「なにを?…取ってこようか?」
「…………」
バズーカかな?代わりに持ってくるよ。総悟の部屋に向かおうとした私の腕をぐい、と引っ張って顔を傾けてくる。びっくりするのもつかの間予想通りの感触が唇に広がって、ちゅっ…と態とらしいリップ音を立てながら総悟の柔らかいそれが離れていく。
…っ、ほんとにコイツは!!!
「行ってらっしゃいのちゅーに決まってんだろィ」
「…っ決まってるわけあるかっつの!!!バカ!!!」
これ以上、真っ赤な茹でダコみたいな顔を見られたくなくて。私は唇の近くで喋る総悟をどん!と強く押しのけて自室に走った。意味分かんない意味分かんない、1回したからって何回も出来ると思ってる!?人の気も知らないで!!ヒートショックしそうな程熱い頬を両手で覆い隠しながら廊下を駆ける。遠ざかっていく私の背中を見つめながら総悟がぽつりと漏らした言葉なんて知る由もない。
「…相変わらず欲情させんのがお上手でさァ」
・・・
一通りの仕事を終え、少しの空き時間が出来る。仕事中もやっぱりさっきのキスを思い出しては一人でジタバタ足踏みしたり、今日の夕飯であるハンバーグを掌に叩きつける勢いが強くなったり、畳んだ洗濯物を殴ったりしていた。(女中の先輩方に多分ドン引かれたと思う。ごめんなさい)こんなに弄ばれてやられっぱなしなのはどうも癪だが、結局のところ返り討ちにあいそうで。やり返す術が見つからず困っている。
そんな感じで、お昼ご飯を終えて自室で仮眠しようかと戻る途中にまた突然フラッシュバックして、訳もなく急ぎ足になる。その時前方からウホウホ警報が鳴っていたけど私は避けきれず、肩がぶつかってしまう。ごめんウホ。
「おっ……とすまない!急ぎか?」
「ゴリ………近藤さぁあぁんっ!!!」
「いや今言いかけた俺の別名…いや別名じゃねぇよあの3文字をォ!!!どうしたの名前!?そんな真っ赤な顔して」
「もう……っ、たすけてくださいぃ…」
「え゛っ…ちょ、ちょちょちょ」
隊服の襟をぎゅっと掴んで上目でおねだりすると、絵に描いたように鼻の下を伸ばしてデレデレするゴリ…近藤さんが面白くてしょうがない。こんなになるほど女性に免疫ないのにどうしてお妙ちゃんにはストーカーできるんだろう。フンフン鼻息を荒くして近藤さんは局長室へ案内してくれた。
せっかくなのでとお茶を淹れ、食堂の冷蔵庫に数本残っていたお団子を添えて近藤さんの前にお盆を置く。逞しい顎髭を撫でながら私を射抜く瞳は、さっきまでのだらしなさは皆無で、心から人を気にかけるそのもの。
「それで、何があったんだ名前。お父さんには何でも話しなさいって言ってあるだろう、隠し事はナシだ。アレか?また門限破って朝まであの銀髪と…ふしだらな!!お父さんお前をそんな子に育てた覚えはありません!!」
「私、ゴリラとゴリラから生まれた覚えはありません」
「そうだな、母さんと俺は初めて出会った時から愛のドラミングを交わしいつしか惹かれ合い…って名前チャンンンン!?さっきからさ、ゴリとかゴリラとかさ、今回は本音丸ごと出ちゃってんの!!心の奥底から!!」
うん、やっぱり前言撤回で。はあ、と大きなため息をついて頭を抱える私を見て、さすがにまずいと思ったのか湯呑みを引っ掴みお茶を一気に飲み干した近藤さん。今度はふざけないからちゃんと教えて欲しい、と初めて聞いたくらいの真剣な声のトーンだったので、信じて話してみることにした。
「______と、いうわけなんです」
もちろん諸々の詳細は伏せて(大変なことになるのは明確なので)、土方さんとのギクシャクや総悟とのアレコレを大まかに近藤さんに伝えた。二人の耳には入らないように、との条件付きで。一瞬近藤さんの眉根にぐっとシワが寄ったりしたこともあったけど、何もちゃちゃ入れずに静かに聞いてくれた。やっぱりこういう時は頼りになるし、伊達に局長やってないんだなあ。
「…まあトシの口下手と不器用さは、今に始まったことじゃねーが… 名前にそんな思いをさせている事は申し訳なく思う。どうにか仲が元に戻るように協力出来ることはさせてもらおう。」
「……ううん。土方さんはきっと、私に生意気言われて凄く怒っていると思うんです。ほとぼりが冷めてもどうせ元には戻れないと思う。だったら必要最低限、女中と副長として接そうと思っていて」
…アレ、自分で言ってて泣きそうになってきた。
その証拠にもう1週間以上、土方さんの姿を見ていない。きっと私と会わないようにいつものルーティンをずらして避けているんだと思う。余程私が言ったことに腹を立てたんだろう。今更謝ろうにも既にお互い話し合うタイミングなんて見失ってしまっているんだし、きっともう無理なんだ。…近藤さんはわしわしと頬を掻きながら「いや〜あのね名前?そんなことは…うん、やっぱり何でもない」とか何とか言っているが、全く何が言いたいのか分からないのでスルーさせてもらおう。
「で…問題は総悟だな!ガッハッハ!彼奴も中々やるなぁ!うん、少なくとも名前を気に入っていることは隊士達の中でも周知の事実だったぞ」
「そ、そうなんですか…こちらとしては毎日嫌がらせ悪戯からかいのオンパレード過ぎて、逆にどこにそんな要素があったのか…」
「ホラ小学生男子のアレだよ。好きな子ほど虐めたくなっちゃうを言葉の通りそのまま実行してんの奴は!恐らくだが総悟は、名前に想いを伝えたことで軽い興奮状態というか…まあ、ハイになってるんだと思うんだ」
「…それは、どういう……」
「今まで名前の嫌がる顔を見ることでかろうじて張れていた虚勢が崩壊しちまったんだ。…どこでどうやって自分の気持ちを落ち着かせるか、探っている最中だと思う」
近藤さんの言葉に、…妙に納得してしまっている自分がいた。総悟が私を虐めていた理由が、愛情の裏返しだと仮定する。総悟は人一倍プライドが高くてあまり弱ったり、焦ったりする所を他人に見せない。…そのはずだったのに、「加虐」と「恋心」その二面性を私に見せてしまったことによる混乱が今朝の結果…というわけか。
そっと自身の唇に触れながら思い出していた。…総悟に告白されたあの日。私を無理やり押し倒し、訳も分からないまま重ねられた唇。初めて見た、総悟の余裕のない表情。
“…………好きだ。
俺じゃない誰かのせいで沈んだテメーのこと、…放っておけるほど俺は余裕のある人間じゃねーんで ”
「………っっわあーーーーっ!!!!」
「何急にィ!?って、えっ何その顔…まさか名前ヤっ………エェ!?ふしだらっ…ふしだらです!!付き合う前の男女がそんなっ……しかも屯所でアンタら何やってんのォ!?」
「いやいやいやいや誤解です!!!未遂っ…てのもおかしいか、違いますから、一線は越えてないですからっ!!」
「一線“は”って何、“は”ってェェ!?!?じゃあ何!?キッスはしたってこと!?マウストゥーマウスのディープなキッスはしたってことなのォォ!?」
「近藤さん声デカ過ぎるもう黙ってええええ!!!」
見廻りを終えて昼食を取りに戻って来た総悟が、一部始終全て聞き耳を立てながらくつくつと笑っていたことなんて、…そしてもうひとり、私の悩みの種である張本人も煙草をふかしながら全てを聞いていたことなんて。私は一切気付くことないまま、ひとり興奮してのたうち回るゴリラにバナナを添え、局長室を後にした。
完。
(あららぁ?聞き耳なんて趣味悪いですぜ土方さん)
(…はぁ。別に、たまたま通りかかってうるせーから文句言いに来ただけだよ。テメーも飯食い終わったんならさっさと隊務に戻れ)
(今の全部聞いてやしたか?俺の話も)
(…………だったら何だ)
(ご自分が一番よく分かってるんじゃないですかィ?いい加減無駄な意地張っても見苦しいだけでさァ。俺ぁ正々堂々、アンタと奪い合いてーんだ。アイツを)
(………妙な勘違いしてんじゃねェよ。オラ早く戻れ)
(………………本当、生き辛そうな男だねィ)
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総悟からの衝撃の告白を受けたあの日から早5日、
私は______
「オルァァァァ総悟テメゴルァこのクソガキィィィ!!!折角畳んだ洗濯物全っ部バズーカの飛び火で穴だらけなんだけど!!!ねえお願いだからお姉さんにさ、何でそんなに言うこと聞けないのか教えてくれない?絶対怒らないから」
「流石バ閣下様、二言三言前の暴言をもうお忘れですかィ?俺の射程範囲内に置いておくテメーが悪ィんだろうが、他責思考もいい加減にしろよ」
「なんでそんなバ閣下様気に入ってんの、つーか自分の住まいでところ構わずぶっ放すんじゃねーよそんな殺人兵器!!」
______お分かりいただけただろうか。このように、総悟とはなーんにも変わらない稚拙なやり取りを日々繰り返しています。まあちょっと…やばかったと言えばやばかったけど。
翌日付けられたキスマークを隠すのにありとあらゆる化粧品を使い奮闘したものの、あまりに濃すぎて全く隠れず。アピールしているみたいで物凄く嫌だったが、程よく隠れる湿布を貼って「寝違えた」ことを理由に誤魔化すことに成功した。
…そして何より拍子抜けしたのが総悟の態度。あんな風に恋の言葉を囁くイメージの欠けらも無かった男のことだから、よそよそしくなることは予想していたし、私も上手く顔が見れる自信がなかった。___しかし。
『おい名前。今朝の日替わりは』
『風呂入ってくるんでタオルと道着の洗濯頼むぜィ』
『そんじゃあ行ってきや〜す。帰ったら俺の酒用意しといてくだせェ』
気まずいどころか、寧ろ今までより私への接触が多くなってきましたけど。ええ。その点だけは本当に感謝してる。だけどもう隠す気もなんともないのか、ところ構わず必要以上にくっついてくるようになったのは、他の隊士の皆もぎょっとするし……何より割とガチで照れるから控えて欲しかったりする。(肩に顎乗せてくる___頬を片手でぎゅむっと掴んでくる___そういう類のスキンシップ)
一方の私といったら、ふとした瞬間にあの日の総悟の言葉を思い出して目が見れなくなったり、上手く言葉が出てこなかったりするから困ってる。
「朝から金切り声でギャーギャー喚かれて騒がしいったらありゃしねェや。お前二日目か?ほうれん草でも食ってポパイを習えィ」
「誰のせいだよ!!生理でもねーから!!!デリカシーってものはないわけ!?あっ貴方にあるわけないか、逆にごめん。もういいから早く行きなよ見廻りでしょ」
「……へいへい」
ドデカい欠伸を一発かまして、ヒラヒラと怠そうに手を振りながら私の横を通り過ぎて行く総悟。はあ…っと小さくため息を吐いた。なんだよその返事は。大体もう事務処理担当以外、他の隊士は出払ってるのにいつまでもダラダラしてるのは幹部として如何なものかと思う。…総悟のサボり癖って、漫画アニメでエンタメとして見ていたのなら面白かったけど。実際目の当たりにすると本当にやる気のないコンビニ店員みたいな勤務態度だったんだなあ。皆が手を焼くのも頷ける。
すると突然ぴたりと立ち止まった総悟。頭にあったアイマスクを首に下げながら振り返って、そう呟いた。
「あ、忘れ物しやした」
「なにを?…取ってこようか?」
「…………」
バズーカかな?代わりに持ってくるよ。総悟の部屋に向かおうとした私の腕をぐい、と引っ張って顔を傾けてくる。びっくりするのもつかの間予想通りの感触が唇に広がって、ちゅっ…と態とらしいリップ音を立てながら総悟の柔らかいそれが離れていく。
…っ、ほんとにコイツは!!!
「行ってらっしゃいのちゅーに決まってんだろィ」
「…っ決まってるわけあるかっつの!!!バカ!!!」
これ以上、真っ赤な茹でダコみたいな顔を見られたくなくて。私は唇の近くで喋る総悟をどん!と強く押しのけて自室に走った。意味分かんない意味分かんない、1回したからって何回も出来ると思ってる!?人の気も知らないで!!ヒートショックしそうな程熱い頬を両手で覆い隠しながら廊下を駆ける。遠ざかっていく私の背中を見つめながら総悟がぽつりと漏らした言葉なんて知る由もない。
「…相変わらず欲情させんのがお上手でさァ」
・・・
一通りの仕事を終え、少しの空き時間が出来る。仕事中もやっぱりさっきのキスを思い出しては一人でジタバタ足踏みしたり、今日の夕飯であるハンバーグを掌に叩きつける勢いが強くなったり、畳んだ洗濯物を殴ったりしていた。(女中の先輩方に多分ドン引かれたと思う。ごめんなさい)こんなに弄ばれてやられっぱなしなのはどうも癪だが、結局のところ返り討ちにあいそうで。やり返す術が見つからず困っている。
そんな感じで、お昼ご飯を終えて自室で仮眠しようかと戻る途中にまた突然フラッシュバックして、訳もなく急ぎ足になる。その時前方からウホウホ警報が鳴っていたけど私は避けきれず、肩がぶつかってしまう。ごめんウホ。
「おっ……とすまない!急ぎか?」
「ゴリ………近藤さぁあぁんっ!!!」
「いや今言いかけた俺の別名…いや別名じゃねぇよあの3文字をォ!!!どうしたの名前!?そんな真っ赤な顔して」
「もう……っ、たすけてくださいぃ…」
「え゛っ…ちょ、ちょちょちょ」
隊服の襟をぎゅっと掴んで上目でおねだりすると、絵に描いたように鼻の下を伸ばしてデレデレするゴリ…近藤さんが面白くてしょうがない。こんなになるほど女性に免疫ないのにどうしてお妙ちゃんにはストーカーできるんだろう。フンフン鼻息を荒くして近藤さんは局長室へ案内してくれた。
せっかくなのでとお茶を淹れ、食堂の冷蔵庫に数本残っていたお団子を添えて近藤さんの前にお盆を置く。逞しい顎髭を撫でながら私を射抜く瞳は、さっきまでのだらしなさは皆無で、心から人を気にかけるそのもの。
「それで、何があったんだ名前。お父さんには何でも話しなさいって言ってあるだろう、隠し事はナシだ。アレか?また門限破って朝まであの銀髪と…ふしだらな!!お父さんお前をそんな子に育てた覚えはありません!!」
「私、ゴリラとゴリラから生まれた覚えはありません」
「そうだな、母さんと俺は初めて出会った時から愛のドラミングを交わしいつしか惹かれ合い…って名前チャンンンン!?さっきからさ、ゴリとかゴリラとかさ、今回は本音丸ごと出ちゃってんの!!心の奥底から!!」
うん、やっぱり前言撤回で。はあ、と大きなため息をついて頭を抱える私を見て、さすがにまずいと思ったのか湯呑みを引っ掴みお茶を一気に飲み干した近藤さん。今度はふざけないからちゃんと教えて欲しい、と初めて聞いたくらいの真剣な声のトーンだったので、信じて話してみることにした。
「______と、いうわけなんです」
もちろん諸々の詳細は伏せて(大変なことになるのは明確なので)、土方さんとのギクシャクや総悟とのアレコレを大まかに近藤さんに伝えた。二人の耳には入らないように、との条件付きで。一瞬近藤さんの眉根にぐっとシワが寄ったりしたこともあったけど、何もちゃちゃ入れずに静かに聞いてくれた。やっぱりこういう時は頼りになるし、伊達に局長やってないんだなあ。
「…まあトシの口下手と不器用さは、今に始まったことじゃねーが… 名前にそんな思いをさせている事は申し訳なく思う。どうにか仲が元に戻るように協力出来ることはさせてもらおう。」
「……ううん。土方さんはきっと、私に生意気言われて凄く怒っていると思うんです。ほとぼりが冷めてもどうせ元には戻れないと思う。だったら必要最低限、女中と副長として接そうと思っていて」
…アレ、自分で言ってて泣きそうになってきた。
その証拠にもう1週間以上、土方さんの姿を見ていない。きっと私と会わないようにいつものルーティンをずらして避けているんだと思う。余程私が言ったことに腹を立てたんだろう。今更謝ろうにも既にお互い話し合うタイミングなんて見失ってしまっているんだし、きっともう無理なんだ。…近藤さんはわしわしと頬を掻きながら「いや〜あのね名前?そんなことは…うん、やっぱり何でもない」とか何とか言っているが、全く何が言いたいのか分からないのでスルーさせてもらおう。
「で…問題は総悟だな!ガッハッハ!彼奴も中々やるなぁ!うん、少なくとも名前を気に入っていることは隊士達の中でも周知の事実だったぞ」
「そ、そうなんですか…こちらとしては毎日嫌がらせ悪戯からかいのオンパレード過ぎて、逆にどこにそんな要素があったのか…」
「ホラ小学生男子のアレだよ。好きな子ほど虐めたくなっちゃうを言葉の通りそのまま実行してんの奴は!恐らくだが総悟は、名前に想いを伝えたことで軽い興奮状態というか…まあ、ハイになってるんだと思うんだ」
「…それは、どういう……」
「今まで名前の嫌がる顔を見ることでかろうじて張れていた虚勢が崩壊しちまったんだ。…どこでどうやって自分の気持ちを落ち着かせるか、探っている最中だと思う」
近藤さんの言葉に、…妙に納得してしまっている自分がいた。総悟が私を虐めていた理由が、愛情の裏返しだと仮定する。総悟は人一倍プライドが高くてあまり弱ったり、焦ったりする所を他人に見せない。…そのはずだったのに、「加虐」と「恋心」その二面性を私に見せてしまったことによる混乱が今朝の結果…というわけか。
そっと自身の唇に触れながら思い出していた。…総悟に告白されたあの日。私を無理やり押し倒し、訳も分からないまま重ねられた唇。初めて見た、総悟の余裕のない表情。
“…………好きだ。
俺じゃない誰かのせいで沈んだテメーのこと、…放っておけるほど俺は余裕のある人間じゃねーんで ”
「………っっわあーーーーっ!!!!」
「何急にィ!?って、えっ何その顔…まさか名前ヤっ………エェ!?ふしだらっ…ふしだらです!!付き合う前の男女がそんなっ……しかも屯所でアンタら何やってんのォ!?」
「いやいやいやいや誤解です!!!未遂っ…てのもおかしいか、違いますから、一線は越えてないですからっ!!」
「一線“は”って何、“は”ってェェ!?!?じゃあ何!?キッスはしたってこと!?マウストゥーマウスのディープなキッスはしたってことなのォォ!?」
「近藤さん声デカ過ぎるもう黙ってええええ!!!」
見廻りを終えて昼食を取りに戻って来た総悟が、一部始終全て聞き耳を立てながらくつくつと笑っていたことなんて、…そしてもうひとり、私の悩みの種である張本人も煙草をふかしながら全てを聞いていたことなんて。私は一切気付くことないまま、ひとり興奮してのたうち回るゴリラにバナナを添え、局長室を後にした。
完。
(あららぁ?聞き耳なんて趣味悪いですぜ土方さん)
(…はぁ。別に、たまたま通りかかってうるせーから文句言いに来ただけだよ。テメーも飯食い終わったんならさっさと隊務に戻れ)
(今の全部聞いてやしたか?俺の話も)
(…………だったら何だ)
(ご自分が一番よく分かってるんじゃないですかィ?いい加減無駄な意地張っても見苦しいだけでさァ。俺ぁ正々堂々、アンタと奪い合いてーんだ。アイツを)
(………妙な勘違いしてんじゃねェよ。オラ早く戻れ)
(………………本当、生き辛そうな男だねィ)