Main Story
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《其ノ玖》普段良からぬことを考える奴の優しさは普通の奴の倍心にクる
❀
何気初対面の神楽ちゃんと、寝るまで遊びに付き合って、調子に乗った銀ちゃんとまた飲み直しを始めたら、何だかんだもう空は明るくなってしまったじゃありませんか。流石の近藤さんからも4、5件ほど着信が入っていたけど気付かず酒に溺れてたなんてあまりに情けなくて言えるわけない。最終的にソファで潰れて寝てしまった銀ちゃんに毛布をかけ、ミネラルウォーターをテーブルに置いてタクシーで屯所まで帰って来た。
…あと3時間もせんと朝食の準備が始まるんですけど。
誰か夢だと言ってください。
門の前には既に隊士の中里さんと面川さんが見張りとして立っていて、「あっ!名前ちゃん帰って来た!おかえりな…酒クサッ!!!」と言われてしまう始末。そんな彼らに引き攣った愛想笑いを浮かべてそそくさと玄関先まで走り、靴を脱いでお風呂まで直行しようと段差をあがった。すると突然チャキ…と聞き馴染みのない金属音が聞こえたので、恐る恐る見上げてみると___
「ただの女中のくせに朝帰りたァ良いご身分だな。酒の匂いプンプンさせやがってコラ」
「…廃刀令のご時世ですよ。一般人にそんな物騒なもの向けないでください。正気ですか?」
「これだけ毎日通報が絶えねェ治安の悪〜ィかぶき町を女ひとりで朝まで出歩くテメェが正気か?…皆どれだけ心配したと思ってやがる」
この数日、大して声もかけて来なかったくせにこういう時ばっかり何なんだ。初めて土方さんへの苛苛がつのる。どんどん目の前のニコチンさんに言ってやりたい言葉が頭の中に浮かんでは、いや流石にこれは口悪いな…と一つ一つ候補から消していく。てかそもそも嫁入り前の娘の顔に真剣向けるって役人としてどうなの。
「こんな時間までどこほっつき歩いてた」
「私が銀ちゃんと朝までコースでお酒飲んでようと、…土方さんに関係ありませんよね」
「…ハッ。よりによって万事屋の腐れ天パ野郎とはな。ちったぁ男を見る目くれェ養ってみたらどうだ?」
「っ………」
『俺なら名前にそんな顔絶対させたりしねーよ。
…マジで来る気ない?ウチに』
数時間前の銀ちゃんが言ってくれた言葉を思い出して、私の目には言いようのない悔しさに涙が浮かんでいた。私の居場所は真選組だけだなんて、どうしてそんな事思ったんだろう。…朝帰りすればもしかしたら土方さんの気を引けるんじゃないかと思って。本当はちょっと緊張しながら帰路についた。だけど蓋を開けてみれば、土方さんは私のことなんて本当にどうでもいいんだな、と思う。心配している振りをしてストレスをぶつけているだけ。…こんな風に嫌味言われるなら、本当に今すぐここを出て行きたい。心からそう思った。
「…なんなんですか…こないだから、目も合わせようとしない、まともに会話すらなかったくせに…小言言う時だけ言いたいことスラスラ出てくるんですね、私のことそんなに目障りですか…?」
「……は?何言って」
「じゃあなんで真選組に置いたんですか!?私銀ちゃんに言われました、やっぱりうちに来いって!!でも私の居場所はここだからって、ちゃんと帰って来たのに、そんな言われようあんまりです!!こんな事なら土方さんの言うことなんか、信じなければ良かった……!!」
「オイ、……っ待て、!テメェだけ言いたいこと言って逃げんのは、」
「やっ………痛いっ、離してっ!!」
掴まれた右手首が熱い。もうこれ以上貴方の声を聞いていたら頭がおかしくなりそう。だって、もうとっくに私の土方さんへの気持ちは制御できないほどに膨らんでいるのに。
もう取り返しがつかないほど、私はあなたに恋をしてしまってるというのに。
振りほどいてその場を駆け出したら、もう彼が私を引き止めることはなかった。溢れる涙は拭っても拭っても止まらない。………ねえ、こんなに心が痛いなら、神様はどうして私をこの世界に引き入れたの。
・ ・ ・
「おはよーございます…
今朝の日替わりはサバの味噌煮でーす…」
「……お、沖田隊長、なんか今日の名前ちゃん…めっちゃどんよりしてませんか?」
「近藤さん曰く今朝まで飲み歩いてたらしいからただの二日酔いじゃねーのかィ。にしては随分と目腫れぼってェけどな。まさに目の上にタンコブくっつけて腹立つ顔でさァ」
朝稽古を終えてザキと食堂に向かうと、明らかにいつもと様子の違う名前が配膳を担当していた。飯を受け取った隊士共も口をあんぐり開けて二度見したりヒソヒソと噂をする者続出。他のおばちゃんも心配そうに名前を気遣ってるみてェだ。…見てるこっちがイライラするんでどうにかなりやせんかねィ、あの態度。普段感情の起伏が激しいというよりかは、屯所のどこにいても聞こえるくらいのバカデカい声で挨拶して回るようなやかましい女が、こうまでもテンションが落ちていたらそりゃ奴らのような反応になるのも頷ける。
「飲み歩いてって…まさか一人で!?」
「いや。万事屋の旦那と一緒だったみてェだけどな。
近藤さんに迎えを頼んでたらしいが一向に連絡がつかねーもんだから、土方のヤローも気揉んで珍しく酒呑んでたし」
「へええ…名前ちゃんって結構魔性だなぁ……」
「人様の迷惑顧みねェバカっつーんだぜ、ただの」
「いやそれアンタが言います?」
確かにザキの言うことに一理はある。この短期間で、これだけの隊士と打ち解けた人当たりの良さは天性の才能とも言える。何にせよ、俺らの大将である近藤さんですら(騙されやすいとはいえ)一日で丸め込んじまう気性の持ち主だ。だがそんなくっだらねェことよりも、俺が気になるのは今朝、眠い目擦り寝惚けながら厠に向かった時に聞こえた会話。何やら玄関先で言い争っている男女の声。聞き慣れた馴染みのあるヤローと女の声だ。好奇心、興味本位で足音立てずに近くの影に隠れると、「痛い、離して!」とありったけの力で土方の手を振り解く名前の姿があった。
……こりゃ面白ェ。
心底憎き土方のヤローが女に拒否られている図なんざ中々見れるもんじゃねーからな。
また一つ、マヨネーズバカの弱味を握れた最高の気分で俺は深い二度寝に成功したのだが、結局奴らの言い争いの原因は何なのか分からずじまいである。
そうこう考え事をしているうちに食い終わった食器類を返却口に返す。その棚の隙間から少し離れたところに見えたのは虚ろな目で洗い物に勤しむ名前の姿。一番近くにいたおばちゃんに声を掛け、奴を呼ぶように頼んだ。暫くすると、マスクと結っていた髪を解きながら、相変わらずの気怠さで「何の用?」と俺の方に歩いてくる名前の姿。靡く髪が色っぽくて少し言葉に詰まったなんて絶っっっっ対に何かの間違いでィ。
「今日午後から非番にしてもらいなせェ。んな真っ青な顔で仕事されてもかえって他の奴らが気遣うんでさァ」
「いや確かにそうさせてもらえたら凄くありがたいけど。二日酔いって早退欠勤の理由としては最弱王だからね、まずそんなこと言えねーし。私仕事だけは真面目にやるって決めてっし。…てか何企んでるの今回は。それ言う為だけに呼んだ訳じゃないでしょ?」
クマだらけの青ざめた顔で、醜女と化した名前が俺の顔を見てなにか胡散臭いものを見るような目をした。本当に可愛くねー女。何でこんな女にちょっかいかけたくなるのか自分でもよく分からない。
…ただいつもの元気がねぇと、こっちだって調子狂うんでさァ。
「俺だって一応労わってやりたくて言ってんですぜ。今朝の野郎との言い争いは何だったのか、…まあお前のその態度、主たる原因はそこだと踏んでやすけど」
「っき、聞いてたの…!?」
「何だよ。聞かれちゃまずいことでもあったのかィ?」
「………っ」
暫しの沈黙の後、名前はきゅっと俺の隊服の裾を掴んで、訴えるような涙目を俺に向けた。小動物のようなその表情に不覚にも嗜虐心が擽られる。…だがそれ以上に、俺ァいつの間にか、こいつの怒った顔と泣き顔には弱くなっちまってたらしい。
土方と仲違いをした、俺の付け入る隙がベストなタイミングで回ってきた。思えば初めて会った時から俺はこいつに…近くに居ればついからかいたくなるほど、他の女とは違う感情が芽生えていたと思う。悪戯を仕掛ければ仕掛けるほど、名前からの反応は期待していた以上のものが返ってくる。そのくせ二人きりの時はやけに素直で、俺と話すのが楽しいだなんだと笑って言う。…もう答えなんてとっくに出てたじゃねェか。
「……名前、俺は今回はおふざけ無しで聞いてやすよ。
土方と何があったのか、…ちゃんと俺に話してみろィ」
「……………そーご、誰にも言わない?」
「俺だってシリアスとギャグの区別くらいつきまさァ。そんなに仕事がしてェなら止めねーが、…とりあえず夜部屋に行くから寝んじゃねェぞ」
「うん、分かった……待ってる」
唇の端まで流れ落ちてきた涙を拭ってやれば、ほんの少しだけ笑みを浮かべて俺を送り出した名前。このまま気持ちをかっさらっちまおうと思っていたのに、今現在ドギマギさせられていたのは俺の方。誤魔化すようにぐしゃりと前髪をかきあげて深いため息をつく。全く俺ら、とんでもねェ女を傍に置いちまってるようだ。
完。
(………今の見た?)
(………沖田隊長?)
(やっっべェよあのテメーの女に向けるような優しい視線!!いつも名前ちゃんにちょっかい出してブチ切れられてんのにやっぱりそーいう事だったん)
(…お、おい後ろ、)
(え?)
(仲良く盗み見たァいい趣味してんじゃねーかテメェら、そんなに俺の新生バズーカ喰らいたかったならわざわざ出向きやしたぜー。言ってくれたら良かったのにー)
((ギャアアアアァァァァ!!!))
❀
何気初対面の神楽ちゃんと、寝るまで遊びに付き合って、調子に乗った銀ちゃんとまた飲み直しを始めたら、何だかんだもう空は明るくなってしまったじゃありませんか。流石の近藤さんからも4、5件ほど着信が入っていたけど気付かず酒に溺れてたなんてあまりに情けなくて言えるわけない。最終的にソファで潰れて寝てしまった銀ちゃんに毛布をかけ、ミネラルウォーターをテーブルに置いてタクシーで屯所まで帰って来た。
…あと3時間もせんと朝食の準備が始まるんですけど。
誰か夢だと言ってください。
門の前には既に隊士の中里さんと面川さんが見張りとして立っていて、「あっ!名前ちゃん帰って来た!おかえりな…酒クサッ!!!」と言われてしまう始末。そんな彼らに引き攣った愛想笑いを浮かべてそそくさと玄関先まで走り、靴を脱いでお風呂まで直行しようと段差をあがった。すると突然チャキ…と聞き馴染みのない金属音が聞こえたので、恐る恐る見上げてみると___
「ただの女中のくせに朝帰りたァ良いご身分だな。酒の匂いプンプンさせやがってコラ」
「…廃刀令のご時世ですよ。一般人にそんな物騒なもの向けないでください。正気ですか?」
「これだけ毎日通報が絶えねェ治安の悪〜ィかぶき町を女ひとりで朝まで出歩くテメェが正気か?…皆どれだけ心配したと思ってやがる」
この数日、大して声もかけて来なかったくせにこういう時ばっかり何なんだ。初めて土方さんへの苛苛がつのる。どんどん目の前のニコチンさんに言ってやりたい言葉が頭の中に浮かんでは、いや流石にこれは口悪いな…と一つ一つ候補から消していく。てかそもそも嫁入り前の娘の顔に真剣向けるって役人としてどうなの。
「こんな時間までどこほっつき歩いてた」
「私が銀ちゃんと朝までコースでお酒飲んでようと、…土方さんに関係ありませんよね」
「…ハッ。よりによって万事屋の腐れ天パ野郎とはな。ちったぁ男を見る目くれェ養ってみたらどうだ?」
「っ………」
『俺なら名前にそんな顔絶対させたりしねーよ。
…マジで来る気ない?ウチに』
数時間前の銀ちゃんが言ってくれた言葉を思い出して、私の目には言いようのない悔しさに涙が浮かんでいた。私の居場所は真選組だけだなんて、どうしてそんな事思ったんだろう。…朝帰りすればもしかしたら土方さんの気を引けるんじゃないかと思って。本当はちょっと緊張しながら帰路についた。だけど蓋を開けてみれば、土方さんは私のことなんて本当にどうでもいいんだな、と思う。心配している振りをしてストレスをぶつけているだけ。…こんな風に嫌味言われるなら、本当に今すぐここを出て行きたい。心からそう思った。
「…なんなんですか…こないだから、目も合わせようとしない、まともに会話すらなかったくせに…小言言う時だけ言いたいことスラスラ出てくるんですね、私のことそんなに目障りですか…?」
「……は?何言って」
「じゃあなんで真選組に置いたんですか!?私銀ちゃんに言われました、やっぱりうちに来いって!!でも私の居場所はここだからって、ちゃんと帰って来たのに、そんな言われようあんまりです!!こんな事なら土方さんの言うことなんか、信じなければ良かった……!!」
「オイ、……っ待て、!テメェだけ言いたいこと言って逃げんのは、」
「やっ………痛いっ、離してっ!!」
掴まれた右手首が熱い。もうこれ以上貴方の声を聞いていたら頭がおかしくなりそう。だって、もうとっくに私の土方さんへの気持ちは制御できないほどに膨らんでいるのに。
もう取り返しがつかないほど、私はあなたに恋をしてしまってるというのに。
振りほどいてその場を駆け出したら、もう彼が私を引き止めることはなかった。溢れる涙は拭っても拭っても止まらない。………ねえ、こんなに心が痛いなら、神様はどうして私をこの世界に引き入れたの。
・ ・ ・
「おはよーございます…
今朝の日替わりはサバの味噌煮でーす…」
「……お、沖田隊長、なんか今日の名前ちゃん…めっちゃどんよりしてませんか?」
「近藤さん曰く今朝まで飲み歩いてたらしいからただの二日酔いじゃねーのかィ。にしては随分と目腫れぼってェけどな。まさに目の上にタンコブくっつけて腹立つ顔でさァ」
朝稽古を終えてザキと食堂に向かうと、明らかにいつもと様子の違う名前が配膳を担当していた。飯を受け取った隊士共も口をあんぐり開けて二度見したりヒソヒソと噂をする者続出。他のおばちゃんも心配そうに名前を気遣ってるみてェだ。…見てるこっちがイライラするんでどうにかなりやせんかねィ、あの態度。普段感情の起伏が激しいというよりかは、屯所のどこにいても聞こえるくらいのバカデカい声で挨拶して回るようなやかましい女が、こうまでもテンションが落ちていたらそりゃ奴らのような反応になるのも頷ける。
「飲み歩いてって…まさか一人で!?」
「いや。万事屋の旦那と一緒だったみてェだけどな。
近藤さんに迎えを頼んでたらしいが一向に連絡がつかねーもんだから、土方のヤローも気揉んで珍しく酒呑んでたし」
「へええ…名前ちゃんって結構魔性だなぁ……」
「人様の迷惑顧みねェバカっつーんだぜ、ただの」
「いやそれアンタが言います?」
確かにザキの言うことに一理はある。この短期間で、これだけの隊士と打ち解けた人当たりの良さは天性の才能とも言える。何にせよ、俺らの大将である近藤さんですら(騙されやすいとはいえ)一日で丸め込んじまう気性の持ち主だ。だがそんなくっだらねェことよりも、俺が気になるのは今朝、眠い目擦り寝惚けながら厠に向かった時に聞こえた会話。何やら玄関先で言い争っている男女の声。聞き慣れた馴染みのあるヤローと女の声だ。好奇心、興味本位で足音立てずに近くの影に隠れると、「痛い、離して!」とありったけの力で土方の手を振り解く名前の姿があった。
……こりゃ面白ェ。
心底憎き土方のヤローが女に拒否られている図なんざ中々見れるもんじゃねーからな。
また一つ、マヨネーズバカの弱味を握れた最高の気分で俺は深い二度寝に成功したのだが、結局奴らの言い争いの原因は何なのか分からずじまいである。
そうこう考え事をしているうちに食い終わった食器類を返却口に返す。その棚の隙間から少し離れたところに見えたのは虚ろな目で洗い物に勤しむ名前の姿。一番近くにいたおばちゃんに声を掛け、奴を呼ぶように頼んだ。暫くすると、マスクと結っていた髪を解きながら、相変わらずの気怠さで「何の用?」と俺の方に歩いてくる名前の姿。靡く髪が色っぽくて少し言葉に詰まったなんて絶っっっっ対に何かの間違いでィ。
「今日午後から非番にしてもらいなせェ。んな真っ青な顔で仕事されてもかえって他の奴らが気遣うんでさァ」
「いや確かにそうさせてもらえたら凄くありがたいけど。二日酔いって早退欠勤の理由としては最弱王だからね、まずそんなこと言えねーし。私仕事だけは真面目にやるって決めてっし。…てか何企んでるの今回は。それ言う為だけに呼んだ訳じゃないでしょ?」
クマだらけの青ざめた顔で、醜女と化した名前が俺の顔を見てなにか胡散臭いものを見るような目をした。本当に可愛くねー女。何でこんな女にちょっかいかけたくなるのか自分でもよく分からない。
…ただいつもの元気がねぇと、こっちだって調子狂うんでさァ。
「俺だって一応労わってやりたくて言ってんですぜ。今朝の野郎との言い争いは何だったのか、…まあお前のその態度、主たる原因はそこだと踏んでやすけど」
「っき、聞いてたの…!?」
「何だよ。聞かれちゃまずいことでもあったのかィ?」
「………っ」
暫しの沈黙の後、名前はきゅっと俺の隊服の裾を掴んで、訴えるような涙目を俺に向けた。小動物のようなその表情に不覚にも嗜虐心が擽られる。…だがそれ以上に、俺ァいつの間にか、こいつの怒った顔と泣き顔には弱くなっちまってたらしい。
土方と仲違いをした、俺の付け入る隙がベストなタイミングで回ってきた。思えば初めて会った時から俺はこいつに…近くに居ればついからかいたくなるほど、他の女とは違う感情が芽生えていたと思う。悪戯を仕掛ければ仕掛けるほど、名前からの反応は期待していた以上のものが返ってくる。そのくせ二人きりの時はやけに素直で、俺と話すのが楽しいだなんだと笑って言う。…もう答えなんてとっくに出てたじゃねェか。
「……名前、俺は今回はおふざけ無しで聞いてやすよ。
土方と何があったのか、…ちゃんと俺に話してみろィ」
「……………そーご、誰にも言わない?」
「俺だってシリアスとギャグの区別くらいつきまさァ。そんなに仕事がしてェなら止めねーが、…とりあえず夜部屋に行くから寝んじゃねェぞ」
「うん、分かった……待ってる」
唇の端まで流れ落ちてきた涙を拭ってやれば、ほんの少しだけ笑みを浮かべて俺を送り出した名前。このまま気持ちをかっさらっちまおうと思っていたのに、今現在ドギマギさせられていたのは俺の方。誤魔化すようにぐしゃりと前髪をかきあげて深いため息をつく。全く俺ら、とんでもねェ女を傍に置いちまってるようだ。
完。
(………今の見た?)
(………沖田隊長?)
(やっっべェよあのテメーの女に向けるような優しい視線!!いつも名前ちゃんにちょっかい出してブチ切れられてんのにやっぱりそーいう事だったん)
(…お、おい後ろ、)
(え?)
(仲良く盗み見たァいい趣味してんじゃねーかテメェら、そんなに俺の新生バズーカ喰らいたかったならわざわざ出向きやしたぜー。言ってくれたら良かったのにー)
((ギャアアアアァァァァ!!!))