君からのお守り……xxx
「えっと、今日の依頼場所は……」
いつものようにソファに腰をかけて、依頼書に書いてある場所や依頼内容の確認をしている時、耳元でガリッ!と音が聞こえた。
「痛っ……!」
頬に鋭い痛みが走る。ああ……またやっちまった。
書物などを読んでいる時、無意識に頬を指先でかいてしまう癖が昔からあるのだが、右腕が悪魔になってから力加減が上手くできなくて、頬を引っかいて傷を作ってしまうことが前々からあった。しかも、今回はいつもより強めに引っかいてしまった。
「うわ……結構深く抉っちまったな……」
テーブルに置いてある手鏡で頬の傷を確認すると、一直線にできた傷口から血があふれ出して、顎先まで伝ってきていた。
我ながら情けないと思い、俺はため息をつきながらティッシュペーパーを一枚手に取ると、それで頬に流れている血を拭き、止血するために傷口を押さえる。
ちょうどその時、台所からキリエが昼食をランチバッグに入れて持ってきた。
「ネロ、お待たせ!サンドイッチ作ったから、お腹が空いたらダンテさんと一緒に食べて……って、ネロ?!その傷どうしたの?!」
ランチバッグを俺に渡そうとした時、頬の傷に気付いたキリエは驚きから目を見開く。
「ははっ……いつもの癖で、つい指先でガリッ!と……」
「ええっ……!大丈夫?ちょっと見せて……?」
キリエはランチバッグをテーブルの上に置くと、頬の傷を押さえているティッシュペーパーを俺の手から取り、少し屈んだ体勢で傷口の状態を確認してきた。
「やだ……結構深いじゃない……」
「大丈夫だよ。血は止まってるし、ほっとけばそのうち治るだろ」
「ダメよ!ちゃんと手当しないと!救急箱とってくるから、ちょっと待ってて……!」
そう言うとキリエは、救急箱を取りにいくためその場から一旦離れた。
(まったく、大袈裟だな……)
戸棚に入っている救急箱を探しているキリエの姿を見つめながら、俺は心の中でそう呟いた。
確かに引っかいた時はそれなりに痛かったし出血も多かったが、俺の体に悪魔の血が流れているおかげで傷の治りは普通の人間より早い。だから、これくらいの傷は本当に大したことはない。
(それに、こんなの日常茶飯事だしな。とは言っても、いい加減頬をかく癖を直さないとだな……キリエにも心配かけちまうし……)
そう思いながらため息をついたあと、救急箱を手に持ったキリエが俺の隣にゆっくりと腰を下ろす。
「お待たせ。簡単にだけど、傷の手当てするわね」
キリエは救急箱をテーブルに置き、中を開いた。そして、消毒液、ガーゼ、塗り薬、絆創膏をテーブルの上へと出す。
「少し滲みるかもしれないけど、我慢してね……」
「あぁ」
俺はキリエに返事をすると、顔周りの髪をかき分けて彼女に頬の傷を見せた。
「あら……本当に痛々しいわね……」
「ははっ……でも、見た目ほど痛くないんだぜ。だから、大したことないさ」
「もう、確かにネロだったら平気かもしれないけど……せっかく綺麗なお顔なんだから、傷跡は残ってほしくないな……」
「綺麗って……別に、そんなでもねぇよ……」
「ううん、綺麗よ。お肌も艶々だし、まつ毛も長いし。美人さんなのよ?ネロは」
キリエの言葉にどこか気恥ずかしくなった俺は、彼女から視線を外すようにほんの少し顔を背けた。
そんな俺の様子にクスクスと小さく笑いながら、キリエは消毒液をつけたガーゼで頬の傷を撫でるように触れてきた。
「っ……」
ほんの少し傷口が滲みる。その痛みに俺は一瞬顔を歪めた。
「あ、ごめんなさい……!痛かった……?」
「いや、大丈夫……」
「もう少し我慢してね。切り傷によく効く塗り薬、つけてあげるから……」
キリエは消毒液をつけたガーゼで再び傷口を拭いたあと、塗り薬の蓋を開けて中身を指先に少しとった。そして、今度はそれを俺の傷口に伸ばすように塗ってくる。
消毒液と同様、塗り薬もなかなか滲みる。俺は再び、痛みに顔を歪めた。
「あとは……傷口の保護をするために、絆創膏貼っておくわね。痒くなったりしたら外してね」
「あぁ。分かった」
絆創膏が貼りやすいように、俺は顔周りの髪が頬の傷に触れないように押さえる。
キリエは絆創膏を袋から取り出し、はく離紙を剥がすと俺の頬の傷にそっと貼り付けた。
「これでよし……と。お待たせネロ。これでもう、大丈夫よ」
「ありがとうキリエ。さてと……」
キリエに礼を言ったあと、そろそろ家を出ようか と思った俺はソファから立ちあがろうとする。その時、キリエが俺の服をギュッと掴んできた。
「あ、待って」
「?」
「ネロ、少しじっとしててね……」
そう言うとキリエは、指先で俺の髪をかき分けて頬に貼ってある絆創膏を見つめてくる。
まだ手当することが残っていたのだろうか。
そう思った矢先、絆創膏越しに頬に温かくてやわらかいものが触れたのを感じた。
「!」
チュッ……とリビングに小さな音が響き渡る。
その音により、絆創膏越しに頬にキスをされたのだと、俺は気付いた。
「ふふっ。早く傷が治るおまじないよ。それと、これ以上怪我をしないように、今日も無事にお仕事できますように……ってお守り。……なんてね」
そう言うとキリエは、ほんのり頬を赤く染めながら恥ずかしそうに自身の口元を指先で覆った。
そんな彼女の表情、仕草を見れば見るほど俺も恥ずかしくなってしまい、顔が熱くなっていくのを感じた。特に、絆創膏を貼られた場所がうずく。
「っ……夕飯までには……帰るよ」
俺は照れ臭くなった気持ちを誤魔化すようにキリエにそう言うと、ソファから立ち上がってテーブルに置いてあるランチバッグを手に取り、足早に玄関へと向かっていった。
そんな俺の後ろを、キリエは慌てて追ってくる。そして、玄関の外へと出ていく俺の背中に向かって「いってらっしゃい!」と声をかけてきた。
俺はほんの少しキリエのほうへ振り返ると、右手を上げて彼女の声に応える。
その時、チラッと視界に入ったキリエの唇。ふっくらとやわらかな彼女の唇の感触を思い出し、俺の体の芯が強く脈打った。
(っ……!今は堪えろ)
高鳴る鼓動を抑えるように、俺は依頼場所へ向かうため全力で走り出した。
***
今日の依頼はダンテと一緒におこなう。
俺はダンテとの待ち合わせ場所に向かって走り続けていた。
「はぁっ……」
ダンテはもう来ているだろうか。
苦しくなった息を整えようと立ち止まった矢先、遠目にダンテの姿が目に入った。
(やべぇ!遅刻だ!)
ダンテは待ち合わせに指定した喫茶店の前に佇んでおり、俺は息を切らしながら慌ててその場所に駆け寄った。
「はぁっ……はぁっ……悪い、ダンテ……!待たせたな……」
「おっ、やっと来たか。お前にしては珍しく遅刻だな」
「はぁ……悪い……ちょっと、家を出る前にバタバタしちまって……」
「まぁ、気にすんな。今日の依頼は大したことなさそうだし、そんなに慌てなくても大丈夫だぜ」
息を切らしている俺を落ち着かせようと、ダンテは俺の肩に手をポン……と置いてきた。
「ところで、なんだこれ?」
ダンテは少し首を傾げながら、指先で俺の顔周りの髪をそっとかき分ける。
「お前、怪我でもしたのか?絆創膏なんて貼って」
「ははっ……まぁな。癖で頬をかいてた時に、ついガリッ!と……」
俺は苦笑いしながら、ダンテに右腕をチラッと見せる。
「なるほどなぁ。お前のことだから、力加減が上手くできなくて思い切り引っかいちまったんだろ。その右手で」
「その通りだよ。まったく……困った癖だぜ……」
「まぁ、幸いにも俺たちの体には悪魔の血が流れていることだし、その怪我もとっくに治っているだろ。絆創膏、剥がしても問題ないんじゃないか?」
そう言ってダンテは、俺の頬に貼ってある絆創膏をそっと指さしてきた。
「あっ……これはその……」
ダンテに絆創膏を指さされ、家を出る前の出来事を思い出した俺は、照れ臭さからそっと顔を背ける。
「ネロ……?」
俺の様子に疑問を抱いたのか、ダンテは俺の顔を覗き込みながら声をかけてきた。
俺はダンテの顔を横目でチラチラと見ながら、囁くように話し始める。
「この絆創膏はその……まだ剥がしたくないんだ」
「ん?どうしてだ?」
「どうしてって……これはキリエが……」
顔が熱くなるのを感じながら、俺はポツリと呟いた。そして、指先でそっと頬の絆創膏に触れる。キリエのやわらかな唇の感触を思い出しながら。
そんな俺を見て大体のことを察したのか、ダンテは顎に手を添えながらニヤニヤとした表情を浮かべる。
「……なるほどな。嬢ちゃんに貼ってもらった絆創膏なら、そりゃあ剥がせないよな」
顔が更に熱くなるのを感じながら、ダンテの言葉に俺は静かに頷いた。
「ハハッ。可愛いところあるな、お前も」
「……うるせぇ」
「さてと、惚気話はこの辺りにしておいて、さっさと仕事を片付けようぜ。……絆創膏、剥がれないように気をつけろよ」
そう言ってダンテは、どこか楽しげな様子で片手を上げながら、依頼場所への道を歩き始めた。
「……分かってるよ」
ダンテに聞こえないくらいの小さい声でそう呟いたあと、俺は彼に着いていくように歩き始めた。
——傷が治っても、ずっと大切にするさ。
——君がくれたお守り。
了
いつものようにソファに腰をかけて、依頼書に書いてある場所や依頼内容の確認をしている時、耳元でガリッ!と音が聞こえた。
「痛っ……!」
頬に鋭い痛みが走る。ああ……またやっちまった。
書物などを読んでいる時、無意識に頬を指先でかいてしまう癖が昔からあるのだが、右腕が悪魔になってから力加減が上手くできなくて、頬を引っかいて傷を作ってしまうことが前々からあった。しかも、今回はいつもより強めに引っかいてしまった。
「うわ……結構深く抉っちまったな……」
テーブルに置いてある手鏡で頬の傷を確認すると、一直線にできた傷口から血があふれ出して、顎先まで伝ってきていた。
我ながら情けないと思い、俺はため息をつきながらティッシュペーパーを一枚手に取ると、それで頬に流れている血を拭き、止血するために傷口を押さえる。
ちょうどその時、台所からキリエが昼食をランチバッグに入れて持ってきた。
「ネロ、お待たせ!サンドイッチ作ったから、お腹が空いたらダンテさんと一緒に食べて……って、ネロ?!その傷どうしたの?!」
ランチバッグを俺に渡そうとした時、頬の傷に気付いたキリエは驚きから目を見開く。
「ははっ……いつもの癖で、つい指先でガリッ!と……」
「ええっ……!大丈夫?ちょっと見せて……?」
キリエはランチバッグをテーブルの上に置くと、頬の傷を押さえているティッシュペーパーを俺の手から取り、少し屈んだ体勢で傷口の状態を確認してきた。
「やだ……結構深いじゃない……」
「大丈夫だよ。血は止まってるし、ほっとけばそのうち治るだろ」
「ダメよ!ちゃんと手当しないと!救急箱とってくるから、ちょっと待ってて……!」
そう言うとキリエは、救急箱を取りにいくためその場から一旦離れた。
(まったく、大袈裟だな……)
戸棚に入っている救急箱を探しているキリエの姿を見つめながら、俺は心の中でそう呟いた。
確かに引っかいた時はそれなりに痛かったし出血も多かったが、俺の体に悪魔の血が流れているおかげで傷の治りは普通の人間より早い。だから、これくらいの傷は本当に大したことはない。
(それに、こんなの日常茶飯事だしな。とは言っても、いい加減頬をかく癖を直さないとだな……キリエにも心配かけちまうし……)
そう思いながらため息をついたあと、救急箱を手に持ったキリエが俺の隣にゆっくりと腰を下ろす。
「お待たせ。簡単にだけど、傷の手当てするわね」
キリエは救急箱をテーブルに置き、中を開いた。そして、消毒液、ガーゼ、塗り薬、絆創膏をテーブルの上へと出す。
「少し滲みるかもしれないけど、我慢してね……」
「あぁ」
俺はキリエに返事をすると、顔周りの髪をかき分けて彼女に頬の傷を見せた。
「あら……本当に痛々しいわね……」
「ははっ……でも、見た目ほど痛くないんだぜ。だから、大したことないさ」
「もう、確かにネロだったら平気かもしれないけど……せっかく綺麗なお顔なんだから、傷跡は残ってほしくないな……」
「綺麗って……別に、そんなでもねぇよ……」
「ううん、綺麗よ。お肌も艶々だし、まつ毛も長いし。美人さんなのよ?ネロは」
キリエの言葉にどこか気恥ずかしくなった俺は、彼女から視線を外すようにほんの少し顔を背けた。
そんな俺の様子にクスクスと小さく笑いながら、キリエは消毒液をつけたガーゼで頬の傷を撫でるように触れてきた。
「っ……」
ほんの少し傷口が滲みる。その痛みに俺は一瞬顔を歪めた。
「あ、ごめんなさい……!痛かった……?」
「いや、大丈夫……」
「もう少し我慢してね。切り傷によく効く塗り薬、つけてあげるから……」
キリエは消毒液をつけたガーゼで再び傷口を拭いたあと、塗り薬の蓋を開けて中身を指先に少しとった。そして、今度はそれを俺の傷口に伸ばすように塗ってくる。
消毒液と同様、塗り薬もなかなか滲みる。俺は再び、痛みに顔を歪めた。
「あとは……傷口の保護をするために、絆創膏貼っておくわね。痒くなったりしたら外してね」
「あぁ。分かった」
絆創膏が貼りやすいように、俺は顔周りの髪が頬の傷に触れないように押さえる。
キリエは絆創膏を袋から取り出し、はく離紙を剥がすと俺の頬の傷にそっと貼り付けた。
「これでよし……と。お待たせネロ。これでもう、大丈夫よ」
「ありがとうキリエ。さてと……」
キリエに礼を言ったあと、そろそろ家を出ようか と思った俺はソファから立ちあがろうとする。その時、キリエが俺の服をギュッと掴んできた。
「あ、待って」
「?」
「ネロ、少しじっとしててね……」
そう言うとキリエは、指先で俺の髪をかき分けて頬に貼ってある絆創膏を見つめてくる。
まだ手当することが残っていたのだろうか。
そう思った矢先、絆創膏越しに頬に温かくてやわらかいものが触れたのを感じた。
「!」
チュッ……とリビングに小さな音が響き渡る。
その音により、絆創膏越しに頬にキスをされたのだと、俺は気付いた。
「ふふっ。早く傷が治るおまじないよ。それと、これ以上怪我をしないように、今日も無事にお仕事できますように……ってお守り。……なんてね」
そう言うとキリエは、ほんのり頬を赤く染めながら恥ずかしそうに自身の口元を指先で覆った。
そんな彼女の表情、仕草を見れば見るほど俺も恥ずかしくなってしまい、顔が熱くなっていくのを感じた。特に、絆創膏を貼られた場所がうずく。
「っ……夕飯までには……帰るよ」
俺は照れ臭くなった気持ちを誤魔化すようにキリエにそう言うと、ソファから立ち上がってテーブルに置いてあるランチバッグを手に取り、足早に玄関へと向かっていった。
そんな俺の後ろを、キリエは慌てて追ってくる。そして、玄関の外へと出ていく俺の背中に向かって「いってらっしゃい!」と声をかけてきた。
俺はほんの少しキリエのほうへ振り返ると、右手を上げて彼女の声に応える。
その時、チラッと視界に入ったキリエの唇。ふっくらとやわらかな彼女の唇の感触を思い出し、俺の体の芯が強く脈打った。
(っ……!今は堪えろ)
高鳴る鼓動を抑えるように、俺は依頼場所へ向かうため全力で走り出した。
***
今日の依頼はダンテと一緒におこなう。
俺はダンテとの待ち合わせ場所に向かって走り続けていた。
「はぁっ……」
ダンテはもう来ているだろうか。
苦しくなった息を整えようと立ち止まった矢先、遠目にダンテの姿が目に入った。
(やべぇ!遅刻だ!)
ダンテは待ち合わせに指定した喫茶店の前に佇んでおり、俺は息を切らしながら慌ててその場所に駆け寄った。
「はぁっ……はぁっ……悪い、ダンテ……!待たせたな……」
「おっ、やっと来たか。お前にしては珍しく遅刻だな」
「はぁ……悪い……ちょっと、家を出る前にバタバタしちまって……」
「まぁ、気にすんな。今日の依頼は大したことなさそうだし、そんなに慌てなくても大丈夫だぜ」
息を切らしている俺を落ち着かせようと、ダンテは俺の肩に手をポン……と置いてきた。
「ところで、なんだこれ?」
ダンテは少し首を傾げながら、指先で俺の顔周りの髪をそっとかき分ける。
「お前、怪我でもしたのか?絆創膏なんて貼って」
「ははっ……まぁな。癖で頬をかいてた時に、ついガリッ!と……」
俺は苦笑いしながら、ダンテに右腕をチラッと見せる。
「なるほどなぁ。お前のことだから、力加減が上手くできなくて思い切り引っかいちまったんだろ。その右手で」
「その通りだよ。まったく……困った癖だぜ……」
「まぁ、幸いにも俺たちの体には悪魔の血が流れていることだし、その怪我もとっくに治っているだろ。絆創膏、剥がしても問題ないんじゃないか?」
そう言ってダンテは、俺の頬に貼ってある絆創膏をそっと指さしてきた。
「あっ……これはその……」
ダンテに絆創膏を指さされ、家を出る前の出来事を思い出した俺は、照れ臭さからそっと顔を背ける。
「ネロ……?」
俺の様子に疑問を抱いたのか、ダンテは俺の顔を覗き込みながら声をかけてきた。
俺はダンテの顔を横目でチラチラと見ながら、囁くように話し始める。
「この絆創膏はその……まだ剥がしたくないんだ」
「ん?どうしてだ?」
「どうしてって……これはキリエが……」
顔が熱くなるのを感じながら、俺はポツリと呟いた。そして、指先でそっと頬の絆創膏に触れる。キリエのやわらかな唇の感触を思い出しながら。
そんな俺を見て大体のことを察したのか、ダンテは顎に手を添えながらニヤニヤとした表情を浮かべる。
「……なるほどな。嬢ちゃんに貼ってもらった絆創膏なら、そりゃあ剥がせないよな」
顔が更に熱くなるのを感じながら、ダンテの言葉に俺は静かに頷いた。
「ハハッ。可愛いところあるな、お前も」
「……うるせぇ」
「さてと、惚気話はこの辺りにしておいて、さっさと仕事を片付けようぜ。……絆創膏、剥がれないように気をつけろよ」
そう言ってダンテは、どこか楽しげな様子で片手を上げながら、依頼場所への道を歩き始めた。
「……分かってるよ」
ダンテに聞こえないくらいの小さい声でそう呟いたあと、俺は彼に着いていくように歩き始めた。
——傷が治っても、ずっと大切にするさ。
——君がくれたお守り。
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