hands
フォルトゥナで起きた悪魔絡みの事件以来、手を繋ぐ時キリエはいつも、右手だけを握ってくるようになった。
彼女が右手を握ってくれるたびに、悪魔の血が流れている俺を本当に受け入れてくれてることを実感し、幸福感に満たされる。
だけど、たまには……
「ネロ、今日はどこに行きたい?」
「そうだな……天気もいいし、教会の近くの公園に行くか」
「ふふっ、よかった。私もちょうど、その場所に行きたかったのよ。花壇のお花が綺麗に咲いている頃だと思うから、見に行きたいなって」
ピクニックバスケットを右手に持ちながら、俺の顔を覗き込み微笑んでくるキリエ。そして、いつものように俺に向かって左手を差し出してきた。俺もいつものように、彼女に向かって右手を差し出す。
そのまま手を繋ぐかと思いきや、俺はキリエが右手に持っているピクニックバスケットを手に取った。
「ネロ……?」
「荷物、重たいだろ?俺が持つよ」
「?うん、ありがとう……」
行き場のなくなった左手をどうしようかとソワソワした様子を見せるキリエ。そんな彼女の姿を見て俺は微笑んだあと、自身の左手を差し出した。
「ほら、行こうか」
「う、うん……」
いつもと違う反対の手を差し出されたことに戸惑っているのか、キリエはぎこちない様子で俺の左手を右手で握ってきた。
「たまには、こっちの手もいいだろ?」
「え?」
「その、少し違うんだよな。肌の感触とか温もりとか。それに……」
素肌で君を感じたい。だから、たまには左手も握ってほしいだなんて、そんなことを思う自分が少しだけ恥ずかしくなって、俺はキリエからそっと顔を背けた。
俺の耳に、彼女がクスクスと笑う声が聞こえる。
「うん、分かったわ。今度からお出かけする時は、ネロが繋ぎたいほうの手、握るね」
そう言うとキリエは一旦右手を離し、俺の左手に一本一本指を絡ませてきた。彼女の指がすべて絡んだと同時に、俺は無意識にギュッと手を握りしめる。俺のその行為に応えるように、キリエも手を握り返してきた。
「ネロの手って、柔らかいのね」
「そりゃあ、右手と比べたら柔らかいと思うけど……」
「それもあるかもしれないけど、皮膚に厚みがあるというか、フニフニしてて柔らかいなって」
「ははっ。なんだそれ」
そう会話をして互いに笑い合ったあと、俺たちは歩き始めた。
公園に向かう道中、キリエはずっと俺の左手をギュッ、ギュッと、肌の感触を楽しむかのように握っていた。
「キリエ、いつまでそうやって握っているの?」
「ふふっ。だって、ネロの手がフニフニ柔らかくて、握ってて心地よくなるんだもん♪」
俺の左手の感触がそんなにいいのか、キリエの足取りは弾んでいた。
その時、俺の右腕が儚い光を発する。それは、俺だけに何かを訴えているかのように思えた。
「……キリエは、左手のほうが好き?」
俺は自身の右腕にチラッと視線を向けたあと、彼女にそう尋ねた。
「ううん、どっちも好きよ。私は、ネロのすべてが大好き」
なんの迷いもないキリエのその言葉に、俺の右腕が反応するように強い光を発する。その光に気付いたキリエは、俺の右腕に視線を向けたあと、再びクスクスと笑った。
「帰りは、右手握ってあげるね」
「……」
帰りの時間が待ちきれない。
俺はピクニックバスケットを右の肘にかけるように持ち直したあと、俺の左手を握っているキリエの右手にそっと触れる。
俺の心情を察したのか、キリエは俺の右手に自身の左手の指を一本ずつ絡めてきた。
「こっちの手も……繋ぎましょう?」
キリエのその言葉に、俺は静かに頷く。そして、彼女の左手をギュッと握った。
「……こんな姿、誰かに見られたら恥ずかしいな」
「そうね。でも、誰かに見られて恥ずかしくなっても、離したくないな……。ネロの両手」
「あぁ。俺もだよ」
ずっとこうして、君と手を繋いでいたい。
そう思った、ある日の出来事だった
了
彼女が右手を握ってくれるたびに、悪魔の血が流れている俺を本当に受け入れてくれてることを実感し、幸福感に満たされる。
だけど、たまには……
「ネロ、今日はどこに行きたい?」
「そうだな……天気もいいし、教会の近くの公園に行くか」
「ふふっ、よかった。私もちょうど、その場所に行きたかったのよ。花壇のお花が綺麗に咲いている頃だと思うから、見に行きたいなって」
ピクニックバスケットを右手に持ちながら、俺の顔を覗き込み微笑んでくるキリエ。そして、いつものように俺に向かって左手を差し出してきた。俺もいつものように、彼女に向かって右手を差し出す。
そのまま手を繋ぐかと思いきや、俺はキリエが右手に持っているピクニックバスケットを手に取った。
「ネロ……?」
「荷物、重たいだろ?俺が持つよ」
「?うん、ありがとう……」
行き場のなくなった左手をどうしようかとソワソワした様子を見せるキリエ。そんな彼女の姿を見て俺は微笑んだあと、自身の左手を差し出した。
「ほら、行こうか」
「う、うん……」
いつもと違う反対の手を差し出されたことに戸惑っているのか、キリエはぎこちない様子で俺の左手を右手で握ってきた。
「たまには、こっちの手もいいだろ?」
「え?」
「その、少し違うんだよな。肌の感触とか温もりとか。それに……」
素肌で君を感じたい。だから、たまには左手も握ってほしいだなんて、そんなことを思う自分が少しだけ恥ずかしくなって、俺はキリエからそっと顔を背けた。
俺の耳に、彼女がクスクスと笑う声が聞こえる。
「うん、分かったわ。今度からお出かけする時は、ネロが繋ぎたいほうの手、握るね」
そう言うとキリエは一旦右手を離し、俺の左手に一本一本指を絡ませてきた。彼女の指がすべて絡んだと同時に、俺は無意識にギュッと手を握りしめる。俺のその行為に応えるように、キリエも手を握り返してきた。
「ネロの手って、柔らかいのね」
「そりゃあ、右手と比べたら柔らかいと思うけど……」
「それもあるかもしれないけど、皮膚に厚みがあるというか、フニフニしてて柔らかいなって」
「ははっ。なんだそれ」
そう会話をして互いに笑い合ったあと、俺たちは歩き始めた。
公園に向かう道中、キリエはずっと俺の左手をギュッ、ギュッと、肌の感触を楽しむかのように握っていた。
「キリエ、いつまでそうやって握っているの?」
「ふふっ。だって、ネロの手がフニフニ柔らかくて、握ってて心地よくなるんだもん♪」
俺の左手の感触がそんなにいいのか、キリエの足取りは弾んでいた。
その時、俺の右腕が儚い光を発する。それは、俺だけに何かを訴えているかのように思えた。
「……キリエは、左手のほうが好き?」
俺は自身の右腕にチラッと視線を向けたあと、彼女にそう尋ねた。
「ううん、どっちも好きよ。私は、ネロのすべてが大好き」
なんの迷いもないキリエのその言葉に、俺の右腕が反応するように強い光を発する。その光に気付いたキリエは、俺の右腕に視線を向けたあと、再びクスクスと笑った。
「帰りは、右手握ってあげるね」
「……」
帰りの時間が待ちきれない。
俺はピクニックバスケットを右の肘にかけるように持ち直したあと、俺の左手を握っているキリエの右手にそっと触れる。
俺の心情を察したのか、キリエは俺の右手に自身の左手の指を一本ずつ絡めてきた。
「こっちの手も……繋ぎましょう?」
キリエのその言葉に、俺は静かに頷く。そして、彼女の左手をギュッと握った。
「……こんな姿、誰かに見られたら恥ずかしいな」
「そうね。でも、誰かに見られて恥ずかしくなっても、離したくないな……。ネロの両手」
「あぁ。俺もだよ」
ずっとこうして、君と手を繋いでいたい。
そう思った、ある日の出来事だった
了
1/1ページ