cool me,touch me

 真夏の夜の暑さに、誰もが寝苦しい日々を過ごしている。ネロも、その一人だった。
「あちぃ……」
 うだるような暑さに、ネロはうんざりした顔で、Tシャツの裾を何度も仰いでいた。
 だが、微々たる風では暑さをやわらげるはずもなく、汗で濡れたTシャツが肌に貼りつくばかりであった。
「〜っ!クッソ!」
 Tシャツが肌に貼りつく気持ち悪さに苛立ったネロは、それを乱暴に脱ぎ捨てると、寝室の窓を全開にして夜風にあたり始める。
「まったく……毎晩こんなに汗だくになっていたら、シャワー浴びる意味がないぜ……」
 きっと今夜も、暑くて寝苦しい夜を過ごすのだろう。そう思ったネロは生暖かい夜風にあたりながら、深くため息をついた。
 その時、寝室の扉がゆっくり開かれる。振り返るとそこには、シャワーを浴び終えたキリエがいた。
 上下セットでタオル素材のルームウェアを身に纏っているキリエ。夏の暑い時期限定のショートパンツ姿から覗く彼女の生脚に、ネロは目を見開くとゴクリと喉を鳴らした。
「ネロ、どうしたの?こんなところにTシャツ脱ぎ捨てて」
 ネロのちょっとした下心には気付かず、キリエは床に脱ぎ捨てられているTシャツを見て、彼に尋ねた。
「暑すぎてさ……。Tシャツも汗でぐっしょり濡れて肌に貼りつくし、気持ち悪くて……」
 ネロはキリエの脚に視線をチラチラと向けながら、そう答えた。
「そうよね……せっかくシャワーを浴びても、寝る前にはまた汗をかいてしまうし。仕方ないわ。でもね、そんな暑い時期にぴったりのものを、ニコがくれたのよ」
 そう言ってキリエはベッドに腰を下ろすと、手に持っていた涼しげな青色のチューブ容器をネロに見せた。
「ん?なんだ、それ」
 ネロは首を傾げ、窓から離れると、キリエの隣に腰を下ろした。
「これはね、冷感ボディジェルよ。私もまだ使っていないんだけど、体に塗るとひんやり気持ちいいみたいよ。それに、保湿効果もあるから、夏の暑い時期のシャワー後にはピッタリって、ニコが言ってたわ」
「ふーん……そんなもので、本当に暑さがやわらげるもんなのか?」
 ネロは半信半疑になりつつ、キリエが手に持っているボディジェルを横目に見る。
「せっかくだし、試しに使ってみる?ちょうどネロ、上に何も着ていないから、塗ってあげるわ」
 キリエはチューブの蓋を開けると、ボディジェルを手のひらに出した。そして、ネロの背中に、手のひらで優しくボディジェルを塗布する。
「!?うわっ、冷てぇ……!」
 突然、冷感ボディジェルを塗られたネロは、想像以上の清涼感に驚いて体を強張らせる。
「あ、ごめんなさいネロ。……多く塗りすぎたかしら」
「いや、大丈夫だけど……思ったより冷えるな、コレ」
 ボディジェルはミントのメントールがよく効いており、体が冷えるだけでなく、爽やかな香りも部屋中に広がった。
「でも、気持ちいいな、このボディジェル。すげえ涼しい」
「ふふっ……それならよかったわ。……ニコに、感謝しないとね」
 キリエは優しく微笑みながら、ネロの背中全体をマッサージするように、ボディジェルを塗りこんでいった。
(クセになりそうだな、コレ……)
 ボディジェルはとても冷たいけど、そのジェルによって滑らかに動くキリエの手のぬくもりが妙に心地よくて、ネロは清涼感に包まれながら体の奥が熱くなるのを感じた。

「さてと……こんな感じかな?」
 ネロの背中全体にボディジェルを塗り終わったキリエは、肌の感触を確かめようと、彼の背中を指先で突くように触れる。
「あら、吸い付くようにしっとりね。保湿効果もしっかり効いているわ」
 清涼感だけでなく、ボディジェルの保湿力に感心したキリエは、ベッドの上に乗るとネロの背中に頬を密着させて、彼の体を柔らかな腕で包み込んだ。
「ん……いい香りね。ネロの背中、ミントの爽やかな香りでリラックスできるわ」
 背中越しに伝わるキリエの頬、そして胸のやわらかさ。その感触を、ネロは黙ったまま噛み締めていた。
「それに、肌もしっとりしていて、触れてると気持ちいいわ……」
 ネロの背中から漂う爽やかな香りと、しっとりとした肌の感触。キリエはその心地よさをしばらく堪能すると、彼からそっと体を離した。そして、ベッドの上を移動し、ネロの隣に腰を下ろす。
「はい、これ。腕とか、あとは好きなところに自由に使ってね」
 キリエはチューブ容器の蓋を閉じると、隣に腰をかけているネロにボディジェルを手渡した。
「ありがとうキリエ。そしたら……」
 ネロはチューブ容器の蓋をカチッと開けると、ボディジェルを手のひらにたっぷりと出す。
「今度は俺が、キリエに塗ってあげるよ」
 キリエが「え?」と聞く前に、ネロの手は彼女が穿いているショートパンツの裾から、そっと中へと忍び込んできた。そのひんやりとした感触に、キリエは小さく震える。
「!きゃっ、冷たい……!」
「キリエだって、涼しくなりたいだろ……?」
「ま、待ってネロ……!そこは……きゃっ、ダメ……!」
「ほんとだ。保湿力も高いな、このボディジェル。キリエの脚、すげえしっとりしてる……」
 ネロはゆっくりと体を横に倒し、キリエの脚に頭を乗せる。そして、彼女の脚に頬を密着させた。先ほどのキリエと、同じように。
「気持ちいいな……キリエの脚……」
 ボディジェルによって潤いを増し、艶やかになったキリエの脚に魅了されながら、ネロはひんやりとした感触に酔いしれる。
「もう、ネロったら……」
 脚にネロの髪の毛がくすぐったく触れるたび、キリエの鼓動が高鳴る。
 キリエはネロが持っているボディジェルを手に取ると、中身を手のひらに出し、露わになっているネロの胸元へと手を伸ばしていった……



涼しさより、もっと熱くなる時間が――これから始まる。









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