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ふわりふわりと意識が戻っていく。さっきまでの自分は、自分ではない別のなにかだった気がする。
多分それは夢だったからそう思う訳で。先程までの記憶が架空のものだと分かると、重い瞼をそっと押し上げる。
「・・・・?」
「よう。・・・起きたか?」
視界に入ったのはニヤリと笑う漢の姿。
何か楽しそうにニヤつく漢が自分の同期兼恋人だと認識すると、なにを笑っているのか気になった。
「おはよう・・・。何、笑ってんの清澄・・・?」
「ん、おはようさん。」
「・・・・・今何時・・・?」
「あー・・・・時計見てねえ・・・。」
名無は眠い目を軽く擦って、枕元に置いていた携帯を手に取る。
画面を開いた瞬間に見える時刻は8時半過ぎといったところ。
「やっば!!完全に遅刻じゃんか!?」
「何にだー?」
「何って、神心会!!」
「お前日付見てみろよー・・・。」
騒がしいなァ、と一つ大欠伸する加藤を横目にカレンダーを開く。
そこには【道場休み】の文字が確かに書かれている。今日は神心会道場休みの日だ。
「あ・・・れ・・・?・・・・あ、そっか。この前振替休日あったから・・・・
ああー・・・・起きて損したー・・・。」
がっくりと携帯を持ったまま再び横になる。枕に勢いよく名無の頭が沈み込む。
すると、コツンコツンと頭に加藤の指が当てられる。
「んー・・・?」
「ほらよ。」
目の前には腕を差し出して"早く頭を上げろ"と言わんばかりの姿が。
瞬時に理解して頭を少し上げると、するりと加藤の腕が頭に伸びてきたのですっと枕にする。
「もうちょい寝るー・・・。」
「俺も二度寝すっかなァ。」
「・・・・ねえ清澄。」
「あ?どした?」
携帯の画面を消して、真顔で加藤に問いかける。
「・・・・なんでいつも腕枕してくれんの?」
「・・・あァ!?」
腕枕をしてほしいと頼んだ覚えは微塵もない。仮に名無が酔って言っていたとしても、毎回する理由はないはず。
だから照れもせず直球で聞きたい素直な疑問。いつからだかこうするのが当たり前になってきているのでふと不思議に思ったのだ。
「・・・・な、何でもいいだろ別に。有り難く思えよ。」
「あたし酔った勢いかなんかで頼んだの?・・・真面目に分かんないんだけど・・・。」
「・・・・~~ッ、分かんなくていいっつーのッ。俺がやりてェからで良いじゃねえか?」
「・・・・・ふーん・・・。」
問答を続けていても納得のいく答えが返ってきそうにない。
とりあえず向こうがやりたいなら甘えさせてもらうだけ。こう見えても"恋人の腕枕"というのは悪い気はしない。
寝心地もこれで慣れてしまっているので、目を閉じるとまたすぐ眠れそうだった。
(ったく・・・。寝てる時は可愛いのに口開けばあんなだもんな・・・・。)
傍ですやすやと眠る名無を見ながら軽く息を一つ。
眠っている名無はあまりに無防備で、何をしても起きる気配がない。
(・・・さっきちとほっぺた触りすぎたな・・・。俺が"お前の寝顔独占してェからだよ"なんて言えるかっての・・・。
名無は自分がまあまあ可愛い顔してんの自覚した方がいいと思うぜ・・・ったくよ・・・。)
女子部のリーダーである名無の緩みきった寝顔なんてそうそう見れるもんじゃない。
加藤だけが知る"女の子らしさ"を感じさせる顔がたまらなく好きな訳で。けれどそんな事素直に言える柄じゃないのも十分分かっている。
「・・・~・・・・へへへ・・・。」
(何へらへら笑ってんだよ・・・。俺もこいつがどんな夢見てるか知れたらいいんだけどな・・・。
ま、もし起きて覚えてたら聞いてみっか・・・。)
「名無・・・こっち来い・・・。俺ももう一眠りする・・・・。」
静かに呟くと、ゆっくりと名無を抱き寄せて温かさに目を閉じる。
起きない程度に動かして腕の中にすっぽり収める。
なんだかんだ好きな恋人を抱きしめて、加藤もまたぼんやりと夢の世界へ誘われるのだった。