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ppp... ppp...
「・・・・ん~・・・。」
意識の遠くで聞き覚えのある音がする。規則正しくピピピと鳴るのは昨日仕掛けておいた目覚ましの音。
携帯にセットしていたので朝日と共に名無を夢の世界から現実へと引き戻すように鳴っている。
「・・・・?」
すると、暫くしてアラームが聞こえなくなる。まだ眠気で目を開けられない名無は、勝手にスヌーズ機能で止まったのかと思った。
徐々に鮮明になる意識の中でようやく朝だという事を理解してゆっくりと目を開ける。
すると目の前には愛おしい恋人。穏やかな眼差しで名無を見つめていた。
「・・・・はなやまさん・・・。おはようございます・・・・。」
「ん・・・・おはよう。」
恋人の姿を見ると安心して気が緩んでしまい、少しぽや~っとしてからまた目を閉じる。
「今・・・何時ですか~・・・?」
「・・・・・。7時8分だな。」
「・・・・んー・・・そうですか・・・。じゃあ起きなきゃですねえ・・・・。」
勤務時間にはまだ間に合うが、とりあえず朝食を取る時間が差し迫っている。
眠気の中、すりすりと居心地の良い枕に頭を擦って起きようとする。
_____と。その枕が妙に温もりがあるのに気付いてハッとした。
「・・・って、あれ・・・?あっ・・・花山さん腕痺れてませんか!?」
「?・・・・どうってことねえよ。」
「す、すいませんっ!あまりに気持ちが良いんで自分の枕かと思って・・・!!」
慌てて体を離すとやはり花山の分厚い腕枕だった。鍛えられた漢の筋肉とは意外に柔らかいもので、力を入れなければ腕と気付かないレベルらしい。
擦り寄った事で痺れが増したのではないかと心配したがどうやら何も感じていないようだ。
あいかわらずの眼差しで焦る名無を楽しそうに見つめている。
「とにかく・・・起きるか。」
「・・・ふわぁ・・・まだちょっと眠いです・・。」
なんとか重い身体を起こして欠伸を一つ。こんな気の緩んだ姿なんて付き合った当時は見せなかったはず。
けれど花山がそんな姿さえ許すのだから、今日もこうして隣りで笑っていた。
そのまた数日後。
「_____う~ん疲れたぁ・・・・。」
「眠そうだな。」
「はい・・・今日は店長の手伝いとかしてまして・・・。
慣れない事をやったので疲れました~・・・。」
風呂上がりから寝る準備をする段階で既にぼんやりと眠そうな名無。
花山が迎えに行った時も疲れた顔をしていたので、どうやら今日は大変な一日だったらしい。
「今日はもう寝ろ。」
「はぁい・・・。うぅん・・・。」
さも当たり前のようにベッドへ腕を差し出すと、名無はすぐさま横になり気持ち良さそうに目を閉じる。
すぐに意識を持っていかれそうになる中。ニコニコとしたまま眠そうに途切れ途切れで花山へ話しかける。
「・・・花山さん・・・?」
「・・・・なんだ?」
「・・・・どうしていつも、腕枕してくれるんですか・・・?」
「・・・・・・・。」
聞かれた花山は少し考えた後。目を閉じている恋人に真顔で答える。
「・・・・当たり前ェだろ?」
「・・・・答えに・・・なってないですー・・・。」
今にも寝そう、というかもう黙っている時は寝てるのではないかと思う名無。
それでも花山は起きているものとして返事を考える。
暫くしてから花山はぽつりと切り出した。
「・・・・これが俺のやり方だからな。お前ェが喜ぶと思って・・・これぐらいしか出来ねえんだが・・・。」
ニッと口角を上げて、空いている手で名無のふわりとした髪を撫でる。
起こさないよう触れるか触れないか程度の絶妙な手加減だ。
「・・・・・。」
だが当の名無は夢の中に行ってしまったのか、笑ったまま静かな寝息を立てている。
仕方がないのでそのまま名無の腰に手を置いて。花山も目を閉じた。
花山の愛情表現は届いていたのかそうでないのか。また、起きてもこんな質問した事を覚えているかどうかは分からない。
でも覚えていようがいまいが、今までとする事は何も変わらない。理由はいくらでもあるのだから好きなように解釈させればいい。
だから花山も目を閉じて、今宵も良い夢を見る事にした_____