短編置き場
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「____よっし出来たぁーッ!!完成ーッ!
我ながら美味しそうな出来!」
もうすぐ世はバレンタインデー。私の前には気合いを込めて作ったチョコレート。
好きになった人にチョコを渡すだなんて長年縁のない事だったけど今年は渡す相手がいるんだなぁ、これが。
(ちゃんと烈さんに渡せるかな・・・・別に告白する訳じゃないんだし、気軽に渡せばいいよね・・・・。)
共通の本を読んでたのがきっかけでお友達になった烈海王さん。彼は中国人だけど日本語も喋れる多彩な人。
たまに会って他愛のない話をするくらいの仲だけど、チョコ渡すぐらい良いよね?
____・・・・・って、あれ。ちょっと待てよ・・・。
「_____あ・・・・し、しまったぁあーーッッ!?
勢い余ってチョコに『好きです』って書いちゃってる!?
どどど、どうしよう・・・!!これもう固まっちゃってるしぃ・・・!!」
しまった・・・夢中になりすぎてホワイトチョコのペンで書いちゃった・・・・心の声がもろ出てた・・・。
どうする?今からまたペンで塗りつぶす?でもそしたらカロリー控えめにした意味ないし・・・・。
作り直そうにもそんな時間ないよ!!うわぁぁ・・・どうしよう・・・・!?
「・・・・こ、これは覚悟を決めた方が早い・・・かな・・・?
バレンタインだし少しは女の子が大胆になっても良いかも・・・・。」
無意識の内に書いてるんだから内心私も言いたかった・・・って解釈するしかないか・・・・・。
自業自得だし、今更渡さないっていうのは私が後悔しそうだし。ここはもう決めるっきゃない!?
_____明日烈さんに伝えよう。ハッキリ『好きです』って伝えなきゃっ!!
「が、頑張れ・・・私・・・・!」
という訳で烈さんにバレンタインの日に会えないか連絡してみた。するとこんな返信が。
『一向に構いませんよ。その日は神心会本部にいるのでそちらに来て下さい。』
「・・・・神心会?聞いた事あるけど空手道場じゃなかったっけ?烈さん空手やってるの・・・?」
私は烈さんの事情をよく知らない。
格闘技やってるくらいしか知らないけど空手なのかな?
よく分かんないけどその神心会本部とかいう場所で待ち合わせることになった。
「_____ひ・・・・ひえぇ・・・・・。」
んで当日。神心会本部に来てみたけど何この巨大なビル・・・。
大きな漢の人が虎を倒してる看板。この辺では有名だからすぐ分かるって言われたけど確かに分かりやすい。
けどここで待ち合わせって・・・バレンタインのバの字もない気がするんですが・・・烈さーん・・・・?
「おっ、お邪魔しまぁす・・・・。」
入り口じゃなくて中に入ったらいるらしいけど・・・・。
もう受付からして私はお呼びでないって感じがするんですが!?
「・・・・おや?女子部の見学ですか?」
「い、いいえっ!!あの、その・・・・ここに烈海王さんって方いらっしゃいますか・・・?」
「何ィ、烈さんに用だとぉ!?なんでまたぁ!?」
ひええぇッッ!!さっきまで敬語だった厳つい人が更に怖くなったあ!!
体も大きいしこれは退散しないと私の身が危ないんじゃ・・・・_____
「____ん?何お客さん相手に威嚇してんだ?」
「か、克巳さんッ!それがこの人が烈さんに用とかで・・・・。」
あれ・・・?奥からちょっと偉そうな人が来た。受付の人より細いけど強いのかな・・・。
「烈さんに!?へえーっ、こんな可愛い子が・・・・なんの御用ですか?」
「あの・・・烈さんに渡したい物があるんですが・・・連絡したら今日はこちらにいるとお聞きまして・・・。」
「_____・・・・・。あぁー、そっか。
でも今ちょうど出掛けてていねーんだよな。」
こ・・・ここまで来たのにいないのか・・・。タイミング悪い・・・。
チョコ渡すなって事かも知れないなぁ・・・。このまま渡さず帰ろうかな・・・?
「そうですか・・・・じゃあ、いないようなら帰りま____」
「もうすぐ帰ってくるだろうから客室でお待ちくださいな、お嬢さんッ!」
「・・・・・・・え。あ・・・・はいぃ・・・・。」
なんというか断れる空気じゃなかった。さっきからこの人、目が輝いてるし・・・正直怖い・・・。
でも烈さんに会う為だし、もう後戻りも出来ない。大人しく私は神心会の客室とやらに案内された。
「大したおもてなしも出来ませんが、まあお茶でもどうぞ。」
「おぉ、お構い無くっ・・・・。」
駄目だ。声がどもっちゃった。
怖いというかなんか緊張してきた。早く烈さんにこれ渡して帰りたいよう・・・。
「ははっ、そんなにビビらなくても・・・。自己紹介が遅れてすいません。
俺は愚地克巳。今ここで神心会館長を務めてます、よろしくッ!」
「ご、ご丁寧に有難う御座いますっ!!私は苗字名無と言います。」
「名無さんか・・・良い名前だ。」
ニコリと笑う姿を見るとわりとしっかりした人な気がしてきた。館長さんだったのね、そらそうか。
・・・・そういえばこの大きな部屋に飾ってあるトロフィーとか賞状ってほとんど克巳さんの・・・?やっぱり強い人なんだ・・・。
「_____ところで、名無さんは烈さんとどういった関係で?」
「・・・・へっ!?」
克巳さんが向かい側のソファーに座っていかにも興味津々といった感じで聞いてきた。
そんな楽しそうな表情で見られましても・・・。
「どうっていうか・・・・友人です。読んでた本が一緒で仲良くなりましてー・・・・。」
「へえーっ、マジか!?格闘技とかの本!?」
「え?いや、普通の小説と言いますかなんと言いますかッ・・・・。」
「あぁ~・・・・そういや前来た時なんか本持ってたっけな・・・なんつー名前だっけ・・・。」
なんか急に態度が馴れ馴れしくなったぞ?
別に良いけど、なんでそんな驚いて・・・・まさか烈さんって友達いないとか・・・・?
いや、それは流石に違うか。あの人社交的だし常識あるし。人望もあるでしょう、絶対ッ!
_____てかこの克巳さんって館長さんだよね?なんで烈さんの事さん付けしてるの?
もしかして・・・・烈さんって・・・・。
コンコンッ
「はい~?」
ガチャッ
「ただいま戻りました。
・・・・名無さん!お待たせしてすまないッ!」
「烈さぁーん!!神心会ってここで合ってたんですね!?」
「あ、烈さんお帰んなさい。」
扉が開いたらそこには待ちに待ってた烈さんが!!
早速ペコリと謝る烈さん、謝らないで!!会いたかったよぉー・・・・知ってる顔がいるってだけで凄く安心する・・・・!!
「・・・・んじゃ、お邪魔虫な俺は退散するとしますかー。
名無さん、ごゆっくり!」
「?私は一向に構わ____」
バタンッ
・・・・・烈さんが言い終わる前に扉が閉まった。克巳さん、私が何をしにここに来たか分かってたのかな・・・?
ていうか烈さんこういうちょっと抜けた所あるよね・・・そういう所も含めて好きだけどッ・・・・。
「・・・・まあいい。神心会の方々に飲み物を買いに行ってました。私がお呼びしたのに遅れて申し訳ない。」
「いえいえ。
・・・・というか神心会の方々って・・・烈さんは神心会空手の人じゃないんですか・・・?」
思わず疑問が口に出てしまった。謎だったけど聞いて良かったのかな?
「・・・私は今、この神心会に指導者として呼ばれている身です。
空手と中国拳法の新たな歴史の為に。」
「・・・・・ええぇぇーーッッ!!?指導者・・・という事は・・・。
さっきの館長さんよりも烈さん強いって事ですかあッ・・・!?」
「今は確かにそうですが、いつかは追い越されるかも知れませんな・・・。」
な、なんて事だ。私はなんて偉大な人とお友達なんだろうかっ!?
そんなに凄い人だったなんて知らなかった・・・烈さんの新たな一面を知ってしまった感じだ・・・。
「・・・・名無さん。それで、渡したい物というは何でしょうか?」
「あ・・・・。あー、えっと・・・た、大した物じゃないんですがっ・・・!」
こんな素性知っちゃった上で渡すなんて緊張するっ・・・!!
私なんかただの一般人が仲良くなれただけで奇跡みたいな人なのにっ!?
あぁもうなんであんな事書いちゃったんだろうバカバカバカ・・・・!!
「・・・・烈さん・・・・きょ、今日は何日か知ってますか・・・?」
「2月14日です。」
「・・・・あの・・・・今日はどんな日か・・・・ご存知ですか・・・・・?」
「・・・・・・。バレンタインデーですか?」
「・・・・・・・・そうです・・・。」
顔がまともに見れない。ちらっと見たら真面目そうな顔してるっぽいけどよく分かんないや・・・。
普段とは違っていつになく声が小さい私。
もうちょっと明るく話せたら良いんだけどいつもの私はどこ行ったんだろう・・・・。
「・・・・だ、だからこれっ!!チョコ作ったんで渡したくって来ました!!」
「・・・・・貰って良いんですか?」
「はいっ。お口に合うかどうか分かりませんが・・・・。」
「有り難く頂戴しますッ!」
笑ってチョコを受け取ってくれた烈さん。恥ずかしくてこのまま走って帰りたい!!もうそうしようかな!?
「・・・・丁度良いのでここで頂いても良いですか?」
「はえっ!?あぁ、い、良いですけどっ・・・!!」
机にお茶があるのに気付いてここで食べることにしたらしい。
わ、わ、わ。逃げ出すタイミング完全に見失った。
____あぁああーーーッッッ!!!烈さんに書いてる文字見られたッッ!!もうどうにでもなれッッ!!
「_____頂きます。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・うむ・・・・手作りのチョコですか?」
「え?・・・・そうですっ・・・烈さんは格闘技されてるとか聞いたんで、なんとなく甘さ控え目にしましたっ・・・。」
「甘過ぎずビターな味わいがよく出ている。とても美味しいですよ。」
よ、良かったあ。なんか喜んでもらえたみたい。
・・・・・ってちょっと待て。今の展開おかしくないか?
烈さん『好きです』って文字見たよね?
あれ・・・・それとも見ずに食べちゃったのかな。もしかして私の取り越し苦労?
ただ友チョコ渡しに来ただけになったんじゃ・・・・?
「名無さん。先程のチョコに書かれていた日本語はなんと読むのですか?」
「・・・・・・。
・・・・・それは・・・・ホワイトチョコで書いた文字でしょうか・・・?」
「ええ、それです。」
・・・・・・嘘。嘘だと言ってよ烈さん。
本当に読めないの?けっこう貴方日本語ペラペラでしょう?なのに読めない?
じょっ、冗談でしょう!!?
「・・・・・本ッッ当に読めないんですか・・・?」
「はいッ。」
「日本語出来るんじゃないんですか!?」
「いえ。まだこちらに来てからそれほど日は経っていません。なので読めない字もあります。
なので、是非教えて頂きたい。」
「~~~~~ッッッ・・・・!!!」
真っ直ぐな瞳で、真剣な顔つきで。私を見る烈さんに顔が真っ赤になってしまった。
こんなつもりじゃなかったのに・・・チョコ渡すだけで精一杯だったのに・・・・。
あんなに逃げ出したいってさっきまで思ってたけど、その時以上に今の方がこの場から消え去りたい気持ちだ。
______けれど、そんな事したらなんにも始まらない。
せっかくのチャンスを無駄にしたくないって、どこかで願ってたのかも知れない。
「私・・・・・私っ・・・・。たまたま烈さんに会った時から、知的で真面目で、でもどっか天然な所とかあって・・・。
そ、そんな所とか!!出会った時からずっと『好きです』っ!!!
さっきのチョコに『好きです』って書きました!!付き合って下さいっっ!!」
い・・・・・言っちゃったあぁぁ・・・・!!まともに顔見てないし、頭下げちゃったし・・・・。
顔から火が出そう。というか出てる?私今どういう状況なんだ?もう分かんない・・・・!!
なんか色々あって泣きそうだよっ・・・・・。てかもう涙声とかになってるんじゃないかな・・・。
・・・・・・・烈さん。なんとか言ってよ。お願いだよ・・・・・早くなんとか言ってってばあ・・・・・。
「・・・名無さん。」
「・・・・・・・・・?」
名前を呼ばれて目を開けると烈さんの大きな手にはハンカチが。
顔を上げると申し訳なさそう・・・・に見える顔で笑う烈さんの姿。
「顔を上げて下さい。済まない、嘘をつきました。
本当は一目見れば文字の意味は分かっていたのですが・・・名無さんの口からどうしても聞きたかった。
私も今日というこの日、貴方のような人からチョコを貰えないかと思っていました。
・・・・・・お願いします。付き合って下さい。」
「______!!烈・・・・さん・・・・・!!」
夢じゃない。烈さんと私が両思いだった・・・?
あまりに嬉しくて、言葉を理解するのに時間がかかった。
瞬間的に頭の中で何度も言われた事を繰り返して。現実だと分かった時涙が一気に溢れた。
「うぅ・・・・うっ・・・烈さんのいじわる・・・。最初っから、ひっく、分かってたんじゃないですかあ~っ!!」
「つい、嬉しくてからかってしまった。その点は申し訳ない・・・。」
「もうっ!!烈さんの馬鹿ぁっ!!ぐすっ、ふええぇ・・・・烈さぁん・・・!!」
涙で前が全然見えない。でも喜びは変わらなくって、泣きながらも怒った。
烈さんの渡してくれたハンカチが涙を全部受け止めてくれた。
・・・・・・そんな時。
「名無さん・・・・お詫びとして、今度空いてる日はいつですか?」
「へえっ・・・?」
「・・・・・・名無さんとデートに行きたい。
連れて行きたい所があって・・・・良いですか?」
頭にぽんっと掌が置かれてそっと撫でられた。おそらく私を慰める為だろうか。
そうしてデートのお誘いなんかされてしまって。ビックリして涙が止まってしまった。
だから決め台詞ってやつ。こう言ってやりました。
「______・・・・一向に構いませんッ!」
「・・・・!・・・・・・じゃあいつにしましょうか?」
「日曜日!!今度の日曜日さっそく行きたいです!!」
「良しッ。ではそうしましょうッ!!」
二人の笑う声が部屋に響いた。そこからデートの場所とか、どこにするのかとかずっと話してた。
神心会の客室だったことを思い出したのは帰る時で、誰かに聞かれてたんじゃないかと思って凄く恥ずかしくなった・・・・。
でも良かった。思い切って言い出せたバレンタインデー。
烈さんと両思いになれて・・・・本当に良かった。あの時ホワイトチョコで書いて良かったって、心底思ったんだ。
頭に烈さんの手の温もりがずっと残ってる。そんな気がして。
だからずーっと冷めませんように。これからこの先も、ずっと・・・・。
~ おまけ ~
客室の扉の前にて。
「烈さんの言ってた可愛い彼女ってやっぱあの子か。だと思ったわ俺。」
「・・・・克巳さん、扉の前座って何してんスか?」
「しっ!黙ってろ加藤!今良い所なんだからっ!」
「・・・・・・・?」
「ほら、前烈さんが好きだっつってた子いるだろ?あの子今来てんだよ。告りに。」
「マジすかッ!?わざわざ告りに来たって・・・・肝座った奴だなァ~。」
「俺もあんな彼女欲しいなー・・・・いい加減遊んでねえでそろそろ嫁さんでも探すかな・・・・。」
「・・・・でも俺たち義理チョコしか貰ってねえんじゃ____」
「言うなッ!!来年こそはあんなロマンチックなバレンタイン迎えるぞ加藤ッ!!」
「克巳さんの方が声でけぇ・・・・。」
fin