短編置き場
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(よっし、お買い物終了っと・・・・。
離れたスーパーにも来れるようになったし、一人暮らしも慣れたもんね♪)
とある東京のスーパーにて。一人暮らしを始めた名無は都会の暮らしにも慣れ始めたところ。
家から少し離れた場所に買い物へ来た帰り道。そのまま家に帰ろうと道を歩く。
(・・・・・・あれ?大通りに出ちゃった・・・・?行く時こんな所通ったっけ・・・・?
_____あ・・・。まずい・・・さっき私どこから来たんだっけ・・・・・!?)
どうやら細い道一つ二つ間違えたようで、気付けば知らない道へと来ていた。
広い都会に越してきたばかり。少し遠出をしただけで変な道に入ってしまい気付けば辺りは人。人。人。
「ま、迷った・・・・?」
完全に迷子になってしまった。
(落ち着け私・・・・・こんな時こそケータイの地図検索が____)
「へ・・・?で、電池切れッ・・・・。」
ネットの地図を頼りにしようにも画面は真っ黒。操作しても動く気配は全くない。
(コンビニで聞こうかなぁ・・・でも今の時間混んでるし・・・・。
人に聞かなきゃかなー・・・・・・。)
「あ、あの・・・すいません・・・。」
「ごめんなさい、急いでるんで。」
「あの、道を聞きたいんですがー・・・・って行っちゃった・・・。」
東京の街でも今は帰宅する人々で溢れていてなかなか足を止める人はいない。
帰れずに泣きそうになって途方に暮れていた。
(もういいや・・・次誰かに聞いて断られたら迷惑覚悟でコンビニ行って聞こう・・・・。)
「あの、道を聞きたいんですが・・・・。」
「___ん?どうしました?」
(や、やった!止まってくれた!)
「えっと、◯◯町に行きたいんです・・・けど・・・・・。」
見上げると声をかけたのはガタイの良い青年だった。
名無はその青年の顔をじっと見つめると、少し首をかしげた。
「____もしかして・・・克巳くん・・・・・?」
「あれ、なんで俺の名前知ってんだ?そこまで有名人かな~ッ?」
「・・・・・愚地克巳くんだよね!?私だよ私!!
サーカスの時一緒だった!!」
「・・・・・_____名無・・・・・?
もしかすっと苗字名無か!?」
「そーだよ克巳くんッ!!久しぶり~っ!!」
声をかけた相手は幼い頃離れ離れになった幼馴染の克巳だった。
克巳も名無に気付くとにっこり笑って嬉しそうな顔をした。
「すっげえ奇跡だな!?久しぶり名無!!元気してたか?」
「うんっ!すっごい元気だよ~!!」
「何年ぶり・・・・いや、何十年ぶりかな・・・・とにかく久々に顔見たぜ・・・!」
「ふふっ、こんな所で会えるなんて・・・夢にも思わないってやつ?」
「だなッ!」
二人で笑い合って再会を喜びあう。
名無は克巳がまだ愚地家に養子に行く前にいたサーカス団の一員で、とても仲が良かった。
養子に行って以来顔を合わす機会がなかったので10年以上経っていた。
「_____・・・で、なんだっけ。道に迷ったのか?」
「あ、そうなの。・・・東京って広いし複雑だから、もうどこがどこだかさっぱりで・・・。」
「丁度いいや。俺も暇でランニングしてたところだ、案内してやるよ。」
「本当っ!?有難う克巳くんッ!」
「良いってことよ♪」
「◯◯町って分かるかな・・・?」
「・・・・ああ~、この周辺だな。そこまで時間かからねえよきっと。」
「よかったぁ・・・・!どこまで離れたかと思ってたから・・・!!」
「任せとけって!俺についてきてくれ、はぐれんなよ!」
「うんッ!!」
(昔と変わんないな・・・克巳くん・・・・。)
頼もしい後ろ姿は数十年前と何も変わっていない。
先程の暗い顔はすっかりどこへやら。
名無の表情は晴れやかになり、克巳の案内に身を任せた。
「___あ、ついでに言っとくが、あれが俺のいるビル。凄ぇだろ?」
「・・・わあ・・・・・すごい・・・!!あれが神心会本部かー・・・!!」
道案内の途中、見上げるとそこには一際目立つビル。
愚地独歩が虎を倒す絵が描かれたインパクト抜群の空手道場だ。
「克巳くんはここの館長さんなの?」
「うーん・・・まだなってねえけどその内そうなるな。」
「じゃあいつかここに克巳くんの絵が飾られるの!?」
「あー・・・・・親父は創始者っつー立場だし・・・・。
でも俺が親父以上の伝説を打ち立てればそうなるかもなッ!」
(親父って・・・・。そっか・・・・やっぱりもう"愚地"克巳くんなんだね・・・・。)
克巳の見上げる視線はどこか輝いて見えた。幼馴染のどこか知らない視線に少し切なくなる。
何十年も顔を合わせていないせいか、自分だけ取り残されたような気がしてしまう。
「・・・・そっか。楽しみにしようかな、克巳くんの絵。」
「俺天才だから、意外と近い将来そうなるかもな?」
「ふふっ・・・・そうだねッ。天才だもんね!」
だが昔から克巳を天才だと賛同していたのは他ならぬ名無。
克巳は彼女の微笑む姿が見たくて調子に乗ったのは密かに変わらなかった。
そんな神心会ビルを通りすぎて、名無の家へと歩く。
ふと見上げると逞しくなった彼の姿を横目に見る。
(カッコ良くなったなぁ、克巳くん・・・。
私の初恋の人だもんね・・・・昔も今もカッコ良い・・・・。)
「克巳くん、空手道場にいるせいか昔より男前になったんじゃない?」
「ん、そっかぁ~?ま、昔よか鍛えて強くなったしなッ!
_____そういう名無だって見ねえ間に変わったよな。大人びたっつーか・・・・。」
「・・・・そうかな・・・?」
照れ笑いをする名無。克巳はそんな名無が昔と違って見えていた。
「・・・・昔の名無、もうちょいおてんばだったのに今じゃすっかり落ち着いたんだな・・・・。」
「・・・そりゃあ私だって大人になったから。
・・・・・おてんばの方が良かった?」
「ッ・・・・・いや、そういう意味じゃなく・・・・・・。」
(きゃっきゃはしゃいで可愛いと思ってた名無が美人になって落ち着いてる・・・。
女って凄え・・・。こんなに変わんのか・・・・・。)
あまり変わりない克巳に比べて名無は大人の女性になっていた。
性格が明るいのは変わらないが仕草や表情がどこか落ち着いていて思わず見惚れてしまう。
「大人のお姉さん、って感じだな。」
「何それ?克巳くんと私同年代じゃん、そんなに変わったかな私~?」
「そういや俺たち歳あんま変わんねえんだった・・・。」
「・・・・・昔よりお互い成長したんだね。
・・・・また克巳くんに会えて嬉しい・・・・・。」
「・・・俺も、名無とまた会えるなんて思ってなかった。
・・・・・・・嬉しいぜ、俺も。」
奇跡的に再会した二人はにこりと微笑んでいた。
どこか紅い顔をして照れくさかったけれどそれでも嬉しくて。
(今日は意外と良い日だったかも・・・・。)
と夕焼けを見つめて振り返った。
「有難う克巳くんっ!けっこう近かったんだね!」
「だろ?またなんかあったら連絡くれよ。昔のよしみだ。」
「うん。・・・あ・・・・でも私いまケータイの充電切れてて・・・・。」
「あー・・・どうすっかな~・・・・・。」
楽しく話しているうちに家の前まで着いた二人。
連絡先を交換したいがあいにく名無のケータイは充電切れのまま動かなかった。
すると克巳がうん、と大きく頷いた。
「・・・・・よっしゃ名無。手間かけるが、俺の番号覚えて充電器までダッシュだ!!」
「_____だ、ダッシュッ!?」
「俺の番号これだからよ。家帰ったら充電器差しながらかけてくれ!」
「うっ・・・・・。覚えられるかなぁ・・・・。」
突然の無茶な提案に少々困惑する。
そこまで遠くもないが桁が多いので何度も口ずさみながら呪文のように唱える。
「_____よっし覚えた!!すぐかけるねっ!!」
「・・・・・・・・・・。」
(俺の勘が正しけりゃ多分・・・。)
脇目もふらず、克巳に敬礼して猛ダッシュで家に帰る。
名無から電話が来るのを克巳は信じてじっと待った。
名無は名無で充電器に差し込んで番号をぶつぶつ呟きながらONになるのを待ちわびる。
~♪
『・・・・名無?』
「や、やったー!覚えてたよ克巳くん!」
『名無なら覚えてくれてると思ったぜ♪』
「良かったぁ~・・・・あとでこの番号登録しとくね!」
『俺も名無の番号登録しとくわ。』
電話も無事繋がり二人とも一安心。克巳の勘は正しかった。
「・・・・それじゃあ、有難うね。克巳くん。」
『あ、ちょっと待て名無!』
「・・・・・?何?」
電話を切ろうとするとまだ何か声が聞こえたので切らずに済んだ。
『・・・・・その~ッ・・・・走らせちまった礼に、今度デ・・・ッ、
食事でも行かね?俺奢るよ。』
「・・・へっ?・・・・どしたの急に。・・・い、良いの?」
『食事っつーか・・・・久々に名無と遊びてえし・・・・・どうだ?』
まさかの誘いに名無の顔が紅潮していく。そして真っ赤になり小さく返事する。
「・・・・・いいよ・・・。克巳くんと遊びたいっ・・・・!!」
『決まりだなッ!んじゃ、日にちはまた連絡するわ、じゃーなー!!』
「うん、今日は有難う!またね!」
『またな!』
「・・・・・またな、か・・・・。も・・・・もしかしてこれってデートのお誘いっ・・・!?
考えすぎかなっ!?そ、それにしてもどうしよ、着て行く服あるかな!?」
一人部屋であたふたする。あまりに嬉しくて部屋中ドタバタはしゃぎ回っていた。
一方、克巳はというと。
(____あっぶね!!デートって本音口走るところだったッ・・・・バレてねえと良いが・・・・。
・・・・にしても、名無とのデート楽しみすぎてやべぇ・・・・・いつにすっかな~♪)
立ち去る前に名無の家を見上げる。
見えていないが改めてニコリと笑ってゆっくりその場をあとにした。
次会う時はまだ幼馴染。
奇跡的に再会した二人だが、ここから結ばれるのは奇跡ではなく。
_____必然なのかも知れない。そう思うのはまたあとの話である。
fin