短編置き場
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「良いじゃんッ!あんたならイケるって絶対!」
「そ、そうかな・・・?」
「おーい?皆何話してんの?」
「あっ、苗字先輩!!」
「この子がね、近々加藤先輩に告白するんだってぇ~!!」
「・・・・・・・告、白・・・?」
稽古の休憩中。神心会女子部は決まってガールズトークで盛り上がっていた。
いつもの事だろうと覗きに行ったらこの話。
思わず一瞬固まってしまった。
「意外と加藤先輩って女子に人気あるんですよ~!?」
「そうそう!でもあの先輩ってちょっとおっかない所あるから皆近寄れないんですけど~。」
「たっ、確か苗字先輩は、加藤先輩と同期ですよね?すぅ、好きな人とか聞いてますかっ!!?」
「Σはぁっ!?き、聞いてないよ・・・というか、アイツそんな人気なのか・・・。」
口々に皆喋るものだから固まってた事には気付かれなかったようだが、その代わりに同期の恋沙汰を聞かれる。
そんなもの知る訳ないしむしろこっちが知りたい・・・ッというのは内緒だ。
「と~も~か~くッ、頑張りなよ!!あんたなら絶対成功するって!!」
「う、うん・・・皆有難う・・・!」
「そっちが上手くいったらァ、アタシも末堂先輩に告っちゃおっかなぁ~♪」
「えぇ~!?マジで!?」
勝手にキャッキャと騒ぐ女子達。そんな子達が少し眩しく見えた。
素直になれそうもない自分と違い、一歩前進する気のある女の子らしい子が羨ましかった。
「___あたしからも応援するよ。清澄と、上手く行くと良いね。」
「はいっ!!」
素直になれない自分は、こんな作り笑いしか出来ないだなんて。情けない先輩だ。
数日後。
告白したらしい例の彼女はここ2・3日姿を見せていなかった。
稽古をサボるような子でもないし、何か心情の変化があったのか?普通に心配だった。
ガラッ
「押っ忍~・・・。」
「!」
「___あ!大丈夫!?稽古来てないからみんな心配したんだよ~!!」
そんな事を思っている矢先に張本人がやって来た。
友達が何人か群がる中で、あからさまに何かあったような表情ではあったが本人は上手くはぐらかしていた。
「う、うん・・・大丈夫だよ・・・。稽古しよっか・・・?」
「うーん・・・・じゃああたしが相手したげるよ~♪かかってきな!」
「押っ忍~!!」
少し無理しているようにしか見えないのだが。
でも友達とも上手くやれている。稽古も支障はないようだし、赤の他人が手を出す話ではないと思った。
・・・・・・だがあたしも女だ。
どうしても気になってしまうのは仕方のない事なんだろうか・・・・。
「よっ、今日は気合入ってたね。」
「あ・・・・苗字先輩・・・・。」
結局ほんの少しの休憩の間で彼女に話しかけてしまった。
我ながらアホだと分かっているのに、体が勝手に・・・。
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
・・・・・そら見ろやってしまった。どうしてわざわざ隣りに来てしまったんだ自分の馬鹿ッ!
相手の事を察してあげたらそれで良いのに興味本位で他人の事情に首突っ込むなんて自分らしくもない。
だから沈黙になってしま____
「あ、あのあと・・・・・加藤先輩に告白したんです・・・・。」
「・・・・・・う、うん。」
む、向こうから話してくれるとは。唐突で嬉しいやら嬉しくないやら。
「・・・・・・稽古終わりを待って、『前から好きでした』って告白したんですけど・・・・・その・・・。
・・・・・・・・・・・・加藤先輩が・・・・。」
『気持ちは有難く受け取っとくけどよォ・・・・・。
俺、他に好きな奴がいるんだ・・・・・悪ィ。』
「____ッッ!!」
聞いた瞬間背筋が凍った。
寒気というか悪寒というか、今まで感じた事のない凄いショックを与えられた。
普段の稽古でするような物理的ではなく精神的な衝撃だとよく分かった。
「・・・・・って言ってて・・・・。休んでたのも、それがショックでだったり・・・・。
すいません、風邪だなんて言って・・・・。」
「・・・・あ、いや。構わないよ。女の子ってのは傷つきやすいもんだし。それぐらいよくある事さ。」
聞いた話だというのにあたしの方が次寝込んでしまいそうで心配だ。
ただでさえ今でも、何かがこみ上げてきて、ちょっと突かれれば泣いてしまいそうだというのに____
「・・・・・清澄の奴も隅に置けないなぁ。こんな可愛い子フってどんな女に惚れてんのやら・・・・。」
「・・・・・。
・・・・・・そういう苗字先輩は、誰か好きな人とかいないんですか?」
「・・・・・・へッ?」
この子は一体スッキリした笑顔で何を聞いてるんだ。
人の事情に首突っ込んだんだから、そっちも話せと?
「あ、あたしは・・・・・。
あたしは良いんだよッ・・・・漢なんていらない・・・・。あたしは皆と違ってそんなに女の子らしくないんだ・・・。
少しだけど筋肉だって付いちゃって・・・。漢はきっと、あたしを女だと見てくれてないだろうしね____」
「・・・・・・・・そ・・・そうなんですか・・・。」
清澄に好きな女がいると分かって咄嗟に出た言葉だった。
"漢なんていらない___"
今はこれが真実だった。いつか清澄と同じぐらい強くなって、一緒に並べるぐらいの女になりたい。
そうして一緒にいたいなんて夢を抱いてたはずなのに。
・・・・・・・・・今じゃ遠くの彼方で消えてしまった。
「・・・・・でも、先輩・・・あの『はい交代ー!!次の特訓行くよー!!』
「ん、休憩終わりだ。・・・・・なんか他悩みあるんなら相談いつでも乗るよ。ほら、おいで。」
「・・・・・は、はいっ!!行きますッ!!」
最後に何か言いかけたような気もしたが、特に気に留めなかった。
多分あたしも彼女も、今特訓に専念して想いを消したい。
なんとなくそうなんじゃないかと感じ取れたから______
それからちょっとした頃。
いつもみたいにその日の週末清澄から連絡があった。
『明日の稽古終わり飲み行こうぜーッ!』
「・・・・・・・・・・・。」
こうやって連絡が来ることは分かってた。いつもこうして週末やら月末やら過ごしてきたんだから。
でも今のあたしはとてもそんな気にはなれず。
らしくないなぁ・・・って思いながら・・・。
『悪い。明日はちょっと用事あるんだ。ごめん。』
『えー、マジかよ。ななし来ねえの?』
「・・・・・・・・清澄の馬鹿・・・・・・。好きな子とでも行けば良いじゃん・・・・・。」
返事をする気もなくてそのまま横になる。
正直辛かった。知りたくなかった。
きっと可愛い子なのかな。神心会にいるのかな。むしろいないのかな。
色々考えてはみたものの悲しくなるばっかりで。
あいつはこんな事全然知らないんだろうな。あたしを同期としか思ってないだろう。
______暫く考えて。泣いて。数日ぐらいは落ち込んだ。
稽古だって正直出たくなかったけれど、一心不乱になりたかったから出た。
ちょっとだけあいつと帰る時間帯をずらして帰って。それでまた帰って泣いたりして。
そんな日々から一週間過ぎて。また清澄から連絡が入る。
『なあ、今週末は来るよな?
ななしいねえと末堂だけってむさ苦しくてしゃーねえんだけど。』
「はあ・・・・・・・やっぱり・・・・・・。
もう・・・・・・分かったよ・・・・。」
『分かった。今週末ね。予約はそっちでやっといて。』
もう清澄の事に諦めがつくようになった。
気持ちの整理も終わって、あたしはあいつの友達兼同期でいいやって思った。
あたしはあたしの強さを追い求める。清澄なんてもう知らない。
どっかで叶わない恋だろうってのは察しがついてたし・・・・。
辛いのは辛いけど、それでも清澄に会いたい気持ちの方がだんだん強くなってきた。
だからもう良いんだ。吹っ切れてあいつと飲みにでも行ってやる。
んであいつに思いっきり絡んでやろう。
・・・・って、そんな度胸がお酒でつけば良いなーって思った。
『いつもんとこ予約したぞ。』
『分かった。楽しみにしてる。』
「・・・・・・・・・楽しみ、か・・・。・・・・・あいつの会うの、ちょっと久々だな・・・。」
なんだか笑いが込み上げてきて、ちょっと楽しくなってきた。
そんなこんなでまた清澄と飲みに行く事になった。あ、末堂もいるから清澄達か。
「お。来た来た・・・。」
「おッ待たせー!清澄ー!
・・・・ってあれ、末堂は?」
「あいつ今日来れねえってさっき連絡あった。」
「・・・・・・・・・・え。」
いやいや、冗談でしょう。内心そう思わずにはいられなかった。
せっかくこっちは久々の三人気分であんたの好きな奴問い詰めてやろうと思ってたのに。
______序盤から予定が狂った。
いくら諦めがついたからっていきなり清澄と二人っきりだなんて・・・・そんな・・・・・。
「・・・・・・おいコラななし。」
「わっ!?な、何・・・・?」
「ったく久々に会ったと思ったら顔そらしやがって・・・・なんかやましい事でもあったか?」
「やましい・・・?・・・・・・何が、やましいですってッ・・・・・?
今日はあんたに聞きたい事があんのよ・・・白状するまで帰さないんだから覚悟しなさいッッ!!」
「な、何だよ。よく分かんねえが・・・元気あんじゃねえか・・・。」
清澄がいつもの腹立つ笑顔で聞いてくるもんだからこっちだってムキになる。
絶対に好きな子言わすまで帰さないんだから。
・・・・・・・絶対に、帰さないんだから。
そんな訳で二人っきりで飲む事になってしまったんだけど、いきなり清澄が質問責めにしてきた。
「つーか用事って何だよ?」
「は?」
「俺等の飲みより優先する用事って何だっての。
あと暫くお前の顔本部で見なかったがどこ行ってたんだよ?」
「そ、それはー・・・・・。」
何故かあたしが質問しまくるつもりが清澄からやたら積極的に聞いてくる。
こんなつもりじゃなかったのに。とりあえず適当にはぐらかしておく。
「な、何だと思う?」
「・・・・・・・・・・。
・・・・・マジで分かんねェ。」
「なら一生分かんないままで良いよ~!」
「んだよ!ちゃんと言え!」
「個人情報なんで言えませーんだ。」
「・・・・・納得いかねえ~ッ・・・・。本当なんだよ・・・・。」
どうにか撹乱出来たようであたしとしてはホッとしている。馬鹿で良かった。
そんなくだらない問答を続けながら徐々に酔いが回ってくる。
そこそこに酔った頃、ようやくあたしが切り出す。
「そういえば・・・・・____アンタこの前、告られたんだってね?」
「____!・・・・なんで知ってんだよ。」
「女子部ですごーく話題になってたのッ。あんな可愛い子フるなんて、清澄も隅に置けないねェ?」
酔いが回ってきたからこその台詞だな、って自分で思った。
確かにあの子可愛かったし。一応事実だ。
「・・・まさかアンタに好きな子がいるなんて。・・・見てみたいもんだわぁ。」
「ケッ。悪ぃかよ?」
(・・・・・悪いに決まってる。あたしの追い続けた、大好きな只一人の漢に惚れた女がいるなんて____)
酒を一気飲みしたこいつは一体何考えてんだか。
悪びれる様子もない所見るとやっぱり好きな子いるのは本当なんだなって思っちゃう。
「べーつに。・・・んで、どんな子なの?」
「・・・・ッふう。それより、お前はどうなんだよ?」
「んー?」
「そういうななしは好きな野郎とかいねぇの?」
「・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・だから目の前にいるあんただって。
そう言いたいけどこんな事さらっと言えるならここまで苦労してない。
だから本音というか。ちょっとだけ今思う事を言っておいた。
「あたしはね・・・・・・興味ない。
色恋だとか、漢に惚れる惚れないとか・・・・どうでもいいや・・・。」
もう、どうでも良くなっちゃった・・・・・。どっかの誰かさんのせいで・・・・・。
「・・・・ふーん、そうかよ。」
「んで、結局清澄の好きな子は?」
「色恋にゃ興味ねえって言ったばっかじゃねえかッ?」
「他人の色恋は別ってもんよッ。言いなさい!」
「何が別だよ、ななし酔ってんなァ?」
「うっさい清澄ッ!今日は言うまで帰さないんだからぁあーッ!!」
その後あの手この手でどうにか質問してみたけど結局教えてくれず。無駄にしぶとい。
今日は帰さないって決めてたのに飲み放題の時間が終わってしょうがないから帰る事になった。
帰り道でも聞いてやろうと思ったけどのらりくらりと躱すからもう今日は諦めようとしていた。
そしたらその帰り道。ふと清澄が立ち止まった。
「_____ななしよぉ。まだ、時間あるか?」
「・・・・ん?時間?・・・・・別に大丈夫だけどどったの?カラオケでも行く?」
「・・・・・・なんつーかよ・・・・ちょっと寄り道してかねーか?カラオケじゃねえけど。」
「寄り道・・・?」
「散歩だよ、散歩ッ。」
酔い覚ましかな?なんか清澄顔紅いし、あたしも余裕があるから良いか。
「いーよ。じゃ、道案内お願いね。」
「____ああ・・・。」
それから暫く散歩したんだけど、お互いぼーっとしてるせいか何も話さずに歩いた。
ふと気付くと綺麗な夜景が見えるスポットに来てた。
横目に綺麗だなぁーなんて思ってると清澄が急に立ち止まる。
「・・・・・・・ななし。
・・・・・唐突だけどよ・・・俺の好きな奴、お前は誰だと思ってんだ?」
「_____えっ・・・。・・・・何、急に・・・・・?」
もう忘れようとしていた事を蒸し返されて少し困惑した。
しかもあんなに嫌がってた相手がいきなりその話題。流石にこれには面食らってしまう。
「・・・・・・・・誰って・・・・。あんま検討もつかないけど・・・・・。
多分神心会の子じゃないだろうし・・・・・・あたしの知らない子じゃない?」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・おーい・・・・?・・・・・清澄・・・?」
後ろを向いたまま黙りこむ清澄。
なんだか様子がおかしくて、知らない彼を見ているようで少し不安になった。
「・・・・・・・俺の惚れた女はよ、なんつーか相性良くってよ。
喧嘩もよくするが、ムキになって俺につっかかる所とか・・・正直笑えるぐれェ可愛いんだ。」
「・・・・・・ッ!?」
(こいつ・・・・・・・・・惚気けてんの・・・・っ?)
「たまにだが俺に甘えてきたりしてな。・・・・・・俺、口には出してねェが嬉しくなっちまって。
調子乗ってそいつが寝てる間にキスしてやったぜッ!」
「____ッッ!!」
思わず目を大きく見開く。
信じたくなかった。そんな台詞、よりによってこの漢から聞くだなんて。
「・・・・どうしたの清澄。今になって酔いでも回った?」
「いや?ぜ~んぜんッ酔ってねえぜ?」
「・・・・・・じゃあそんな情報・・・あたしに言ってなんになんのさ・・・聞いてほしかったの?」
「んー・・・・・そだな。聞いて欲しかったんだ、ななしによ。」
何故。そんな残酷な言葉なんて聞きたくなかった。
余程同期で女友達の自分に信頼が置けるの?
こいつの背中は笑っているようにも見えて凄く辛かった。
「____あたし、アンタの惚気けに付き合う程暇ではないんだよね・・・・。」
「惚気けじゃねえよ。俺まだそいつと両想いじゃねえしッ」
「・・・・じゃあ何?なんであたしにんな事話すのよ?」
後ろを向いたままの肩が少し上下に揺れた。
「そいつによ・・・告白してえんだ・・・。
でもよ、俺どうやったら女が喜ぶか分かんねえから、どうやったら良い告白出来かなって相談だッ。」
「・・・・・・・・そう・・・だん・・・・。」
「サプライズとか色々準備しなきゃなんねーのか、そのまま伝えちまってもいいのか・・・。」
目が眩むってまさにこの事かな。貧血にでもなったようにふらりとその場に沈みそうになる。
相手の声のトーンは真剣そのもの。
自分は相談相手止まりだと思い知らされた瞬間だ。
「・・・・・あたしは・・・色恋沙汰とか、本当に分かんないから・・・・・・いくら女でも大した事言えないよ?
・・・・・・・それでも・・・・それでも、ね・・・・・もし。
もし好きな人がいて、その人に告白されるなら、」
目の前にいる清澄にもし。告白されるなら。
有りもしない理想を言うならば。
「・・・・・・素直に『好きだッ』って言って・・・好きになった理由とか・・・・・言えば良いんじゃない・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・あたしが言えるのはそれくらいだよ・・・。何事も素直が一番だと思うから・・・・ね?」
今あたしはどんな顔をしてるんだろう。
一応笑っているつもりではいるが、きっと引きつったりしているんだろうか。
風が冷たく感じて握った手をこすり合わせる。
パサパサと乾いた音が聞こえる気がした。
「そっか・・・・・・・・そっかッッ・・・・・・・・。
・・・・有難うよ、ななし。これで思いっきり告白出来るぜッ!!」
「うんっ・・・・頑張りなよ。・・・成功するといいね・・・。」
「ああ。ぜってぇ・・・・成功させてみせるッ・・・・!」
清澄の足元が動いた。どうやらこちらに振り返ったようだ。
それと同時に顔を上げると自信ありげな笑顔を浮かべた彼。
吹っ切れたような笑顔。こっちも笑みで返しはするけど、本当は心が締め付けられるようで。
そんな笑顔なんて見たくなかった。
ずっと・・・友達でいるって決めたのに・・・・・・。
あたし・・・・・・やっぱり駄目だな・・・。好きだよッ・・・・・・・・清澄の事・・・・・・。
「・・・・・・名無・・・。・・・・・・・・・ずっと言わなきゃなんねーと思ってここまで来たがよ・・・。」
「・・・・・・?」
「俺・・・。お前の負けず嫌いとことかッ、酔ったら甘えてくる所とかッ!!
あと・・・・・強え所も弱え所も全部引っくるめてお前の事が好きだッッ!!」
「・・・・・・・・・え・・・・・・っ・・・・・・?」
・・・清澄の顔が紅い。
どうしたの。今、何が起こったの・・・・・・?
告白されたの・・・?あたしが・・・?
清澄に・・・・・・!?
「うそ・・・・・・?」
「嘘な訳あるかッ!」
「・・・・・・。だって、清澄って好きな子いるんじゃなかったの・・・!?」
なんだかため息ついたような素振りを見せて、少しあたしから目をそらし呟いた。
「・・・・今まで俺が言ってたそいつは、全部お前の事だ。
・・・・・・噂さえ流れなきゃまだ言うつもりなかったのによッ。」
「・・・・・・っじゃあ・・・・・清澄が好きな子があたしって・・・・・・・・___!!!
ちょっ、ちょっと待ってッ!?じゃああんたがキスしただの、よく喧嘩するだの言ってたのまさかッッ」
『そーだよ!!全部お前の事だっての名無!!』
パニックになった頭がようやく今の状況を理解した。
というより、今まで彼が喋った内容を全て当て嵌める事が出来た。
そして一言。こう言ってやりたかった。
「・・・・・・・・・バカ・・・清澄・・・・・・。」
「・・・ッ名無?」
「本当に・・・・・・バカッ・・・・・・・なんでもっと早く・・・・伝えてくれなかったのよ・・・?」
視界が勝手に歪んでいった。
どうやら世にも珍しくあたしは泣いてるらしかった。
「___馬鹿ッ!!」
「うおっ!?」
急だけど清澄の顔めがけて拳を振りかざしてやる。
驚きながらも相手はちゃんと避けるから適当に殴ろうと拳を振る。
「バカバカバカッッッ!!!なんでっ、なんで早く告白してくれなかったのよッ!?
噂が流れる前に・・・ッ、もっと早く言ってくれなかったのよォッッ!!?」
「だって、よ!名無と末堂と俺の三人で飲み行くのが楽しくてッ!!
その関係が崩れちまったらと思うと気が気じゃなかったんだぜ俺はッ!?」
「そんなの知らないわよッ!!あたしだって・・・・っ・・・あたしだって、アンタの事ずっと好きだった!!
清澄の事好きだったのにッ・・・・・・なんで・・・勝手にキスとかしちゃうのよっ・・・!!」
気付けば涙が止まらなくて、振りかざした拳も徐々に力を失っていた。
いつの間にか立ち止まってしおらしく泣いてる自分がいた。
「清澄と両想いだってさっさと気付いてれば・・・・あたしッ・・・・苦しい思いせずに・・・・。
もっと素直になれたはずなのに・・・・。」
「名無・・・・・・。」
「・・・・苦しかったんだから・・・・・。好きな奴に、他に女の子いるなんて聞かされて・・・・・・。
嫉妬でどうにかなっちゃうかと思ったよ・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
ふと気付くと清澄の影が近付いてくるのが見えて、その瞬間彼の指はあたしの涙を拭っていた。
反射的に見上げると真剣な顔の清澄と目が合う。
「___!」
「・・・・・・・・悪かったよ・・・・いじわるして。」
「・・・・・・・っ・・・・。」
「・・・・・・・・お前の本音が聞きたかったんだ・・・・。
・・・・有難うよ・・・・・おかげで成功したぜ、『告白』。」
ニッといつも通りに笑ってみせる彼の顔はやっぱり格好良かった。
・・・あたしまで釣られて笑ってしまった。
「どーいたしまして。
・・・・・・でも、その彼女に許可もなしにキスしちゃうのはいただけないなあー・・・清澄くん?」
「・・・・やっぱそっか?」
「そうだよッ。苦笑いしても駄目だっての。」
さっきまでしてやった顔の清澄が少し苦笑いする。
そんな顔をこっちも少しだけ睨み付けてやる。
「じゃあー・・・・よ・・・。許可取ったらいーんだな?」
「えっ?」
「ちょうどいいし、今その許可くれよ?」
顔をちょっと紅くしながら、指でくいっと顎を持ち上げた。
「っ・・・!?こぅ・・・ここで・・・・・!?」
「ああ。ちょうど人も通らねえし・・・。
____な?」
妙に良い顔でウインクする姿でドキッとしてしまう。
辺りを見渡すと確かに良い景色が見えるだけで周りに誰もいないけど・・・・。
「・・・・・・・っ~~~・・・もう・・・・良いよッ・・・・。
じゃあ・・・・・許可出してあげる・・・・・・!」
「・・・・・・・決まりだな。」
体が熱くて仕方ない。
多分顔とか真っ赤なんだろうなあたし・・・・。どんな顔してんだろ。そう思うと余計に恥ずかくなる。
ほんの少しして、清澄の顔が近付いてくるのが分かったので慌てて目を閉じた。
そういや手のやり場を考えてなくて困ってしまい、闘う時以上に強く拳を握りしめてしまう。
_____そうして、唇に温もりを感じた。
心臓の音が凄くうるさくてバレてしまいそうで怖かった。
本当に唇と唇がちょっと重なるくらいの優しいキスで。
少ししたら唇が離れていって名残惜しい。けど嬉しかった。
目を開けると清澄まで顔赤くしてるもんだからドキドキしっぱなしだっての・・・。
「_____・・・・顔紅いよ、清澄。」
「なっ・・・・お前だって紅ぇぞ・・・・。
・・・・さては俺に酔ったなぁ?」
「・・・・・・・・。・・・・・・・ぷっ・・・・。」
「あ・・・・・~~~ッッ笑いやがったなあッ!?」
「だって・・・・俺に酔ったって・・・・ふふふっ、バッカじゃないの!?あはははは!!!
『俺に酔ったな?(キリッ)』って・・・・!!」
「んだよ!!笑うなっての!!」
「悔しかったら捕まえてみなよバカ清澄ーッ!!」
「こんの野郎ぉ・・・・待て名無ーーー!!!」
あまりにも清澄が面白い事言うからつい爆笑してしまった。
正直清澄とこうやって追いかけっこすんの好きなんだよねー。でもそれは今は言わない。
追いかけて捕まえられたら言ってやろうかな?それともまたにしようかな?
なんて考えて二人で追いかけっこしながら帰った。
実際あんたに酔ってたのは事実だけど・・・・。・・・・・・おっと、これもまたにしようかな!
fin
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