短編置き場
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「うわあ・・・綺麗・・・・!」
私の目の前に広がるのは、大きな校舎と新入生を迎えるように咲いた桜。
両門の桜吹雪は私達の方へ緩やかな風と共に静かに落ちている。
今からこの校舎に入らなきゃいけないんだけれども、新入生の私はここで見入ってしまいました。
______この倉鷲高校で、私を待っているんだって!!
青春が。部活が。きっと眩しくて光り輝く、楽しい高校生活がっ!!
だってここは規律もちゃんとした高校だって聞くし。
きっと厳しい先生の目を盗んであんな青春こんな青春が・・・・
ってまあそれは考え過ぎかな。あははっ。
ヒュゥウッッ!!
「わっ!」
突然。そんな考えを遮るかのように物凄い風が後ろから吹いた。
条件反射で風のあった方を振り返る。とそこには。
(・・・・・ッッ、大きな人・・・!!
・・・・・あれ?・・・この人学ラン着てるから・・・・新入生・・・・!?)
一人の大柄な男子生徒がゆっくりと門に近付いて、そのまま中へ入っていくのが見えた。
体格もさながら顔に疵・・・?みたいなのがあった気がしたけど・・・。
不良なのかな・・・。よく分かんないけど、さっきの穏やかな風はどこに行ってしまったのか。
私を迎えていた風は、急に"その男子生徒を呼び込むような"強風へと変わった。
大げさかも知れないけどそんな気がした。
______それが、花山薫くんとの最初の出会いだった。
(ま、まさか一緒のクラスになるなんて・・・。)
あの男子生徒の名前は花山薫くんというらしい。
席は離れてるけどたまたま同じクラスになった。なんというか目立つなぁ。
どうやらこの界隈では有名人らしい。有名な不良、ってことでいいのかな?
なんでそんな人がこの高校に・・・。というかいざ入学してみると不良の多さに愕然とした。
まあよく考えれば私の成績で入れる高校だもんね・・・・自分の力量分かってなかった・・・。
(ああ・・・・私の青春はどうなってしまうんだろうか・・・・。)
これだと部活に入っても番長的な存在がいていじめられたりするのかなぁ。嫌だなあそんなの・・・・。
そんなだから部活も決めかねてうだうだと時を過ごしていた。
・・・・・・だからとんでもない事に気がついてしまう。
(_______________・・・・なんで・・・?なんでなの?
よりによって花山くんと帰り道一緒なの私!!?)
これもたまたまなのか。家までの道のりがだいたい同じらしい。
私の家を通り過ぎてもまだ歩いてる辺り、彼の家はもう少し先みたいだけど。
要するに学校から家までは同じルートって事。
か、勘弁してよォ・・・!!恐怖に染められた私の青春ッ!!どうしてこんな事に・・・・!?
「ったく・・・・!うんしょ、っと・・・!」
そんなある日の事。日直だった私は珍しく朝早く学校に来ていた。
そしたら黒板に昨日の落書きがしたまんま。しょうがないからこうして背伸びして消そうとしている。
でも上の方消えないんだけど。面倒だから日直のもう一人に任せようかな、気付いてくれるといいけど。
「・・・・・苗字。」
「・・・・?
______________はっ、花山くん!?」
ビックリしたァ。急に後ろから低い声がするから、先生かと思ったらまさかの花山くんだった。
え。私話しかけられた?私なにかしたっけ?
そう思っているとすぐ横に来て大きな掌を差し出してきた。
「・・・・・ん。」
「・・・・へ・・・?も、もしかして黒板消し・・・・?」
聞いたらうん、と静かに頷いた。だから大人しく黒板消しを渡す。
花山くんが持つとオモチャみたいだな・・・。私の手には余るのに・・・。
そのまま上の落書きを消してくれた。黒板消しを置いたら自分の席に戻っていったんで驚いた。
(・・・・意外と、優しいんだな・・・。不良のたまに見せる優しさってやつ・・・?
・・・・あれ。そういえば花山くんって学校来る時見ないけど、朝早く来てるんだな・・・・。)
呆然としちゃったからお礼を言いそびれたのに気付いたのは朝礼が始まるちょっと前だった。
この日から花山くんの事を気にし始めたんだけど、彼は本当に不良なのか?って思う程真面目な点が多かった。
だって不良って普通授業とかサボるよね?でも欠席した事ない。
休憩時間はノート取ってるからむしろ真逆なガリ勉にすら見える。
でもガタイが良いからか顔の疵からか、不良には目をつけられるらしい。
ちょくちょく危ない輩に絡まれたりはしてる。時々私達クラスメイトも巻き込まれそうになった。
それでも警察沙汰になったりしてないのが不思議・・・。一体何でなんだろう・・・・。
「・・・・・・。」
帰り道。私の前をゆっくり歩く花山くんを見てる。
なーんか私には彼がそこまで危ない人物だと思えないんだけど・・・。
・・・・・という訳で。興味本位ではありますが、この苗字名無。花山くんに話しかけようかと思っておりますッ!!
だってこのまま帰り眺めるだけの毎日なんてつまんないし。何より話す相手がいないから、暇潰しにでもなるかなーってね。
・・・・・・・・い、いざッ!勝負ッッ!!
「_______________は、花山くんッ!」
「・・・・・苗字?」
「えっと・・・・帰り道、途中までいいっ?は・・・話す相手いなくて・・・・。迷惑かな・・・・?」
少しの沈黙の後。私から視線を外して前を向き直す。
「・・・・・いや。」
「・・・よ、よろしくー・・・・。」
な、なんだこの独特の気まずさは・・・・。彼無口だから私と話そうって気なさそうだし・・・。
こういう時は話題を作ろうッ!そう、この前のあれだあれ!!
「______________・・・・・そういえばッ!私が日直の時、有難うね!」
「・・・・・。」
「黒板消してくれたの・・・・。覚えてない・・・・・?
あの時お礼言ってなかったから・・・さ・・・・。」
「・・・・・覚えてる。気にすんな。」
気にしなきゃ会話が進まないんですけどッ・・・。
まあいいや。ここから徐々に会話を広げていこう・・・。
「あの時ね、花山くんってけっこう早く学校来てるんだーって初めて知ったの。いつもあれぐらいの時間なの?」
「・・・・そうだ。」
「すごいねッ!早起き出来るの羨ましいかも~!」
「・・・・・苗字は・・・・遅刻ギリギリだからな。」
えっ、なんでバレてんの!?もしかして日頃から他の生徒の動向伺ってる系!?
「よ、よく見てるねっ・・・。バレてるとは思わなかった・・・。」
どうも見てるというより花山くんの席が廊下に近いから声とかで分かるらしい。
確かにあの席、先生が来ても把握しやすいもんね。
「はは・・・。花山くんって周りの事よく見てるよね。関心しちゃうなぁ。」
「・・・・・。」
「私は朝早いのダメだし、花山くんみたいに勉強熱心でもないからさ。ホント尊敬しちゃうよ。」
「・・・・そうでもねェよ。」
花山くんは背高いしメガネかけてるからちょっと表情が読み取りづらいんだよね。何考えてるんだろ。
でもどうにか会話を繋ぎながら、この日は家に着いたんでバイバイした。
家に帰って宿題してると何故か彼の顔が浮かんできた。
別に変な意味じゃなくて『ああ、きっと家でも変わらずに花山くんは勉強してるのかな』ってくらいにね。
さてその数日後。
「せ、セーフッ!!間に合ったー!!
はあ・・・はあ、花山くん!おはよう!!」
「・・・・おはよう。」
こんな具合で自然に話しかけられるくらいの仲にはなったつもりだ。
何日かこんな事を繰り返して思ったけれど、やっぱり花山くんは不良じゃない。真面目な普通の男子高校生なんだって。
そう思ってたんだけど・・・。
「_______________えっ・・・?名無、知らないの?花山薫の正体・・・。」
「正体、って・・・・・何が・・・?」
昼休憩。花山くんとは離れた席で私はいつも通り女友達とお弁当を食べていた。
そしたら友達が私を"心配して"ひそひそ声で言ってきた。
・・・え?花山くんをやっぱり不良だと思ってるの?
「・・・・・これ。見てッ・・・。」
すると小さな紙の切れ端を渡してきた。花山くんからはこっち見えないと思うけど友達は凄く警戒してる。
何気なく開くとそこには、思いもよらない事が書いてあった。
《花山薫は暴力団・花山組の組長だよ!!
このクラスの男ならだいたい知ってるし、やばいヤツが花山を狙うのはそういう事!!》
「_______________・・・・・~~~~ッッッ・・・!!?
うッッッ・・・・そでしょォッ・・・・!?」
「マジだってッ・・・!!なんならアイツ名刺持ってるから隠す気もなく配ってるらしいよ!!」
私は驚いても大声を上げることはなかった。ていうか驚きすぎて逆に声が出なかった。絶句ってやつ?
これが事実ならこんなの不良以前の問題じゃん。不良の上・・・というか最終形態?みたいな?
確かに花山組って名前は知ってた。でも一般人には縁のない存在っていうか、警察と関係のある人達って感じだし。
_______________・・・・あの静かにお弁当に手合わせてる彼がそうだっていうの・・・?
顔の疵とか、体格とか、ヤバイ奴が来たりとか。納得する点はあるけど、どうにもしっくりこない・・・・。
「だから名無。あんま関わらない方がいいって。いつか殺されるよアンタ。」
「う、うーん・・・・。ちょっとまだ信じられないっていうか・・・頭混乱中なんですけど・・・。」
「嘘だと思うなら本人に聞いてみなって・・・。そうすりゃ名無も引くから・・・。」
花山くんが組長・・・か。友達が嘘ついてるとも思えなくて本当に困った。
本人に聞けば、とか。名刺持ってる、とか。真実だったらどうしようって思ったり。
・・・私今まで凄い相手と話してたんだろうか。まだ花山くんとは友達とかそういう関係じゃないけど・・・・。
でも、なんだか気にしちゃう存在なんだよね・・・。彼がどういう
(花山くんって、もしかして花山組と関係ある?
・・・・・・じゃ直球すぎるか・・・・。花山くん、名刺見せて・・・・・こ、これも何か違う気がする・・・・。
花山くんはー・・・・花山くんさー・・・・~~~~ッッあァァ良い案が浮かばないッッ!!これじゃあ逆に私が怪しいっての!!)
さてどうしたものか。話しかける言葉が全く浮かばずあれからずっと悩んでいた。
そんなこんなしてたら帰る時間になっちゃったし。いつも以上にお昼の授業頭に入らなかったな、今日は・・・。
とぼとぼと下駄箱に向かうと、ちょうど大きな背中が見えた。
私の頭を悩ませている張本人だ。
「・・・・はー・・・・・花山くんッ!!」
「・・・・・・。」
「・・・今日の授業は眠かったね!!あはは!!」
「・・・・午後の理数系は、な・・・・。」
「だよねー!私の前にいた奴寝てたもん!」
自然な流れで会話に入っていけたのでこのままいつもの帰り道にもっていけた。
でも肝心な事をどこで話すかが問題だけどね・・・。
「_______________・・・・。」
歩いてたら隣でカバンを持つ花山くんの手が見える。よ、よく見たら凄い傷だらけだ。
あんまり意識してなかったけど、これ普通じゃ絶対つかないレベルの傷跡だよね・・・?
「・・・・・・?」
「・・・・あ。・・・・・えっと・・・その手の傷、どうしたのかなーって・・・・。」
なんか彼の視線を感じたので見上げてみると目が合ってしまう。なのでついでに聞いてみた。
「・・・・・色々だ。」
「色々・・・・か・・・・。
_______________その色々って、もしかして職業柄・・・・だったりする・・・?」
あ。ついに聞いてしまった。というかこれが聞きたかったんだよ。こういう事がッ。
名刺とかヤクザとか言ってないけど、私の言わんとする事分かってくれるよね?花山くん・・・!?
「・・・・・・・・・職業っつーか・・・・・。家柄だ。」
「・・・・・・あ、あのね・・・・。
私聞いちゃったんだけど・・・・花山くんが花山組の組長さんって・・・・。本当・・・・・?」
「・・・・・・ん。」
そう言うと躊躇うことなく私に名刺を渡してきた。
ガッツリ『二代目花山組 組長』って書いてある・・・・ッッ!!ホントだったんだ、マジだったんだ・・・!!
暑い訳でもないのに冷や汗が出た。そっちの世界の人間だと身を持って思い知らされる。
・・・・でも私の口から出た言葉はこうである。
「・・・・・薄々そうかなーとは思ってたよ・・・・・。こうして名刺見ちゃうと嫌でも
・・・・でも!私の目の前にいるのは倉鷲高校1年A組、花山薫くんだからっ!!」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・この学校に通う限りはそうだって知ってる。遅刻欠席もない・真面目に勉強してる姿見てきたんだし。
だから・・・・皆がどう言おうと、私は花山くんと仲良くしたいの。・・・・・いい・・・・かな・・・・?」
勇気を振り絞って本音を言えた。これが私の気持ち。
たとえ友達が怖がっても、そうじゃないっていうの私は知ってるから。
おこがましいかも知れないけど・・・一人の普通の男子生徒として接してあげたいから・・・・。
「_______________ヨロシク。苗字。」
「・・・・・!!」
すると大きな手を差し伸べて握手を求めてきた。
これは・・・・・つまり、OKって意味だよね・・・・!?
「・・・・・よろしくっ!!私の事は名無でいいよ!!」
「・・・・・ん。」
「その代わり、私も薫くんって呼ぶけど・・・どう?」
「・・・・・いいぜ。名無。」
私は力強く握り返したけど、向こうは加減してるのか優しい握手をしてきた。
私の名前を呼んだ時。初めて笑った顔を見せてくれた。
_______________・・・・・なんだ。笑うとけっこうカッコイイじゃん。そんな顔も出来るなんて知らなかった。
だから私も笑い返して、ここに友情が生まれたんだ。帰宅仲間から始まった友情だね。こうなるとは思ってなかったけど。
そこから私と薫くんの学園生活が始まった。
「やれやれ・・・。テストも終わってひと段落だね・・・・。薫くんは結果どうだった?」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・まあ、薫くんならよく勉強してるから点数良いんだろうけどー。ぶー。」
「・・・・・いや・・・。」
いつもの帰り道。ボソッと小さい声で横から否定の言葉が聞こえた。
嘘つけー。あんなに予習してる薫くんがテストの点数良くない訳ないでしょうに。
「だって私平均的以下で補習ギリギリだよ・・・。
もー、危うく一緒に帰れないところだったんだか・・・ら・・・・。」
・・・・あれ?私今なんて言った・・・・?
『一緒に帰れないところだった』・・・・?
それって、いつの間に私は薫くんとの帰りをこんなに楽しみにして・・・・______________
「・・・・ん。」
考え事してると薫くんがペラっと何かの紙を渡してきた。
あれ?これって今日のテスト・・・・・って。
何この点数!!?私と同レベルじゃんッ!!?
「・・・へ・・・・えぇえ!?な、なんで・・・・あんなに勉強してるのに・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・・・。さてはあれかね、薫くん。まさか"分からないところが分からない"的な感じじゃないだろうね・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
いやッ、そんな「なんで分かったんだ」みたいな顔されてもッ!!図星なの!?
これだと家帰ったら勉強はしてなさそうだなぁ・・・・。組長の仕事でも忙しいのかな?
「・・・・んじゃあなんであんな予習してるの?普通に周りと同じくおしゃべりでもしたらいいのに。」
「・・・それが学生のする事だろ。」
「・・・・・え・・・・?」
「俺が"あの場"にいる限り、そうだからな。」
・・・なんか、薫くんの思い描く学生のすべき事が勉強なのかも。
頭は良くないけど必死に薫くんなりに学園生活送ろうとしてるんだ・・・。
頭良いってのは勘違いだったけど、真面目っていうのはどうやら当たってるみたいだ。
「_______________・・・・・全くもう。そんな真面目に学生しなくても、誰も文句言わないと思うんだけどなあ。
・・・しょーがないから、今度私の分かるとこだけでも勉強教えるよ。だから薫くんも私の分からないとこ教えて。」
「・・・・良いのか。ダチと喋らなくて。」
「最近私が言うから友達も薫くんの事
「・・・・・名無。有難うよ。」
・・・・そんな穏やかな顔して微笑まれると悪い気はしないかなっ・・・。
だからたまの休み時間に勉強教えあったりしたんだけど、お互いそこまで頭良くないから進歩はイマイチだったり・・・。
あぁでも!現代文とか私が得意なやつはどうにかなったの!!ちゃんと納得してくれたからそれだけは点数上がったんだよね!!うん!!
『・・・・・名無。有難うよ。』
なーんか最近薫くんの事を思い出す回数が増えたような・・・。あの微笑んだ顔が頭から離れないんだけど気のせいかな・・・。
こ、これってまさか。
まさかまさかの青春ッッ!?薫くん相手に私がッッ!?
ちっ、ちが!!別にそんなんじゃない!!
薫くんとはただ友達になりたかっただけだし、ただの帰り道仲間だし!!んで勉強仲間なだけだから!!
気が付けば一人。自室のベッドの上でじたばたしながら考え込んでる自分がいた。
(・・・・・・・・相手ヤクザなのに。組長なのに。
ダメじゃん私・・・・・。好きのハードル高いっての・・・・。)
これ叶うとか叶わないとかそういう問題でもない気がするなあ・・・・。
だって今は楽しいけど、卒業しちゃったら彼は組長。私は一般人。どう考えても結ばれっこないでしょ。
だから彼と仲良く出来るのは・・・今の3年間だけなんだからさ・・・。
「・・・・・っあれ。」
おかしいぞ。なんか泣いてるぞ私。そんなに好きなの?薫くんの事が?
そんなに薫くんと一緒に居られないのが寂しい?悲しい?
いやいや。こんな泣いてるのなんて私らしくないってば!!
_______________いつの間にか、大きくなってたんだ。薫くんとの日々が。
泣くぐらい好きに・・・・なっちゃってたんだな・・・・。
情けないけどどうやらそうみたい。なんかその日はしくしく泣いてたら一日が終わってしまった。
思えばあの入学式の時。ああして出逢った時からもう始まってたのかな。
「薫くーん!一緒に帰ろー!」
「・・・・・名無。」
惹かれる運命だったのかも知れない。こうして他愛のない会話しながら彼と歩く道が好き。
薫くんが気になって。一緒に過ごす日々が大切で。いつも心のどこかに居た。
これからもずっとこうしていたいな。ずっとずっと、学生のまんまで大人になんかならなくていいのに。
「・・・・・え?怒って古タイヤをちぎったァッ!?
_______ぷっ。・・・・あっはっはっは!!ウケる!!あれってちぎれるんだ!?あっははは・・・!!」
「・・・・面白いか?」
「あったりまえじゃん!!薫くんといると飽きないもん!!あー・・・・お腹いたい・・・・!!」
「・・・・・俺も。名無といると、飽きねえよ。」
ああ・・・やっぱりその笑った顔。好きだな。カッコ良いな、って思っちゃう。
私がどれだけドキドキしてるか知りもしないんだろうなあ。不意打ちでそんな事言うと困るよ。照れるから。
「・・・・・ずっと薫くんの話聞いていたいなあ。掘り出し物いっぱいだもん!」
「・・・ずっと、か。・・・・・・・そうか・・・。」
ねえ。目を伏せた薫くんには何が見えてるの?一体何を思ってるの?
知りたいな。もっと話したいな。
もっと・・・・・・・傍で笑っていたいな。
______過ぎ行く季節の中。もうすぐ桜が咲くかもって時期。
そんな帰り道。春休み直前に、私は一大決心をしていた。
「・・・・・・薫くん。」
「・・・・・・・?」
「あの・・・・・さ。話したい事があるんだ。」
この一年弱で私は薫くんの色んな事を聞いてきた。
極道の日常とか、学校でどんなのに襲われたとか、体罰先生と対立したとか。
そんなとんでもエピソードを聞くに聞いて。どれも薫くんらしくて良いんじゃない?って返してきた。
・・・・・だからそれを聞いても。私は今まで薫くんを嫌いにはならなかった。
ずっと今まで。好きで居続けたから。言おうと思ったんだよ。
「______・・・・・・もうすぐ2年生じゃん。私達。
これから・・・・・まだ卒業までは早いけどさ。言わなきゃ、って思ってね・・・・。
・・・・・・・・薫くんっ。私が卒業する時、その第2ボタン!!私の予約にしといてっ!!!」
彼の制服のボタンを指差した。はず。
いざ言うとやっぱり告白まがいな言葉だけであって、照れてまともに顔が見れなかった。
ちょっと古くさいけど意味分かってくれたかな・・・・?私の青春の思い出に・・・・欲しいと思ったから。
どうせ卒業して会えなくなるならその代わり。
とまでは言ってないけど・・・こうでもしないと彼喧嘩でボタン無くしちゃいそうだったし。
・・・・・・だ、だからあの。早く返事してほしいんだけど。
薫くん・・・・・何も言わないんですが・・・・。
「・・・・・・今。やってもいいぞ。」
「へ・・・・?」
「欲しいなら、今やる。」
あ。ダメだこれ。例えが古すぎたか。
・・・・・・多分意味分かってない!!制服の第2ボタンの意味!!
それはね、つまり薫くんとの思い出で卒業式に渡すものであってですね・・・・!?
「ち、ちち違うのっ!!今はいいのっ!!先生に怒られるし、それ3年の卒業式にって意味で_______」
「卒業しようがしまいが。俺の気持ちは変わらねえよ。」
・・・・・・・・・え。
今、なんて言った?俺の気持ち・・・・?
それってどういう意味で・・・・・。まさか、えっ!?
「・・・・・・今もこれからも。学校抜けても。
・・・・・・・・・名無と一緒にいてえ。」
「・・・・薫、く・・・・______」
あっ。制服のボタン。結局取っちゃった・・・。
んで私にぽん、と渡してきた。
「あと2年。俺についてくるか、考えといてくれ。」
・・・・ちょっと、嘘でしょ。
告白したの私なのにっ!?逆に告白されたぁっ!?
てかこれって両思いって事じゃ・・・・。て、ていうか私極道に入るの?その覚悟決めとけって?
・・・・・私青春どころか飛び越えてないっ!?私の将来、マジでどうしようっ・・・・!!
「あぁっ・・・・アリガトウ・・・。あの・・・・突然の事すぎて、整理が・・・デキなくて・・・・。
えっと・・・・考えとくから・・・・。だから、これからも面白い話いっぱい聞かせて・・・・!!
一緒に・・・帰り道歩こうねっ・・・・!!」
「・・・・・ああ。名無となら、何時でもな。」
~~~~~~もうっ!!薫くんは私の予想をいっっつも覆してくれるんだからぁっ!!
さーて私の家も近付いてきちゃった事だし。本当にどうしようかな・・・・。
・・・・・これからは、このボタンを見ながら毎日考えるとしますかっ。
まあ・・・・結果はだいたい見えてるけどね。断らない理由ないし、強いて言うなら親がどうかな・・・・。
って私も気が早い早いッ!!まだまだ彼と歩いてから決めるんだもん!!まだ始まったばっかりだからっ!!
薫くんと歩いて。この先もずっと歩けるのかな。
まだまだ道の途中。これからの帰り道も・・・・・もしかしたら人生の道程も。
ずっと・・・・・これからも歩んでいけますよーにっ!!
fin