短編置き場
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「うう・・・暑い・・・・。」
8月の真夏日。毎日暑いが今日は特に暑いと感じる。
こんな日には外に出ずにのんびりと部屋で過ごしたいもの。だが名無にとって今日はそうはいかない。
外に出るだけで暑いが、そんな暑さも吹き飛ぶ出来事が今から待っている。
「あ・・・!花山さんっ!」
「・・・・名無。」
「今日も暑いですねー・・・。」
「そうだな。」
待ち合わせていたのは恋人の花山。
会うなり優しく微笑む彼氏に癒やされる。
「今日はどこに行きましょうか・・・。
お散歩しながら考えます?」
「名無の好きにしていいぞ。」
「・・・・・どこか涼しい場所があれば良いんですがね・・・。」
(俺は名無といればどこだって快適だが・・・・・。)
(暑いけど花山さんといれば暑さも忘れるけど・・・・・。)
二人のデートはいつだってこんな感じ。
誘うまでは良いのだがあとはどこへ行くかなんてその日任せで考えていない。
そんなお互いの想いが一致しているなどと思わず、とりあえず散歩でもしながら涼める場所を探す事にした。
(・・・・・・そういえば、花山さんっていつも白スーツで格好良い・・・。
・・・・・ってそうじゃなくて!!・・・こんな夏でも暑くないのかな・・・・?)
横を歩く花山を見上げるといつもの白スーツ。
当たり前といえばそうだが長袖にネクタイ。傍から見たら暑そうな格好だ。
服の中に何か仕込んであるのか、それともスーツ自体が清涼仕様なのかは分からないが汗はかいていない。
「・・・・・花山さん。一つ聞いてもいいですか?」
「・・・・何だ?」
「花山さんって夏でもずっとこの格好ですか?」
「・・・・・・・・ああ。」
「暑くないんですか・・・?」
「・・・・・こうでもしねえと示しがつかねえ。」
「他の人に・・・・ですよね。」
「ああ・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
花山組の組長として、外を出歩く時は必ずこの白スーツが欠かせない。
それは夏の暑い日だろうが冬の寒い日だろうが基本お構いなし。
本人も言葉には出さないが暑いのは暑いのかも知れない。
(というかそれって・・・私が外でのデートに誘っちゃってるからじゃ・・・・・!?)
事務所から一歩外に出ればこの格好をせざるを得ないのだとすれば多分そういう事になる。
突如訪れた罪悪感に密かに焦る。
これでは涼しい場所にいってもあまり気が休まらないのではないだろうか。そんな気がした。
「は、花山さんっ!!」
「・・・・・・?」
「え、えっと・・・・えっと・・・・。
あのっ・・・・・・花山さんさえ良ければなんですが・・・・。
______うちに来ませんか・・・・・!?」
咄嗟に出た言葉がそれだった。
名無は言い放ったあと自分の発言に思わず赤面。
なにか今とんでもない事を口走ったような気がして俯いたまま顔が上げられなかった。
「・・・・・・・良いのか?」
「・・・・へえ・・・・っ?」
「・・・・・・・家、行っちまっても。」
花山の言葉に顔を上げると、言われた彼も少し驚いた表情だった。
「その・・・・あの・・・・・・。
うぅ、うちに来れば・・・冷房もありますし・・・麦茶冷やしてありますし・・・・・そのっ、良かったらですがっ・・・・。」
「・・・・・・・そうか。なら行くか。」
もじもじとしている名無が可愛らしくてつい笑みが溢れる。
穏やかに微笑み返した花山は早速車の手配をする。
その反応が嬉しくてまた笑顔に戻った。
「・・・・・はいっ、行きましょう!!」
そんなこんなで名無の家にやってきた。
「邪魔するぜ。」
家に来るのは初めてで、女性の部屋なので可愛い小物がちらほら見える。
部屋にも余計な物は置いてないようだしけっこう片付いてる。
「花山さん、上着こちらにどうぞ!」
「・・・・・・・。」
ふと見れば名無がハンガーを持って待機していた。
何故かその瞳は輝いているように見えて、どこか嬉しそうに見える。
「・・・・・ああ、頼む。」
「はいっ!
・・・・あ、麦茶持ってくるんでそこに座ってのんびりして下さい!」
花山の大事な白スーツを預かると丁寧に扱い分かる場所にかけておく。
それから冷房を入れて、小走りで麦茶を取りに行く。
そんな駆け回る名無を横目に花山はソファーへ座る。暫くすると冷房の風が来てすぐ心地良くなった。
「お待たせしました♪」
「済まねえな。」
「いえいえ。こうしてると楽しくてしょうがないです。
花山さん、暑いでしょうからネクタイ緩めて良いですよ・・・?」
麦茶を持ってくると隣りに座って落ち着く。
けれど彼の様子がどうにも気になって仕方がない。
「これか・・・・。」
「花山さん・・・・。ここは公共の場じゃない訳ですし、ゆっくりして下さい。
は・・・・花山さんは・・・・・私の・・・・かっ、彼氏なんですから・・・・・。もっとくつろいで下さいな・・・・。」
「_____・・・・・名無・・・・。」
またとんでもない事を言った気がして顔が一気に赤くなる。
こんな妙な事を言うのは夏の暑さのせいか。それとも彼氏の隣りで安心しきってるせいか。
ともかくそれを聞いて花山はゆっくりネクタイを緩めた。
それと暑いので服のボタンも第2まで外すと鎖骨がちらりと覗かせる。
(わ、わ、わ・・・・!!花山さんの肌がっ・・・・胸板がっ・・・!!
ネクタイ外すのは良いけどボタンちょっと外されるだけでカッコ良い・・・・・。
ああもうどうしよう直視出来ないぃ・・・・!!)
ボタンを外す所で恥ずかしくなって花山から目をそらす。
全部外してしまいそうな勢いに耐えられなくなった。
名無の様子に気付いて第2ボタンで止めたのは気付いていないようだ。
「_____・・・・・・・ッッはあ・・・・。」
「・・・・やっぱり夏は麦茶が美味しいですね~。」
「ああ・・・・生き返る・・・・。」
(やっぱり花山さん暑かったんだ・・・・・。)
コップの麦茶を氷ごと一気に飲み干して一息つく姿に暑かったのだと分かる。
すぐに次の麦茶を入れて氷も足してくる。
ついでにうちわも持ってソファーへ戻る。
「・・・・・悪いな。」
「大丈夫ですよ。涼しいですか?」
「ああ・・・・名無は暑くねえか?」
「私・・・・?私は平気ですよ?」
「・・・・貸してみろ。」
名無ばかりに用意させるのも悪い気がしてうちわを貸してもらう花山。
名無も大人しく待機してうちわの風を待つ。
ブンッ!
「____・・・・・・!!」
「・・・・・・す、済まねえ・・・。」
少し扇いだのが力加減を間違えて名無の前髪が乱れて大半後ろ髪になってしまった。
自分でやるとなんともないのだが人に扇ぐのとでは訳が違った。
申し訳なさそうにうちわを返すと。
「大丈夫ですよ・・・。」
と苦笑いする名無。花山を扇ぎながら少しずつ前髪に戻した。
「・・・・・・・・・・・。」
「外より家の方が落ち着きます・・・。と言っても私は、ですけど・・・・。
花山さんはどうです・・・?落ち着い・・・・て・・・・_______」
暫くうちわで扇ぎながら世間話をする。
花山はあまり喋らないので名無が一方的に喋る形だがこれが二人にすればいつも通り。
反応がないのでふと花山の方を見たのだが。
(・・・・・・・ね、寝てる・・・・・?)
そこには目を閉じて眠りについた花山がいた。
名無の声と涼しさで和んだのか、口元は微笑んだまま寝ている。
試しに目の前で手をかざしてみてもなんの反応もない。
「・・・・・・あ、そうだ・・・。」
小声で呟くとタオルケットを持ってきて膝にかける。
それでも起きる気配がない。余程気持ちが良いのだろう。
(_____・・・・幸せだなぁ・・・。)
と彼氏の寝顔を眺め、静かに名無は思った。
そして眠りについた花山も。
(____・・・・俺は、幸せもんだな・・・・・。)
と密かに思っていた。
お互いの想いは密かに響き合いながら、名無も静かに目を閉じるのだった_____
fin