第1章
夢小説設定
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「・・・・・・・克巳さん・・・・克巳さん?」
「____ん・・・?ああ。ちゃんと聞いてるぜ。」
「てな訳で、清澄との距離が縮まった気がしたんです。これも克巳さんの指南あってこそですッ!
本当有難う御座いますッ!!」
「いやー、俺は何もしてねえようなもんだし。」
(・・・・・・・そう。何も出来てねえ・・・・・。俺は・・・・_____)
名無から話を聞かされた克巳はにこりと笑う一方で頭の中では真剣に迷い始めていた。
名無を自分のものにするチャンスだと思い仕掛けた作戦はあまり成功していない。
一部成功もしたが同期で付き合いが長い分加藤の方が元々有利。
______流石に驕りすぎたか。遠回りな手を使った自分を責めたくなった。
「・・・・名無。次の指南から少し本格的になるぞ。覚悟しとけよ~?」
「本格的・・・・?この前の映画の内容も食い違ってたあたしに大丈夫でしょうか・・・・?」
「大丈夫だ。方法は簡単だからなー。」
そう言って楽しげに微笑む理由が名無に惚れているから、というのを名無は知らない。
「・・・そうですか・・・・?頑張ってみます!!」
「応ッ!心待ちにしててくれ☆」
克巳のデート指南はわりと早い段階で大詰めを向かえようとしていた。
加藤との接近が予想より早い為遊びはやめて本気になろうとしている。
愚地克巳、快進撃の幕開けとなるのだろうか____
「克巳さーん!待ちましたか?」
「いやあ、全然♪」
デート指南当日。克巳はいつもより若干着飾った洋服で待っていた。
そして名無もいつもと違う少しピンク多めの女の子っぽい格好だ。
この服装には事情があった。
『いいか名無。次のデートだが、出来るだけ可愛い格好で来てくれッ!』
『か、可愛い・・・!?と言われましても・・・・あたしあんまりそんな服ないかも・・・・。』
『出来るだけで構わねえよ。
"これ買うなんて自分も女の子なんだな~ッ"て服とかアクセサリーを付けてくれ。』
『ぐっ・・・・やっぱり次の指南難しそうですね・・・・。』
という約束をしていた。
一応名無にも女の子だと自覚する服くらいはあったようでそれらしくはなっていた。
「可愛いじゃねえかその格好ッ!似合ってるぜ☆」
「あ、あんま見ないで下さい・・・・恥ずかしいですッ・・・・・。」
「何でだ?良い感じじゃね?」
「こんなの普段のあたしらしくないです・・・・。神心会の子に見られたらどうしよう・・・・。」
「そこがポイントなんだぜッ!」
「え・・・・?」
「普段着ないような格好もデートならしていく。
相手となら知らない自分も発見出来てさらけ出せるってもんだッ!」
その言葉を聞いた名無は暫く呆然とした。
顔を紅くして俯いてしまい。
「そうなんですか・・・・?」
と小さな声で返事が帰ってきた。
見た事ない名無のリアクションに克巳の口元がにやける。勿論名無には見えていないが。
(や、やべえ・・・・・超可愛い・・・・。ハッ、そうじゃねえって!!)
「・・・あ、ああそうだ。だから本来のデートの格好はこういう風なのが主流だ。」
「・・・・・分かりました・・・。次からこういう格好します・・・・。
・・・・・・・・多分。」
克巳に促されて渋々納得する。
いつも男っぽい服が楽な名無からすると今の服装はそこそこ冒険した格好。
新鮮ではあるもののなんとも言えない恥ずかしさに慣れるのはまだ先のようだ。
「・・・・んで・・・・・・今日はどこ行くんですか?」
「んー・・・・そうだなぁ・・・・・。
その前に名無・・・・・・。」
「・・・・・・・・?」
「・・・・・・・この手をとってくれないか?」
「_____へっ?」
目の前に差し出されたのは克巳の大きな手。
「・・・・・とるって、どういう・・・・・?」
「手を握ってくれ、という事だ。」
「・・・・・_____ええぇっ!!?
手、てててて手を握るって、そこまで、そんなッッ!?」
「____そこまでだ。それだけ今回のデートは本格的だっつったろ?」
低い声で囁き、ニヤリと不適に笑う克巳に流石に疎い名無でも躊躇う。
「・・・い・・・・良いんですか逆に・・・・・・。
あたし相手に、指南でここまで・・・・?」
「覚悟してこいと言ったはずだ。
・・・・・・・・俺は本気だぜッ?」
「~~~ッッ・・・・分かりました・・・。
克巳さんが、本気なら____」
おそるおそる克巳の手に触れる。
大きな手。稽古の時には当たり前に接しているから気が付かないが、ごつごつとして鍛えあげられた漢の手だ。
「・・・・・・・・。」
名無の手を優しく握ると、すっかり顔が紅くなった二人がいた。
克巳も自分から言ったとはいえ、念願の温もりに少し照れている。
「____・・・・じゃあ・・・・・行くか。」
「・・・・・はいッ・・・・。」
克巳の手にひかれ、ゆっくりと歩き出した。
「・・・・・克巳さん・・・・。」
「んー・・・・?」
「えっと、しばらく歩きましたけど・・・どこへ向かってるんです?」
「あー・・・・っとー・・・・・。
実は・・・ノープランだ・・・・。」
「の、ノープラン・・・!?予定ないんですか・・・・!?」
驚いた名無に慌てて弁解を述べる。
「違うんだ!!デートってのは好きな相手といるとどこでも楽しい訳だッッ!!
だから他愛もない話しながらふら~っとその辺の店に寄ったりするデートもアリってこと!」
「・・・・・。臨機応変に、ってやつですか?」
「そうッ。そーゆー事だッ!」
「____じゃあ、あたしもどこ行っていいか分からないんで・・・。
克巳さんに全部おまかせして良いですか・・・・?」
上目遣いで申し訳なさそうにはにかんだ顔に克巳の顔が更に紅くなっていく。
(か・・・・可愛ッッ・・・・!!やっぱこの笑顔独り占めにしてェッッ!!
加藤なんかに渡せるかッッ!!)
「任せろッ!とりあえずこのまま真っ直ぐ行ってみっか~?」
「そうですね!行きましょう♪」
克巳が紅くなったことに名無は気付いてはいたが、日差しが強いので光の当たり加減だと勝手に解釈していた。
ともかく行き当たりばったりのデートが始まった。
「お・・・・・ゲーセンあるな。入った事あるか?」
「何回かあります!でも格闘ゲームしかやったことないですが・・・。」
「ほぉーッ。とりあえず入るか?」
「そうですねッ!!誰かと行くなんて久しぶりだなあ~!!」
(また久しぶり、か・・・・。)
意気揚々とゲーセンに入る後ろ姿に意味深な言葉。
嘘などつけるような性格でもないし、やはり友達がいないというのは事実なのだと感じる。
「俺UFOキャッチャー得意でな。なんか欲しいもんあったら取ってやるよ。」
「えぇっ!?凄いですね克巳さんッ!あたし一回も取れた試しなくて・・・。」
「何がいい?」
「・・・・お、大きいのでもいいですか・・・?」
「位置にもよるが、何度か挑戦すりゃあ出来るだろう。」
「じゃあ・・・・・あれ・・・・。」
名無が指差した先にあったのは____
(で、でかッッ!!)
「・・・・・名無。特大ポッキー好きなのか・・・・?」
「ええッ!!一度食べてみたかったんです~!!」
UFOキャッチャーで見かけるものの中に特大のお菓子がある。
ぬいぐるみの趣味が微塵もない代わりにこういう食欲は人よりあるらしい。
「・・・・まあー、取れねえ位置でもなさそうだし・・・・やるだけやってみっか。」
(ここで取れたら俺カッケェぞ~ッッ・・・・!!)
「頑張って下さい克巳さん!!」
ゆっくり慎重にクレーンを動かして箱の隅に標準をあわせる。
少し触れば落ちそうな位置なので無理やり上げるより効率が良さそうだ。
「____・・・あっ。」
「あ!あともう少しで落ちそう・・・。」
「一応触ったからな!次だ次!」
「・・・・・・・・・。」
「____・・・・うーん・・・もう少し左でしたね・・・・。」
「よし、まだまだッッ!」
惜しい方向へ少しずつ動きながらも挑戦すること4回目。
「___っしゃーー!!取れたあーーッ!!」
「やりましたね克巳さんッ!!
うっわあ~・・・・凄い夢みた~い・・・!!」
箱は名無が抱える程大きくて、何故か可愛らしい服装とお菓子の図がマッチして見えた。
(妖精が喜んでるみてえだ・・・。)
少なくとも克巳にはそう見えたらしい。
「有難う御座います克巳さんッ!!あとでこれ一緒に食べませんか?」
「そうだなぁ。ここ出たらどっかで食うか。」
「わあーい!!次どこ行きます!?」
「名無の好きなとこでいいぜ?」
「んーとそれじゃあ・・・・あっち行きましょう!!」
「応ッ♪対戦でもすっかぁ!」
そんなこんなであちこち二人で回って時を過ごした。
こんなに二人共楽しげなのに、あくまで"デート指南"というのが不思議で仕方ない。
他人が見ればそう思う程に楽しそうだった。
「もうおやつの時間なんですねー・・・・全然気が付かなかった・・・・・。」
「だな。じゃあそろそろ休憩場所でも探しに行くか。」
「はいッ♪」
遊び終わっていざ出発しようとしたその時。
「・・・・・名無。」
「?」
「___・・・・・手。」
「___・・・・・!・・・はいっ・・・・。」
再び手を握るよう指示が。少しだけ顔を紅くして素直に手をとる。
ゲーセン前と違うのは緊張が解けて照れ笑いをしながら握ったことだった。
「名無は飲みもん何するー?俺買ってくるわ。」
「良いんですか?・・・ん~・・・・何でもいいですよ~?」
「そっか。じゃあ座って待っててくれ。」
適当な休憩場所を見つけてからすぐに克巳は自販機に飲み物を買いに出た。
その間名無は特大ポッキーを見つめて密かに思う。
(克巳さん・・・・。デート指南とはいえ凄く優しくしてくれる・・・・。
なんかあたし、克巳さんに甘えすぎじゃないかな・・・・・。)
「名無~♪お待たせ♪」
「ああ、お帰りなさいッ。」
「それじゃ食うか。」
特大の箱を開けて内一袋を二人で半分こする。
これも克巳がいてこそ味わえるものだ。
「・・・・克巳さん、あの・・・。」
「ん?なんだ?」
「えっと・・・・。ポッキー取った時っていくら使いましたっけ?」
「・・・・金か?800円くらいじゃね?」
「ふんふん・・・・。んでこの炭酸いくらでした?」
「150円だが・・・・。
・・・・・名無、もしかして今とんでもなく野暮な事考えてねえかァ?」
「800と150足して・・・・・って、へ?」
難しい顔をして考える名無にいつの間にか至近距離に近付いていた克巳の顔が迫る。
「・・・・払わなくていーかんな?いいか?絶対だぞ?」
「やっぱ・・・・ダメですか・・・・・?」
「ダーメに決まってんだろォ!?
映画の時もそうだが、お前少し真面目すぎるの欠点だな・・・・。」
「真面目・・・ですかね?」
「十分すぎるくれえだッッ!」
こういう時は譲らずプンスカ怒る克巳。
遊び好きだからこそ、こんな時くらい細かい事は気にしたくないのだ。
「・・・・名無・・・・・。デートっつーか・・・俺といる時ぐらい頼れッッ。
漢なら誰だって頼られたら嬉しいもんだッッ!!」
「頼る・・・・。
_____・・・・・!」
その時ふと名無の脳裏にある漢の顔が浮かんできた。
『ななし。・・・・・たまには、俺にもリードさせろよ・・・・・・。』
(・・・・あれ・・・・?なんであたし、清澄のこと思い出して・・・____)
「・・・・おーい、名無・・・?」
「ハッ・・・・すいません、ちょっとぼーっとしてました・・・・・。」
何故か加藤の顔が頭をよぎる。
その時の名無はどこか遠くを見つめていた。
「漢の人なら全員そうですか・・・?」
「まあ・・・・・全員とまではいかねえが、だいたいの奴ならそうッ!俺もそうだッ!」
「・・・・・。あたしは、女の子達からずっと頼りにされてきたから・・・・人の頼り方っての分かんないままです・・・。
デートにやっぱ・・・頼るのが必要なら・・・・・克巳さん・・・・教えてくれますか・・・・?」
「いつでも教えてやるって。名無が望むならいつでも_____」
真剣な瞳をしながら笑う克巳がカッコ良く見えた。
嬉しくなって、名無から手を握ると相手もすぐに握り返してくれた。
「・・・・・なあ、名無。」
「何ですか?」
「・・・・・こんな雰囲気だから言うんだが・・・・・・。
・・・・・ポッキーゲームしねえ?」
恋人のような凄く良い雰囲気の中で克巳が突然切り出す。
それを聞いてポカンとしている名無。
「・・・・・てか名無、そもそもポッキーゲームって何か知って____」
『知ってますよそれくらいッッ!!公衆の面前で何言ってんですか克巳さんッッ!!!』
流石に疎い名無でもポッキーゲームが何かぐらいは知っていたようで。
顔を真っ赤にして握っていた手を即放す。
「いやァ~、んな怒んなくてもよくね?」
「全ッッッ然良くないです!!い、いくら克巳さんだからって指南でそんな事まで無理ですッッ!!」
「別にゲームだし、今からチューすると決まった訳じゃ」
『ちゅ、ちゅちゅ、チューって言ってるじゃないですかッッ!!!
もう、ポッキー残り1袋あげますから許して下さいッッ!!』
(・・・・・・・あら?俺ってばまたなんか空回りしたッッ!?)
あともう一押しだったにも関わらず己の欲を出しすぎて見事に空振り。
そこからは渡された特大ポッキーをちまちま食べて、その日名無はあまり口を聞いてくれなかったとかなんとか・・・・。
Next...