第1章
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(えーっと・・・・・次は清澄と映画か・・・・。)
翌週。次の加藤とのデート本番に備えて一人部屋で考え込んでいた名無。
(_____あ。でも待てよ?今やってる映画で恋愛ものって克巳さんと観たあれだけだったようなー・・・・?)
「やば・・・・。清澄と何観よう・・・・・。」
この前のデートのやり方では恋愛映画が一番ベスト。けれどこの時期に公開していたのはこの前観たやつだけ。
克巳の組んだ予定通りに進んでいた計画が微妙な所で崩れ始めていた。
(もっかい同じのってのも寝ちゃいそうだし・・・ていうかそもそもあたしが嫌だな・・・。
克巳さんは話題性のある映画とか言ってたっけ?でも何が流行ってるかなんて知らないよ・・・。)
あれやこれやと悩みまくって、ふと気付くともう寝る時間に。
しょうがなく寝転ぶがそれでもずっと考え続けていた。
そうして翌日。結局何にするか決まらずに待ち合わせ場所へ。
と、そこにはもう加藤の姿が。
(・・・・・ん?あいつまた早いな・・・・。)
「ななしーッ、遅えぞー。」
「遅いっていうかそっちが早いのー。なんで10分前にいんのよ?」
「ふらふらして15分前には着いてっかんな。」
「だからって15分は早すぎでしょ・・・。」
加藤がいつも待ち合わせに早いのは待ちきれないせっかちな性格によるもの。
そわそわして家を出て、外でふらりと時を過ごして早めに名無を待つ。
少々らしくないかも知れないがこれが加藤のやり方だ。
「___んで、今日もまたどっか予定あんのか?」
「一応あるよ。あるけど・・・着いてから決めるって感じかな・・・・・。」
「・・・・・?よく分かんねーがとにかく行くか。」
「うん・・・こっちだよ。」
(でも清澄ってどんな映画観るんだろ・・・・・?)
「____着いたよ、ここ。」
「おーッ、映画館か。着いてから決めるっつー事は何観るかは決めてねえんだな?」
「うん、どうしよっか・・・・。」
克巳が考えた指南通りに駒を進めてきた名無にとってノープランというのはわりと心細い。
それほど名無は恋という未知が怖い存在なのだ。それはたかが映画一つでも問題だ。
「・・・・じゃあよ、俺観てえと思ってたのあんだ!あれで良いか?」
「あれって・・・・『スピードアクションⅢ』?でもこれシリーズものじゃない?」
「心配すんなって!前の作品知らねえ奴でもハマるくらい面白えぜッッ!!」
「ふーん・・・・まあ清澄が観たいんならいいよ。」
「ななしも好きな感じだと思うぜ、多分な。」
加藤が選択したのはアクションものでおまけにシリーズもの。
けれど加藤が言う通り古参でも新参でも楽しめる王道映画で有名である。
それを知らない名無はいまいちピンと来てないようだが。
「それはそれで、ななしはなんか食うか?」
「そーだなあー・・・・。」
(この前ポップコーンの塩だったから・・・・。)
「キャラメルでいいかな・・・。」
「俺は塩食いてえから一番でかいやつのハーフでいいか。」
「ああ、半分ずつのやつね!一度食べてみたかったんだ♪」
その反応に少し考えた後加藤は財布を取り出してこう言った。
「・・・・なら俺の塩も少しやる。このポップコーン奢らせろよな。」
「_____へ?」
喧騒の中でなにか加藤らしくもない台詞を聞いた気がした。
「な、なんでそうなったの・・・!?いいよ、半分払うよ!!」
「いーだろ別にッ!俺は今機嫌が良いんだよ、今の内に奢らせろッ!」
「でもそういう問題じゃ・・・____」
払おうとする名無に大きなため息を一つ。
そして真っ直ぐ瞳を見てこう呟いた。
「ななし。・・・・・たまには、俺にもリードさせろよ・・・・・・。」
「・・・っ・・・・・!」
言った直後、珍しく紅くなって目をそらすもんだから驚きで声も出なかった。
_____いつもの知ってる加藤じゃない。
たまに道場や酒の席で見る加藤ならとてもこんな事を言う奴ではないから。
なんだかちょっと格好良いかも、と不意に思ってしまい名無の顔も紅くなった。
「・・・・・じゃあ、有り難く頂いとくね・・・。」
「・・・塩まで全部食うなよ・・・。」
「分かってるって・・・ちょっと貰うだけだから・・・・。」
(この前カラオケの借りだ。・・・・なーんて余計な事は言わねえぞ・・・。)
(・・・・・清澄がこんな顔するなんて・・・・。・・・・・・やっぱりあたしの事・・・・。)
互いに少し紅くなって、意外と良い雰囲気のまま館内へ入っていった。
その間顔をちょっと見れていないのもお互い様だったりして。
『この戦いが終わったら、俺と結婚してくれ』
『・・・・オーケー分かったわ。その代わり、死ぬんじゃないわよ?』
『必ずあのチキン共を黒こげにしてここへ戻るさ。』
(か、カッコいいぃ・・・!!)
スクリーンに映るファイター系男女の恋に名無はときめいていた。
初めは乗り気ではなかったものの、いざアクションが始まると食いつくのは時間の問題で。
そろそろ終盤に差し掛かろうかという所では完全にうっとりしていた。
(こいつらシリーズ通してようやくか・・・末堂の奴にも見せてやりゃあ良かっ____)
(____ん?何か今手に当たっ・・・・・・。)
「「・・・・・・・・・・。」」
名無は知るよしもないが克巳がやろうとしていた事は見事加藤の時に起こってしまった。
人は何か一つの事に夢中な時他の事が片手間になる。
盛り上がる所でポップコーンを手に取ろうとした二人の指先がちょん、と触れた。
それで反射的に顔を合わせる形となった。
『ぎゃあああ!!』
『あ~らごめんなさい…つい☆』
(・・・・ごめんっ☆)
(_____!!)
映画と同じようにウインクして手を合わせて謝るポーズ。
ニッコリしながらそんな事をするものだから。
『全く・・・・肝が冷えたぜ・・・。』
(ッたく・・・可愛いことしやがって・・・・・!!)
不意をつかれて加藤の顔が紅くなる。ここが暗い劇場内でラッキーだったと思ったりした。
「すっごい面白かったあ~!!あんなんならもっと早く知りたかったなあ~・・・。」
「だろ?DVDあるから近々貸してやろうか?」
「え、いいの!?観るー!!有難う清澄~♪」
映画を観た後の名無はご機嫌そのもの。
観る前のテンションとはほぼ真逆と言っていい程だった。
「あのチキン共にヘリから蹴り入れる所とか痺れたあ~!!あのヒロインの人凄く格好いいね!!」
「あそこカッケェよなッ!その後主人公が銃乱射するのもイカすぜッッ」
「分かる~・・・・清澄とはこういう趣味合うかもね?」
「俺は前からああいうの好きそうだと思ってたがな~。」
二人ともかなり楽しめたようで映画後の感想が止まらなかった。
どうも共感する点が同じなようですっかり二人だけの世界に浸っていた。
(そっか・・・・克巳さんの言ってた相手を知るってこういう事なのか!!
清澄とこんなに話合うなんて思わなかった・・・・。)
「あたし映画観るもんないかなーって少し不安だったけど・・・・清澄がおすすめしてくれて良かった。有難う♪」
「いいってことよ。気に入ったみてえで俺もほっとした。」
「なんだかんだあったけど・・・・清澄の事、少し分かった気がする。」
「・・・・・・・・・。
・・・・何言ってんだ。これからまだまだお前の知らねえ俺、見せてやるよ。」
そう言ってニカッと笑う加藤に少し驚く。
それでもまたすぐに笑い返して。
「・・・・なんかよく分かんないけど・・・楽しみにしとく!」
「期待してて良いぜ?ななしをもっと楽しませてやるよッ!」
はたから見たらまるでカップルのようなカップル未満の二人。
加藤にとっても名無にとっても何かしら進歩のあるデートとなった。
だがこれを聞いて黙っている程、愚地克巳は大人しい漢ではなかった_____
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