第1章
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翌週の土曜日。ある意味本番ともいえる加藤とのデート日。
名無はカラオケに行くだけなので難しい事は何もない。ただ楽しんで帰ろうという軽い気持ちだ。
そんなこんなで待ち合わせ場所に到着すると___
「___・・・・・・・・あ、清澄もう着いてる。早っ。」
「ようななし。早かったな。」
「そっちこそ早いじゃん、まだ10分前だよ?」
「なんだっていいだろー別に。」
意外にも早めに来ていた加藤。
何を隠そう、このデート(もどき)を一番楽しみにしていたのは他ならぬ加藤の方だ。
名無にしてみれば克巳の指南を試す機会という意味で楽しみ。
加藤からすれば好きな相手からのデートの誘いという意味で楽しみ。
若干思うところは違えどそれでも男女のデートに違いはない。
「・・・・んで、どっか行くあてあんのか?」
「もちろんッ!!清澄はカラオケ行ったことある?」
「・・・・・?そらあ、あるが?」
「好き?」
当然これはカラオケのこと。
だが上目遣いで「好き?」と聞かれてドキドキしない漢がいるだろうか。
「すっ・・・・。・・・・・好きだぜ・・・・。」
「よっしゃ決まりー!!カラオケ行こう!!」
(・・・・・こいつ・・・あれで狙ってねえんだもんなぁ~ッ・・・・・?)
いつもの事とはいえプライベートでも天然なのはあまり変わりない。
ご機嫌でニコニコしっぱなしの相手をよそに顔を紅くして、それを気付かれやしないかとヒヤヒヤする加藤。
名無は何故か歩き途中、そっぽを向く加藤に疑問を抱きつつもカラオケへと向かった。
「そういやお前とカラオケ来んの初めてだよな?」
「うんっ!この前久々に連れてってもらったんだけど楽しかったから♪」
「ふーん、じゃあななしの実力見せてもらうとすっかー。」
この時まさか゛連れてってもらった゛のが克巳だとは夢にも思わない加藤。
さほど気にも留めず曲を選び始める。
名無は機嫌良くこの前上手く歌えた歌を選曲した。
「じゃああたしからね!」
(・・・・なんつったっけなこの曲・・・・。アクションもんの主題歌だっけか・・・。)
『熱く↑燃えたぎれ↓青春☆ブロークンッハアーートゥ☆』
(・・・・・・・・。)
『ハートはレッツ・オア・ヒートゥ!!』
これまた最初から楽しげに歌う名無だったが加藤の反応はわりと冷ややかだった。
「・・・・・・・ななし、お前歌下手だな。」
「・・・へ?」
「気付いてねーだろうから俺が教えてやるがよー・・・。」
「う、うそぉ?あたしそんなに下手!?」
「ド底辺とまではいかねえがそこそこ下手だな~ッ」
歌い終わった後のまさかの突っ込みに少々唖然とする。
機器を操作しながら片手間に言うので名無の中でなにかのスイッチが入る。
「そ・・・・・。・・・そういう清澄はどうなのよ?」
「俺?お前よりは歌上手い自信あるぜー。」
「うっそだあーー!?あんた歌うイメージなさすぎるし下手だから入れてないんじゃないのーッ?」
ケラケラ笑いながら煽る名無。
正直煽るのはいつも通りだがこの言葉に加藤の妙なスイッチが入ったらしい。
その瞬間画面に採点モードが表示された。
「___違えよ・・・・お前に教えてやろうと思ってお似合いの採点モード探してたんだよッッ!!
そこまで言うんなら俺と採点勝負でもすっか!?」
「望むところよッ!!じゃあ負けた方が今日の分奢りだからねッ!?」
「あとで金が足りねえとか言うなよななし!?」
「そっちこそ!!」
二人共立ち上がってキィーンとマイクが鳴る中対決モードになってしまった。
闘争スイッチが入った二人によるカラオケ採点バトルが始まってしまった_____
『いざ行かんッ 彼方~の地ぃ~♪押忍ッ!!』
「・・・・清澄ってやっぱ熱血系の歌好きなんだね・・・。」
「い、良いじゃねえか別にッ・・・。
そういうななしには幼稚な歌がお似合いだっつーの。」
「幼稚じゃないッ!!知ってるのがアニメとかアイドルの曲しかないからつい・・・・。」
姉御系の見た目のわりに可愛い曲ばかり選曲する名無。
無意識に自分にない女の子らしさを求めているようにも見えてしまう。
そこがまたギャップ萌えで可愛い奴、なんて密かに加藤は思った。
「・・・・それよりよ、お前と違って俺は高得点だぜ?」
「・・・・・90ぅ!?嘘・・・・平均点超えてるとか信じられない・・・・。」
加藤のドヤ顔に腹を立てつつ、名無も負けじと熱唱してみる。
『れんあい↓ビスケットォ♪私の恋は割ら↑せや↓しな~いわぁ~♪』
だが結果はというと・・・・・。
「・・・・・74・・・・。やっぱ平均以下・・・・・。」
「な?機械も分かってるっつー事だよ。」
「ぐぅ~・・・!!機械なんかに私の歌声分かってたまるもんですかぁ!!
もっかい行くから、もっかい!!」
「へえー、へえー。精々あがいてろっての♪」
機械の採点など気にしなければいいのだが対決とあってはそういう訳にもいかない。
自分の好きなように熱唱してしまう名無にとって採点モードは強敵だった。
かといって加藤も好きに熱唱する派だが、対決スイッチが入ってしまった為点が取れる曲を積極的に選んでいる。
その差は残念ながらフリータイムの間に埋まることはなく_____
『バーカバカバカッ!!あたし↓あんな奴嫌い↑なんだからぁー!!』
『叶うまで届け 俺の友情ぉ~ッ!!♪』
『隙間に子猫がにゃにゃんがニャアー♪』
『愛とか恋とか分からねえ・・・・
分からねえが、そうだッ 俺についてきやがれぇー!!』
「____うわあ・・・・あの訳分かんない歌でよく80点代出せるなぁ・・・。」
「訳分かんねえのはお前の方じゃねーか・・・?」
手当たり次第に知ってる曲を入れてみたがやはり名無に高得点は出せなかった。
紅白採点ではっきり映し出された点差は悲しい。
頭を抱える名無。そんな様子を横目で見て何故かにやけが止まらない加藤だった。
「やばい・・・・このままじゃ本当に奢り確定だ・・・・。違う雰囲気の曲やろうかな・・・。」
『儚き世のみ~ち~に~♪』
「_____わ!ほらほら、やったぁ!!低い声で行ったら平均点超えた!!
やったあぁー!!このまま清澄に追いついてやるッッ」
点数が取れそうな似合う曲に気が付いたのはだいぶ終盤になってから。
喜ぶ姿を見て加藤が一言呟く。
「・・・・・今更気付いてもなぁ・・・。もうお前何連敗してんだか・・・・・。」
「今からだって追いついてやるーっ!!
ようやく調子良くなったんだから、覚悟しなさいよ清澄ッ♪」
(・・・・あと30分で差が埋まるとは絶対思えねえ・・・・。)
加藤の思う通り。それから2・3曲歌ったところで時間になってしまった。
「えっ、もう時間!?と、得点は・・・・。」
「・・・・・・・・ま、こうなるわな。」
悪あがきもむなしく、結局名無がその日のカラオケ代を支払う結果となってしまった。
「悔しい・・・・清澄に負けたのが悔しい・・・・・。」
「払うって言い出したのはお前だろ?自業自得だアホななし。」
「くぅー!!デートって難しい!!デートも修行みたいなもんだったなんて知らなかったあー!!」
(修行?・・・・・あ、やべ・・・・これデートなの忘れてたッッ!!
せっかくななしとのデートなのに何奢らせちまってんだ俺のバカッ!!)
帰り道。二人共空手の試合した時のように真剣に一喜一憂していた。
ただ加藤は密かに初デートに失敗して後悔していたのだが。
男を見せるつもりが意地を張る別の意味で見せてしまったかも知れない。
「せめて歌ぐらいあんたに勝ちたかった・・・・。」
「そらお前が俺に敵う訳ねーだろ?歌唱力だって同じだッ!」
「同じじゃないッ!!次来る時は絶対負けないんだから!!
歌は訓練すれば治るってゆーし!!」
名無はいつも神心会で加藤には勝てないでいた。他の漢になら勝てるのに、加藤にだけはいつも。
だからせめて歌だけでも勝ちたかったのだがあと一歩及ばず。惜しい結果となった。
「へいへい言ってろ。次またバトルしてやっから。」
「何よその上から目線・・・やっぱバカ清澄ムカつく・・・次は負けないから!」
「次まで音痴治しとけよ~♪」
(俺も・・・・・次はデート成功させるからよ・・・きっと。)
次のデートの約束がさりげなく成立したが名無自身あまり気付いてはいない。
そんな名無を知ってか知らずか。
次カラオケに来た時は少しはデートらしくしたい、なんて加藤は思った。
膨れっ面の名無に歩幅を合わせながら、二人はのんびり家路へと歩いた。
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