第1章
夢小説設定
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数日後。今度は名無の方から加藤を呼び出して返事をした。
「あの・・・清澄・・・・・。えっと、上手く言えないけどさ・・・。
あたしもアンタの気持ち理解したいから、それまであたしに付き合ってくれない・・・?」
「・・・・・・・・。・・・・よくわかんねえけど、そりゃデートのお誘いか?」
「デ、デートォ?ちょっと違うような・・・・。・・・・うーん・・・・・でもそんなな気もする・・・・・?」
よく分からない返答ではあったがそれでもデートっぽい展開にニヤリとした加藤。
そのニヤリの意味をいまいち理解出来ていない名無は特に気にしていない。
「んで、いつすんだデート?」
「えっとね・・・。来週空いてればいつでもいいかな?」
「来週な・・・んじゃ土曜だなッ!」
「分かった。じゃあ決定ね~♪んじゃあね~♪」
「楽しみにしとくぜ、ななし・・・・。」
明るく手を振って立ち去る後ろ姿を、安心した眼差しで温かく見守っているのに相手はまるで気付いていない。
「さて・・・・・それまでになんとかデートの仕方覚えないと・・・。」
それよりも名無には優先すべき先約があった____
その週の金曜日。名無は駅の前で待ち合わせをしていた。
「_____・・・・・あ、来た来た。克巳さーん!!」
「よっ、名無☆待ったか?」
「いや。あたしもちょっと前に来たばっかです。」
「そらあ良かった・・・。」
待ち合わせ場所に現れたのは克巳。
名無にデートとはなにか教えに来た訳で、加藤よりも先約のデートだ。
「・・・んで、こっから何するんですか?」
「そうだなぁ・・・立ち話もなんだ。並んで歩くのもデートの内ッ。歩きながら話すわ。」
「ふむ・・・そういうもんですか・・・・。」
とりあえず最初は何をするでもなく克巳の後をついていく事にした。
「デートってのはな。男と女がお互いの事を知り合う為にするもんだ。
相手の趣味とか、好きな事嫌いな事を知る・・・・そういう積み重ねだ。」
「へえ・・・・。そうなんですか・・・・。
でもあたしと清澄は稽古の後けっこう飲み行ったりしてますよ?」
「え・・・・・そ、そうなのか?」
(加藤の奴・・・・・俺がいない間に飲み連れていきやがったなァ!?)
名無と加藤の間柄はそこそこ長く、飲みに行く程度であれば日常茶飯事なところまで来ていた。
飲みの場に克巳がいなかったのはあんまり意識していない。
「・・・と言っても、飲みだけですけどね~。他では遊んだ事ないし・・・・・。」
(よ、良かった~・・・・俺の計画が破綻するかと思ったぜ・・・。)
「そっか。ならデートは遊びの延長戦みたいなもんだ。どっか行きたい所あるか?」
「そうですね・・・・。でもあたし、克巳さんについていくつもりだったんで・・・特に何も考えてないです・・・。」
「・・・・・よっし。じゃあカラオケ行こうぜ♪俺名無の歌聞いたことねえんだ♪」
「良いですね!!カラオケなんていつ以来だろう・・・・行きましょ行きましょ♪」
克巳は密かにガッツポーズを決めて、二人共ご機嫌にカラオケへと向かった。
「親と子供の頃に行ったきりだなぁ・・・・最新のって凄いですね!」
「そらぁ随分前だな・・・。」
「うわ!あたしが前見た時本で曲調べてたのに今はパネルで操作するんだ!?すごぉーい!!」
「どんだけ前だよそれ・・・?」
名無の驚きように苦笑いしつつも、名無が楽しそうならいいと思う事にした。
とりあえず二人とも向かい合って席に座りカラオケ機器を操作する。
「最新のとか歌えるのか?」
「それは大丈夫ですッ!一応好きなアーティストぐらいはチェックしてますので・・・」
(____お、意外とアニソンか・・・・。)
『君の↑もーとへ飛ーんでけ↓ラッビッソォォオオ♪』
(・・・・・ん?ちょっと待てよ、これってもしかして・・・・・・・・)
『ラララ↓アイラッビュウーー!!』
(・・・・・名無・・・・歌下手じゃね・・・・・!?)
本人は至極楽しそうに歌っているが残念ながら音痴らしい。
いつもと違う眩しい笑顔と裏腹で声は少し音程が取れていなくてどうにもおぼつかない。
克巳が原曲を知ってるが為に気付いてしまったのか、それともそうでなくても音痴だと分かるのか。
「・・・・克巳さんッ!!カラオケ楽しいですね!!」
「お、おう・・・そりゃあ良かった・・・。名無は歌とか歌う機会ねえのか・・・?」
「そうですね~・・・・もっぱら機嫌が良い時家で口ずさむぐらいです~♪」
「・・・・・てことは他人に聞かせたことは・・・・?」
「克巳さんが初めてですッ!」
「・・・そ、そうか・・・成程な・・・・・・。」
カラオケも幼い頃以来だというしこればかりは仕方ない。
名無も音痴ではあるが耳を塞ぐ程でもないし、多分某ガキ大将の歌よりはなんとかマシだろう。
「・・・・んじゃあ俺はこれで・・・・。」
「___聞いた事ない曲ですね・・・・・。」
「そうか?わりと最近だぜこれ。」
『愛が溢れてく~るようなぁ~♪君だけ見つめて 過ごした日々をぉ~♪』
初っぱなから本気モードで美声を響かせラブソングを熱唱する。
今日はノリの良い曲よりも出来るだけ恋歌中心で行こうと決めていた克巳。
いつにも増して名無に目線を送る。
(どうだッ?この声・・・・・お前に届いてるか名無____
_____って聞いてなくね?)
『刹那の恋は俺のMy Soul~♪』
(す、凄い・・・・・こんなに便利になったんだぁ・・・最近のカラオケって楽しいな~♪)
(名無!!こっち見てくれ!!てか俺の歌を聞けえええ!!?)
当の名無はカラオケ機器本体に夢中で克巳の歌など届いていなかった。
なんとなく耳で聞こえてはいるのだが本格的に聞くのはまだまだ先の事である。
『この恋↑君に届くの↓かぁしらあ~♪』
『俺の情熱!熱く燃やした青春と君とぉ~っ♪』
『私マイペース↓だもの→♪マイペース↑だものぉ♪』
『届いて嗚呼・・・・嗚呼僕のおもいぃ・・・♪』
(名無すっげえ楽しそうだな・・・。や、やべぇ・・・反対に俺疲れてきた・・・・
な、何故こんな事にッ・・・・!?)
熱唱で最初から飛ばしたせいか最後は疲れ、やがて名無のペースについていけなくなった天才・愚地克巳であった。
「たっのしかったぁーッ!!カラオケ最高ッ!!
克巳さん歌上手かったんですね、びっくりしました♪」
「そうか・・・ありがとよ・・・・。名無は楽しかったか?」
「はいっ!とっても楽しかったですッ!久しぶりに遊べて羽伸ばせました~!!」
夕暮れの帰り道。あまりに楽しかったという名無に結果オーライだと感じ取る。
元々名無を楽しませる目的で連れて来たので多少の疲れは厭わない。
それどころか、笑顔の名無に心癒されて疲れなど忘れてしまうのだった。
そんな中、楽しげだった名無が不意に少し俯いて切り出した。
「・・・実はね克巳さん・・・・・。あたしまともな女友達がいなくて、ずっと男とばっか飲み行ってたんです・・・・。」
「・・・・・名無・・・・?」
「でも遊びに誘ってくれる奴一人もいなくて。・・・なんでかな・・・。
多分あたしが男勝りなのが原因だとは思うんですが・・・・。
_____こうしてカラオケ行くのすら久しぶりで、本当に楽しかった・・・・・有難うございます。」
苦笑いして滅多に見せない心情を明かす。
頼りにしている克巳だからこそ打ち明けられるのであって、普通の漢にはこんな事は言わない。
それを聞いて克巳は優しく笑って返す。
「・・・・・いいって事よ。なんなら、名無の空いてる時にでもまた連絡くれよ。
またどっか遊び行こうぜ?デートの指南とは別にッ!」
その言葉に名無の表情がふわりと柔らかくなり、微笑む。
「・・・・。克巳さんが良いなら、また誘ってください!」
「任せとけッ!」
力強く親指を立てた克巳。名無も笑って親指を立て返して二人で笑った。
笑い合って夕焼けを見つめる。落ちていく夕日にだけ克巳は真剣な目をした。
(名無・・・・もう少し早くお前の気持ちに気付いてやれれば、加藤なんかに先越されずに済んだのかもな・・・・・。)
もっと早く友達にでもなってやれれば。
もっと加藤より先に告白出来ていたなら。
これが指南ではなく名無と本物のデートになったかも知れないのになんて。
克巳の思惑など知る由もなく、楽しかったデート指南一日目が過ぎていった。
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