第1章
夢小説設定
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それは、名無にとって唐突な出来事だった。
「どしたの清澄。話ってなに?」
「・・・いや、なんつーかよ・・・・・。いい加減、言わなきゃなんねえと思って・・・・。」
「・・・・?」
「_____俺、ずっと前から名無の事好きだったんだッ!!」
「_____・・・・へ・・・・・・・・?」
稽古終わりの神心会道場。
いつになく紅い顔をした加藤は、誰もいないのを良い事にこの神聖な場所で告白した。
ずっと同期で支えあってきた仲。その垣根を越えた感情を抱いたのはいつの事だっただろうか。
「す、きって・・・・・あたしを・・・・・?」
「当たり前だろッ!!ここお前以外いねえんだし。」
「・・・・・・・・・・。あの、あたし・・・・
全ッ然そんな気なかったんだけど・・・・。初耳だし・・・・。」
「・・・・・は?」
「えっと・・・・い、言われても困るんだけど・・・・・。
どうすりゃいいの・・・・・?」
苦笑いする名無に拍子抜けしてしまった。
普通告白と言ったらYESかNOが基本のはず。
だが当の名無はそれすら知らなかったのだ。
「・・・・・・・。どうすりゃって・・・・・俺と付き合いてえかどうか聞いてんだが・・・・・?」
「つ、付き合うぅ!?あたしと清澄が!?
・・・・・・・駄目だ。全然想像出来ない・・・・。」
「・・・・じゃ、じゃあ駄目か・・・?」
「・・・・・・。駄目っていうか・・・・本当にどうしていいか分かんないよ・・・・。
好きってのがよく分かんない・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
大真面目に困った顔をして考え込む名無に加藤もどうして良いやら分からなかった。
普通なら多分NOという返事なのだろうが、本人にその気はなさそうだ。
「・・・・・えっと、今すぐ返事出来ないから・・・・ちゃんと理解して返事したいからさ・・・・。また後日でいい?」
「・・・・・あ、ああ。構わねえけど・・・・・。」
「よし。・・・・じゃあまたねー!」
「あ・・・。ったく・・・・・行っちまった・・・・。」
振られた訳ではない。名無自身も振ったつもりは全くない。
まさかの素でああなのだからどうしようもない。
仕方がないので大人しく帰る事にした。
「よっしゃあー!一本!」
「・・・どうしたんだろ今日の名無先輩・・・。やけに気合い入ってない?」
「ああ、多分あれだよ。あの人帰ってくるからじゃない?」
「・・・・・あ~・・・なるほどぉ・・・・。」
その翌日。何故だかいつも以上に気合いを入れて稽古に挑む名無の姿があった。
やたらご機嫌というか、技の決まりからしても調子が良いようだ。
ガラッ
「押忍ッッ!!女子部の皆ぁー、帰ってきたぞー!!」
「克巳さんッ!お帰りなさい!!予定より早かったですか?」
「おお名無~♪そだなぁ、道が混んでなかったからスムーズだったぜ」
「そうでしたか~!」
噂をすればなんとやら。他の女子が噂していた張本人・愚地克巳が遠征から帰ってきた。
名無の機嫌が良かったのは心底尊敬の念を抱いている克巳が帰ってくるのが待ち遠しかった為だ。
「克巳さん、あとで時間ありますか?
個人的ですが相談したい事がありまして・・・・・」
「相談?んー・・・・・休憩の時にでも寄ってくれ。俺、待ってるわ。」
「有難う御座いますっ!!それではまたあとで~!!」
「応ッ!」
遠征帰りの疲れも見せず、克巳は二つ返事でOKしてくれた。
名無の相談事とは無論あの話なのだが、そんな事まで話せるくらい二人は仲が良かった。
「_____んで、相談ってのはなんだ?」
「実はですね・・・・。本当に個人的なんですが・・・・・。
あの、あたし昨日好きだって告白されちゃいまして・・・・・。」
「告白・・・・。誰からだ?」
「えっとー・・・・・言ってもいいのかな・・・・。本人には言わないで下さいね?
・・・・・清澄なんですけど」
『加藤があッッ!!?あいつ名無に告ったのかよォ!?』
「克巳さん声大きいですって!!」
せっかく個人的な話なのにビックリしすぎて部屋に声を響かせてしまう克巳。
追いかける名無の声もまた恥ずかしさから大きくなり部屋に響いた。
「悪い悪い。はあー・・・加藤がな・・・・・。
んで?なんて返事したんだ?」
「それが・・・・。なんて返していいか分からなくて言ってないんです・・・・。」
「分かんねえって・・・好きとか嫌いとかあるだろ?」
「そこなんですよ。・・・あたし、今まで恋愛とかした事なくて、好きって気持ちとか全然分かんないんです・・・・。
よく一緒にいるとドキドキする~とか、女子部の子が言ってるんですが・・・・それがもう分からなくて・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
強く、女子部のリーダーとも言える名無。
その心は誰よりも天然で純粋。克巳も分かっていたつもりだがここまで無垢だとは思わなかった。
「・・・・・いっそのこと、面倒だし振っちまえば?」
「それは駄目ですッ!!・・・・一緒にずっと歩んできた清澄が言うんだから・・・・・
あいつの気持ちにあたしだって理解して真剣に考えたいんです・・・・。」
おちゃらけた克巳の発言は即覆された。
名無にとって同期からの告白はかなり動揺するもので、真剣だと分かると尚更手を抜いては失礼だと感じていた。
「そっかー・・・・。名無がそういうんなら・・・・・
______よし、決めたッ。この俺が一肌脱いでやるッ!!」
「・・・・・・・?」
「今日からお前に恋愛とは何かレッスンしてやるよッッ!!俺に任せとけッ!!」
「レッ・・・・スン?」
いきなり立ち上がり親指立てて決めポーズする克巳。
自信に満ちた気迫に呆気に取られる名無。
「デートの仕方とか、こういう風なのがドキドキだとか教えてやるよ!」
「い・・・・良いんですか克巳さん!?でも忙しいんじゃ・・・」
「大会も終わったばっかだし、今なら時間あるんだ。
・・・・・・それに、可愛い名無が頼んでんだ。無理やりにでも時間作って指南してやるよ♪」
「か・・・克巳さん・・・・・。
有難うございますッ!!じゃあ、今日からさっそくお願いしていいんですね!?」
「応ッ!!大船に乗った気持ちでいいぜッ!!」
一気に表情を明るくして笑顔になる名無。
この状況だと一見名無と加藤の事を応援しているように見える克巳だが。
実際は違う構図を描いていた。
(加藤・・・やっぱアイツ名無に惚れてたんだな。前からそうだとは思ってたが・・・・
だがそうは行かねえッ。俺だって名無に惚れてんだ!!この機会に、名無を俺のもんにしてやるッッ!!
___加藤・・・・・お前の出番はねえぜッッ!!)
実は応援するどころか奪う気満々。
名無に惚れていたのは加藤一人だけではなかったのだ。
ここから加藤と克巳の、名無争奪戦が始まろうとしていたッ____!
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