第1章
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「清澄~ッッ!!お待たせ~!!」
「お、ななし今日はちっと早えんじゃね?」
「まあ・・・ね。」
数週間後。
すっかり退院して元気になった加藤と念願のデート?をすることになった。
「・・・・?ななし、んな服持ってたのか?見た事ねー格好だしよォ。」
「え、えっとこれは!か・・・・克巳さんが・・・デートするなら可愛い格好するべきって言うから・・・・。
だから別に!あたしだってこんな恥ずかしい格好で来たかった訳じゃなくって・・・・。」
「・・・・・ふーん。そうかよ。俺は別にどっちでもいいがー。」
たいして興味なさそうに頭の後ろで手を組んだ加藤。
それを聞いて名無が疑問に思う。
「・・・・・・どっちでも・・・いいの・・・?」
「まあな。女の格好なんざ分かんねえし、そいつがやりてえ格好で良いんじゃねーの?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・ま・・・・か、可愛くねえ訳じゃねえけどな・・・・・。」
ボソッと呟いて目線を反らしすとほんのり紅くなった。
加藤の照れるパターンはいつもこんな感じである。
「・・・・あんた相手だったら、背伸びせずにいつもの格好で来れば良かったかも・・・。
その方が気楽だったかなあー。気合い入れずに済むし。」
「・・・・もしかして拗ねてんのか?」
「へ?何が?」
「・・・・その顔見るとそうでもねえか。んな事で拗ねる奴じゃねーわな。」
普通の女子ならキレられても不思議ではないがファッションに無頓着な名無にとっては逆に楽。
同期でずっといる加藤だからかそれを見抜いていた。
「____さて、どこ行くんだ?」
「そうだねー。・・・・・・でも、その前に・・・・・。」
「・・・・だな・・・。」
お互い察してどちらからでもなく手を差し出す。
緊張しているのかどちらもゆっくり。二人の手は強く握られた。
「・・・・・・清澄、ちょっと強くない・・・・?」
「・・・・・痛ぇか?」
「いや・・・・そこまでじゃないけど・・・・・。」
「「・・・・・・。」」
何故だか火が付いたように顔が火照り妙に暑かった。
克巳の時もそうだが、手を握る行為そのものが照れ臭い。
相手の気持ちを知ってるだけに余計恥ずかしくて数分間は顔をまともに見れずにいた。
(・・・・・あれ・・・・清澄も顔紅いや・・・・・。そらそっか・・・・・デートもどき?なんだし・・・・。)
「・・・・・で?ななし、どこ行くんだ?」
「へえっ!?あ、あー・・・それが・・・・・。今回何も決めてなくて・・・・。」
「何も・・・・ってことはノープランか?」
「うん・・・・。メインは手繋ぐことって感じで、そっから先はふらふら行き当たりばったりだった・・・。」
「ほー。じゃあ歩くか・・・・。」
「・・・うんッ・・・・。」
克巳のデートプラン通りに進んできた二人だがここにきてフリー状態に。
手を繋ぐのは克巳の指示通りだがここから先は本当に二人だけのデートとなった。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
実際に手を繋ぎ始めたはいいものの、暫く二人の間に会話はなかった。
たまに相手の顔をちらりと見ては改めて恥ずかしくなるばかり。
加藤も女慣れしてる方ではあったはずだが、本命の前では照れ臭くてあまり話さなくなっていた。
「・・・清澄・・・・・。」
「なんだ?」
「・・・・普段お喋りなのに、今は静かだなーと思って。」
「話すっつってもなァーッ・・・・。
ななしは普段ダチと何話すんだ?」
「え・・・。友達・・・・?
・・・飲みに行く時は女子部の子が恋愛話してるかな・・・。あんたもたまに話題に出てくるよ。」
友達がいない、なんていうのは悟られたくないので適当に誤魔化す。
本当は後輩達に誘われた時ぐらいしか行かない稀な出来事なのだが。
「俺ェ?なんでそこで俺なんだ?」
「あんたモテるもん。気付いてないだろうけど。」
「・・・・・マジかッ!?」
(気付いてなかったのね・・・。)
女子部の中でガタイが良いのがモテるのは常識として。その中でも強くて顔もそこそこな加藤は正直人気が高い。
加藤が人気あるのに気付いてないのはそういう話を振られないからか。
それとも名無がそこにいるからなのだろうか。
「お前・・・・それ聞いて何も思わなかったのか?」
「へ、何が?」
「同期がモテてんだぞ。何か思う事あんだろ?」
「・・・・・。って言われても・・・・好きだとかドキドキだとかその時分かんなかったんだもん・・・・。」
「分かんなかった・・・・?じゃあ、今は分かんだろ?」
「・・・・・・・・。・・・・いや・・・ごめん、まだ分かんない・・・・。」
「何ィ!?俺とか克巳さんとデートしてもまだピンと来てねーのかよ!?」
「ごめん・・・。そんな気持ちも込みで、克巳さんから教えてもらうつもりだったから・・・・。」
「・・・・~~~ッッ・・・・・!!」
最早名無に腹を立てるべきなのか、そんな事を吹き込んだ克巳に腹を立てればいいのか分からない。
いくら信頼してる相手とはいえ漢なのだから。少しは警戒してほしいものである。
「・・・・・んなもん・・・俺だって、いくらでも教えてやれんのにッ・・・・。」
「・・・・・?」
「確かによォ、ななし。空手としちゃあ克巳さんは凄ぇけど・・・・。
あっちだって恋愛のプロって訳じゃねえんだぞ?何でも知ってると思ったら大間違いだッ!」
「そう・・・・かなあ・・・?」
「そうだッ!!現に俺だってお前をドキッとさせるくらい訳ねェ・・・・・_____」
口に出した途端、何かまずい事を言った気がして加藤が立ち止まる。
見栄を張って今とんでもない告白をしたような。ちらっと名無の方を見るとやはり名無がじっと見つめていた。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・んだよッ・・・。なんか文句でもあんのか?」
「・・・・・・清澄・・・。」
「あ?」
すると真剣な瞳で見つめ返して。名無は無意識の上目遣いでこんな事を言い出した。
「克巳さんの時も言ったんだけど・・・・。・・・・・・あたし、デートとか分かんない事だらけだし・・・・。
ノープランだと尚更どうしよう、って悩むの・・・。・・・・・・・・だから今かな。
・・・・・今、あんたの事頼っていい?あたしの事好きなあんただからこそ・・・・このデート・・・任せたいの・・・・。」
「・・・・・・・名無っ・・・・・。」
名無はデートを任せれるのは克巳だけだと思っていた。けれど今まで、加藤が切り出してくれたおかげで見えたものも多かった。
だからこそ今回のやり方の分からないデートを任せられる。それが加藤じゃないかと思った。
頼り方が分からない名無が本気で頼れる相手。それが克巳と加藤。この二人だけだ。
「・・・・・・・ッッ・・・な、何真剣な顔してんだこのアホッ!!んな事言われねえでも・・・・。
デートしてんの俺なんだからよ・・・・当たり前じゃねえかッ・・・・・!」
「______・・・・本当?・・・・有難う、清澄!!」
(・・・・・・・あぁあーーー畜生ッッッ!!何俺の方がドキッとしてんだッ!?俺が言い出したのに無意識に先越してんじゃねえ!!
名無のアホ・・・・・心臓に悪ィっつーの・・・・・!!鳴り止め俺の心臓ッッ!!)
思わぬ言い方に真っ赤になって顔をそらす加藤。けれど手を繋いでるせいで名無にもその紅い顔は見えていた。
(・・・・・・清澄・・・。・・・・・頼りにしてるね。)
そんな反応に少し照れながらも名無はゆっくりと手を握り返す。それに答えるように加藤も強く握り返したのだった。
「______・・・・・・んでさ。どこ連れてってくれるの?」
「あ?・・・・そうだなァ・・・・・。」
聞かれたものの、加藤も内心デートプランを考えていなかったのでキョロキョロする。
言い出しっぺなのは自分だと分かっているが特に案があって言った事ではない。
そこでちらりと見ると、見覚えのある看板を発見した。
「・・・・・ななし、またカラオケする気ねえ?」
「また?・・・・・・あたしは良いよ。」
「よっし決まりだなッ!行くかッ!」
(・・・・なんか清澄気合い入ってる・・・?)
そこは前行った場所とは違うがカラオケ店だった。
楽しめるなら何でもいい二人にとってかぶっているのは正直関係ない。
「_____んじゃあ、今回は対決なしで・・・」
「そうと決まったら今度こそ負けないんだからー!!覚悟しなさい清澄!!」
「・・・・・。なあ、ななし・・・・・やっぱすんのか?対決・・・・?」
「へ?当たり前でしょ?」
「いや、なんつーか・・・・今回は止めねえ?」
何故か苦笑いでらしくない提案をしてきた加藤。名無は逆に少し睨み付ける。
「・・・・・なんで?」
「あー・・・・・これ言うとすっげえお前怒りそうだし・・・。」
「何?言ってみてよ?」
「・・・・・なら言うが、今回俺奢りてえからよ・・・・。
その、対決するのなしにして普通に楽しまねえか?」
「・・・・・・・・。」
照れながら爽やかに言い放った。ドキッとさせると宣言した手前少しでもカッコつけたいようだ。
それに対して名無の反応は______
「なっ・・・何よそれ・・・・。
やっぱ清澄バカにしてんでしょー!?今回もあんたが勝つと思ったら大間違いなんだからッッ!!」
頭にきてしまったようでドキッとするどころか火に油を注いだ形となる。
「この日の為にあたしが家でどんだけ練習したか見せてやる!!覚悟しなさい!!」
「・・・・・へえへえ。わぁーったよ・・・。」
(こりゃ何言っても無駄そうだな・・・・。)
勝負師の火を付けてしまってはもう後戻り出来ない。勘違いされた状態では何を言っても効果なし。
なくなく奢るのを取り止めて、しょうがなくまたカラオケ対決をする事になってしまった。
「最初はグー!じゃんけんホイッ!!
よっしゃあーッッ!!あたしが先攻ね!!」
「えらい機嫌良いなお前・・・。」
「そりゃそうでしょう!あたしがこの日をどれだけ待ったと思ってんのよっ!!」
「・・・・・。」
その言い方だとこのデートを待ちわびたように聞こえる。
採点モードを探す名無に一応確認してみた。
「それってよ・・・・俺とデート出来て嬉しいって意味か?」
「え・・・?いや、あたしはあんたにリベンジしたいから言ってるんだけど・・・。」
「・・・・だよなァ~ッ・・・・・。」
名無が言うのはおそらくそういう意味ではなくカラオケ対決の意味だろう。
デートという自覚は多少あるようだがカラオケに関してはバトルとして認識しているらしい。
ニヤッとした笑みが一瞬で崩れてうなだれる加藤であった。
「あーあー。・・・・・では1番、苗字名無。歌いますッ・・・!」
「・・・・・。」
『恋の~♪彼方往くなれば~♪』
名無の一番手は恋愛曲。なんのアニメだかアイドルだか知らないがそれでも感情込めて歌っているように見える。
曲探しをしていた加藤は、ちらっとだけ名無を見て思った。
(・・・・・・・こいつ、歌上手くなってねーか?)
知らない曲だったが、以前の名無と違い歌詞が不思議と頭に入る。
歌が良いのか名無が上手になったのか分からないが悪くない心地だった。
曲調は名無得意の低音。どうやら練習の肝はここにあるらしい。
「得点は~~・・・・!!や、やったあ!!88点だって!?どうよこの練習の成果っっ!!」
「へえ~・・・・凄ェな・・・。どんな練習したんだ?」
「自分の声録音して、低い曲中心に練習しまくったの!!お風呂の時も、筋トレ中も、回数増やして!!」
練習というのは伊達じゃない。今まで鼻歌だけで済ませていたのを本格的に努力したらしい。
そこで自分の音程の不安定さに気付き、本家を聞いて録音して。
正拳突きしながら発声練習もしたとかで理にかなってそうなやり方だった。
これには加藤も関心した。冗談半分でツッコンだわりには本当に努力してくるとは。
加藤はそんなとこまで真面目になる名無にニヤリ、とする。
「・・・・わぁーったよ。お前がそこまで言うんなら・・・・。」
キィーン…
『俺だって負けねェからなッッ!!』
「もちろんッ!!あたしも本気でぶつかるからねー!!」
結局また二人揃ってデートそっちのけの展開に。けれどバトルとはいえなんだか二人とも楽しそうに見える。
最早好き勝手に歌うよりも対決する方が性に合ってるのかも知れない。
互いにリラックスして歌っていたので得点はなかなか競っていた。
「よっしゃあッ!!初の90点代だ~♪
______・・・・って、あれ?次の曲入ってないけど・・・何してんの?」
「ん?小腹すいたからなんか頼もうかと思ってよ。お前もなんか食うか?」
「え!?それもタッチパネルで操作出来たの!?
・・・うわあぁ・・・凄い!!ちゃんと料金も出てるしサイズも選べるなんて流石最新のは違うなぁ~!!」
曲が終わって画面は元のアーティスト紹介になった。
隣に座って加藤のパネルを覗き込むと色とりどりのメニューが。
目を輝かせているのでペンを渡すと隅から隅まで見ていく名無であった。
「そんなに珍しいかぁ?最新のってお前、タイムスリップでもしてきたのかよ?」
「いやぁ~、前来た時はフリードリンクしか飲まなかったし!
その前のなんて小学校の時以来だったし~♪」
「しょ・・・小学校ォッ!?カラオケって普通ダチと行ったりするだろ!?」
加藤が茶化そうとするとこれまた予想外の返事が。名無はノリノリだった為つい本音で答えてしまった。
しまった。と思って横を見ると、珍しく驚いて目を丸くする加藤がじっと見つめていた。
「・・・・・・。・・・・・・あー・・・・えっと・・・・。もう誤魔化しても効かないだろうから言うけど・・・・。
実はあたし・・・・友達いないんだよね・・・・・。あっはは・・・。」
苦笑いして言うと、目を細めて加藤は返した。
「・・・・・・いねェって・・・・。女子部のリーダーなら、てっきり仲の良い奴くらいいると思ってたが・・・・。」
「____・・・・多分、それが原因かな・・・・。あたしってほら?他の子と比べて女の子らしくないじゃん?
男勝りだし・・・・女子のトークにもついていけないし・・・・。同期といた方がいつも気が楽だったの・・・。
さっき『飲みに行った時の恋愛トーク』って言ったけど・・・・もう随分前の事なんだ。あれ・・・・。」
名無の口元は笑っていたがどこか寂しそうに見えた。本当は知られたくない事だったのだがもう仕方がない。
これで事実を知るのは克巳と加藤の二人だけになった。
「・・・・ふ~ん、そうかよ・・・。お前さ、結局何頼むんだ?」
「・・・え?ああ、もう決めたからこれで・・・・。」
「んー。
・・・・そういえば、お前って公私混同しないタイプだろ。
多分・・・それが原因じゃねえか?」
タッチペンで注文すると、加藤は曲を探しながら片手間に質問してきた。
よく分からない問いに首を傾げる名無。
「・・・?どういうこと・・・・?」
「・・・・女子部にいる時のお前、カッコつけて周りにばっか気ィ使うだろ。
だから『リーダーな名無』と『そうでねェ名無』がいて、俺の知ってる名無は皆知らねーんだろ。・・・だからじゃね?」
同期の加藤からすると、名無が女子部から尊敬の眼差しで見られているのを知っていた。
けれどそれが素の名無とは違うのも知っていて。
いつの間にかリーダーとして本音をさらけ出す瞬間を逃したからではないかと考えていた。
「・・・・確かに・・・・・・。アンタは逆に裏表ないっていうか、誰にでも普通に接してるもんね・・・・。
カッコつけてるって言い方はあれだけど、あたし・・・無理してるのかも。皆の前でリーダーであろうとしてた・・・。」
「だから・・・よ。上手く言えねーけど・・・・周りにも素直になってみろよ。
俺から言わせりゃ、お前にクールなイメージなんてねェしよッ。だからちったあ素出しても、良いと思うぜ・・・・。
_______________ってとこまでが、曲の前振りだからなッ!!勘違いすんなよッ!!」
「・・・・へっ?まえふり?」
真剣な顔つきでいたかと思えば突然そんな事を言い出し曲が流れる。
なんだか本音を言ってどんどん照れくさくなった加藤は適当に曲を入れて誤魔化した。
けれど流れた曲は、今までとは違う応援歌みたいな唄で。
『胸張れお前と~♪一緒にー歩けばー♪
無敵だ、最強ォッ!!決まってる~ぜ~!!』
「・・・・ふふっ、なんか良い曲だね♪」
その曲の点数はあまり振るわなかったものの、横で笑う名無に悪い気はしない加藤であった。
「______もう時間そんなにないね。そろそろ締めにする?」
「お、あと数十分ってとこか・・・。」
(もう終わりか・・・・名無といるとあっという間だな・・・。
・・・・てか俺、名無をドキッとさせるとか言っといて結局何もしてねェような・・・・?)
カラオケに入る前そう宣言しておきながら、あれから特に事は進まず。
そもそも対決な時点でドキッとさせるのはなかなか難しかった。それに相手が恋愛ごとに疎いとくれば更に難しくなる。
「・・・・・・・・。なあななし。次俺の番だしそれで終わるか。」
「おっ、そうだね!!どっちが勝ったかな~♪」
「・・・・あー・・・・。そこでお前に頼みがあんだけどよ・・・。
・・・・・俺のあと、二人で歌える曲なんか探しといてくれ。それで締めようぜ?」
加藤の最後の手段。それはカラオケならではのデュエットという選択肢。
それなら距離も近くなるし、もしかしたら名無も"そういう気持ち"で歌ってくれるかも知れない。
すると名無はタッチペンを片手に返事する。
「_____いいのッ!!?あたしが選んでもッ!?」
「ああ。俺が知ってるやつかはあとで見せてくれ。」
「え~っと・・・・何しよっかな~♪二人で歌うなんて初めてだもんね~♪」
(・・・・意外と乗り気だな。これイケんじゃェか・・・?)
二人で歌うことそのものが新鮮で楽しい名無は意外とノリノリで探し始める。
加藤はそんな名無の様子が気になってしまい、正直勝負の結果は半ばどっちでも良くなっていた。
「と・く・て・ん・はァ~・・・・
や、やったァァーーーー!!!清澄に勝った勝ったーー!!わーーーい!!!」
「おお・・・マジで負けるとは思わなかったぜ・・・・。俺も歌唄いながら腹筋でもすっかなァ?」
「お風呂とか練習に良いよ!声が響いてカラオケみたいだし、あれオススメだよ~♪」
余程勝ったことが嬉しいようで特訓の内容を事細かに喋り始める。
あまりに得意げに言うので本当に練習してみようか、なんて考えてしまう。
こんな素が女子部でも出せれば仲間なんてすぐ出来そうなもんだが。と一瞬思ったがとりあえずは言わない事にした。
「清澄、この曲は知ってる?」
「・・・・あぁ。一応聞いたことあるし多分歌えるぜ。それにするか?」
「へへっ。パート分かれてるはずだからちょうどいいね♪」
(・・・・・やっべこいつ本当可愛いな・・・・・。無邪気なところ絶対気付いてねェ・・・・。
克巳さんもこんな名無見たのかと思うと、やっぱ渡したくねえッ・・・。)
そんな加藤の思いなど知らずに曲が始まった。
男女パートをそれぞれが担当して順調に歌っていく。
楽しく歌っていたが1番が終わった矢先、画面に映ったのは_______________
「・・・・・あれ?セリフゥッ!?」
「そ、そういやこの歌あったな・・・忘れてたぜ・・・。
おぉ、『お前の事を一日足りとも忘れたことはねェッ!!次出会う月の昇るその日までッ!!』」
「あ・・・『貴方を忘れないッ!!永遠の誓いは誰にも破られはしないッ!!』」
『『だから今ここで、口付けを・・・!』』
言うはずのなかったとんでもない台詞が飛び出して名無の顔もすっかり紅くなっていた。
でもこれは諸刃の剣。加藤もろとも紅くなってしまい、成功と呼べるかは微妙だった。
あとで歌い終わった名無は次のように語る。
「・・・・・・・・あんな台詞があったのすっかり忘れてたね・・・・。
そうそう!でもあの歌終わってからの二人が凄く感動的でさ~!」
加藤にドキドキしたというより台詞に動揺しただけらしい。
その後アニメの展開を思い出した名無に付き合って終わってしまった。
(楽しいデートだったな・・・・。俺も結果奢れたし、名無が楽しそうでなによりだ・・・・・。
_______________あいつ、ダチ出来ると良いんだがな・・・・。)
この心配は同期と好きな相手両方の意味。同期兼惚れた相手なら気を使わず笑っていてほしい。
・・・と。隣で上機嫌な名無を見て、加藤は笑ったのであった。
Next...