目を覚ますと体が所々悲鳴をあげた

あれ？王子、何してたんだっけ……？




「目が覚めたかい？」




声の主は本を読んでいるマーモンだった

オレがマーモンの方に顔を向けると、やつはため息をつきながら本を閉じた




「まったく、血を流す度に意識をとばす癖、どうにかならない？」

「うっせー」

「じゃあ、何が起きたか覚えてる？」

「……うっせ」




ムカつくクソチビがこれ見よがしに首を横に振りながら大きくため息をつく

こいつ、いつかゼッテー殺す


マーモンはどんなことが起きたのかベルに教えろとボスに言われ、ここでオレが目を覚ますのを待っていたらしい

こういう時のこいつの話はいちいち嫌味が入るからスッゲームカつくんだよなぁ

ただ、エルザを見つけた後(つまり遊んでる最中)の記憶がないのは事実だし、黙ってマーモンの話を聞いた


マーモンが言うには、皆が駆けつけたときには既に決着がついていたらしい

禍々しい気配がなくなったエルザとオレが外で倒れていて、それを屋敷に運んだんだと

オレは丸一日寝ていた

スクアーロはオレが勝手にエルザと交戦したことに激怒していて、ルッスーリアは目が覚める気配のないエルザをしきりに心配している

レヴィはオレの勝手な行動により屋敷が一部破損されたことに少し怒りを感じているものの、ボスにまで害が及ばなかったから基本的には無関心

ボスはというと、何を考えているか分からないらしい




「多分、２人の処分について考えてるんじゃないかな」

「２人って……王子も含まれてるわけ？」

「当たり前だろう？君は勝手な行動を起こして大損害を招きかけた。エルザは自身の力が制御不能になって意味もなく君という戦力を殺そうとしたんだから」




僕はもう行くよ、とマーモンが部屋をあとにした


はーあ、処分が下されるとかマジで言ってんのかよ

そんなに悪いことした気がしねーんだけど


ていうかオレ、倒れる前に何かした気がすんだけど……何だっけ？

いつもなら完全に意識も記憶も飛ぶんだけど、今回は違う

うすぼんやりとした映像

エルザと交戦して倒れる直前、何か──




「う"お"ぉい！ベル、勝手な行動しやがって」




ったく、人がせっかく思い出そうとしてるっていうのに……

廊下からこっちに向かって聞こえてきた耳をつんざく声によって、脳内に浮かぶ霧がかった映像はかき消された

あいつのお説教って色んな意味でうるさいんだよなー