ここ数日はこれといった任務もなく、珍しく屋敷にいる隊員が多い

多いっつても比較的に、って意味だけど

もちろんオレら幹部も勢揃い


平隊員は各々自由に過ごしている

任務の疲れを癒すやつ、溜まった報告書を片付けるやつ、鍛練に励むやつ

ししっ、ゴクローなこった


で、オレら幹部は何してるかって？

ただ暇を持て余してるってわけじゃねーぜ？

何もしてないように見えるかもしんねーけど、エルザがいつ覚醒しても取り押さえられるように気を張ってる

すぐ動けるように２４時間、常に誰か２人は起きている状態を作っている

もちろんピリピリした空気は表面に出さない

エルザの暴走を知ってるのは幹部だけ

隊員に知らせたところで混乱を招くだけだし、あいつらじゃ取り押さえは不可能だ

年下の女とはいえ、入隊したときから幹部を任されるほどの実力の持ち主だし(まだまだ不安定だけど)

それを不満に思うやつも少なからずいる

ここで「エルザを幹部から降格した方がいい」って意見が出てきてもおかしくはない


でもさー、そろそろ……




「なぁ、マーモン」

「何だい？」

「王子飽きたんだけど。エルザとやり合えるわけでもないし、ツマンナイ」

「僕だってこんなお金にならないことに時間を割くなんて。後でたっぷり請求してやる」




空がどんよりした午後３時

談話室でレモネードを飲みながらマーモンが本音を漏らす

オレはクッキーを頬張りながらそろそろ事が起きてもいいんじゃないかと考えていた




「う"お"ぉい、ベル！そのクッキーはお偉いさんが来たときに出すやつだぞぉ！何勝手に食ってやがる！！」

「うっせーな。新しく取り寄せりゃあいいじゃん」

「そういう問題じゃ……」




そのとき、破壊音が聞こえた

オレら３人は喋るのをやめ、一斉にその音の元へ急いだ


──エルザの部屋の方からだ