オレはルッスーリアを呼びにやつの自室へ向かった

じっとしてても落ち着かないからトレーニングしとくんだとよ

ったく、何で王子がわざわざこんなことしなきゃなんねーんだよ




「おーい、オカマー、エルザ起きたぜ」

「ちょっとベルちゃん？その呼び方やめてちょうだい」




ルッスーリアの死体コレクションなんて視界に入れたくないから、扉をノックした後用件を伝えた

するとタンクトップ姿で顔をひょっこり出し、そんなことを言い返してきた

片手には重たそうなダンベル

思わず顔に「うわぁ……」という表情が出てしまったのか、「そんな顔するのもやめてちょうだい！」とも言われた


ルッスーリアが着替えるのを待って(あれ？王子がわざわざ待つ必要なくね？)しばらく経ったとき、どこからか壁が破壊される音が聞こえた

どうせ犯人はボスで、犠牲者はスクアーロだろう

日常茶飯事もいいところだ

もはや誰も気にもとめやしない


……。


でもおかしい

いつもならスクアーロの声が轟くはずなのに、人の声が聞こえない

それに気付いたのか、ルッスーリアが部屋から急いで飛び出してきた




「いつもと違くね？」

「ベルちゃんも思った？嫌な予感がするわ、行きましょう。女の勘は当たるものよ」

「は？黙れオカマ、お前がどう頑張ったって女にはなれねーよ」

「きーっ！おだまり！」




音がした方向へ向かっていると再び大きな破壊音が聞こえた

かなり近い

いや、近いとかじゃない、すぐそこだ

すると、目の前の壁に段々とひびが入ってきた

ピシピシという音がガラガラという音に変わったとき、何かが飛び出してルッスーリアを襲った

そのままルッスーリアを押し倒して、手を高くかざして喉をかき切ろうとしている


黒い影が見えた

一瞬のシルエットから判断すると、四足歩行の獣

……いや、獣じゃない

一瞬とはいえ何で見間違えた？




「エルザ！？」




そう叫ぶと、手はルッスーリアの喉に届く直前で止まった

その隙を逃さずルッスーリアが左膝を突き上げた

うわ、腹のど真ん中に入った


エルザはそのまま気を失った


手加減しているだろうけど、急所に直撃のメタル・ニーは流石にキツいな

ヴァリアーの幹部とはいえエルザは女だし




「ベルちゃん、私の見間違えかしら」

「あ？」

「さっき、エルザちゃんが気を失う前、黒いオーラみたいなのが纏われていたの」




四足歩行で黒いオーラを纏い、貪欲に血や獲物を求める……

誰だよ黒の狂犬なんて言い出したやつは

そっちよりマーモンが例えた地獄の番犬ケルベロスのがしっくりくんじゃん