次に私が向かった先はボスの執務室だった

珍しくデスクワークしていたボスに切り出した




「ボス、何か大きな任務はありませんか？昨日、ベルと私が担当を任されたような……」

「ない」

「戦場で活躍している要人の暗殺などは」

「ない」

「あの、でも、私は」

「簡単に壊れるほど脆くねぇっつっただろ」




この言葉ではっとした

ボスが私に入隊させた、誘い文句

この揺るぎなく鋭い紅い目を信用したんだ




「用がないならとっとと下がれ」




私の返事は決められていた




「……はい」




こう言うしかなかった


退室した後、私は１人で悶々と悩んでいた

このままここにいてもいいのか、それとも……


気がつけばもう自室の前に着いた

私に与えられた、私のための部屋


私はそこをスルーして再び足を進めた

自室で寝ようと思ってたけど予定変更

あのラベンダーに囲まれている木の上で寝よう


確かあそこで寝たとき、風邪ひいたことあるんだ

その時、ルッスーリアにむやみやたらに心配されたっけ

で、意識を取り戻したらそこにはベルがいて

……２人だけじゃない

ここに来て最初に私を認めてくれたのはスクアーロだし

マーモンとレヴィは何考えてるのかよく分からないけど、私を無下にしない


冷酷だけど、私にとっては暖かい

できることならずっとここにいたい

でも、もう限界かな

皆に迷惑かけるくらいなら、姿を消してしまおう

私、また独りになるんだ


でもこの気持ちは、記憶の香水を視たベルなら分かってくれる

ボスの言葉を、ヴァリアーの強さを信用していないわけではない

ただ臆病なだけ


明日、ここを出よう

大切なものを自分で壊すその前に