豪華な屋敷の一室。ここはヴァリアーのアジトのボス執務室。
XANXUSを頂点とした幹部6人に囲まれて自己紹介をした。


「今日からヴァリアーの一員となったエルザです」


ローズという名は使わない。ここでは『黒の狂犬』ではない。
そういう契約で入隊したのだから。


「てめぇらをここに呼び出したのは他でもねぇ。こいつは今日から幹部になるからだ」


途端に周りがどよめき始める。
最初にこのどよめきを打ち破ったのは顔にピアスをしている男だった。


「ボス、どういうことですか。こんな小娘が入っていきなり幹部になるとは」

「オレも納得いかねぇぞぉ」


ピアス男に便乗して銀髪の男が私にいちゃもんをつけて睨んできた。


「文句あんのか」

「そうだよ、ボスが考えなしにいきなり幹部にするわけないだろ？」

「私は大歓迎よ。こんな可愛い娘が幹部なんて嬉しいわぁ」


ボスのドスのきいた声に続いてきたのはフードを被った赤ちゃんと、やたら体つきのいいオカマ……？


「ルッスーリアのはどうでもいいけど、マーモンのは納得できるくね？」


今度は前髪で目が隠れているティアラの男の子。
本当、個性豊かだなぁ。

私がぼんやりとしている間に話がまとまったらしい。
どうやらあの赤ちゃんの言葉が１番大きかったようだ。
私はとりあえず"幹部"と認められたらしい。

そして、いつの間にか自己紹介へと発展していた。


「私はルッスーリアよ。よろしくね」

「僕はマーモンだよ」

「オレはベルフェゴール、ベルでいいよ」

「……レヴィ・ア・タンだ」

「う"お"ぉい！オレはまだお前のことは認めてねぇからなぁ！！」

「名をドカスという」

「違ぇぞぉ、Ｓ・スクアーロだぁ！」


えーと、まとめると、

筋肉質なオカマがルッスーリア、フードを被った赤ちゃんがマーモン、
頭にティアラを乗せていて前髪が長いのがベル、顔面ピアス男がレヴィ、
ボスにカスザメと言われた銀髪ロン毛がスクアーロ。


「(…あれ？)」


私はどこか既視感を感じながらルッスーリアと一緒に部屋を出た。
屋敷を案内してくれるそうだ。


「ここがボスの部屋兼執務室で、このフロアが私たち幹部の部屋が集まってるわ。あっちが談話室──」


私はルッスーリアの屋敷案内に適当に相づちを打ちながら考えていた。
さっき感じた"既視感"が一体何なのかを。


「ざっとこんな感じかしら、他のところは後々覚えていけばいいわ」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ19時頃また迎えにくるから、しばらく部屋でゆっくりしておいてね」


そう言ってルッスーリアは私とは反対方向へと歩いていった。
私は記憶をたどって先ほど案内された自分の部屋へとやってきた。

扉を開けると広々とした空間に最低限の家具しか置いていないという殺風景な景色が目に入る。

キラキラと窓から注ぎ込む夕焼けが眩しい。
夕日で真っ赤に染まったシワ1つないベッドが視界に入った。


「これはきっと、使わないな」


呟いた声に返事する声はもちろんなかった。