闇の中の光 まとめ読み
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……さて、結果から言わせてもらうと今回の任務は単独でも余裕だったと思う
ベルはすでに自分の仕事を終え、こっちを見て早く始末しろと急かす
一方、私の目の前にいる標的は小さく両手を挙げ、殺さないでくれとと懇願している
弱い、弱いすぎる
こんなにも弱いのに今まで生きてこられたのが不思議でならない
あ、ベルが目を反らした
多分こっちを見ることに飽きたんだろう
そろそろ終わらすとするか
近くの窓から吹き込む風が何故か神経を逆撫でする
私は銃口を標的の額に向けた
任務を全て体術と能力のみでこなすのはさすがに難しい
肉体的、体力的、そして精神的に結構厳しいのだ
だからいつも一丁の拳銃と数本のナイフ(短剣)を持って来ているのだ
そうしょっちゅう使わないけど、こんなやつらには私の貴重な能力を使うまでもない
「恨むなら私たちじゃなくて、あんたたちを殺すように言ってきた依頼人を恨むことだね」
すっと右手の人差し指に力を込めたら、目の前の男は薄く笑った
さっきまであんなに怯えていたのに、この態度の変わり様は何だ?
「このロケットペンダントは大切なものなのかな?」
「!」
後ろからの声に振り向くと見知らぬ女が立っていた
その女の右手には私がしていたペンダント
気づかれずに後ろにいたどころか、ペンダントまで盗られるとは一生の不覚
ふと、私の首には冷たい金属の感触がした
多分、剣だろう
後ろにいた女に気を取られすぎていて、今、殺すべき標的のことを忘れていたなんて……
相手の思うツボじゃないか
自分で自分を責めた
お前は愚か者だ、と
「ふっ、形勢逆転だな」
「……この女は一体誰なの」
「一昨日にできた新しい仲間だよ。気配を絶つのが得意でね」
一昨日加わった新しい仲間だと?
どうりで任務前に渡された資料に載っていないわけだ
そんなことより、今この状況をどうやって切り抜けようか
殺すべき標的に命を握られ、いきなり出てきた女にペンダントを奪われている
「ふふふっ、そんなにこのロケットペンダントが大切なのかしら?どんな写真が入っているのかしら」
「見るな!」
「おっと、動いたらお前の命はないぞ」
首に剣が食い込む
目の前ではいやらしく笑いながらペンダントの写真を見ようとする女
身動きがとれない私は何もできない
だから身動きがとれなくてもできることをした
全身から殺気を発したのだ
その殺気が不愉快だったのか、にたりとしていた女の顔が急変した
そしてあろうことか持っていたペンダントを窓へ投げ出そうとした
咄嗟に体が動く
あてがわれていた短剣が首の皮一枚切った
その瞬間、後ろからは呻き声が、前からは悲痛な叫び声が聞こえた
そして、そのすぐ後に首を支配していた冷たい金属の感触が消え、人が倒れたような鈍い音がした
「ししし、だーから早く殺せっつったじゃん」
「あ、あ、あぁぁ……私の、私の右手が……」
見ると、女の右手首がなくなっていた
その手首はというとベルのナイフによって壁に刺さっていた
1本目のナイフで切断し、2本目のナイフで壁に刺したんだろう
後ろの状況は見なくとも分かる
ベルのナイフの餌食になって血まみれになって死んでいるに違いない
「きっ、貴様ァァァ!よくも私の右手をっ……」
「うっさい。もう死ねよ」
目の前で行われた、普段から見慣れている惨劇
常人なら見るに耐えないものだろうな
そんなことを考えながら壁に刺さっているモノからペンダントをそっと手にした
大丈夫。女の血で汚れているなんてことはない
ペンダントを確認したとたんに私の緊張が力と共に抜けた
立つ力がなくなり、重力に逆らわずぺたんと座り込んだ
「なーに座ってんだよ。立てよ。帰んぞ」
「……分かってる」
私は一息ついて立ち上がった
再びペンダントを着け直していたらベルに話しかけられた
「1個だけ質問いい?」
「何よ」
「そのペンダントの中身って……」
「やめて、聞かないで。助けてくれたことには感謝するけど、その質問に答える気はない」
「じゃあ違う質問」
ふと、いつかのベルの質問攻めのことを思い出した
あのときは逆らってはいけないと思い、正直に答えていたけど、今はそんなことない
私にだって何も言わない権利くらいある
でも、1つだけという条件があったことに気づき、人差し指を立てるベルを見た
……もういいや
この際ペンダントのこと以外だったら答えよう
「エルザってオレらのことどう思ってんの?」
「は?」
「いや、だってさ。エルザの表情全然分かんねーし。口調も淡々としてつマーモン以上に分かりずらい」
表情が読めない
口調が淡々としている
よかった。彼らの、少なくともベルの目にはそう映っていたんだ
私は頭の中で文字を選びながら答えを作った
一呼吸経て、口を動かした
「ヴァリアーは、私にとって大切なもの。だからこそ深く関わりたくない」
「……言ってる意味分かんねぇ」
「1個だけの約束だったよね。早いところ戻ろうよ」
私はまだ何か言いたそうなベルをあえて無視して、血生臭い小屋から出た
私がベルに言ったことは本当のことだ
嘘偽りなど言っていない
もしも、また、大切な居場所がなくなったらどうしようかと考えると手の震えが止まらない
依存しすぎたら、失ったとき余計辛くなる
外の冷たい風が頬を撫でた
それはまるで、あまり思い上がるなと忠告するかのように感じた
それと同時に森の中で見た湖を思い出した
私はあの透明な湖と真逆な存在だ
水は凍りついても溶けるが、私の心は凍ったままだ
水はどんなに強く冷たい風に吹かれても波を立てるだけだが、私はいつかきっと倒れてしまう
今日の標的となんら変わらない
自分の弱さを隠すために強がっている、ちっぽけな存在だ
ベルはすでに自分の仕事を終え、こっちを見て早く始末しろと急かす
一方、私の目の前にいる標的は小さく両手を挙げ、殺さないでくれとと懇願している
弱い、弱いすぎる
こんなにも弱いのに今まで生きてこられたのが不思議でならない
あ、ベルが目を反らした
多分こっちを見ることに飽きたんだろう
そろそろ終わらすとするか
近くの窓から吹き込む風が何故か神経を逆撫でする
私は銃口を標的の額に向けた
任務を全て体術と能力のみでこなすのはさすがに難しい
肉体的、体力的、そして精神的に結構厳しいのだ
だからいつも一丁の拳銃と数本のナイフ(短剣)を持って来ているのだ
そうしょっちゅう使わないけど、こんなやつらには私の貴重な能力を使うまでもない
「恨むなら私たちじゃなくて、あんたたちを殺すように言ってきた依頼人を恨むことだね」
すっと右手の人差し指に力を込めたら、目の前の男は薄く笑った
さっきまであんなに怯えていたのに、この態度の変わり様は何だ?
「このロケットペンダントは大切なものなのかな?」
「!」
後ろからの声に振り向くと見知らぬ女が立っていた
その女の右手には私がしていたペンダント
気づかれずに後ろにいたどころか、ペンダントまで盗られるとは一生の不覚
ふと、私の首には冷たい金属の感触がした
多分、剣だろう
後ろにいた女に気を取られすぎていて、今、殺すべき標的のことを忘れていたなんて……
相手の思うツボじゃないか
自分で自分を責めた
お前は愚か者だ、と
「ふっ、形勢逆転だな」
「……この女は一体誰なの」
「一昨日にできた新しい仲間だよ。気配を絶つのが得意でね」
一昨日加わった新しい仲間だと?
どうりで任務前に渡された資料に載っていないわけだ
そんなことより、今この状況をどうやって切り抜けようか
殺すべき標的に命を握られ、いきなり出てきた女にペンダントを奪われている
「ふふふっ、そんなにこのロケットペンダントが大切なのかしら?どんな写真が入っているのかしら」
「見るな!」
「おっと、動いたらお前の命はないぞ」
首に剣が食い込む
目の前ではいやらしく笑いながらペンダントの写真を見ようとする女
身動きがとれない私は何もできない
だから身動きがとれなくてもできることをした
全身から殺気を発したのだ
その殺気が不愉快だったのか、にたりとしていた女の顔が急変した
そしてあろうことか持っていたペンダントを窓へ投げ出そうとした
咄嗟に体が動く
あてがわれていた短剣が首の皮一枚切った
その瞬間、後ろからは呻き声が、前からは悲痛な叫び声が聞こえた
そして、そのすぐ後に首を支配していた冷たい金属の感触が消え、人が倒れたような鈍い音がした
「ししし、だーから早く殺せっつったじゃん」
「あ、あ、あぁぁ……私の、私の右手が……」
見ると、女の右手首がなくなっていた
その手首はというとベルのナイフによって壁に刺さっていた
1本目のナイフで切断し、2本目のナイフで壁に刺したんだろう
後ろの状況は見なくとも分かる
ベルのナイフの餌食になって血まみれになって死んでいるに違いない
「きっ、貴様ァァァ!よくも私の右手をっ……」
「うっさい。もう死ねよ」
目の前で行われた、普段から見慣れている惨劇
常人なら見るに耐えないものだろうな
そんなことを考えながら壁に刺さっているモノからペンダントをそっと手にした
大丈夫。女の血で汚れているなんてことはない
ペンダントを確認したとたんに私の緊張が力と共に抜けた
立つ力がなくなり、重力に逆らわずぺたんと座り込んだ
「なーに座ってんだよ。立てよ。帰んぞ」
「……分かってる」
私は一息ついて立ち上がった
再びペンダントを着け直していたらベルに話しかけられた
「1個だけ質問いい?」
「何よ」
「そのペンダントの中身って……」
「やめて、聞かないで。助けてくれたことには感謝するけど、その質問に答える気はない」
「じゃあ違う質問」
ふと、いつかのベルの質問攻めのことを思い出した
あのときは逆らってはいけないと思い、正直に答えていたけど、今はそんなことない
私にだって何も言わない権利くらいある
でも、1つだけという条件があったことに気づき、人差し指を立てるベルを見た
……もういいや
この際ペンダントのこと以外だったら答えよう
「エルザってオレらのことどう思ってんの?」
「は?」
「いや、だってさ。エルザの表情全然分かんねーし。口調も淡々としてつマーモン以上に分かりずらい」
表情が読めない
口調が淡々としている
よかった。彼らの、少なくともベルの目にはそう映っていたんだ
私は頭の中で文字を選びながら答えを作った
一呼吸経て、口を動かした
「ヴァリアーは、私にとって大切なもの。だからこそ深く関わりたくない」
「……言ってる意味分かんねぇ」
「1個だけの約束だったよね。早いところ戻ろうよ」
私はまだ何か言いたそうなベルをあえて無視して、血生臭い小屋から出た
私がベルに言ったことは本当のことだ
嘘偽りなど言っていない
もしも、また、大切な居場所がなくなったらどうしようかと考えると手の震えが止まらない
依存しすぎたら、失ったとき余計辛くなる
外の冷たい風が頬を撫でた
それはまるで、あまり思い上がるなと忠告するかのように感じた
それと同時に森の中で見た湖を思い出した
私はあの透明な湖と真逆な存在だ
水は凍りついても溶けるが、私の心は凍ったままだ
水はどんなに強く冷たい風に吹かれても波を立てるだけだが、私はいつかきっと倒れてしまう
今日の標的となんら変わらない
自分の弱さを隠すために強がっている、ちっぽけな存在だ