「人の部屋にこそこそ入るとかありえなくね？」

「起こさないように入ったあげたのに何その言いぐさ。しかもベルの部屋じゃないし」




結構な長時間散歩して帰ったときのベルの第一声がこれだ

私のささやかな気遣いが台無しだ

ひとまずそれはおいておき、ベルが目を覚ましたことだし小さな作戦会議を始めた

しかし、その会議はものの数分で終わってしまった


任務開始はお昼から

今回の任務はこの町の片隅に住んでいるという標的を殺すこと

暗殺じゃなくて、消してしまえばそれでいいらしい


軽く朝食兼昼食をとって、ヴァリアーの黒い隊服のコートを着たらちょうどいい感じの時間になった

靴紐をしっかりと結び体をほぐした




「そろそろ行こうか」

「王子に指図すんな」




相変わらずの憎まれ口だ

私は慣れたようにそれを聞き流して外に出た


この町の片隅、ここの宿からずっと東へ飛ばした

東の森の木の枝を伝って行く途中に透明な湖があった

太陽で煌めいている水面を横目で見ながらひたすら前に進んだ

そして、数十分間進んだら山小屋みたいなものが見えた




「お、標的の隠れ家ってあれじゃね？」

「そうみたいね」




私たちはその小屋が小さく見える場所で立ち止まり、木から地面へ飛び降りた

任務の書類によると消す必要がある標的は２人だけだ

やはりベルは強い方と相手したいらしい

別に２人ともベルに譲ってもいいんだこど、給料をもらっている以上、きちんと仕事はこなさないといけない


ベルを見ると彼はこくんと頷いた

その行動は任務開始の暗黙の了解みたいなものだ

私たちは小屋に静かに忍び寄った